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川原にそれぞれ艇を運んで出発前の準備体操中、いち早く川面に漕ぎ出したTOM。まだ瀬でも岩場でもなんでもないザラ瀬の手前の瀞場である。何をしたのか分からないが見ている目の前でコテンとひとり静かに沈しているではないか。「粗沈」以外のなにものでもない。声もたてずにカヌーの下、水面下に消えて行くTOM。
ホラ、言わんこっちゃない。いきなり川の神様の天罰炸裂だ。慌てたTOMはその場で立ちあがったが、カヌーをフリーにしてしまいお互い離れ離れに。
「ほら、TOM、カヌー追え! 捕まえろー!」
とみんなで岸から叫ぶが、すぐ先のザラ瀬を越えて巨大バナナのようなTOMの黄色いカヌーは桃太郎の桃みたいにドンブラコドンブラコと流されて行ってしまう。“キビダンゴ”なんて言ってるからだ。
「よし、オレが行く!」
言うが早いかカヌーに乗りこみTOM艇を追いかける。
「TOM―、YAJさんがカヌー追いかけるから、おまえ岸沿いに行けー!」
背後で皆なが、川の中をヨロヨロ歩くTOMに指示を飛ばしてくれている。
ザラ瀬を越えるとすぐに本流。 勢い良くカヌーは流れて行く。いきなり流速が増す久慈川。追いついたのが瀬の中でTOM艇をキャッチできない。あれれ? 目の前は結構な白波じゃぁございませんか。3級程度の瀬が迫る。久慈川のこの区間では最大の「シャモの瀬」にTOMのカヌーを横付けしたまま突入である。
もうTOMのカヌーのことなど構っていられない。 こりゃここで誰か撃沈するだろうなぁ、と思いつつパドルを繰り出しシャモの瀬を突破。 慌ててTOM艇に再び横付けして、そのまま浅瀬に向けてTOM艇を押し出し座礁させ、自分もようやく瀞場で反転。 準備運動もそこそこでの急激なバドリングに上腕二頭筋と肘の関節がギシついて悲鳴をあげているが、ホッと一息。 対岸をTOMがトボトボ歩いて来るのを待つとしよう。
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