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五分ほど待つがTOMは現れず。流されたとはいえ数百メートル程度、一キロは流されていないはず。コーナーの向こうに誰か見えないか右岸沿いに岸を少し上流へ向かって歩いてみる。左へ流れが曲がっているコーナーの右岸。ここからならスタート直後のザラ瀬が見える。岸沿いを歩いて来るならどのコースを来ても見渡せるはずであるが、TOMの姿は見えない。
さらに五分経過。誰の姿も見えてこない。いやーな想像が頭に浮かぶ。
(沈した瞬間、TOMが足を切って流血でもしとるのかな・・・?)
(誰かの船がトラブって、出発できなくなったとか・・・?)
(曇ってきたし、みんなで中止にしたんじゃ・・・)
(それともオレを置いて温泉に行ったか!?)
待たされれば待たされるほど悪いほう悪いほうへと思考は転がっていってしまう(今思うと最初に浮かんだことのほうが、悪いコトだと思うが・・・)。
川原にひとりの孤独を胸に、先ほど漕破してきた「シャモの瀬」右岸の大岩の上で遠くコーナーの向こうに誰か現れるのを待ち続けたのであった。。
ようやく現れたのはアッサー・ミャータ艇。どういうわけか瀬に入る流れの前からミャータだけが水没してカヌーのスターン(船尾)に金魚のフンのようにぶら下がって流れてくる。
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ミャータのやることはいつも我々常人の想像を超越している。 どこかでカヌーによじ登るかと見ていたが、そのまま三級の瀬に突入しミャータは顔面にザンザン波を食らってこの荒瀬を越えていった。
“人間ラダー”ミャータの身を挺した見事な操艇ぶりとして理解しておこう。
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次にカータの新艇サファリがやって来た。一人乗りのその船の舳先に「おサルの電車」よろしくTOMを乗せて。どうやらTOMは先ほどの沈の時にサンダルを流失してしまい川原歩きもままならないのでしかたなくカータが乗せてきたようだ。瀬の入り口の大波。左岸寄りを行くTOM・カータ艇は波の左肩に乗ってしまって横殴りにTOMが投げ出される。勢いカータも
「せ、制御不能ーー!」
と叫びながら、横転したカヌーの真っ赤な船底の向こう、白波の中へ消えていった。次の大波が迫る。
二人してカヌーによじ登るが、もうどうすることもできない。波をかぶってしかめっ面でしがみつくカ−タと、こんな事態でも「アハハ」と笑ったような笑顔でカヌーにぶら下がっているTOMが妙なコントラストを醸し出して大岩の上で見守る私の横を流されていった。 |

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最後のマッツン・ササヘー艇。今回一番経験の浅いふたり組。心配して見ていたが、瀬に突入してからの安定感といったら。
前席マッツンはほとんど目をつぶってのパドリングだが、それを補って余りある安定性。さすが“ミス・起き上がり小法師”である。前回の“ミスター・沈”ササヘーと乗っていてもその地位は微動だにしないものであった。無事、瀬を突破してゆく。
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「シャモの瀬」下流でようやく全員集合。いざ出発となってからすでに一時間近くが経過している。いきなりのトラブルスタートである。それもこれも、やはりTOMが川をナメてデカイ態度をとるのがいけない。自然に対しては常に謙虚であらねば。
天気のほうも転がるように下り坂。すでにポツリポツリとお湿りが。それもこれも、やはりマッツンがお祓いをしていないのがいけない。自然に対しては常に誠実であらねば。
なんてオヤジ的お小言を言う間があったら先を急ごう。
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