EPISODE 7.
非・不沈艦大行進ツーリング!
第2章 フンドウズ誕生!(いいのか、それで?) 

 このTOMをはじめ、前回の御岳で痛い目に遭ったササヘーが騒いだお陰で、装備を充実させようという機運が持ちあがり今回はみんなメット持参である。その他、ウェットスーツ、シューズを揃えた者、ドライサック、救命ロープ、チャートケースを購入した者など、一挙に“かぬらー”から“カヌーイスト”へ昇格といった感である。

 勢い余ってカータは、とうとう2艇目となるダッキーの一人艇を購入し今回この久慈川でお披露目とあいなった。これまでは3〜4艇のツーリングで、しかも艇の半数以上が僕の持ち船という編成だった。ところが今回2艇の新艇を加え6艇の大船団にてのツーリングが始まろうとしているのである

(最終的には我がキャンペットは組み上がらず5艇での船出となった。キャンペットは金属疲労を起こし竜骨(キール)部分が破損。修理が必要であった

 準備が整い、景気よくシャンペンの栓を飛ばして2艇(新カータ艇、TOM艇)の進水式を済ませ、いよいよ出発である。出発前にどうですかとTOMが買ったばかりの高価なライジャケのポケットからみんなにキャラメルを配る。


「なんだよ、そのいかにも恵んでやる、って態度はよぉ!」

 とササヘーが絡む。なんか態度がエラそうなのである。


「ヘヘヘ・・・分けてあげますよ、
キ・ビ・ダ・ン・ゴ」

 TOM、そういう態度をとっていいのかな。

 川の神様はちゃぁんと見てるんだゾ!


 初参加でしかもポリ艇のプレイボートでスタートのTOM。技量的に不安があるので聞いてみたが、以前海外でシーカヤックのツアーに参加して基本的なパドリングは分かっているらしい。

「ダイジョウブっす、なんとかなるっしょ!」

 なんだかカータ的ダイジョウブって気がしないでもないが、まぁ、TOMなら体力的にみても簡単には壊れそうにないので、その点では、間違いなく”ダイジョウブ”だろう。




「さぁ、行くか! えーっと、“チーム・わんカヌ”? ん? “かぬッチャ”だっけ?」
 
 去年の暮、その年にツアーに参加した面々で反省会と称した飲み会を持った。単にその年の轟沈シーンを振り返り再び大笑いしただけの会であったが大いに盛り上がり

「いっそカヌー部を作ったら」

「チーム名を決めよう!」

 と話が広がった。その後数日チーム名をいろいろ模索したが、


★ ワンダフル・かぬらー、略して チーム「ワンかぬ」
★ 楽な川にしかゆかない、カヌーで行くリゾート、チーム「かぬっチャ」
★ 気合一発、激流大好き、チーム「んがぁ!」 
 
 と、ロクな候補が出ないまま、なんとなくその時々の雰囲気で「チーム・ワンかぬ(仮)諸兄諸姉、云々」「チーム・かぬっチャ(仮)隊員に告ぐ」などと“仮称”扱いで連絡事項を送ったりしていた。個人的には、新潟で所属していた「NCN」とか、カヌー用語から引用した「ラピッド」「エディー」といった洒落たネーミングをと思っていたが、このメンツにはそういったデリカシーを持った人間は残念ながらいないのであった。

 
 「いや、今日は”フンドウズ”でしょ!」
 
 と一同の頭を見まわしてササヘーが言う。
 
 そう、本日メット持参とはいえ、みなの頭の上にのっかっているのは会社の「非常持出袋」に乾パンと一緒に入っているいわゆる“ドカヘル”である。おでこのところに大きく社章が入っている。江戸時代の両替商か弊社くらいしか使わないだろうという“分銅”を模したわが社社章。お世辞にも「今風」とは言えないが百年を越す歴史を持つ我が社伝統の社章なだけにいかんともしがたい。

 普通カヌーの時この類のドカヘルは水が入り不向きとされるのだが、とりあえず今回の久慈川の難易度はそう高くないのでOKだろう。ササヘー提唱の「かぬっチャ」指数で言えば「かぬっチャ度70パーセント」といった程度なので問題ないはずだ。


 “フンドウズ”、いざ船出である。



 川原にそれぞれ艇を運んで出発前の準備体操中、いち早く川面に漕ぎ出したTOM。まだ瀬でも岩場でもなんでもないザラ瀬の手前の瀞場である。何をしたのか分からないが見ている目の前でコテンとひとり静かに沈しているではないか。「粗沈」以外のなにものでもない。声もたてずにカヌーの下、水面下に消えて行くTOM。

 ホラ、言わんこっちゃない。いきなり川の神様の天罰炸裂だ。慌てたTOMはその場で立ちあがったが、カヌーをフリーにしてしまいお互い離れ離れに。


 「ほら、TOM、カヌー追え! 捕まえろー!」

 とみんなで岸から叫ぶが、すぐ先のザラ瀬を越えて巨大バナナのようなTOMの黄色いカヌーは桃太郎の桃みたいにドンブラコドンブラコと流されて行ってしまう。“キビダンゴ”なんて言ってるからだ。

「よし、オレが行く!」

 言うが早いかカヌーに乗りこみTOM艇を追いかける。

「TOM―、YAJさんがカヌー追いかけるから、おまえ岸沿いに行けー!」

 背後で皆なが、川の中をヨロヨロ歩くTOMに指示を飛ばしてくれている。

 ザラ瀬を越えるとすぐに本流。 勢い良くカヌーは流れて行く。いきなり流速が増す久慈川。追いついたのが瀬の中でTOM艇をキャッチできない。あれれ? 目の前は結構な白波じゃぁございませんか。3級程度の瀬が迫る。久慈川のこの区間では最大の「シャモの瀬」にTOMのカヌーを横付けしたまま突入である。

 もうTOMのカヌーのことなど構っていられない。 こりゃここで誰か撃沈するだろうなぁ、と思いつつパドルを繰り出しシャモの瀬を突破。 慌ててTOM艇に再び横付けして、そのまま浅瀬に向けてTOM艇を押し出し座礁させ、自分もようやく瀞場で反転。 準備運動もそこそこでの急激なバドリングに上腕二頭筋と肘の関節がギシついて悲鳴をあげているが、ホッと一息。 対岸をTOMがトボトボ歩いて来るのを待つとしよう。


前にもどる ・ 続きを読む


  もくじへ戻る