Maintenance Note No.14
99年11月20日 楽しいオイル交換
前回のオイル交換から2700kmを走り,ちょっと早めのオイル交換となった
自分で交換したことのない人にも参考になるようレポートする

 早いもので今年も残すところ1カ月ちょっと。YZF-R6が私のもとへやって来てから既に7カ月余りが経った。その間の走行距離は4150km(2594マイル)。バイクシーズンもそろそろ終わることだし,オイルでも交換してやるかということになった。
 オイルの交換サイクルは一般に6000kmごとと言われているが,エンジンの種類や使い方によってもっと早めに替えた方が良いこともある。ボクのSRXはエアフィルターの無いファンネル仕様なのでオイルが汚れやすいから,3000kmで交換するようにしている。R6のような超高回転型の高性能エンジンも早めの交換が望ましい。前回のオイル交換が半年前で1459kmの時だから,まだ2700kmしか走っていないが,ちょっと早いかなといううちに替えた方が調子は良いものだ。
 オイル交換はショップに任せているという人も多いだろう。確かに,工賃は安いところで500円だから,自分で廃油処理パックを買ったら,節約できるのは100円くらいでしかない。手間を考えると他人任せにした方が楽だ。でも,それではちょっとツマラナイというがボクの考えだ。車検整備などに重なる場合を除いて,オイル交換は自分でやってきた。その方がバイクに愛着が持てるし,オイル選びや交換作業も楽しいものだ。もし,一度もやったことのない人がいたら,ぜひ体験してみてほしい。
MOTULの3100はバイク専用オイルだ

カウルを外すとオイルフィルターやリザーバータンクが見える
ドレンボルトは17mm


廃油処理パックの中身は紙だ


注ぎ口を引き出すという珍しい容器。オイルはなぜか黄色い(大丈夫か?)
MOTULの「3100」をチョイス
 さて,問題なのはオイル選びだ。多数のメーカーからこれまた多種類のオイルが販売されているので,どれにしようか迷う人は多いだろう。オイル選びの基本的な知識についてはまた別の機会に譲るとして,今回は交換作業を中心にレポートしよう。
 今回選んだオイルは,MOTULの「3100」という製品。粘度は10W-40だ。なぜMOTULかというと,まず最近MOTULは評判が良い。おまけにヤマハのワースクチームが使っている(ただし一番高価なヤツ)。まあ,オイルの銘柄なんてしょせんイメージだからね。
 MOTULには「300V」という高級グレードがあるが,これは1リッターで3200円もする代物。あまりに高すぎてちょっと手が出ない。その点,3100は化学合成油ながら1リッターで1800円とリーズナブル。極圧分散添加剤の配合でミッションのフィーリングが良くなるとも書いてある。R6はヤマハ車の伝統(?)に従ってシフトフィールが良くないから期待大だ。
 オイル交換の際に用意するものは,オイルのほかに,ドレンワッシャー,廃油受皿,廃油処理パック,オイルジョッキ,じょうごなどだ。もちろん,工具も必要だ。ただし,どうしてもなければいけないのは,オイルと廃油処理パック,ワッシャー,そしてレンチ(メガネかソケット)だけで,ほかはなくてもなんとかなる。今回も必要最低限の用品だけで作業した。
 まず左サイドのアンダーカウルを外す。しかし,これは後ほど悔やむことになる。エンジンの左側にはオイルフィルター(カートリッジ式)とドレンボルトがある。ドレンはオイルパンの一番後ろに付いていた。バイクの下に新聞紙を敷いて,オイル処理パックを置く。これはバイク・車用品店で400円くらいで売っている。廃油を吸わせて,可燃ゴミとして捨てられるパックだ。
 エンジンをかけて少しだけ暖気する。こうした方がオイルを排出しやすい。準備ができたら,メガネレンチでドレンプラグを緩める。オープンになっている片口スパナやモンキーレンチで緩めるのは厳禁。ボルトをなめてしまう可能性があるからだ。必ずメガネかソケットレンチを使う。ドレンボルトを外すと古いオイルが出てくるので,オイル注入口の方を開けてやる。こうすると,上から空気が入るのでオイルが抜けやすくなる。
ペットボトルを再利用
 オイルが出切るのを待つ間に,新しいオイルの準備。MOTUL3100のパッケージは実にユニークだ。まず,プラスチックの容器には横に目盛が付いているので,計量用にオイルジョッキを用意しなくても済む。フタも変わっていて,回して外すのではなく,いったん上に引き上げて首を出す。と言っても分からないと思うので,上の写真を見てもらいたい。この状態から,初めてフタを回して外すのだ。
 ドレンボルトからは古いワッシャーを外し,新品をセットする。今回はアルミのワッシャーを使ってみた。これをケチって古いものを再使用すると,オイルにじみなどの原因になるので避けた方がよい。
 排出されたオイルを見ると,思ったよりは汚れていない。エンジン内部の状態はまあまあのようだ。オイルが全部出たら,ドレンボルトを取り付ける。レンチで締める時は,それほど馬鹿力で締め上げる必要はない。ギュッという感じで十分だ。
 次に,オイルを注入口から注ぎ込む。口はクラッチカバーの上面にある。オイルの缶から直接注ごうとすると,こぼれて周りを汚してしまうので,じょうごを用意するとよい。といっても,ボクは写真のようなペットボトルを切ったもので代用している。これは簡単で便利。お勧めの方法だ。
 R6のオイル量は,オイルフィルターを替えない場合は2.5リットルなので,最初に2.4リットルほど注入する。オイルを入れる時は,少なめに入れて,様子を見ながら足していくのが基本だ。オイルは少なすぎると油膜切れを起こして重大なトラブルになるし,多すぎてもクラッチが切れなくなるなどの問題が起きる。
 これで暖気運転してから数分待ち,オイル量を確認する。R6は最近では珍しいスティックゲージ式だ。ボクとしては,センタースタンドのないバイクでは,点検窓方式よりも確認しやすいので好きだ。スティックを見てみると,まだ少ないようだったので,さらに100cc足してからチェックするとぴったりになった。指定されたとおりのオイルが入ったわけだ。
アルミのワッシャーは内径が14mm。多くのバイクに共通だが,12mmのものもある


ペットボトルを切って,注入口に差し込んでじょうごにする


スティックについたオイルで油量を確認する方式

スティックゲージはいったん拭いてから差し込まないと計れない
実は整備性が良かったR6
 これでオイル交換の作業はおしまい。カウルを取り付けようとしたら,これが結構難しい。ちょっとしたコツさえつかめばなんてことはないのだが…。で,カウルを元に戻してから気が付いた。ドレンボルトの真下に当たる部分のアンダーカウルには穴が開いていて,カウルを外さなくてもオイル交換できるようになっていたのだ。それを早く言ってよ〜。さすが,レースを意識しているだけに整備性もイイと感心したものの,これはちょっと悔しい。
 ただし,カウルを付けたままではレンチが入らないので,ドレンボルトを外すためにはラチェット用のエクステンションバーと17mmソケットが必要だ。そういえば,と思って工具箱の中を探すと,なぜか17mmソケットが見当たらない。その代わり,13mmのソケットが2個もあった。なぜだ!
 オイル交換の翌日,早速ツーリングに出掛けて300kmほど走った。新品オイルということで最高速にもトライ。また更新したが,それでも6速に入らない。240km/hの壁は厚い…。MOTUL3100のウリの1つだったシフトフィール改善は,残念ながら感じなかった。いずれ,添加剤なども試してみたい。