Maintenance Note No.25
2000年7月8日 盗難を機にささやかなブレーキモディファイ
R6のキャリパーが盗まれた。悔しくて仕方がないが,これを機にメッシュホースを入れた
パッドはRKに変更。さらにフォークオイルを交換し,リコール対策もした

 それは,クラブ(NBPRC)のミーティングからいい気分で帰ってきた夜の出来事だった。ほろ酔い加減で珍しく早めに寝た金曜の翌日,車を出すために駐車場へ行くと,YZF-R6の車体カバーが不自然にめくれている。嫌な予感がして駆け寄ると,フロントホイールの周りにオイルのような液体が漏れている。なんだろう,これ?
盗っ人許すまじ
 少しの間,ボクは異常に気がつかなかった。しかし,よくよく見てみると…,なんとフロントのブレーキキャリパーが無いではないか! ブレーキホースは切断され,キャリパーボルトが辺りに散らばっている。どうしてこんなことになったのか,しばらく呆然と立ち尽くしていた。
 同じ駐車場に停めてあるブロンコは,マフラーをエキパイごと持っていかれていた。もちろん,同じヤツの犯行だ。R6のキャリパーは純正品としては高価な上,ほかの車種にも流用が利くパーツなので,こそ泥が狙うことがある,とは後で聞いた話しだ。プロの窃盗団による被害が相次いでいることを考えると,車体ごと持っていかれなくてラッキーと考えるべきかもしれないが,だからと言ってこそ泥は絶対に許せない。

これを機にステンメッシュに変更
 憤っていてもバイクは走れるようにならないから,さっそく修理に出した。まず,キャリパーは純正品をそのまま使う。R6のキャリパーはR1などにも採用されているパーツで,アルミ鋳造の一体型。一般的な左右分割タイプよりも剛性が高いのがウリだ。青いアルマイト処理のキャップが特徴的で気に入っている。問題は値段で,1個で約3万円(パッド付き)と,純正品としてはかなり高価だ。2個で6万円の出費は痛い。
 切られてしまったブレーキホースは,この際だからステンメッシュホースを入れる。これはプロトの「スウェッジライン」で決まりだ。純正品と同じカシメ方式を採用して安全性が高いというのが売り文句だが,それ以上に,ガンメタのアルマイト処理をしたバンジョーボルトやアダプターが渋くてカッコイイのだ。ちなみに,品番は「#MAF294」。ホース2本のほかに,DOT4のブレーキフルードも付いてくる。標準価格は1万6000円。
 パッドは純正キャリパーに付属するが,既に交換用のパッドを買ってあったのでこれを使うことにする。パッドはRKエキセルの「RK ウルトラアロイ70」だ。セミメタルタイプながら,銅のフレークを70%混ぜてあり,焼結パッド並みの制動力を発揮するという。
 純正パッドは,パッド裏面に熱伝導防止用のカバーが付いてることやパッド表面の様子から焼結タイプと思われるが,本当のところは分からない。焼結パッドは制動力に優れる代わりにローターへの攻撃性が高いので,セミメタルで焼結並みの性能が出るなら,それに越したことはない。おまけに,APやSBSなどの製品と比べて値段が安いのがうれしい。品番は「RK-835 UA7」で,TZR250RやFZR400RRと同じ形状らしい。
消えたキャリパー。下にはフルードが…
消えたキャリパー。下にはフルードが…

ガンメタのフィッティングが渋い!
ガンメタのフィッティングが渋い!


ホースはビニールコーティング済み
ホースはビニールコーティング済み
ホースとパッドの効果は上々
 ブレーキホースの在庫がなかったため,数日待つことになったが,新品のキャリパーと精悍なステンメッシュホースが付いたR6を見ると,盗難で落ち込んでいた気分がだいぶ晴れた。ガンメタのバンジョーボルトなどは,青や赤の派手なアルマイトと違って,さりげなく高級感がある。
 走ってみると,メッシュホースの効果はすぐに感じられた。いきなり初期からカチッと効くのだ。最近のバイクは,扱いやすさを優先し,あえて初期の効きを甘くしている機種が多く,R6やR1もその傾向があるが,ボクはあまり好みではない。最初から最後までリニアに効いてくれる方が好きだ。
 タッチの変化は,パッドを替えたのでメッシュホースの効果だけではないだろうが,レバーのストロークが短くなったのはホースのせいだろう。明らかにレバーの動く量が減り,より短いストロークの中でコントロールするようになる。ブレーキレバーの位置を1段階手前にセットしなおしたほど,ストローク量もストロークする場所も変わる。
STDは溝が1本だが,RKは3本ある
STDは溝が1本だが,RKは3本ある




  RKのウルトラアロイ70も好感触だ。まだワインディングは走っていないが,不満のない効きを発揮してくれる。純正パッドは暖まってからの方が制動力が増すので,むしろRKの方がリニアで純正っぽい効き味かもしれない。200km/hオーバーからのブレーキングでどうなるかは分からないが,公道ではそこまで酷使することはないので大丈夫だろう。
 実は,YSP板橋中央に入庫したついでに,さらに2つのメンテナンスもお願いした。1つはフォークオイルの交換。R6は既に5800km余りを走っているので,1回目の交換をするにはよい時期だろう。2つめはリコールの対策だ。'99モデルのR6には,サイドスタンド取り付け部のボルトが緩んで,最悪の場合スタンドが脱落して転倒する恐れがある,という内容のリコールが出ている。対策は,ボルトを長い物に換えるという簡単なものだった。
 さて,実はまだほかにもネタがあるのだが,それは次回のお楽しみ。次は,私の大好きなミーハー的オプティカルチューン3連発を予定している。