EPISODE 1.
信濃の地でカヌーに目覚める!
第4章 己の実力を知る  



(2日目、大河犀川での快適ツーリング)
 この大船団をやり過ごして我々も出発。

 今日はカータ艇バレントもちゃんと組み上がった。カズがシットオンのマリブで初の一人乗りにチャレンジする。僕は愛艇のクロスファイヤーで。今日のペア、ミャータ・ナオ組がキャンペットファミリーに。後ろ舵は経験豊富なナオが取ることに。(途中で浅瀬に捕まってからはナオ嬢が前方確認のため前に乗艇していたが・・・)


  昨日の万水川と違ってのんびりゆったり流れてゆく犀川。ホントは三河川が合流しているので水量も豊かで流れも結構あるのだが川幅の広さがそれをあまり感じさせない。

 スクールの連中が随所で止まってはインストラクターの注意を聞いている。瀬の手前で

「隠れ岩に注意!」

「橋脚の方に寄らないように!」

  とか言ってると、こちらまでビビッテしまうが、いざ下ってみると豊かな水量が艇を本流のど真ん中へと導いてくれ多少のスプレーはかかるが心地よく下ってゆける。  

  途中、艇を交代しながら行く。ナオは果敢にもクロスファイヤーに乗って木戸橋下の瀬をクリアしていった。大したもんである。

 1級程度の瀬と瀞場を繰り返し我々の船団も順調にコースをこなしてゆく。タンデムで後ろに乗っていると波がかからなくて非常によろしい。時々前でカズが悲鳴を上げて波を被っている。瀬の後の瀞場で速い流れが遅い流れに乗り上げて出来る三角波は初心者でも安心して下ることのできる楽しい波だ。一度は顔面直撃の大波をくらっていたが彼女が防波堤になって後ろは波知らずで行けるところがとてもよろしい。

  やがて前方からこれまでにない大きな瀬音が聞こえ白波が見える。中州ではスクールの連中が大勢待機してインストラクターの指示を聞きながらこの瀬の様子を眺めている。犀川最大の「杭の瀬」の登場だ。

 我々も少し上流に上陸して下見。ガイドブックなんかによれば本流を行けば問題無しと書いてある。比較的素直な2〜3級の瀬。しかしいざ目の前にするとかなりの迫力だ。おまけにスクールの連中がギャラリーと化して眺めている。


(切り込み隊長カータのチャレンジ)
全員が無事に通過するにはどうしたらよいものか、しばし思案。

カータが

「オレ、行ってみますよ!」


  先遣隊を志願。 まぁカータならなんとかなるだろうと思いクロスファイヤーを貸与。 いざ出陣。


 僕は、彼のせっかくの晴れ舞台なので瀬の下流に陣取って勇姿をカメラに収める準備をして待機。 スクールの連中がまだチャレンジしないうちにカータが行く。 結構余裕の表情で進んでくる。 最後の大波をザブンと被って顔をしかめたが見事にクリア。もう自信満々に

「こりゃいけまっせ! みんなも行きましょう!」

  と鼻息も荒い。

  その後、次々とスクールの連中もトライ。 初心者っぽい女性もカナキリ声を上げながら波に揺られ無事に下って行く。これなら大丈夫だろうと我々も全員でこの瀬にチャレンジすることに。


(しっかり波をとらえる、ナオ嬢)

(髪型がヘルメットのようだ! ミャータ)
 次に度胸のあるのはナオ。マリブに乗って見事にクリア。ミャータもクロスファイヤーで果敢に挑む。余裕があるのかないのか彼は地顔が笑っているので心中まではお察し出来なかったが、これも無事クリア。 なんと、まるで初心者のカズ嬢までもがマリブに乗って挑戦。途中さすがに顔が緊張していたが最後の大波を突破する時には笑顔で歓声をあげるあたり彼女もなかなか大したものなのである。

(キャーという歓声が聞こえてきそうなカズ嬢)

(余裕のカメラ目線、YAJ)

 全員が無事にクリアした我々に向かってスクールのインストラクターとおぼしき人物が近寄って来てヘルメットの着用をちょっとヤな口調でアドバイス。 ああいった人達はひと言いわないと気が済まないのだろう。生徒たちには「川は危険だから常にヘルメットを」なんて教えているのだから。こちとらだって角張った岩だらけの場所ならちゃんと被るさ(今日のところは持ってないけどね)。

  全員の「杭の瀬」漕破を祝して川原で休憩。 暑さでドロドロに溶けたポッキー、つぶれたアンパンとバナナで軽い昼食とする



 

 スクールの連中は行ってしまい、あとには見るからに玄人集団という人たちが「瀬遊び」を楽しんでいる。 カナディアンのロデオタイプで遊んでいる人や外人もいる。サーフィンやスピン、中にはバーチカルな技にチャレンジする人がいたり、なかなか楽しそう。 こういった大きな瀬は私も初めてなのでワクワクして眺めていた。やがてそのワクワクが高じてソワソワしだして、とうとう自分でチャレンジしてみることにした。瀬のなかで艇をキープすることくらいなんとか出来そうな気がしたのである。

  が、しかし「杭の瀬」は素人には甘くなかった。あっと言う間もなく僕は水の中。ちょっと練習中のエスキモーロールも出来るはずもなく無様にも下流へ艇に捕まって流されて行ったのであった。

  気を利かせて少し上の方から写真を撮ろうとしたカズが歩き出したとたん歓声が聞こえ、振り向いた時にはカヌーの赤い腹が浮かんでいたと言うのだからその電光石火ぶりが分かると言うものである。

  沈してなんぼのパドラーじゃけん、鼻から入った水もまたパドラー冥利に尽きるってもんでぃ、と強がってみせる僕であった。

 瀬遊びをしていた玄人集団のひとりが

「ケガなかったかい?  結構川底は岩があるから下手すると頭から血が吹き出るよ」

 と心配そうに言ってくれた。ん〜人間、モノは言いようである。スクールのインストラクターにねちっこく

「事故があったら、こっちにも迷惑かかるからメット被ろうよ」

 って言われても、そっちの迷惑なんか知ったこっちゃねぇと思うけど、心配して言ってくれると素直に

「ハイ、今度から瀬を行く時はメットします」

 という気になるから不思議である。

   確かに誰かの怪我でツーリングが中止になってしまうのもサビシイものがある。次回からはヘルメットを持ってこようと思うのであった(でも被るのは瀬のとこだけでいいよな、やっぱり)。


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