Maintenance Note No.75
2003年12月2日〜2004年2月13日 事故後の示談交渉に勝利するまで
初めて走行中の事故に巻き込まれた。怪我は軽傷だったが、SRXは傷ついてしまった
事故後の示談と修理について、参考になりそうなポイントをまとめた

 SRXが10年目の車検を終えて戻ってきた。その翌日、久しぶりにSRXで職場へ向かった。ただし、いつものルートとは違うバイパスを通って。それがいけなかったのか、トラックとの事故に巻き込まれ、SRXは傷を負ってしまった。
 事故の詳細は書きたくもないのだが、示談交渉と修理に絡む話なので簡単に説明しておこう。右車線を走っていたトラックが左を確認しないまま停車しようと左に寄ったため、横の左車線を走っていたボクは行き場を失い、トラックの側面をかすって縁石に衝突、転倒した。警察の検分ではトラックの確認不足が原因で、その運転手も非を認めていた。焦点は、SRXを100%相手の保険金で修理できるかどうかだ。交渉の相手は、保険会社とトラックの使用者である某有名飲料メーカーだ。
 事故後のSRXは、見たところ致命的なダメージこそ無いものの、ステップが折れ曲がったり、シートカウルが削れたりと、車体右側が広範囲に傷ついていた。前輪が縁石に衝突しているので、フォークの曲がりなども心配だ。
過失割合交渉で奥の手を使う
 まず、事故でバイクを修理する際の問題点を整理しておこう。
・過失割合はどの程度になるか
・車両価値がいくらまで認められるか
・修理そのものは可能か
過失割合は、自分に過失がないと思っても、走行中であればゼロにはならないのが普通だ。その例に漏れず、今回も保険会社が提示してきた示談の条件は、「過失割合は1:9、相手側の損害は賠償しない」という内容だった。しかし、これでは1割分の自己負担が発生する。バイクを壊され、軽いとはいえ怪我までしているのに、自分で費用を負担して修理するなんて納得できない。
 そこで使った奥の手が、当事者との直接交渉だ。相手企業の管理職とは、事故当日の病院で面会している。その際、「私の自己負担無しにバイクが完全に元通りになれば、それ以上どうこう言うつもりはないがどうか?」と聞き、「そのようにさせていただきます」との言質を得ていた。相手は一般消費者を相手にする企業だから、自社の看板を背負ったトラックが起こした事故は、極力穏便かつ迅速に解決したいわけだ。
 相手企業の思惑と私の要求が一致した結果、自己負担分とされる修理費の1割は相手に負担してもらうことが、示談に応じる条件となった。これで実質的な過失割合は0:10になった。ただし、これは裏技とも言うべき交渉方法で、相手が個人だったり、零細企業だったりしたら通用しない。今回のケースでも、もしこちらの過失が1割よりも大きければ、やはり交渉はうまくいかなかっただろう。

カスタム費用を算定できるショップが必要
 過失割合よりも、むしろ切実な問題が車両価値の判断だ。例えば、比較的新しくて無改造のバイクが全損した場合、話は単純。車両価格から、使用期間に応じた償却分が減額された見積もりが出るはず。ところが、フルカスタムした10年落ちのSRXを修理するとなると、一筋縄ではいかない。単純に減価償却すると、車両価値は現在の中古車価格程度しか認められないだろう。これでは、たとえ過失割合が0:10でも、修理費用を賄えない。全くの「やられ損」になってしまう。
 では、どうすればいいか? バイクのカスタムにかかった費用をすべて計算して、それを修理費用の計算基準にするのだ。例えば、今回はカスタムペイントしたカーボンシートカウルが損傷した。この修理費が純正品を元に計算されたら、全く直しようがない。しかし、カーボンシートカウルの価格やカスタムペイントの費用をきちんと見積もり、保険会社がそれを認めれば、元通りに直せるわけだ。
 そのために必要なのは、修理するバイクショップ(修理工場)の協力だ。ショップが詳細かつオーナーに有利な見積もりを出し、それを保険会社の査定担当者に認めさせなければ、満額回答は実現しない。つまり、カスタム作業に精通していて信頼できるショップと普段から懇意にしていることが、いざ事故が起こったときに身を助けることにつながる。今回の事故では、AAA(スリーエー)に随分とお世話になった。

無残に曲がったステップとブレーキペダル
無残に曲がったステップとブレーキペダル


シートカウルやナンバーホルダーは削れた
シートカウルやナンバーホルダーは削れた


オーリンズも得て復活した我がSRX
オーリンズも得て復活した我がSRX
ついでにオーリンズを装着
 幸いなことに、今回は修理自体には問題がなかった。再ペイントには多少時間がかかったが、ほかはちょっとした修正やパーツ交換だけで元通りになった。修理費用は賠償金ですべて賄えたし、壊れたヘルメットも新調できた。不幸中の幸いと言うべきだろう。
 長く入庫したついでに、懸案だった整備とモディファイも頼んだ。滑り気味だったクラッチは一式交換し、ケーブルも新調。フォークオイルも替えた。油面はいつも通り10mmアップだ。
 簡単な清掃だけで長期間放置していたFCRは、夏場のキャブレーションが良くなかったためオーバーホール。戻ってきたSRXに乗ったらイマイチだったので(薄すぎ?)、再調整してもらったら見違えるように良くなった。今のところ絶好調。キャブをオーバーホールしたら、錆がたまっていたという。タンク内部の錆が原因のようなので、錆を落としてからクリームコーティングを施す。これでしばらくは心配ないだろう。
 さらに、WPをオーバーホールするか新調するか迷っていたリアサスは、オーリンズに変更。いまだその性能を堪能していないので、インプレッションは走り込んでから「Mofity」のページで報告しよう。