EPISODE 3.
 梅雨の晴れ間に轟沈連発!
第4章 轟沈連発!


 右岸に「雪国まいたけ」の工場が見えるあたり白波の瀬が見える。はるか先をゆくミャータ艇がクリアしてゆく。その時ミャータは流れのド真ん中に隠れ岩を発見し後続に伝えるべく叫んだようだが距離がありすぎたため、その声を認識できた者は誰もいなかった。続くカズ・カータ艇は運良く岩の脇をすり抜けたが、YAJ艇が岩を視認したときは既に方向転換する距離は残されていなかった。幸いリジット艇だったので、5月に全日本ロデオチャンピオン貝本選手と五十嵐川をツーリングしたときDに伝授された岩飛びの技で真正面から岩に当たっていって水流と共に岩をジャンプしてクリア。気の毒なのはその後に続くじゅりあ・ナオ艇。私もすぐに振り返り

「そこ、隠れ岩!」

轟沈くらって泳ぐ乙女達!
 と叫んだが、時すでに遅し。

「えっ!」

  と驚いたじゅりあ女史の顔を覆い隠すかのように水面下からカヌーの黒い腹がせり上がって来る。 目の前で見ていた私の所にはカヌーの横っ腹が岩に激突する「ンゴッ!」という鈍い音まで聞こえてくる見事な轟沈! じゅりあ・ナオ艇この日2度目の沈脱。

 再び牽引ロープの出番となった。

「雪国まいたけ」の工場の見える川原で昼食休憩。ガスコンロで湯を沸かし焚火も熾してズブ濡れの2人を乾かす。流された距離がそうなかったからか昨日のカータと較べても一向にへこたれた様子の無いじゅりあ・ナオ嬢。濡れても元気そのものだ。轟沈初体験のじゅりあ女史も

「楽しい!」

  と笑っている。昨日からテトラ、八海橋下、隠れ岩とヒットを飛ばしているナオ嬢も

「もう怖いモンなしよ」

  と大らかに開き直っている。女性の逞しさを垣間見る一瞬である。

「沈したけりゃ、私といらっしゃい!」 

 まだ沈していないカズに盛んにモーションをかける危ないナオ嬢であった。

 暖かいカップラーメンとコーヒーと焚火で暖をとり、ズブ濡れの2人には前回「ラ王」Eがその一糸まとわぬ素肌にはおったTシャツを貸して元気に再出発。


 先にはまたすぐに白波の立つ瀬が待ち受けている。今度はYAJ艇が先遣隊で行く。波は高いが隠れ岩もない安全な瀬だ。途中で反転して待っていようとエディにバウ(船首)をつっこむ。が、スターンを流れに食われて思わぬ沈! 未熟者はやってしまうのだ、この失速沈を。ロールを試みたが流れの中じゃ出来なくって敢え無く沈脱。瀬の真横で水面に顔を出した時、目の前をミャータが波を蹴散らし通過してゆく。

「スンマセンねー・・・」

 この「スンマセン」は何も助けられず「スンマセン」という事だったらしい。ヨシとしよう。流されつつカヌーの上に這い上がった(昨日のカータと同じくセミ状態)が、舵が効かず右岸から張出した木の枝になぎ倒され再び水没。続いてその横をじゅりあ・ナオ艇が行く。前席のじゅりあ女史が

「大丈夫ですか?」

 そうそう、先ずは心配してもらいたい。後部席のナオちゃんは心なしか口元が嬉しそうだったが・・・。そんなことより許せんのは最後のカズ・カータ艇。再び張出した枝に向けて無情にも流されて行き

「アレー、ヤメテー!」

 と悲鳴を上げる僕の横でカータが


「カメラ!カメラ!」

  カズはカズで防水ケースに入ったカメラを出そうと四苦八苦。枝にバリバリと突っ込んでいる僕に向かって

「YAJさーん、コレどうやって開けるんですかー!」

  と聞く始末。

  嗚呼、人の情の希薄な昨今よ・・・。まぁ分かるけど。人の沈の楽しさって。そもそもレスキュー道具を僕しか持っていないのは問題だ。自分が流されるとこういう事になるんだなとしみじみ実感。カータ、ミャータの両船長は次回は是非牽引ロープの一本や二本自艇に積んでおいてもらいたい。

 あとでカータと話したが「沈」なんてなんでもない、むしろ楽しいくらいであると。なにが辛いかと言うと、その後無情にも流されている時の「惨めさ」なんだと。とりつく島のないあの絶望感、自然に対する己の非力を身に詰まされる孤独で長いひとり旅が名状しがたく悲しいのであると。沈して流された人間は分かりあえるのだ。

 カヌー格言、同「沈」相憐れむ!


D貝本選手とのツアー ・・・・・

 
新潟のアウトドアショップWEST(大竹店長)の主催で定期的に行なわれているちょっと上級者向のツアー。ロデオクリニックといって、ロデオの技術を指導してくれる。 
Eラ王 ・・・・・  EPISODE 2 那珂川河原に出没した裸の男。



 水抜きのため中州に上陸。こうなるとみんなで

ファルト二人艇の水抜き
女性にはちょっと大変


「さぁ後は誰が沈していない?」

という話題になる。

「次はカズにクロスファイヤーに乗ってもらおう!」(プレイボートは安定が悪いのだ。)

「ミャータ艇に突っ込むか!」

 と、もう沈脱経験者は次なる不幸を待ちきれず、いかに演出するかのワルダクミを始めたりする。カズ嬢はあくまで

「沈しないモン!」

 
 とプレイボート乗艇を固辞。ミャータも突っ込まれてはと再びスイスイとひとりで先へと行ってしまうのであった。

 さて本日2番目の難所、浦佐の「二段の瀬」に到着。ところが轟沈を繰り返して来たものだから感覚がマヒしているのか、とりあえず一応の下見はするが、それぞれ中央突破で難なくこの瀬をクリアしていった。

荒瀬を超えてゆくカズ・カータ艇

怖いモンなしのじゅりあ・ナオ艇

 浦佐でトイレ休憩。川原の薮を越えて河川敷き公園のトイレから戻ってきた女性の足に草の実や油虫の汁がびっしり。

「ヒャーッ!」

  と気持ち悪がるカズに周りから声が飛ぶ。

「川に浸かって洗えばいいよ」

「沈したら!」

 ナオちゃんからは

「私と乗る? もれなく”沈”プレゼント!」


  と危険なお誘いまで出る。間違いなくみんなの思考のベクトルは一つの方向に向かっているのであった。

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