生保標準生命表 2007年 ー 改定で、本当に保険料は下がるのか? ー |
生命保険料算定の基礎数値となる”生保標準生命表”が、11年ぶりに改定される予定です(保険料への反映は、2007年4月頃の予定)。
すでに、その改定内容から推測し、保険料の引き下げなどが雑誌などで取りざたされていますが、実際はどうなのでしょう。
(社)日本アクチュアリー会が金融庁へ提出した内容を見た限りでは、むしろ保険料に引き下げよりも、引き上げにつながる要素が多いように感じられます。
もっとも、「長生きしたときにこそ役に立つ保障」に限定した場合は、という但し書きつきですが(「早死にしないと損」な保障、つまり掛け捨ての死亡保障などは、引き下げられる可能性が高いと考えられます)。
例えば、週刊朝日「『定期保険』契約は来年4月まで待て」(2006.11.10号)では、FPの藤川さんが改定による保険料の変化を試算していますが、その内容を見ても
・定期保険の保険料の引き下げ(ただし、30歳代前半は、アップの可能性も)
・終身保険は保険料は、下がっても2%程度
・年金保険料、とくに終身年金の保険料は、大幅にアップ
となっており、「来年4月まで待て」というタイトルほど、待つ必要がない内容になっています(ちなみに、「来年とは“2007年”、つまり今年のことですから、お間違いなく」)。
また、保険料の引き下げ幅が、思ったよりも大きくないと予想される理由を挙げてみます。
- 前回の予定利率引下の際、生保は、保険料アップ幅が大きくならないように、かなり無理な保険料設定を行っている可能性があるため、今回の「生保標準生命表」の改定では保険料の引き下げを行いにくい
- 仮に、保険料自体が引き下げられても、生保はそれを補うために、不要な特約などをセット(上乗せ)した商品を開発して販売する可能性があるため
- 仮に、保険料自体が引き下げられても、生保はそれを補うために、不安を煽って不要な保障額上乗せしたプランをお勧めする可能性があるため
ちょうど良いタイミングで、アリコから「主力3商品の保険料改定の実施について」が公表されましたので、その内容から、生保の対応の傾向を見てみましょう。
http://www.alico.co.jp/about/press/07_0117.pdf
契約日が2月2日以降となる、下記の商品を改定するという内容ですが、ようは、これ以外の“掛け捨てではない死亡保障”商品は、保険料を引き下げ出来ないと言うことなのでしょう。
併せて、顧客に買い控えをさせないために、保険料の引下げ可能な商品を先行させて、発表したと言うことではないでしょうか(もちろん、他生保を出し抜く意味もあるでしょう)。
ところが、改訂後の保険料は確かに引き下げられているのですが、例えば、次のように商品の選択によっては、改訂前の他生保の保険料の方が安い例もあり、引き下げ効果が大きいとまでは言えないようです。
<前提条件>
・加入年齢 30歳、男性
・保険金額 1000万円
・払込年齢 65歳
アリコ“積立利率変動型終身保険(市場金利連動型)” 他生保“5年ごと利差配当付終身保険” 他生保“5年ごと利差配当付低解約返戻金型終身保険”
改定前 改定後 改定前 18,600円/月 18,240円/月 18,640円/月 15,450円/月 97.1%(2.9%の引下げ) +400円(対改定後) ▲2,790円(対改定後)
ところで、標準生命表を見ると、一番、今回の改定の恩恵を受けられるのは、20歳未満と言えそうです。
とすると、すぐに「学資保険」「こども保険」の保険料引き下げを連想し勝ちですが、これらの保険は、基本的にお子さんの死亡リスクでなく、お父さん(契約者)の死亡リスクで保険料が設定されています(お父さんの年齢によっては、むしろアップの可能性も)し、さらに保険料の過半を占めるお祝い金や満期金に充てられる保険料は今回の改定に余り影響しませんので、改定による効果はほとんどないと考えられます。
むしろ、こども共済等は、ダイレクトに掛金に反映されると思われますが、掛金の引き下げと言うよりは、保障内容のアップ(とくに死亡保障関係)や割戻しの増額といった形になると思われます。
以上、現時点で手に入る情報を分析してみると、
- 終身医療保険や終身がん保険などの保険料アップ(アップしたように見えないように、プランを作り直して、新商品として発売する可能性も。その場合は、これまであったメリットが減るか、これまでなかったデメリットが増えるかのどちらかですが)
- 個人年金の保険料アップ(とくに終身年金は、現時点でもかにゅうのいみがない)
- 終身保険の若干の保険料ダウン(ただし、解約返戻率のアップにつながらない可能性も)
- 掛け捨ての死亡保障(定期保険)の保険料ダウン
が、考えられますが、今年4月以降、生保会社としては、実態を伴っていなくても、保険料がダウンしたことを一生懸命アピールすることになるのでしょう(アリコのフライングを見ても分かります)。
なお、保険料には予定利率の変更の方が、はるかにインパクトがありますので、標準生命表の改定で盛り上がっても仕方ないように思います。
この辺は、マスコミ自体が生命保険に詳しくないために、生保のニュースリリース通りに、提灯記事を書いているからだと思います。
予定利率については、下記からどうぞ。
■ 生保標準生命表(死亡保険用)の比較
|
|
■ 生保標準生命表(年金開始後用:死亡率)の比較
|
|
■ 第三分野生保標準生命表と死亡保険用の比較
|
|
出所:(社)日本アクチュアリー会
5歳刻みの年齢で抜粋
http://www.actuaries.jp/info/seimeihyo2007_B3.pdf
■HOME■ 生命保険のコンサルティング あんしん配達通信 |
毎週水曜・木曜・土曜・日曜 「無料 生命保険コンサルティング」 実施中(神田小川町・町田) |
あんしん配達通信 Blog版 |
|