「生保 安心度ランキング」 ー”経営分析5項目”への疑問ー |
「週刊ダイヤモンド」に続いて、こちらも毎度の企画です。
そのうえ毎回、
●ランキングの基となる「5項目」が、指標として最適かどうか(まるで、経営分析をS&Pのアナリストが担当したことで、この5項目に箔をつけているように見えますが、いかがなものでしょう)
●そのうえ、その「5項目」に入れ替えがあり、継続性がない
●”この「安心度ランキング」は定量分析に基づいており、定性分析を加味した格付けも参考にしていただきたい”とは、独自ランキングの意味がないのでは
と突っ込んできたのですが、週刊エコノミストの企画には全く影響がないようで。
というわけで、こちらも相変わらず、同じ突っ込みを、飽きずにまたやってみます(このHPを愛読いただいている方にとっては、目新しいことはないかも知れませんが)。
なお、詳細は「週刊エコノミスト04.12.21号」をご覧ください(バックナンバーも購入できます)。
■「経営分析5項目」の?
そもそも、毎回のように、この5項目が入れ替わること自体おかしいと思うのですが、その5項目自体も、何でこの5項目?、どこかの生保に有利な指標をピックアップしてるのでは?と、勘ぐられかねないような内容で。
とくに疑問な項目について、考えてみます(あくまでも、エコノミスト「何をもとにランキングしたか」の解説に基づいた考察です)。
●有価証券含み率
そもそも生保がバブル後苦しんだのは、それまで株価の含み頼みの経営を行っていたからではないでしょうか。
またぞろ、株価が上昇基調にあるこの時期に、株価の含み頼み経営を安心度ランキングの項目に追加するとは、”喉元すぎれば熱さを忘れる”とは、まさにこのことでしょう。
もう一つ、この指標で理解できない点ですが、”「満期保有目的の債券」「責任準備金対応債券」の含み損益を帳簿価格と同額と固定することで、これらからは差損益が生じないことを前提にして算出した”とすると、どう考えてもALM(資産・負債総合管理の合理的な手法)による資産管理を行っている生保より、株価の含みで凌いでいる丼勘定の生保の方が、ランキングがよくなりかねないと思うのですが、いかがでしょうか。
これでは、むしろこのランキングがいい生保ほど、経営が不安定といわれかねないでしょう。
●基礎利益率
基礎利益を一般勘定で割った数値。
解説の通り、基礎利益が、利差(予定利率と運用利回りの差)、費差(想定した経費と実際にかかった経費の差)、死差(予定死亡率に基づく保険料と、実際に支払った保険金との差)の合計にほぼ等しいということであると、次の点で疑問が生じかねません。
まず、三利源(利差、費差、死差)の商品は、多めの保険料を預かって、余りを配当として契約者に還元する仕組みとなっている訳ですから、三利源の商品を販売していない外資系・損保系生保の基礎利益が、三利源の商品を販売している生保より、基礎利益、基礎利益率とも少なくなってしまう傾向があるのは当然といえるでしょう。
ランキングをみても、大手生保が上位にきているのは、その理由からでしょう。
ただ、外資系の中でも上位にきている生保がありますが、この場合は、想定した経費よりも実際の経費が大きく下回っていることも関係しているのかもしれません(残念ながら、無配当の場合、配当といった還元システムがありませんし)。
競争相手がいなかった(正確には、米国の介入により、日本の生保が販売させてもらえなかった)頃に販売した第3分野の商品が、金の卵になっているということでしょうか。
図らずも、そんなことが勘ぐれるとは、想定外の効果です。
●保有契約高伸び率
1998年3月比での第3分野を除いた保有契約高の伸び率とのこと。
このランキングをみて気がつくことですが、アクサは急増、アクサグループライフ生命(旧日本団体生命)は急減(半減)。
ということは、単に旧日本団体生命の契約をアクサ生命に移した(旧日本団体生命の契約を解約させて、アクサ生命に加入させる形で)ということではないのかということです。
本当にそうなのかどうかは分かりませんが、一見してそんな疑問がでるようなランキングにするのであれば、その辺はきちんと調整すべきでしょう。
また、98年3月でなくても、2004年3月末と比較しなくても、と思うのは私だけでしょうか。
ちなみに、2004年3月期(第3分野を含む)と比較すると、以下のようになります。
ところで、そもそも、2004年3月期と比較して、保有契約高がマイナスになっている生保をランキングの上位に持ってくる感覚はいかがなものでしょうか。
プラスグループとマイナスグループを分けた上で、そのグループ内でランキングすべきだったのではないでしょうか(補正ランキング参照)。
<2004年3月期比> <1998年3月を100とした場合>
1.三井住友海上きらめき 110.0% 1.アクサ生命 +1678.1%
2.アクサ 107.9% 2.東京海上日動あんしん +343.3%
3.アリコ 107.6% 3.三井住友海上きらめき +302.1%
4.オリックス 106.5% 4.プルデンシャル +118.0%
5.アメリカンファミリー 106.2% 5.損保ジャパンひまわり +104.1%
6.ING 105.2% 6.ソニー +99.3%
7.東京海上日動あんしん 104.7% 7.オリックス +99.2%
7.損保ジャパンひまわり 104.7% 8.アリコ +91.7%
9.プルデンシャル 104.3% 9.ING +90.1%
10.太陽 102.8% 10.アメリカンファミリー +89.7%
11.ソニー 102.7% 11.太陽 +9.3%
12.大同 100.4% 12.富国 +4.1%
13.富国 99.9% 13.大同 +0.3%
14.第一 98.0% 14.第一 ▲19.5%
15.日本 97.8% 15.日本 ▲23.4%
16.住友 97.4% 16.住友 ▲25.2%
17.明治安田 97.3% 17.明治安田 ▲26.8%
18.三井 97.0% 18.三井 ▲32.4%
19.朝日 95.2% 19.朝日 ▲39.9%
20.アクサグループライフ 94.0% 20.アクサグループライフ ▲50.3%
■「定量分析」の?
まとめとして、”この「安心度ランキング」は定量分析に基づいており、定性分析を加味した格付けも参考にしていただきたい”ということなので、念のため、安心度ランキングと格付けと比較してみました。
併せて、2004年3月期比で保有契約高がプラスとマイナスでグループ分けをした上で、<補正ランキング>も考えてみました(赤字の生保は、2004年3月期と比較して保有契約高が減少した生保)。
補正をすると、格付け(S&P)に近づいてきて、据わりがよくなることからも、安心度ランキングの総合順位を鵜呑みにするのは、個人的には”いかがなものか”と思わざるを得ません。
なお、ソルベンシー・マージン比率に関しては、「”保有契約高の増減”と”ソルベンシー・マージン比率の増減”の相関関係」をご参照ください。
<総合順位> <総合順位(補正)> <格付け(S&P)>
1.アメリカンファミリー 1.アメリカンファミリー 1.アリコ (AAA)
2.ソニー 2.ソニー 2.アメリカンファミリー(AA)
3.日本 3.三井住友海上きらめき 3.ING (AA−)
4.三井住友海上きらめき 4.アクサ アクサ
5.アクサ 5.大同 アクサグループライフ
6.明治安田 6.東京海上日動あんしん プルデンシャル
6.大同 7.損保ジャパンひまわり 東京海上日動あんしん
8.第一 8.アリコ 損保ジャパンひまわり
9.東京海上日動あんしん 9.ING 9.日本 (A+)
10.損保ジャパンひまわり 10.プルデンシャル ソニー
11.アリコ 11.太陽 11.太陽 (A)
11.ING 12.アクサグループライフ 大同
13.富国 13.オリックス 13.第一 (A−)
14.プルデンシャル 14.日本 富国
15.太陽 15.明治安田 15.明治安田 (BBB+)
16.アクサグループライフ 16.第一 オリックス
16.オリックス 17.富国 17.住友 (BB+)
18.住友 18.住友 18.三井 (BB−)
19.三井 19.三井 19.朝日 (CCC+)
20.朝日 20.朝日 (格付けなし)三井住友海上きらめき
※記述間違いなどについては責任を負えません。必ずご自身でご確認ください。
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