EPISODE(番外編).
魚野川バトルツーリング!
第2章 バトル勃発!


 プレイボートの私は方向転換もしやすいので比較的身軽に釣り糸と釣り糸の間を縫って下ってゆく。abッチも初心者のメンドウ見ながらなんとか下って来ている。

 そして一人乗りが初めてのM田さんがとうとう釣り糸を引っかけてしまった。激怒する釣り人(結構若い感じの男だ)。 まあお互い邪魔せずにやるのがルールだから引っかけてしまってはM田さんは謝るしかなかろう。丁寧に腰を低くして謝るM田さん。が意外と粘着質の釣り人。なにやら説教めいたことを言い始めたか?(下流のここからでは細かい会話のやり取りが聞き取れない)。

 ここでabちゃん登場。Tヶ崎君を残して上流へ向かう。ヤバイなって気はしたが、こりゃ見物という気持ちも半分。
 abッチはM田さんのそばに行くと

「さぁ行こ!

  と釣師を無視して出発を促す。まぁ得策だろう。お互いに利害の噛み合わない相手なんだから遣り合っても無駄である。釣師が何か言っている。オトリのアユを逃がしたと言っているのであろう。それに対してabッチは

「こっちだって流れを失ってるんだからよ!」 (いいゾ、言ってやれ、言ってやれ!)

「謝りゃそれで終わりだろ」


 
と言って更にM田さんに出発を促す。釣師が食い下がる。結構しつこいな。謝っていないとでも言っているのだろう。


「分かったよ、謝りゃいいんだろぉ!  ゴ・メ・ン・ナ・サイッ!」


  川原中に響くような大声でabが吠える。もうその頃流れの前後の釣師は釣りそっちのけで二人のやり取りに注目である。abッチのこのケンカ腰の「ゴメンナサイッ!」に引き下がる釣師でないところが敵もさるもの。釣師の声もだんだん大きくなってきて下流の我々にも届きだした。誠意が感じられないとの反攻に出た。


「感じない? 鈍いんじゃないの!」


  とabッチ。すわ、殴り合いかと思ったが、幸い両者の間には流れがある。手を出すまでには至らない。だから双方強気なのかも。


「テメェの面、覚えとくからな!」

  と釣師。

「こっちもだよ! 後でナイフで刺してやろうか!」( abちゃん、それはちょっと過激すぎない?)

「そんなんに頼ってっから駄目なんだよ!」(釣師も言うねェ。)

「そりゃ、テメェだろ!」(もうこうなると意味不明。論理もなにも噛み合ってません。)

  とにかく訳のわかんないことでもなんでも言い放ったほうが勝ちって感じで揚々と引き上げてくるabッチ。丁寧なM田さんは「どうもスイマセン」と一礼してなんとかその場を取り繕う形でようやく釣師から解放される。



 テンションの上がったabッチその後も悪態をつきながら川を下る。騒動に巻き込まれてはとM田さんと僕はそれとなくちょっと離れて先に下る。

 釣師も気のいい釣師と短気な釣師と二種類いるようだ。さっと竿を上げて流れを譲ってくれる人、   

「遠慮してると通れないゾ」

と我々を促してくれる人。

「お互い遊んでンだからよっ」

  と分かってる人はそう言ってくれる。

一様に若い釣師は融通が利かず、お年寄りは寛大。またなんとなくだが、いかにも地元って感じの人は譲り合いの精神があり、都会から来たって感じの人はどうにも頑固に流れを譲ってくれない。
 困るのは流れの入り口のオジサンが

「さぁ行っていいよ」

  と竿を上げてくれるので堂々と流れに入っていくと後に続く釣師に嫌な顔をされること。M田さんと釣師人物評をしながら下る。

「良い釣師、ヤな釣師を見分けられるといいのにな」

「タカ派と穏健派を帽子の色かなんかで分かるようにしてもらうとか」

 今日は水量も少ないので釣師との接触もなおさら多くなる。先週より70センチ程水位が低いらしい。そうなると両岸から3〜5メートルは川幅が狭まっており、それだけ釣竿に当たらずに下れる流れが限られてしまう。 というか今日は釣竿の無い流れは皆無に等しい。よし瀬があるぞ、と思うと必ずそこには両サイドからニョキニョキと釣竿が数本伸びている。

 しかたなしに瀬を迂回して浅瀬を行くとカヌーを漕ぐだけの水位が無くやむなくライニングダウンするはめに。カヌーを降りてロープで引っ張って下る通称「ポチの散歩」と言われるパドラーとしては非常に楽しくない行為である。

「ポチの散歩」が出来る所はまだ良い方で更に水深が無いとか釣師が林立していると今度はカヌーを担いで川原を歩かないといけない。午前中の2時間半は実に8割をこうした回避行動に費やされてもうクタクタである。


 だんだんこちらも気が立ってくる。温厚なM田さんはもう釣師と見るやすぐに川原に上陸して回避行動にでるが回転性の良いプレイボートの僕は何とか流れを行こうとするものだから釣師とのイサカイが絶えない。こちらは一瞬で通り過ぎるので勘弁してと言う気持ちで漕ぎ抜けようとする。何人かの釣師は迷惑そうな顔、もしくは罵声を発するが喉元過ぎればといったところか、釣り糸を引っかけさえしなければトラブルには発展しない。一度だけ絡んでくるオジサンがいたので遣り合った。ここでカヌーをするなと言うのだ。

「川はみんなのモンでしょう」

  と、なんだか環境保全ポスターの標語のようなことを口走る僕。すると

「こっちは漁業権で守られてンだ!」

  と来たときゃカチンと来た。

「そりゃ魚を捕る権利やろうが! 川を独占すんのとはちゃうやろ!」

  つい関西弁が出てしまう僕であった。

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