証券分析のポイント いろいろ
自分でできることもある
生命保険に加入する際、その内容を十分吟味して加入している人はあまりいません。
通常は、勧められるままに、何となく申込書に印鑑を押しているのが現状です。
保険の内容についても、一方的にそのプランのメリットの説明を受けるだけで、生命保険の三大比較ポイントである
保険金額(保障額)
保険期間(保障期間)
保険料(払込満了までにいくら払うか)
については、言われるままに納得させられているのではないでしょうか。
しかし、生命保険は車を買うより高い買い物です。
今すぐ保険の見直しをしようという方はもちろんのこと、見直しを考えていない方にとっても、自分が加入している生命保険の内容を理解しておくことに損はありません。
そこで、ここでは項目別にチェック・ポイント列挙してみました。
これが証券分析のすべてではありませんが、このポイントを調べることで大まかに、自分の思っていた内容と実際の内容のギャップがあるかどうかは判断できるはずです。
さらに詳しいことが知りたければ、問題点がはっきりしているわけですから、専門家に聞くことも難しくないはずです(私もアドバイスできることがあります)。
それでは、生命保険の証券または設計書をお手元に、どうぞチェックしてみてください。
転換の有無を確認するには
・契約日
自分が加入したと思っている年月日より、新しくないか?
例えば、保障内容をよくするために、というフレーズで転換されている
場合があります(転換のデメリットについてはこちらへ)。
会社に入社したときから加入しているはずなのに、契約年月が変わって
いたら、転換している可能性大です。
・保険金額(保障額)の内訳
終身保険や定期特約の保険金額(保障額)の記載されている欄に、括弧
書きで「(うち転換価額○○○万円)」と内訳が併記されている場合に
は、転換をしたものと考えられます。
・解約返戻金の金額
解約返戻金の額の記載がある証券である場合で、1年目の解約返戻金が多
い場合には、転換をしていると考えられます。
通常、解約返戻金は1年目でしたら、数千円か数万円あるかどうかです。
それが、1年目にかなりの金額が立ち上がっていたら、転換をしたと考え
られます。
ただし、生保会社によっては、転換によって生じる解約返戻金について
は、証券の解約返戻金欄に記載をしないことをうたっている場合もあり
ますので、証券の細かい字もチェックが必要です。
課税のされ方を確認するには
生命保険金(死亡保険金)には、税金がかかります。
契約者、被保険者、保険金受取人を、課税のことを考えずに設定してし
まうと、同じ保険金で税金の額がものすごく違ってしまいます。
一般には、相続税の対象になる場合が、一番税金がかかりません。
逆に、贈与税、所得税(一時所得)の対象になると、思わぬ高額な税金
が課せられる事になりかねません。
次の表は代表的な例です。
見分けるポイントとしては、契約者と保険者が同一人で、受取人は契約
者の法定相続人(妻や子)である場合でしたら、一般的にはOKです。
それに該当しない場合には、死亡保険金が額面どおり受け取れない事に
なってしまうことになる可能性が大です。
税金区分 契約者 被保険者 保険金受取人 相続税 ご本人 ご本人 配偶者または子供 所得税 ご本人 配偶者 ご本人 贈与税 ご本人 配偶者 子供
保障内容を確認するには
・保険種類
保険種類の欄を確認します。通常は「定期特約付き終身保険」と記載さ
れていますので「定期付き終身」であることが分かります(ただし、単
に「終身保険」と主契約の保険種類が記載されていることもあります)。
保険期間の欄を見て「終身」と記載されているからと言って、「定期特
約(掛け捨てとなる保障の)部分」がないわけではありませんので、き
ちんと保険種類の欄を確認しましょう。
・保険期間(保障の有効期間)
定期特約付き終身保険の場合で、更新型かどうかを見分けるには、保険
期間をチェックします。
更新型なら、「保険料払込期間」に記載されている年齢(または年月)
より短い期間(または年月)が記載されています。
逆に言うと、更新型の場合、定期特約の満期日は保障の終わりの年月で
はなく、定期特約が更新される年月となります(本当の保障の終わりは、
保険料の払込が終わる年月です)。
入院など他の特約も、同様とお考えください。
・保険金額(保障額)
実がこれを証券から読みとるのが難しいのです。
一番の原因は、図示されている場合、終身保険と定期特約の保険金額の
比率が実際の保険金額を反映しない図となっている点です。
これで早のみこみしてしまうと、正しい保険金額をイメージすることが
できません。
例えば、終身保険が100万円で、定期特約が4900万円の定期付き終身で
あっても、図では1:1くらいのの比率で示されているのではないでしょ
うか。
本来なら、1:50でないと正確な図とは言えません。
2番目の原因は、病気死亡と事故死亡の金額の違いがわかりにくいと言
うことです。
事故で亡くなる確率は非常に少ないので、本来でしたら病気死亡の金額
のみを図示すべきなのですが、保険金額が大きい方が有り難みがあるた
め、このような記載をしているのでしょう。
終身保険の保険金額は、一番少ない金額で図の右下あたりに記載されて
いることが多いようです(もっとも目に付きにくいあたり)。
一番大きな保険金額は、事故で死亡した場合の保険金額です。
次に大きな金額が、終身保険と定期保険特約を合計した金額です。
もっとも、小さい金額が終身保険の金額です。
ただし、これだけでは収入(生活)保障特約の保障額が抜け落ちてしま
う恐れがあります(定期保険特約と同じように、これも掛け捨ての保障
です。このような記載だと掛け捨ての保障額が小さく見えるのです)。
収入(生活)保障特約は「年金額○○○万円を20年間給付(保証期間10
年)」といった保障内容となっていますが、保障額を考える場合には、
年金額○○○万円×保証期間=収入(生活)保障特約の保障額
とします(便宜的な考え方ですが・・・)
もっとも年金額と言う記載の仕方も紛らわしいですね。人によってはこ
の年金額と言う文言を個人年金の年金額と勘違いして、死亡時に給付さ
れるものと考えず、老後の生活資金にできるものと思いこんでいる方も
いらっしゃいます)。
・特約の満期日(更新の時期)
皆さんは、特約の保障(定期特約だけでなく、入院関係の特約なども更
新されます)も、加入して保険料を払い終わるまで同じ保障が続くもの
と考えていらっしゃる場合が多いでしょうが、実は定期保険特約と同じ
に10年(または15年)ごとに更新する契約内容になっていることが普通
です。
この場合の更新時期が、特約の満期日となります。
ちなみに、定期保険特約や特定疾病定期特約、収入(生活)保障特約な
どの満期は保険料払込年齢以上にはできない場合が多いようです(定期
特約付き終身保険にセット販売されている場合)。
つまり、60歳で保険料の払込が終わる契約の場合、定期保険特約は更新
したくても60歳を超えて更新することはできないと言うことになります。
入院関係の特約は定期保険特約とは異なり、80歳までは更新できる形と
なっていますが、保険料はそれまで払っていた保険料とは別負担で、一
時払いまたは年払いとなります。
・どんな特約がついているのか
これがまた難しい問題なのです。
約款を眺めてみるといろいろな特約が記載されていますが、それが全部
加入している保険に付いているわけではありません。
その約款に記載のある特約のうち、保険証券に記載のあるものにとりあ
えずマークをしてみて、加入時に受け取った設計書と見比べてください。
加入者は、保障額の場合もそうなのですが、自分にとっていい方に解釈
する傾向がありますので、付いてもいない特約もあるものと勘違いして
しまうことがよくあります。
保険料について
・ステップ払いかどうか
ステップ払いとは、終身保険の保険料に関して、はじめの10年(または
15年)間の負担を軽くして、加入時の保険料の負担感を軽く見せかける
手法です(もちろん、終身保険の保険料総額を比較すればステップ払い
の方が、負担が多くなります)。
このステップ払いについては、通常、「ステップ払い式」などと保険証
券のどこかに記載があります。
あるいは、保険料の欄に終身保険(主契約との記載もあり)がその他の
特約保険料と分けて記載されている場合には、終身保険の保険料が10年
(15年)後にアップしていたらステップ払いです。
・保険料
「定期付き終身保険は保険料が途中でアップすると聞いて証券を見たけ
どアップするとは書いていない」と言う場合、本当にアップしないこと
もあるのですが、一般的には更新以降の保険料は加入時点では確定でき
ないため、更新前までの保険料しか記載しない場合が多いのです。
更新後の保険料は設計書などにはおおよその記載がありますので、それ
を見ると保険料のアップ幅がイメージできます。
見分け方としては、保険料の払込年齢より先に定期保険特約の満期がく
る設計かどうかを確認ください。
先に満期がくる場合には、その時点で更新され、保険料がアップするも
のとお考えになっていいでしょう。
例えば、60歳まで保険料を払い込むことになっているのに、定期保険特
約は40歳(になる年月)までとなっていたら、そこで保険料がアップし
て保障は更新されるわけです。
なぜアップするのかと言えば、人間の病気でなくなるリスクは、年を経
るごとに(年をとればとるほど)に大きくなるからです。
したがって、そのリスクを元に保険料が決定するわけですから、当然に
30歳より40歳の方が、40歳より50歳の方が、同じ保障額なら保険料がア
ップしてしまうわけです。
保険の内容 四大要素
最後にもう一度、冒頭に書いたことを別の切り口でまとめてみます。
生命保険の要素は
・保険の種類(終身、定期、養老のいずれか)
・保障の額(保険金額)
・保障期間(保険期間)
・保険料(負担額)
です。
この要素をきちんと把握しないと、自分に合った保険なのかどうか分か
りません。
ところが、保障の額と保険料だけで保険を決めているのが、皆さんの現
状です。
つまり、大きな保障で安い保険がいい保険だと思っているわけです。
しかし、実際の姿は加入者のイメージとは違い、本当に死亡したり、入
院したりする年齢になったときには保障がなくなっていたり、無駄な保
険料(主に掛け捨ての保険料)を多く払ってしまったりする事になって
しまいがちです。
ぶっちゃけて言えば、保険期間を無視して、10年で保険料がアップして、
払込もステップ払いにして設計すれば、見た目は大きな保障で安い保険
料の定期付き終身保険を設計することができるわけです。
でも、これはその後10年だけの内容が確保されたにすぎません。
いったい何歳までの保障がほしいのか考えないと、保険会社の言いなり
の保険プランを買い続けていくことになってしまいます(つまり、5年
に一度は転換するなんて事になります)。
ぜひ、保険証券を分析して、自分のニーズと摺り合わせをしてみてくだ
さい。