週刊ダイヤモンド(04.12.18号)
「保険・年金 最上の選択ープロが厳選 生損保46商品ー」
「最上の選択」への疑問

「プロが厳選」という毎度の企画です。
こちらも毎回、
こんな商品を選ぶFPのどこが「プロ」だ?
この商品ラインナップのどこが「厳選」だ?
毎回お勧めする商品が変わって何が「最上の選択」だ?
と突っ込んできたのですが、週刊ダイヤモンドの企画には全く影響がないようで。
というわけで、こちらも相変わらず、同じ突っ込みを、飽きずにまたやってみます(このHPを愛読いただいている方にとっては、目新しいことはないかも知れませんが)。

いきなり「あまたの”保険選び”は間違っている」といわれたら、「いいえ」と否定できる自信がある人は、そうはいないのではないでしょうか。
でも、この商品ラインナップから選んでも、ただ週刊ダイヤモンドに”丸投げ”するだけでしかありません。
そう、それは「保険会社の営業職員や代理店に丸投げすること」と同じですから(残念)。

「最上の選択」?
それにしても、言うに事欠いて「最上の選択」とは。
見る人が見れば、毎回この企画で紹介されるほとんどの商品は、そのときどきに生保が売りたい商品でしかないことは、一目瞭然なのですが(一押し商品と言うことは、まず一義的に、生保が儲かるからではないのでしょうか)。
そのお先棒を担いでいる評価者(FPで、しかも生命保険のプロらしいのですが)は、残念ながら、加入者の味方ではない様です(FPとして顔は売れていますが、生命保険に詳しいかどうか)。
また、出版社も毎回違った商品をお勧めしないと、雑誌も売れませんし。
唯一、評価者が素人(プロとまでは言えないまでも)でないということがわかるのは、TV−CMで皆さんにもすでに馬脚を現しているような商品を選んでいないということですか。

この企画では、まず「新しい商品がいい商品」と刷り込んでいるわけです(新しい商品は、「良く見える」ようには作られていますが、「見えるだけ」でしかないケースがほとんどです)。
それが証拠に、ずっと紹介され続けられている「ベストセラー商品」なんてものが、この企画では連続して取り上げられたことがないからです。
そもそも、この「最上の選択」を実行して、週刊ダイヤモンドやプロの評価者達は、責任をとってくれるのでしょうか。
そんなことはありません。
だからこそ、毎回、違った商品がプロによって紹介されているわけですし、あくまでも選択は加入者の「自己責任」でしかないわけです。
であれば、ここでいう「最上の選択」を実行しても、何ら発言に責任を持たない評価者に”丸投げ”するだけのことではないでしょうか(記事で、自信たっぷりに”丸投げ”を批判していても、実際はこの程度のことです)。

こう考えてくると、週刊ダイヤモンドが企画すべきは、「最上の選択」ではなく、「最低の選択」を企画することではないでしょうか。
それでこそ、”丸投げ”に対する回答になると思うのですが。
まあ、非常に優良な広告主である生保に喧嘩を吹っかけたくないとすれば、読者よりも広告主を優先した企画でも致し方ないと言うことですか(であれば、”丸投げ”を批判する前に、出版社の限界についてきちんと読者に断るべきでしょうが)。

商品ラインナップに偏りが?
さて、実際に「最上の選択」の選択肢となっている商品を見てみましょう。
商品は
死亡保障保険
医療保険
個人年金保険
の3つに分類されていますので、それぞれについてコメントしてみますと、次のようになります(それにしても、メリット・デメリットについてのコメントも、他と比較しようもない内容で、これでその商品の何が分かるのでしょうか)。

死亡保障保険
このラインナップは、あくまでも”お葬式代”としての死亡保障の商品ラインナップでしかありません。
私は、死亡保障には、
・お葬式代(死なないと使えないお金)としての役割
・生きている内に使える(老後の生活)資金(確定した金額)の確保としての役割
の2つの側面があると考えておりますが、このラインナップでは、そのうちのお葬式代(それもほとんどは「早死にしないと損」な保障)としての商品しか対象になっていません。
あるいは、唯一終身保険であげられている商品が「変額保険の終身型」では、やはり確保できるメリットはお葬式代を確保するだけのことでしかありません。
そういった意味で、このラインアップに取り上げられていない商品の中にこそ、「長生きしても良かったと言える死亡保障」があるといえることから、非常に偏ったラインナップと言うことがご理解いただけるでしょう。

ところで、死亡保障を「生きている内に使える(老後の生活)資金(確定した金額)の確保」という側面から考えると、今回の個人年金保険のラインナップの可笑しさ(生保の理屈でしか保険商品を考えていないこと)も見えてきます。
というのは、死亡保障保険と個人年金保険は、別々に用意しなくても済み、「生きている内に使える(老後の生活)資金(確定した金額)の確保」を念頭に死亡保障保険を選択すれば、何も保険料を別々に負担しなくてもいいからです。
そのうえで、「生きている内に使える(老後の生活)資金(確定した金額)の確保」を考える場合、まず優先しなければいけないことは、「確保」であり「予定していた額(価値)より減らないこと」があげられます。
勧める方も、話を聞く方も「増えること」をつい優先しがちですが、「老後の生活資金の土台」にすべきお金なら、「予定していた額(価値)より減らないこと」を第一に考えるべきでしょう(したがって、インフレに対応できない「無配当」の終身保険も、現時点では選択肢となりません)。
この点からも、元本すら保証されない変額ものや外貨建てものは、投資として余裕資金を充てるにはいい対象かもしれませんが、死亡保障保険であろうと個人年金保険であろうと、「老後の生活資金の土台」にすべきお金なら、変額ものや外貨建てものは不適格であり、選択すべき商品ではないといえるでしょう(この部分を商品選択の基準としていないため、ラインナップが何でもありになってしまっているわけです)。

医療保険
医療保険のラインナップを見て感じることは、シンプルな医療保険(入院したときに「差額ベッド代」で困らないように準備する)よりも、複雑なもの(入院したら「得」ができる、金利が上がれば保険料が下がる等)の方が、医療保険の主流になっている点です。
ただし一般的には、仕組みが複雑・多い商品であればある程、「安くていい保険(=うまい話)」に見えると勘違いしがちな点に注意が必要です。
入院するリスク(それも年齢別の)や、3大成人病などの罹患率など、数値を把握して冷静に考えれば、「安くていい保険(=うまい話)」がないことは理解できるはずです。
ところが、なぜか仕組みが複雑になればなる程、「自分はきっと給付を仕組みどおり受け取れるはず」「一番うまい形で給付金を受け取れるはず」という、根拠のない自信で、商品内容を勘違いしてしまいがちです(一番思い通りに給付が受けられなかったとき、それを基準にしなければ、本当に役に立つかどうかわかりません)。
また、それが自分のニーズだと勘違いする結果にもなってしまいます(「自分のニーズに適合した商品選び」といいますが、皆さんはシンプルなニーズではなく、欲張りなニーズに適合した商品選びになってしまいがちです)。
むしろ、1入院の上限が120日以上であるかどうか、60歳あるいは65歳(定年になる前に)で保険料の払い込みを完了できるかどうか(もちろん、保険料のアップがあるものなどは不可)、最低限この基準をクリアしたものをラインナップすべきだったでしょう。

さらに、医療保険はあくまでも保険プランの枝葉でしかありません。
どんなに医療保険をいいものにできたとしても、所詮、医療保険は次の理由から、払ったなり以上には、なかなか役に立ってくれないからです。
1.インフレに弱い(インフレにより給付金額の価値が陳腐化する)ため、せいぜい20年先くらいまでしか見通せない。
2.死ぬまでに必ず元(保険料の総額)を取って死ねるわけではない。
3.入院するか手術を受けないと現金になってくれない(病気をしただけでは、役に立たない)。
4.保険料が安いものは、安いなりにしか役に立たない。
5.60歳を過ぎてからようやく役に立ち始める。
6.差額ベッド代の補完以上の期待はしない(どんな医療保険に加入しても、手元に現金を確保しておくことが必要)

人間は必ず死にますが、それくらいしか「必ず」とはいえません。
その次に確率が高いのは、老後を迎えることで、ようやくその次くらいに「病気で何日〜数十日入院する」ことが続くでしょう。
ただし、入院は何日できるかは決まっていませんから、入院すればOKなのではなく、一般的な医療保険の場合200〜300日くらい入院をしないと、元が取れません。
つまり、本来確保すべき保障は、「入院したら」ではなく、「何歳で亡くなっても受け取れる死亡保障=老後を迎えたら確定した現金となる保障(ただし、個人年金とは限りません)=病気になったときに使えるお金」であるはずのなです。
ただ、皆さんは、「何かになったら、いくらもらえる」が保険だと思っていることと、死んだ後にもらうよりも生きていてもらえるもの(もっとも、入院・手術をしないと医療保険は役に立ちませんが)を、またそれに合致する保険商品が単純に「医療保険」だと思いこまされているため、医療保険探しを続けることになる訳です。
繰り返しますが、であるなら、医療保険選びが大切なのではなく、老後に現金として使える保険(個人年金に限りません)を選ぶ方が重要だといえるはずです。

医療保険のまとめです。
以上の点から、
・入院したら(よけいな、○○になったらがないもの)
・1入院の上限が120日以上
・保障は85歳〜終身まで確保できている
・保険料の払い込みが60歳(65歳)で完了する
・貯金もできるような保険料水準
の基準をクリアしたものであれば、十分なのではないでしょうか。
残念ながら、今回のラインナップでは、ぴったりという商品はないようですが(取り上げられている生保自体には、ぴったりの商品はあるはずなのですが)。

個人年金保険
死亡保障保険のところで、だいぶ老後の生活資金についても触れましたので、ここではさらりと考えてみます。
今回のラインナップは、ほとんどの商品が、受取金額が確定していない(元本割れのリスクが、リターンの確率と同程度あるうえに、手数料も必要な)商品です。
あるいは、確定しているものでも、一時払いの商品だってりして、そういった意味では「個人年金保険」のラインナップというより「投資(元本割れのリスクや手数料が必要)商品」のラインナップとなっています。
ここで重要なのは、一番うまくいった時を想定するのではなく、一番うまくいかなかったところから想定しないと、老後に泣きをみるということです。

これだけみると、投資商品でない個人年金では、老後の生活資金も準備できない、と勝手に思いこみそうですが、それは間違いです。
この
「”個人年金”と”終身保険” 選択のポイントは?」をご覧いただくとわかりますが、わざわざ元本割れのリスクがある商品を選ぶ必要はありません(余裕資金なら投資商品を選んでもいいでしょうが、老後の生活費の土台にしたいのなら、変額、外貨建て、一時払いは不可です)。
個人年金がだめなら、終身保険(商品を選ばなければいけません)で老後の生活費(それも価値が確保できるように)を準備すればいいのです。
それであれば、驚くほどうまい話でないにしても、少なくとも預貯金よりは高い利回りを確保することが可能です(もっとも、長期の運用になりますから、利回りが高くなるのは当然ですが、投資商品は長いこと資金を塩漬けにしても必ず収益が増すということすら確定できないわけですから、決して当たり前の話ではありません)。

ちなみに、変額や外貨建ての商品の場合で、元本保証ものを選択するなら、そもそも変額や外貨建てでないものを選ぶべきでしょう。
元本保証を年利回りに置き換えると、ちっとも魅力的ではありませんから(20年以上の運用で元本の110%を確定できても、年利回りは0.5%です)。




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