胸部の診察からは、いよいよ「視診・触診・打診・聴診」の 4観察法を駆使することが要求されます。 もっとも診察の醍醐味が味わえるところであり、診察の技術と、 診察によって得られた異常所見に対する考察力とが必要となる部分です。 |
胸部・心の観察を始めることを伝えます。
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胸部は、まず前面の観察を行います。この後に胸部背面(背部)を観察します。 この観察を始める前に、胸部の所見を記載するために使用される位置の特定法を復習しておきます。 |
胸部の垂直線と水平線の記載
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肋骨の同定は、胸部前面では胸骨角(Louis角)が第2肋骨付着部と一致することから容易に行うことが出来ます。
胸部背面では、肩甲骨の最下端部が第7肋骨、腸骨稜から上方へ最初に触知されるのが第12肋骨となるので、
これらを利用します。 このような解剖学的知識が、胸部の診察には必須となります。 あらかじめ知っておくべきことは、 胸部前面からみた心や心弁膜の位置・右室の位置・気管分枝部の高さ・肺の上縁と下縁の高さであり、 また背面では、気管分枝部の高さ・肺の上葉と下葉の間隙の高さ・肺下縁の高さの、 それぞれおおよその位置です。 |
胸部の視診は、胸郭・乳房・心について行います。 |
胸部・心の視診
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胸郭と乳房の視診のときにとくに重要なことは、左右対称か否かへの注目です。 左右で明らかな差をみる場合は、どちらかが異常所見によると考えられます。 |
触診は、乳房・心・胸郭について行います。 なお、臨床実習では乳房の触診は省きます。異常所見があるときは、 主治医などによる直接指導のもとに触診の実習を行います。 |
胸部・心の触診
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心の触診の異常は心疾患の存在を強く示唆する所見です。この触診所見の特徴と、
その病態学的意義を良く理解しておく必要があります。 声音振盪の異常は、呼吸器疾患の中でも頻度の高い慢性閉塞性肺疾患の発見に欠かせない所見です。 この異常がどのように触知され、 これが本疾患を含めたどのような病態の存在を示唆する所見であるのかについても復習が必要です。 |
打診は弱打診で行います。 |
胸部・心の打診
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肺肝境界の下降は肺気腫などによる肺野の拡大、あるいは肝の著明な萎縮を、
逆に上昇は肝腫大を示唆する所見です。
また、心濁音界の拡大は、心拡大の存在を示唆する重要な所見となります。 なお、正常肺野の打診音は肺胞共鳴音(清音)です。 この特徴を良く把握しておく必要があります。 |
心の聴診は、身体所見の観察の仕方のなかでもとくに手技の習熟が必要となる方法です。 まず、聴診部位と聴診順序に慣れた後、 聴診所見の正確な把握法を修得しておきます。 |
心の聴診
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心音・過剰心音や心雑音は、 心・大血管系の血行動態の変化と結びつけて把握すると理解が容易となります。 このために、心の生理学を十分復習しておいて下さい。 |
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以上の課題が完了したら、 次の7.肺の診察へ 進んで下さい。 |
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