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さぁゴールも間近だ。が、前方にはかなりの白波の立つ瀬が見える。いざ、行かん。先頭切ってミャータ艇が行く。思ったよりも大きな落ち込み。最後尾のカータからはミャータの頭はすっかり落ち込みの向こうに消えて見えなくなるほどの落差。しかも30メートル程あった川幅が急激に狭まり三分の一になってドドッと落ち込んで行く。ミャータ艇が二度三度バウを跳ね上げられながら進んで行くのを見つつ艇を進める。
落ち込みを下りきったところで左右からぐっと寄せられたV字型の波の背に翻弄される。それはまさに“天竜”という龍の舌先で弄ばれているかのよう。右からの波にドンとスターンKを持ち上げられもんどり打っての轟沈。ものすごい水圧だ。沈脱してカヌーにしがみついて水面に出たとたん目の前には
畳三枚分くらいの大きさの波が頭上から襲う。
続いて三畳半、四畳半。水の浸入を防ぐべくハッチLを上に向けた艇を何度となくめくりあげひっくり返す大波。巨大な龍の舌は次から次へと容赦なく波間を漂う沈脱者を襲う。もうなすがまま。瀬が落ち着くまで流され続けた。
ようやく瀞場に辿り着き左岸に上陸。TOMも案の定、カヌーに捉まり流されて来ている。無事にクリアしたのはミャータとカータであった。
「いやーめちゃオモロかったっスわー、YAJさんとTOM、ほぼ同時に沈しとりましたよー、ハハハー」
最後尾でコトの一部始終を眺めて来たカータが嬉しそうに笑っている。他人の沈って、これほど楽しいものは無いからね。
それにしてもガイドブックなど当てにならないものだ。“オオタキの瀬”を優に凌ぐ巨大な瀬であった。
「いやぁ、天井くらいから波が落ちてくる感じやったよ! なぁ、TOM!」
「そうそう、僕の通った落ち込みなんか2メートルはありましたからねぇ!」
ここは沈脱者の特権である。自分が沈した瀬はできるだけ大袈裟に表現しておかないと。これがきっとそのうち3メートル、4メートルの落ち込みとなって脳裏の中で増幅してゆくMに違いない。
その後は軽い瀬を越えて明神橋右岸のゴール地点に到着。ここは地元パドラーの練習ポイントとなっているらしく川原には立派なカヌーハウスが建っており川面にエントリーしやすいように階段が設けられている。4艇ほど地元パドラーがロデオボートやスクォート艇Nで川と戯れていた。挨拶をすると
「これから下るんですか? え、下ってきた。じゃぁ、あのテトラ脇の瀬も越えて来たんですかー!すごいなぁ!」
僕とTOMが轟沈をかましてきた瀬のことだろう。地元パドラーでも一目を置く結構チャレンジングな瀬だったようだ。
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