5.頭部・顔・頸部の診察

引き続き頭部・顔・頸部の診察を行います。これらの診察によって得るべき情報はそんなに多くはありませんが、 しかしその重要性は大きいため、確実に行う必要があります。

a.話しかけの言葉

頭部・顔の観察を始めることを伝えます。
  • 「私の顔をまっすぐに見て下さい」

頸部リンパ節の触診を始めることを伝えます。
  • 「首のリンパ節が腫れていないか調べますので、顎を上げないで、そのまま楽にしていて下さい」

甲状腺の触診のときに話しかけます。
  • 「甲状腺を診ますので、顔を少し右の方へ向けて下さい」
  • 「今度は、反対の方に少し向いて下さい」
  • 「一度唾をゆっくりと飲み込んで下さい」

b.頭部・顔の診察

頭部・顔の診察は視診が中心となります。

頭部・顔の観察項目(おもに視診による)
  • 頭部・顔面
    • 頭蓋の形状、頭髪・頭皮の状態、頭部の病変
    • 顔面の形状、顔面の運動、顔面の皮膚

  • 耳・鼻
    • 外耳の形状、外耳道の状態、外耳道からの分泌物の有無
    • 鼻中隔の位置、鼻分泌物の有無

    • 眼瞼の位置、眼瞼の皮膚
    • 眼球の位置、眼球の突出度
    • 眼の結膜(球結膜、瞼結膜)の色調
    • 瞳孔の大きさ、瞳孔の形状
    • 瞳孔の反射(対光反射、調節反射)

    • 口唇の色調、口唇の変形、口角の病変
    • 舌の表面、舌の形状、舌の病変、舌の運動
    • 歯肉の表面
    • 口腔粘膜の色調、口腔粘膜の病変
    • 咽頭の色調、咽頭の病変
    • 扁桃の大きさ、扁桃の病変

頭痛とくに側頭部の頭痛のときには側頭動脈の触診を行います。 圧痛と索状の動脈触知は側頭動脈炎を発見する重要な所見です。

耳痛や外耳道からの分泌物のときには、 外耳を軽く動かして耳部の疼痛の有無を確かめます。

c.頸部の診察

視診と触診が中心になります。観察は、 腫大したリンパ節・甲状腺・頸静脈・気管の位置 の 4項目について行います。

頸部の観察項目
  • リンパ節腫大
    • 視診で、側頸部の局所的腫脹を発見する。
    • 触診で、部位・数と大きさ・硬度・可動性の有無を調べる。
    • 《リンパ節の触診部位》
      • 下顎骨下部→耳前部→耳介後部→項部→側頸部
      • 鎖骨上部→鎖骨下部
      • 腋窩部

  • 甲状腺
    • 視診で、前頸部の腫脹を発見し、嚥下運動とともに上下することを確認する。
    • 触診で、形状・硬度・表面の性状・圧痛の有無を調べる。
    • 腫大のときは、聴診でthyroid bruitの有無を調べる。

  • 頸静脈
    • 視診で、静脈怒張を発見する(坐位または半臥位で)。
    • 鎖骨上縁の頸静脈圧迫で怒張の消失を、また圧迫解除で頸静脈拍動を観察する。
    • 頸静脈圧を測定する。

  • 気管の位置
    • 触診で、気管の偏位の有無を調べる。

これら4項目について、その異常と代表的疾患との関係をあらかじめ良く知っておく必要があります。 頸静脈怒張では、Kussmaul徴候の観察法とその臨床的意義を把握しておきます。

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以上の復習が終了したら、 次の6.胸部・心へ 進んで下さい。


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