海色の記憶 −あの日の忘れ物・篠崎剛士編−
[AM9:20 幻想]
……記憶が、揺らめいていた。 風の流れない青い世界を、ぼくはひとり……ただひとり、ゆらゆらと漂っている。 そして、やがては海の泡のように、誰に見られることもなくはじけて消えてゆくのだろう……。 あのときは、本当にそう思った。
結局、運命は、ぼくをぼくのままでいさせる方に傾いた。 でも、ぼくの海色の記憶は、消えることはなかった。
あの日から、ずっと……。
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