俺という存在があったことをこの世界に残していくには、どうすればいいんだろう……。
……そうだ。
姿が見えなくても、声が届かなくても、できることがある。
それは、手紙を残すことだ。
俺は階段を下り、平和な談話室を通り抜け、奥のスタッフルームへと向かった。
そして、みどりの部屋のドアを、音を立てないように静かに静かに開けると、中に入った。
……誰もいない、彼女の部屋。
それだけで俺は胸が一杯になり、決してこの世界には残らない涙を流した……。
急がないと、誰か来てしまうかもしれない。
俺はテーブルのところに行き、そこにあったペンを取って、メモ用紙にこう綴った。
『愛しいみどりへ
君は気付かなくても、俺はいつでも君のそばにいた。
君の笑顔をまた見られることを、幸せに思っているよ。
未来から来た俊夫より』
小さなラブレター……。
俺はそれをテーブルの上に置くと、あることを思いついて、みどりの部屋を出た。
あふれる涙をパーカーの袖で拭い、階段をゆっくりと上っていく。
物置の前を見ると、思った通り、そこにはあの赤いひずみ……タイムゲートが出現していた。
俺はそれに歩み寄り、ためらうことなく中に飛び込んだ。