EPISODE 2.
 那珂川、春の瀬に思う
第3章 人生の瀬の中も・・・


 明けて翌朝。一転抜けるような青空。ゆっくり起きた頃には既に川原の空気は熱気をはらんでいた。他所のパーティーはテントの撤収を終え、川へのエントリーを開始している。我々も昨日の鍋の残りにウドンをぶち込み朝食とし今日の出発準備にかかる。

 なんだかんだですっかりお昼前となり陽射しも強まり鼻の頭がジリジリする感じ。たっぷり日焼けしそうなお日柄なり。いざ境橋のたもとを出発した時、
 今日は全員が「ラ族」となっていた。


広々とした那珂川を行く

 中流域は桜に覆われた小原沢の山と鎌倉山に挟まれた渓谷美の中を流れる那珂川。あと1週間も早ければ満開の桜の下をお花見ツーリングと洒落こめたろうに。今は少し緑の葉の見える梢から時々ハラリと落ちる花ビラに

「ふりゆくものは我が身なりけり」

 などと諸行無常、盛者必衰を感じながらしみじみと下ってゆく。


 下流域は他のカヌーも多く、また種類もファルトからカナディアンまで多種多様。岸でお弁当食べてるグループや瀞場でロールの練習している人たち、初心者づれのグループが我々のあとから瀬に入って沈して歓声をあげたり、のどかにそれぞれの楽しみ方で川を下ってゆく。

 女性連れのパーティーを羨ましそうに眺めつつストイックに行く我々。僕以外のメンツは全員独身寮住まいの若手社員。船上での話題も

「こないだ合コンしたんっスけど、つまらん女に引っかかりまして」

「最近彼女出来たんすよ、実は!」

「俺の女なんかアメリカ人だせ!」

「どこの店の女や、そりゃ」

 などなど。

高校の先輩・後輩同士

 結婚している僕を羨ましがる彼らだが、それはそれ。僕とて家庭平和を維持するため日々努力を重ねていることを理解していただきたい。

 その後、ラ族の我々は瀬を発見してはことごとく突入を敢行し、裸の上半身に白波を被っては水の冷たさに悲鳴を上げつつ、それでもどの艇も沈することなく大瀬ヤナ、大瀬橋を越えゴール地点に到着。無事に今シーズンの開幕ツーリングを終えた。

今回は金欠メンバーもいることだし温泉・食事も無しで川原で解散とする。イサゴも最後には車の廻送・回収の手順が理解できたようだ。

 東京組と別れ、福島県、越後山脈を越え一路新潟へ。そう今日の夕食はカミサンをディナーに招待しなくては。300キロの距離を休み無し、ノンストップで飛ばして帰る。4級の荒瀬よりキツイ行程だ、などと思いつつ家族サービスの激流に突入して行くのであった。

 今年は仕事の上でもそれぞれ厳しい世相の波に揉まれる1年となりそう。また若手は若手で青春の荒波に、家族持ちは家族持ちで子育ての横波、家族サービスの返し波、いろんな波涛を越えて行かねばならないのであった。人生の荒瀬を乗り越えて生き残っていたら、またいつかどこかの川原に集おうではないか。

ミャータ、人生の瀬の中もパドリングを止めてはいけないよ。

                          (完)



前に戻る


  もくじへ戻る