Maintenance Note No.68
2003年3月8日〜9日 2代目のR6、2003年モデルのファーストインプレ
3年半付き合った'99YZF-R6に別れを告げ、新型を予約したのが2002年の11月
待つこと約4カ月で南アフリカ仕様のニューR6がやって来た

 新しいバイクが納車されるのは、何度経験しても興奮するものだ。4年ぶりに味わう高鳴りを胸に秘めて近所のバイクショップへ向かう。その店先には、サメの目のような4つのライトをぎらつかせた'03YZF-R6(5SL1)が待っていた。

違和感を覚えた2つのこと
 YZFシリーズの法則に則って、4年でフルモデルチェンジした'03R6は従来モデルの正常進化版だ。フレームがアルミダイキャストのDELTABOXVに変わり、エンジンは構成パーツの大半が変更されるなど中身の変化は激しいものの、デザインも含めたコンセプトは従来から一貫している。個別パーツには技術面でも興味深いところがあるのだが、詳細は次回に譲るとして、今回は納車されてから2日間のファーストインプレッションをお届けしよう。
 '03R6に跨ると懐かしい感覚が蘇る。「久しぶりにR6に乗ったな」という感じで、ポジションは従来モデルとほとんど変わらない。スーパースポーツにしては前傾が極端にきついこともなく、足つきは身長171cmのボクでも親指の付け根辺りまでが接地する。走り始めて5分と経たないうちに、すっかり自分のバイクになった気分だ。全く違う車種ならこうはいかないだろう。その半面、また同じバイクに乗ってるようなものだから、ちょっと損したような気もする。
 ところが、近場をしばらく走っているうちに違和感を覚えるようになった。1つはハンドルバーが異様に開いていること。スーパースポーツにしては絞り角が小さいというレベルではなく、広がったハンドルを握る手首に角度が付きすぎて親指の付け根が痛くなりそうなくらいだ。従来モデルもハンドルは開いていたが、これほどではなかったように思う。
 2つ目の違和感はエンジンブレーキが強く効くこと。'03R6は従来のキャブレターに代えてフューエルインジェクションを採用した。既にYZF-R1で実績のあるサクション(負圧)ピストン付きだ。サクションピストンのおかげなのか、スロットルを開けるときは、これまでと変わらずドンつきもない(ただし慣らし中なの7000rpm以下だけの話)。ところが、スロットルを戻すと、エンジンにパタッとガソリンが来なくなるかのように失速し、強めのエンジンブレーキがかかる。このため、特に低いギヤではスロットルのオン/オフでギクシャクしがちだ。
ヤマハらしさを感じさせるスタイリング
ヤマハらしさを感じさせるスタイリング
おそらくこれもGKダイナミックスの作品だろう




妙に開いたハンドルバー。垂れ角も小さい
妙に開いたハンドルバー。垂れ角も小さい
本体の大きさは90×75×45mm程度。意外に厚みがあった
本体の大きさは90×75×45mm程度。意外に厚みがあった


配線はバッテリーにつないで傾斜センサーをセットするだけ


アラーム本体を装着するとシート下スペースは残りわずか

新型はサメとか爬虫類を想起させる
以前のR6が昆虫的な顔つきだったのに対して
新型はサメとか爬虫類を想起させる
ゴリラサイクルアラームを装着
 納車されたその日の夜に盗難警報装置を取り付ける。今回選んだのは「ゴリラサイクルアラーム」(ガイアインターナショナル)。あまり報道されていないが、'03R6にはイモビライザー機能が搭載されている。キーと車体の暗証コードが一致しないとエンジンが始動しない仕組みだ。このおかげで乗り逃げされる心配はまずないが、アラーム機能を持たないため、パーツ泥棒やイタズラを防ぐには別途警報装置が必要になる。
 ゴリラサイクルアラームは振動センサーと傾斜センサーで異状を感知すると警報を鳴らす。まだほとんど使っていないので評価はできないが、少なくとも取り付けはとても簡単だった。むしろ問題なのは警報装置本体の収納場所。従来モデル以上にスペースがなく、やむなくシートカウル内の収納スペースに設置したが、このためロックすら入れる余地がなくなってしまった。出先での対策が悩ましい。
 盗難抑止装置については、これまでいろいろな製品を使ってきた経験もあるので、いずれ別稿で各製品の使い勝手などについてレポートするつもりだ。

7000rpmリミットが恨めしい
 一夜明けて、納車から2日目の日曜日(今回は少々長いがもう少しお付き合いいただきたい)。リアサスのイニシャルと伸び側減衰力を最弱にセットする。最弱と言っても、サーキットや高速ワインディングでなければこれで十分。ストリートでは足つきや乗り心地が良くなるメリットの方が大きい。
 快晴ながら強風が吹き荒れる中、昼過ぎからのんびり房総方面へ'03R6を走らせる。エンジンは相変わらず低回転でトルクが薄くてもっさりしている。従来モデルは4000rpmから実用的なトルクが出たが、'03R6は4500rpmで突然スイッチが入ったかのようにグッとトルクが出始める。その分、4500〜7000rpmの間は力感があって走りやすく感じる。残念ながら走行1000kmまでは7000rpmがリミットなので、それ以上の回転数でどう変わるのかはまだ分からない。従来は8000rpmからパワーが乗り始めたので、慣らし終了後が楽しみだ。
 印象的だったのは、スロットルを開けてからの回転上昇が滑らかで速いこと。シューッと吹け上がり、たびたび7000rpmを超えそうになり慌ててシフトアップする。このあたりはエンジンのフリクションが減ったのと、フューエルインジェクションの効果なのかもしれない。
 タイヤの皮むきも兼ねてちょっとしたワインディングをツーリングペースで流す。サスペンションはリアのイニシャルとリバウンドを抜いているにもかかわらず、動きはやや固く感じる。従来モデルよりサスが動きにくくなった印象だ。サスのアタリがついていないせいもあるだろうが、'03R6は足回りのセッティングが変わっていると思われる。低速コーナーではぐらっとバンクすることがある。これは車体の操縦安定性というより、標準装着されているPilot SPORT(ミシュラン)の特性だろう。同じタイヤを履いているSRXでも同様の動きをするからだ。
 高速道路ではほかのバイクにバンバン抜かれても(それでも6速7000rpmで130km/hは出る)気にならなかったが、ワインディングでは7000rpm以上が使えないことがフラストレーションになる。その先にどんなエキサイトメントが待っているのか? 早く慣らしを終わらせたい。
 次回は、従来モデルのオーナーも気になる細かな使い勝手やメカの違いを解説する。ギミック満載のメーターやイモビライザー、積載性などについても紹介するのでお楽しみに。