Maintenance Note No.36
2001年1月28日 ポジションランプをウインカーに改造
R6のポジションランプとウインカーを入れ替えた
ビルトインされたウインカーはスタイリッシュでサーキット走行にも便利

 YZF-R6のヘッドライトはほかのバイクとはちょっと違う。2灯ヘッドライトの外側にポジションライトが付くという4輪のような構成なのだ。そんなR6の顔を眺めていて,ふと思いついた。このポジションライトをウインカーにしたらカッコイイのではないか。
 今の乗用車はヘッドライトとウインカーが一体になったコンビネーションランプが圧倒的に多いが,バイクでは旧ゴールドウィングなどごく一部の車種を除いてほとんど例がない。ヘッドライトと一体化したウインカーの方がずっとスタイリッシュに見えるはずだ。
 今のウインカーはそのままポジションランプに仕立てる。要するにウインカーとポジションを入れ替えるわけだ。こうするとスマートになるだけでなく,サーキット走行に自走で行く場合,ウインカーを外した状態でも走っていけるという実質的なメリットもある。
理屈は簡単でも作業は…
 基本的にはウインカーとポジションの配線を入れ替えるだけなのだが,実際に作業を始めてみると予想以上に面倒なことがあった。
 まず接続用のケーブルを自作する。市販の割り込み結線器具を使えば簡単だが,純正ケーブルに傷が付くし脱着が面倒になるので,きちんとしたものを作ることにした。ポジションランプ用の配線は2極のコネクターなのに対して,ウインカーはφ4mmのギボシ端子なので,それぞれを変換するケーブルを作る。コネクターはカーショップなどでは手に入らないから,秋葉原のガード下に赴いて,適合するタイプのコネクターを探す。ガード下で買い物をするのは久しぶりだ。
 コネクターをゲットしてきたら,仮に配線してみる。ここで問題発生。ポジションランプは5Wのウェッジ球で,消費電力が少なすぎるために点滅速度が速くなりすぎるのだ。いわゆるハイフラッシャー状態で,保安基準に適合しなくなる(車検にも通らない)。途中に抵抗でもかませればよいのだろうが,放熱などを考え始めると結構厄介だ。



ヘッドライトの端にポジションが付く
ヘッドライトの端にポジションが付く
ウインカーレンズはクリアに交換済み
 さらに,5Wでは少々暗すぎることも判明した。ウインカーは,通常10〜25W程度の電球を使用する。保安基準に合わせるためには,少なくとも8W(クラス)の電球でないとダメだ。また,ポジションランプとして使用するウインカーには,逆にもっと消費電力の少ない電球が必要になる。ノーマルの23Wを常時点灯させるとなると,熱でウインカーボディやレンズが融けるからだ。こちらは10W程度なら大丈夫だろうと考えた。
レジスターキットで調整
 翌日の土曜日は,朝から雪だった。関東では3年ぶりの大雪で,昼間は子供の雪合戦に付き合わされる。夕方になると吹雪いてきたので,車で出かけるのは諦め,歩いて行ける近所のカー用品店へ電球を買いに行く。ここで購入したのは,まず5Wと10Wのウェッジ球。5Wの方は,通常ランプの2倍の明るさがあるとうたう製品だ。2倍なら10W相当となり,かなり明るくなるはず。10Wのバルブは口金のサイズは5W同じだが頭が大きい。もう1つ,新しいポジション用に10Wの電球も買って帰った。
ウインカー用に作ったケーブル
ウインカー用に作ったケーブル
レジスターキットを割り込ませる

ポジションランプ用の変換ケーブル
ポジションランプ用の変換ケーブル
 さっそく付けてテストしてみると,これが全然ダメだった。5Wのウェッジ球は,確かにノーマルランプに比べれば明るいが,2倍には見えない。ちょうどSRXのウインカーが10Wなので比べてみると,だいぶ暗く見える。では10Wのバルブはどうかというと,頭が大きすぎてライトケースに入らなかった。やれやれ…。
 一方のポジションランプの方は明るすぎて,しばらく点灯しているとウインカーボディが熱を帯びてきてしまう。数分間点灯してからレンズを開けてみると,嫌な匂いが漂ってくる。これはまずい…。
 翌日,気を取り直して3度目の部品調達に出かける。ナップスへ行くと,捜し物はあっさり見つかった。8Wのウェッジ球と,5Wの通常ランプだ。8Wならウインカーとして利用しても保安基準に適合する。5Wのランプは,車用品のような白い光のタイプでないのが残念だが,この際贅沢は言ってられない。
 もう1つ,プロトの「レジスターキット」も購入した。ハイフラッシャー状態のウインカー配線に割り込ませることで1A(アンペア)程度の電流を消費させ,点滅速度を適性に戻してくれる。アルミのヒートシンクが付いているので,放熱対策も心配なさそう。
高級感漂うビルトインウィンカー
 材料がそろったところでケーブルを作る。ひとつひとつ端子を組み上げていくので手間はかかるが,難しい作業ではない。レジスターキットはウインカーの+12V端子に割り込ませ,レジスターのアースはフレームから取る。レジスターキットの本体は,アッパーカウルの内側にマジックテープで取り付けた。8Wのウェッジ球は透明電球なので,オレンジの塗料の塗ってオレンジバルブに仕立てる。各ケーブルを接続し,余った配線をタイラップで止めたり,露出したケーブルに保護チューブを被せたりして仕上げたら完成だ。
 ウインカーのスイッチを入れると,ヘッドライトのつり目になった部分がオレンジ色にピカピカと点滅する。う〜ん,カッコイイ! 完全なビルトインウインカーなので高級感がある。ポジションライトをオンにすると,これまでのウインカーだったところが点灯。大型バイクのポジションランプ(ウインカーが点灯するやつ)のようで,これもなかなか気分がよい。車体の一番端に付いているから,文字どおり車幅灯という感じだ。5Wに落としたおかげで,熱の問題も解決できたようだ。
 ポジションランプが不要だというユーザーは,まるごと外してしまえばよい。レーサーのようにスッキリとした外観になるし,実際そのままサーキットに持ち込めるだろう(もちろん,リアウインカーの処理は必要)。
ヘッドライトにビルトインされたウインカー
ヘッドライトにビルトインされたウインカー
 さて,1つだけ残った問題が車検だ。ウインカーは,明るさ,位置,点滅速度ともに保安基準に合うようにしたから車検も通るはず。まあ,万が一ダメとなっても,配線を元に戻して(元の)ウインカーにオレンジバルブを入れれば元通りになるから,あまり心配はしていない。そのあたりは,2カ月後の車検を通してからレポートしたい。