腹部の診察に入る前にとくに注意が必要なことがあります。それは、診察の基本のページでもふれたように、
腹部はいわゆる「ヒトの急所」に相当することをその都度認識し直すことです。 すなわち、腹部の診察と聞いただけで身を硬くして防御の体勢を取る人がいます。 これが腹部症状とくに腹痛を訴えている場合には、何をされるのか不安を感じるのは当然です。 この気持ちを十分汲み取って、話しかけの言葉と、優しさへの配慮がきわめて大切となります。 とくに触診は、乳幼児に触れるようなソフトさが求められます 臨床実習では、もし腹部の触診所見が十分把握できなくても問題はありません。 所見を得るより、常にソフトな手触りで触診が行えて、 決して不安感を与えることのないような触診の仕方を確実に身に付けることの方が はるかに大切です。腹部の触診でもし異常所見があるときには、 主治医などから直接手を取ってもらいながら教わります。 |
腹部の診察を始めることを伝えます。
触診を始めることを伝えます。
あらかじめ疼痛などの腹部所見の存在が分かっているときに、触診の前に問いかけます。 |
腹部の診察もまた視診から始めますが、その後、聴診→打診→触診へと進めることが一般に推奨されています。
触診や打診を先に行わないのは、これらによって、腸管運動(蠕動)の状態を把握するための
腸雑音(グル音)の聴診所見が影響を受けることを未然に防止するためと考えられています。 腹部の聴診は、あらかじめ暖めた聴診器の膜部を使用して行います。 聴診では、腸管の蠕動音と、腹大動脈および左右の腎動脈の血管音とが必須の観察項目となります。 このとき、聴診器を当てる部位が大変重要となることは容易に理解できることです。 腹部の打診は、必ず「弱打診」で行います。 打診によって、腸管内ガスは鼓音を、また、実質臓器や塊状の糞便、あるいは液体貯留(尿で膨満した膀胱など)や 腫瘤は濁音を呈するのが把握できます。そこで、腹部の打診は、まず腹部全体を叩打して、あらかじめ腹部の概況を把握したのちに、 肝濁音界(liver span)などの計測、その他異常所見の把握へと進めます。 触診時の注意は前述しました。心・肺の聴診と並んで、 腹部の触診は身体の診察のなかでもとくに手技の習熟が必要となる項目です。 手指全体の触覚に最大の精神を集中しながら、 ソフトに触れて決して余分な力を入れないこと、この方法をまず目指します。 |
腹部の観察項目
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