右岸に「雪国まいたけ」の工場が見えるあたり白波の瀬が見える。はるか先をゆくミャータ艇がクリアしてゆく。その時ミャータは流れのド真ん中に隠れ岩を発見し後続に伝えるべく叫んだようだが距離がありすぎたため、その声を認識できた者は誰もいなかった。続くカズ・カータ艇は運良く岩の脇をすり抜けたが、YAJ艇が岩を視認したときは既に方向転換する距離は残されていなかった。幸いリジット艇だったので、5月に全日本ロデオチャンピオン貝本選手と五十嵐川をツーリングしたときDに伝授された岩飛びの技で真正面から岩に当たっていって水流と共に岩をジャンプしてクリア。気の毒なのはその後に続くじゅりあ・ナオ艇。私もすぐに振り返り
「そこ、隠れ岩!」

轟沈くらって泳ぐ乙女達! |
と叫んだが、時すでに遅し。
「えっ!」
と驚いたじゅりあ女史の顔を覆い隠すかのように水面下からカヌーの黒い腹がせり上がって来る。 目の前で見ていた私の所にはカヌーの横っ腹が岩に激突する「ンゴッ!」という鈍い音まで聞こえてくる見事な轟沈! じゅりあ・ナオ艇この日2度目の沈脱。
再び牽引ロープの出番となった。 |
「雪国まいたけ」の工場の見える川原で昼食休憩。ガスコンロで湯を沸かし焚火も熾してズブ濡れの2人を乾かす。流された距離がそうなかったからか昨日のカータと較べても一向にへこたれた様子の無いじゅりあ・ナオ嬢。濡れても元気そのものだ。轟沈初体験のじゅりあ女史も
「楽しい!」
と笑っている。昨日からテトラ、八海橋下、隠れ岩とヒットを飛ばしているナオ嬢も
「もう怖いモンなしよ」
と大らかに開き直っている。女性の逞しさを垣間見る一瞬である。
「沈したけりゃ、私といらっしゃい!」
まだ沈していないカズに盛んにモーションをかける危ないナオ嬢であった。
暖かいカップラーメンとコーヒーと焚火で暖をとり、ズブ濡れの2人には前回「ラ王」Eがその一糸まとわぬ素肌にはおったTシャツを貸して元気に再出発。
先にはまたすぐに白波の立つ瀬が待ち受けている。今度はYAJ艇が先遣隊で行く。波は高いが隠れ岩もない安全な瀬だ。途中で反転して待っていようとエディにバウ(船首)をつっこむ。が、スターンを流れに食われて思わぬ沈! 未熟者はやってしまうのだ、この失速沈を。ロールを試みたが流れの中じゃ出来なくって敢え無く沈脱。瀬の真横で水面に顔を出した時、目の前をミャータが波を蹴散らし通過してゆく。
「スンマセンねー・・・」
この「スンマセン」は何も助けられず「スンマセン」という事だったらしい。ヨシとしよう。流されつつカヌーの上に這い上がった(昨日のカータと同じくセミ状態)が、舵が効かず右岸から張出した木の枝になぎ倒され再び水没。続いてその横をじゅりあ・ナオ艇が行く。前席のじゅりあ女史が
「大丈夫ですか?」
そうそう、先ずは心配してもらいたい。後部席のナオちゃんは心なしか口元が嬉しそうだったが・・・。そんなことより許せんのは最後のカズ・カータ艇。再び張出した枝に向けて無情にも流されて行き
「アレー、ヤメテー!」
と悲鳴を上げる僕の横でカータが
「カメラ!カメラ!」
カズはカズで防水ケースに入ったカメラを出そうと四苦八苦。枝にバリバリと突っ込んでいる僕に向かって
「YAJさーん、コレどうやって開けるんですかー!」
と聞く始末。
嗚呼、人の情の希薄な昨今よ・・・。まぁ分かるけど。人の沈の楽しさって。そもそもレスキュー道具を僕しか持っていないのは問題だ。自分が流されるとこういう事になるんだなとしみじみ実感。カータ、ミャータの両船長は次回は是非牽引ロープの一本や二本自艇に積んでおいてもらいたい。
あとでカータと話したが「沈」なんてなんでもない、むしろ楽しいくらいであると。なにが辛いかと言うと、その後無情にも流されている時の「惨めさ」なんだと。とりつく島のないあの絶望感、自然に対する己の非力を身に詰まされる孤独で長いひとり旅が名状しがたく悲しいのであると。沈して流された人間は分かりあえるのだ。
カヌー格言、同「沈」相憐れむ!
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