EPISODE(番外編).
魚野川バトルツーリング!
第5章 戦いすんで・・・


 車回収の方法を検討していると、さっきのオジサンがタクシーの拾える近くの駅まで車で送ってやると言ってくれた。渡りに船、いや今日はその船(カヌー)が役立たずなので「渡りに船」ならぬ「川原に軽トラ」。オジサンの厚意に甘えさせてもらう。
 M田さんとTヶ崎君を残してabッチとふたりで農業用トラックの荷台に乗り込む。学生の時以来のヒッチハイク。川原の道を荷台でガタガタ揺られながらお互い真っ黒に日焼けした顔を見合わせて

「猿岩石だぁ!」

 と大笑い。なんだかハプニング、トラブルだらけのツーリングだけれども終わってみればなんともメモリアルな出来事だったと豪快に笑いとばしてしまう我々であった。

                             

 五日町のとある焼肉屋。7時間に及ぶバトルを終えた我々はひたすら肉を食らい、酒を飲み、大盛りメシをかき込むのであった。ここのメニューの「越後もち豚」がなかなかイケル。また単価が安いと注文した「ぶたバラ」がこれまた絶品。普段なら脂っこくて辟易しそうな「ぶたバラ」の脂身が疲れきった体にはとてもジューシーに感じられ五臓六腑に染み渡るような美味さであった。

 去年のツーリングの時は野営した際「ぶたのシャブシャブ」を作って食べた。そしたらabッチがこれを記念して(いったい何の記念だ!)、僕の艇を

「ぶたシャブ1号と名づけましょうよ!」

  と言っていたが、今年はこれを記念して(だから、何の記念だ!)

「もち豚1号にしましょう!」

  と。僕の愛艇なので今回もそんな名前は鄭重にお断り申し上げる。

 このメンツでのツーリングも今日で2回目。M田さんは去年のツーリングの後ライフジャケットを購入した。今年はいよいよカヌーを買おうかと言い出した。とくに今回乗ったシットオンのマリブが気に入ったようで

「これならガレージにも置けるし・・・」

  とかなり前向きに検討に入った様子だ。

  さて戦い終えてそれぞれまた別の戦場に散っていく我々。公務員のM田さん、Tヶ崎君は今は比較的楽かもしれないが、しがないサラリーマンの我々には、まさに怒涛の荒波が待ち受ける昨今の世相。出向中のabッチも女房子供を抱えて果たして無事に出向先から本社へ戻れるのか非常に心配している。今の職場で精一杯頑張って何か将来自分の武器になる技能を身につけるしかなかろうと励ましてみるのだが、そういう私にも東京からの不穏な波動が到来しつつあった。2年余りに及ぶ新潟暮らしにも、そろそろ別れを告げる日が近づいているのかもしれない。

 M田さんにカヌーを譲ることにする。新潟を離れるとなると3台もカヌーを置いておける環境にはそうそう住めないだろう。知り合いに乗ってもらえば、またどこかの川に集った時に再会もできる。こんど上京する際、車に積んでいくことにしよう。

 M田さんに渡った暁には「ぶたシャブ1号」だろうが「もち豚2号」だろうが好きな名前を付けてもらって結構である。


                   ・


  数日後、abッチから次は富士川でやりましょうと新たなオファが届く。東京以西のフィールドだ。東京に戻ることを察知してのことなのかどうかは知らない。住む場所が変ればまた違った川にも繰り出せるだろう。

 毎回毎回新たなフィールドに挑戦できるのがカヌーの楽しみである。また同じ川でも季節や気候条件でまったく違った表情を見せてくれる。魚野川もわずかひと月の違いでこんなにも違った体験をさせてくれた。


 人生もそうありたいものだ。
 いつもいつも初挑戦の繰り返し、初体験の積み重ねで、これからの人生が出来上がっていったら、ひょっとしてとても楽しいことかもしれない。

 
 恐れずに常に新しい川を求めまだ見ぬ瀬に挑もう。そして人生の瀬の中もパドリングを止めずに進んで行こう。



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