Maintenance Note No.55
2002年1月16日 船に乗ってやって来たR6のニューマフラー
米Tow Brothers RacingのR6のスリップオンマフラーを購入した
独自のX-Metalというカーボン素材を使ったサイレンサーは不思議な色を放つ

 本題に入る前に、右の写真を見ていただきたい。これは一体何だと思います? ヘルメットを入れる袋と同じような構造のカバーに包まれているのは、なんとマフラーのサイレンサー部分。米国から届いたYZF-R6用の新しいマフラーは、こんな袋に入っていた。箱から出てきたのを見るなり、息子と二人で大笑いしてしまった。なぜサイレンサーを持ち歩く必要がある?
独特の輝きを放つX-Metal
 忌まわしいマフラー盗難事件以来、YZF-R6のマフラーはノーマルのまま。2001年はこれでサーキットも走ったが、やはり物足りなさは残る。性能とは関係なくても、バイクは格好良さ、雰囲気が大事なのだ。新しいマフラーが欲しいと思いつつも、盗まれたアクラポビッチを再度購入するのは悔しいし、かといって「これだ」という製品も見つからないまま、2001年が終わろうとしていた。
 どうせなら他人が使っていないようなマフラーがいいなと思っていたら、マイナーだがしかし、とてもユニークなスリップオンマフラーを見つけた。米Tow Brothers Racing(TBR)のカーボンスリップオンだ。何が変わっているかというと、まずその素材。「X-Metal CF2」と呼ぶカーボンファイバーは、カーボン繊維にニッケルのコーティングを施すことで、独特の光沢感とチタンのような色調を与えている。しかもこの素材、英語版のカタログによると、使っているうちにステンのエキパイのように焼け色が付くという。カーボンに焼け色? 走らせるのが楽しみだ。
 サイレンサーの構造も凝っている。中央は「Spiral Power Core」と名付けられたパンチングパイプ。中を覗くと、螺旋状の構造が見える。これが太いパイプを使いながら、消音と適度な排圧を実現しているという。もちろんストレート構造だ。その外側はステンレスウール(恐らく消音材の飛び散り防止用),さらにその外にグラスウールの消音材が詰めてある。ジョイント部とテールパイプは、キャップとパイプ部が一体化したアルミのダイキャストだ。普通は2つの部品を溶接でつなぐが、これは完全なワンピースでポリッシュ仕上げなので、ノーマルよりも完成度が高く感じるほどだ。
 サイレンサーの形状は大小オーバルとラウンドから選べ、さらに素材はチタン、アルミ、カーボン、X-Metal CF2が用意される。最近の流行りは言うまでもなくオーバル形状だが、MotoGPに参戦するYZF-M1が円柱のサイレンサーを付けているのを見て、今度はスリムに見えるラウンドを選んだ。
米国から直接買うのがお得
 さて、順番が前後したが、TBRからマフラーを購入した顛末も記しておこう。TBRの製品は、国内では松本エンジニアリングが代理店となって扱っている。ボクが選んだR6用のX-Metalラウンドの価格は7万2000円。高くはないが安くもない。
 では、本家の米TBRではどうか? ホームページを見ると、429.98ドルではないか。購入を決めた2001年12月当時、為替レートは1ドル122円程度。つまり、5万2000円余りと圧倒的に安いのだ。仮に送料が1万円かかったとしても、まだ1万円も安く上がる。そこで、ホームページからの通販で買うことにした。
ロゴ入りのタグまで付いた袋に入ってきた
ロゴ入りのタグまで付いた袋に入ってきた


カーボンなのに金色に見えるX-Metal
カーボンなのに金色に見えるX-Metal
TBR Cシリーズのサイレンサー構造
TBR Cシリーズのサイレンサー構造


テールピースはアルミの一体構造
テールピースはアルミの一体構造
 クレジットカードとインターネットのおかげで、海外からでも簡単に物が買える。便利な世の中だ。簡単に済んだと思っていた購入手続きだが、しばらくしてメールとPDFファイルが届いた。PDFを印刷してクレジットカード番号や住所を書き、さらに身分証明書のコピーを添付して送れというのだ。おまけに、返品規約や保証について説明した文書にサインをして、それも一緒にファクスしろという。
 せっかくインターネットという便利な道具があるのに、なんだってファクスなんか送らなければいけないのだ! ちょっとムカつきながらも、免許証をコピーして書類と一緒に送った。免許証を見ても、日本語なんか分からないだろうに。ついでに、不満も書き連ねて送ったが、その後のメールでは見事に無視されていた。
 送付の方法は、1週間程度で着くが送料が1万円以上する航空便と、4〜5週間かかるが35.6ドルと安い船便が選べた。R6は冬眠中だから急ぐ必要はない。安い船便を指定して、気長に待つことにした。それからちょうど4週間。1月16日に郵便局がマフラーを届けに来た。追加の送料はかからなかったが、消費税(関税ではないらしい)とその手数料で1900円取られた。マフラーの箱は横浜税関で開梱されたようだった(変なもんは入ってないって!)。
 結局、かかったコストは429.98ドル+35.6ドル+1900円で、1ドル122円換算だと5万8700円。2002年1月中旬の1ドル132円(10円も円安になった)でも約6万3300円で、国内代理店から買うよりもずっとお得だ。Tow Brothers RacingのマフラーはYZF-R1をはじめ、各メーカーの幅広い車種をカバーしている。送料を抑えるために数週間待てるなら、海外からパーツを買うのも1つの手だろう。
 週末を待って、いよいよR6に装着。ところがこの時、思わぬ事態から作業に苦戦することになる。