あんしん配達通信マガジン(月刊)


★週刊誌の生保ネタいろいろ

もう1月も終わりですが、ようやく2003年第1弾です。
今回は、最近発売された週刊誌上の生保記事について、検討してみます。

■週刊朝日1/31号

まずは、週刊朝日1/31号の「ムダな生命保険を見抜けー保険見直しで総払込保険料が1590万円下がったー」についてから。

1.総払込保険料1590万円を下げることが、いい保険プランの条件とは限らない

紹介されている事例では「早死にしないと損」なプランに加入していた人に、「早死にしないと損」な割合(つまり、掛け捨てになる保険料のことですが)を引き下げることで、総払込保険料を下げたという話になっています。
たしかに、事例のそれまで加入していたプランはムダなプランだったと思いますが、私にいわせれば、その後のプランも、保険料の払い込みが終わった後にそれほど役に立たないという点では、五十歩百歩で、たいした違いがあるように思えません。
それは、見直し後のプランが、しょせんは「長生きしてよかったといえる保険プラン」とは言えない内容だからなのです。
つまり、保険料のムダは、役に立たない保障に支払う保険料であるわけで、何も闇雲に保険料を安くすれば保険料のムダが少なくなるわけではない、ということなのです。
したがって、この1590万円も負担を減らしたからいい保険プランになったというのではなく、本来は老後に役に立つ保障に払うべき保険料まで減らしてしまったとしたら、この見直しはおそらく「早死にしないと損」なままで、何ら根本的な解決にはならなかったといえると思います。

2.予定利率のいいものは、いい保険

これについて詳しいことは、HPの方をみていただきたいのですが、単純に予定利率がいいものはいい保険といった方が簡単なのですが、それは加入している保険プラン次第なのです(予定利率だけで、良い悪いを判断することはできません)。
あと、払い済みという選択肢も最後の切り札でも、とっておきの方法でもありません。
あくまでも、そういった方法もあるという選択肢の一つです。
ご注意ください(もっとも、そんなことすら生保のおばちゃんはアドバイスしてくれず転換しか勧めなかった、ということからすれば、生保知識的には大きな進歩ではありますが)。

3.こんなに違う保険料ー生保33社徹底比較ー

まずは、保険料が安いということは重要ですが、会社の安全性も重要です。
安いからといって飛びつかないようにしてください。
また、終身保険の場合は、解約返戻金の額や解約返戻率(いずれも保険料払い込み終了時で比較するのが妥当でしょう)も比較しないと、本当に安いのかどうか分かりません。
なぜかといえば、終身保険は「死ななくても役に立つ死亡保障」だからなのです。
それが、死亡保障に対しての保険料のみで比較しても、本当の終身保険のメリットの比較にはならないわけです。
簡単に言えば、保険料が安ければ解約返戻金が貯まらないということにもなるわけですから、保険料の安い高いだけ比較しても意味がないのです(ただ、安くても貯まるものもあるので、早合点しないでください)。
しかも、配当についてその役割の意味も解説されていませんから、安くていいから無配当でもいいということで選択した場合、インフレになったときなどに有配当や利差配当と、無配当では大きな違いが出てしまい、あとでびっくりすることでしょう。

■週刊ポスト1/31号

次は、週刊ポスト1/31号の「生保”妻が受取人”は税務署の思うつぼ」です。
これは立ち読みなので、もしかするとちょっとポイントがずれているかもしれませんが。
この見出しを電車の中吊りなんかでみたら、びっくりするはずですが、どうでしょうか?
通常の契約パターンは、契約者と被保険者が夫(契約者自身)なら、死亡保険金の受取人は妻(契約者の配偶者)のはずです。
こうすれば相続税の対象となり、所得税の扱いや贈与税の対象となるより、一般的な財産の家庭なら、ほとんど税金(相続税ですが)を払わないですむからです。
ところが、「受取人が妻」では税金が損をする、これは大変だ、そう思いますよね。

でも、ご安心ください、この記事は養老保険の満期金についてのみ通用する話なのです。
養老保険の場合は、死亡保険金受取人と満期保険金受取人を指定するのですが、この「満期保険金受取人」を死亡保険金受取人同様「妻」にすると、満期金が贈与税の対象になるという話なのです(満期保険金受取人が夫なら一時所得の扱いになり、一般的な場合、贈与税より税額は少なくてすみます)。
ということで、あわてて「死亡保険金受取人」をわざわざ「夫」に変更しないように。
とはいえ、死亡保険金の受取人を夫(契約者自身)にすることは、通常は無理ですから変更しようにも変更できないのですが。
変更したいといわれた生保の担当者もきっと驚くでしょうし、人騒がせな、意味のない記事ですね(ただし、養老保険の満期金受取人を「妻」にしていた、ほんのわずかな人たちにとっては、とても意味のある記事ですが)。
いずれにしても、深みのない記事で、こんなものを頭から信用したら、とんでもないことになる、ということだけは確かなようです(ページ数の制約もあるでしょうが、編集部の生保についての認識も低レベルであるということは確かなようです)。




★医療保険についての一考察

今回は、HP(「2003年4月からの医療費負担」です)からの使い回しです。
が、医療保険についての基本的な勘違いは、この内容でかなり解消できると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

■ 入院が心配だから「医療保険で十分」の落とし穴

医療費の負担が、2003年4月から変わる予定です。
それにより、これまでより医療費の自己負担額がアップすることになります。
とくに、70歳以上の方の医療費は、下記の表

http://www4.plala.or.jp/anshin/iryouhifutan_2003_04.html

をご覧いただくとお分かりのように、70歳未満の方よりもアップ感が強くなっています。

ただし、それだからといって「終身の医療保険」に加入しなければいけないのか、といえば決してそうではありません。
なぜなら、医療保険には次の点で、弱点があるからです(あるいは、医療保険に逃げた方が安上がりだと思いこんでしまうと、あとで気が付く落とし穴)。

それにしても、日経が医療費アップのニュースを報じた翌日の紙面で、医療保険の提灯記事を掲載するなんぞは、マッチポンプの典型例といえましょうか(「失敗しない医療保険選び」なんてことを記事にするのであれば、医療保険だけで、数十年後の老後の医療費の不足をきちんとカバーできるのかどうか、といったポイントから解説すべき。今回の記事では、医療保険に対しての下記のような懐疑はほとんど述べられていない)。

● そもそも保険料は、働けるうちに負担して、保険が本当に役に立つ老後には負担が残らないようにすべき

終身払いは、最終手段で、最初からの選択ではないのに、日経の記事は10年更新型と終身払い型の選択肢しかないかのような内容である。
終身医療保険で60歳払いという選択肢があることを知らないのか、そもそも例に取り上げていたオリックス生命にそのような商品がいないのか。お粗末の一言。

● 入院しなければ、医療保険の保険料は、結果として掛け捨てになる

掛け捨てでない、といっているTV−CMの場合、保険料の一部分でも戻せば掛け捨てではないという考えからあのように宣伝しているが、本来の「掛け捨てではない」という意味ではない。
払った保険料の100%以上が戻ってくる場合以外は「掛け捨てではない」という文言は使うべきではない。
しかも、入院もかなりまとまった日数をしないと、元が取れない(損益分岐日数がある)。

● 自己負担額がアップしたといっても、不足するもので心配なのは「差額ベッド代」である

そもそも健康保険の対象になる治療や入院の自己負担は所詮3割で済む訳だから、それ以上に心配なら、貯金をしましょう。

● 終身といっても、入院日数の通算がある(一生涯の入院が確保できるわけではない)

一生涯とか、90歳でも100歳でも入院保障が続くかのようなTV−CMは、その内容自体がおかしい。
100歳でも保障が役に立つとアピールしたいのなら、せめて100歳になったときに、まだ通算日数(730日とか1000日とかですが)を超えた入院給付を受け取っていない場合、という条件を明示すべき。

● 1入院の上限が60日の医療保険の場合、老後に役に立つのか?

1泊からの入院給付よりも、1入院の上限が120日あるいは360日の方が、老後は役に立つはず。ちなみに、脳梗塞の平均在院日数は119.9日。
また、1入院上限を考える場合で、実際はそんなに長く病院が入院させてくれないから60日で十分と思っているのなら大間違い。
通常は半年間空けた入退院でないと、1入院の継続と見なされるため、例えば、転院した場合でも1入院の継続と見なされる。
ということは、病院が長く入院させてくれないという理由で、1入院の上限を60日に短縮すること(それも1泊からの入院給付が出ると言うことと引き替えにして)は、老後の心配をカバーできない、あるいはリスクを大きくしてしまうことになってしまうのではないか。
逆に、老後の入院で考えるなら、1泊で終わる入院がどれほどあるだろうか。
日帰り手術が増えるのではと言う質問については、そもそも手術給付は現時点でも入院が要件ではないので、日帰り手術であっても、給付の対象になる手術であれば、手術給付が受けられると言うことで、十分な答えになる。

● パンフレットに記載されている数字(傷病別入院患者の1日当たりの医療費など)は、自己負担の額でない場合が多い(パンフレットには、そのような断り書きが小さく記載されている)

つまり、実際の自己負担は、パンフレットに記載されている金額よりももっと少なくなる場合がほとんどである。

● 40年後、50年後、インフレによって入院給付額が陳腐化する恐れが非常に高い

かといって、それに合わせるために、入院給付額を多くすることは、結果として保険料のアップにつながり、掛け捨ての保険料が多くなってしまうリスクを背負い込むことになる。
つまり、医療保険だけでは、必要な保障は入院だけというニーズには、老後に関して言うと応えられないと言うことになる。
どうするかといえば、医療保険の保険料だけではなく、それにプラスして、貯金するか、終身保険(ただし、「無配当」のものを選択してしまうと、インフレに対応できないが)を土台にしたプランにするしかない。
終身保険は、保険料の払込終了時に解約しても、払った保険料とほぼ同じ金額の解約返戻金が貯まる点がポイント。保障と貯蓄は別といっているFPがいるが、それは貯蓄ができるとおばちゃんにだまされて掛け捨ての保険プランに加入してしまった人へのアドバイスである。
また保障と貯蓄は同じものではないが、保険料を無駄にしないようにプラン(終身保険の割合を大きくする)を設計すると、最終的(長生きしたときに)に掛け捨てとなる保険料の割合を大きく引き下げることも可能(TVのコンサルティングに出てくるFPは、そんなややこしいことを言わずに、いくら保険料を安くできたということをアピールするが、それは老後に役に立たないような内容にしただけのこと)。

結果として、皆さんの保険選びは、老後に如何に役に立たせるかではなく、加入したらすぐにどんな得ができるのか、ということでしか選択していないと言うことではないでしょうか(それを否定するわけではありませんが、それだけでもありませんよね)。
また、安くて良い保険があるのでは、という青い鳥を追い求めて、結果として安ければ安いほど良い保険という選択になっていないでしょうか(そう思うように生保がし向けているのですが)?
生命保険は老後にこそ役に立つ、そして老後に役に立つようにするには、ある程度の負担が必要となる、これを忘れないようにしましょう。
・お得
・無駄
・安い
・一生涯
・我が社ならある
・医師の診査がいらない
この手の甘言に惑わされないようにしましょう。

以上、ポイントを上げてみました。
ようは、あのような提灯記事や、盛んに流されているTV−CMには騙されないようにということです。


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