Maintenance Note No.42
2001年4月7日 ハヤシカスタムのチタンスリップオン装着
SRXのマフラーをハヤシカスタムのチタンオーバルに交換した
質感の高さもさることながら,意外な性能の良さに驚いた

 SRXにはマフラーの選択肢が少ない。世間一般では不人気&生産中止車両なのだから,それも仕方のないことだ。そんな中,珍しく新作のマフラーが登場した。ハヤシカスタムのチタンオーバルスリップオンマフラー(以下チタンS/O)だ。といっても,大量生産品ではないので,限定20本の販売のみ。それを聞いて興味を持ったボクは,2月の土曜日にハヤシカスタムまでSRXを走らせた。
 店では現物を確認すると,想像以上に質感が高い。チタン特有の色のサイレンサーといい,テーパー形状になったステンレスのエキパイといい,ライダーの所有欲をくすぐるような出来栄えだ。さらに試乗車に乗せてもらって心は決まった。マフラー+タンデムステップキットで合計8万円という価格は財布に痛かったが,残り数本しかないチタンS/Oを見て,「これは買わないといかん」と,ATMでキャッシュを引き出すことになった。
チタンは傷に注意
 さて,チタンS/Oを買ってからしばらくはR6に手がかかったり,仕事が忙しかったりとバタバタして,4月に入ってからようやく取り付けることになった。
 まずチタンS/Oを仮組みする。すると,サイレンサーがリアブレーキホースのガイドに干渉する。サイレンサーがあまりにも車体側に追い込んであるため,スイングアームに付いているループ状のガイドに当たってしまうのだ。
 いったんバラしてから,ホースガイドを外そうかと思ったが,考えてみると,これを外してもブレーキホースをキャリパーから取らない限りは抜くことができない。実に厄介な代物だ。
 ホースを外すのはあまりにも面倒なので,やおら金ノコで切り始める。が,30秒で歯がボロボロになる。やっぱり500円の金ノコじゃだめか…。仕方ないので,ホースガイドをむんずとつかんで力任せにグリグリ動かすと,なんとなく折れそうな雰囲気。果たして,2分後にはポッキリ折れて取れてしまった。ガイドの台座の部分も外そうと思ったのだが,ネジが固着してどうしても回せず,そのまま放置することにした。
 気を取り直して組み直す。おお,今度は大丈夫。でも,スイングアームとサイレンサーのクリアランスは驚くほど狭く,これで本当に大丈夫なのかと心配になる。そこで,サイレンサーステーの付け根,つまりシートレールに取り付ける部分にワッシャーを噛ませて,少しだけサイレンサーを外側へ出した。
 ひと通り組んでエンジンをかける。おや? エキパイの接合部から排気漏れしているな。確認すると,エキパイとフレームのアンダーチューブを固定するためのボルトを入れ忘れていた。しかも,穴の位置が合わない。
 首をかしげながらもう一度バラし,エキパイをぎゅ〜っと押し込んでみる。あれ,5mmほど深く入っちゃった。これで,穴の位置もバッチリあった。でも,この時にサイレンサーバンドの位置も変わり,バンドがサイレンサーを傷つけてしまった。しかも,かなり深い傷。あ〜あ,走る前から傷だらけだよお。
 チタン素材は鉄よりも強度は高いが,表面処理をしないと傷が付きやすい。腕時計のチタンバンドなどは表面処理をしてあるから丈夫だが,マフラーに使われる純チタンは一般に傷に弱く,汚れなども取りにくい。指紋や油汚れが付くと,きれいにするのに手間がかかるのが弱点だ。
ブレーキホースのガイドを強引に折る
ブレーキホースのガイドを強引に折る



スイングアームに当たりそう…
スイングアームに当たりそう…



迫力のエンド部にはバッフル付き
迫力のエンド部にはバッフル付き
エキパイはテーパー。サイレンサーは短め
エキパイはテーパー。サイレンサーは短め



スリムさを強調。ところで,あんた誰?
スリムさを強調。ところで,あんた誰?







思わずニヤける性能
 3回目の組み付けでようやく完成。思ったより時間がかかってしまった。もう日付が変わる時刻だが,迷わずエンジンをかけてガレージからSRXを引き出す。
 アイドリングでの音量は,今まで装着していたスーパトラップインターナル5枚ディスク仕様とほとんど変わらない。しかし,走り始めて驚いた。とっても静かなのだ。2500rpmくらいでは,ライダーの耳にはほとんど排気音が聞こえないほど。高回転まで回しても,スーパートラップほど音が大きくならないのもグッド。
 排気音以上に感心したのは,その性能だ。クラッチをミートした直後の低回転での力感が増している。FCRのスロットルバルブがカタカタと音を立てるような低回転高負荷の状態でも,車体を力強く押し出す。スロットルをひねると,吹け上がりが少し軽く感じる。ディスク枚数を減らしたスパトラでは高回転で頭打ち感が出るが,このチタンS/Oは6500rpmを過ぎても比較的軽やかに回転が上昇し,7500rpmあたりまではすっきり回る。低回転での印象とは裏腹に,高回転でも抜けは良いようだ。
 ハヤシカスタムの試乗車では4000rpm手前にトルクの谷があったので心配していたが,ボクのSRXでは3200rpmあたりで回転の伸びが一時的に鈍るものの,ほとんど谷らしいものは感じなかった。もっとも,これは621cc+FCRとの組み合わせなので,どのSRXでも同じになるとは限らない。
 家の近所を20分ほど試走しただけだが,今のところ性能に関しては全く文句はない。それどころか,期待していた以上にフィーリングが良く,走っていて思わずニヤニヤしてしまったほどだ。
 重量が軽くなったのもうれしい。スパトラのインターナルは約4.4kgだったが,チタンS/Oはステー込みで約2.6kgと軽い。気のせいかもしれないが,車体の動きが軽快になったような印象さえ受ける。車体の端の方が軽くなったのだから,多少の効果はあるのかもしれない。
 スタイルも気に入った。サイレンサーが車体側ギリギリまで寄せられているので,SRXのスリムさがよりいっそう強調されている。テーパーしたエキパイは,単気筒であることを主張しているようでもある。サイレンサーが短いこともあって,全体的に軽快感があるのも好印象だ。価格を考えると,満足度が高いマフラーと言える。