[国語][1年][分析批評] |
1年生の国語、初めての3時間はこう授業する
授業のポイント 第1に、何よりも楽しい授業にすることである。 第2に、徐々に徐々に「授業というのは公的な場である。」ということを教えていくことである。(発表の仕方、聞き方など) 第3に、1年生の最初の授業から、思いつきバラバラ発言の授業ではなく、教科書から根拠を探し出す授業にすることである。 |
第1時
東京書籍『あたらしいこくご1年上P1』の授業である。目次部分以外は文がない。絵だけである。
指示1 国語の教科書のまん中あたりを開けてごらん。開けたところを手で押さえつけます。「折りぐせをつける」っていうんですよ。折りぐせをつけてごらん。折りぐせをつけると、教科書が開きやすくなります。 |
教師はやってみせながら指示する。趣意説明もする。
指示2 表紙を上にしてごらん。1まいめくります。先生と同じところを開けたら、「開けました。」と言いなさい。 |
「開けました。」
1年生は元気がいい。
指示3 右の上の方に小さな絵があります。指差しなさい。おとなりと同じだったら手を挙げなさい。 |
「天井に突き刺さるように挙げなさい。」と指示する。できたら誉める。
指示4 左の大きな絵を指差しなさい。おとなりと同じところを押さえていたら手を挙げなさい。 |
発問1 何をしているところですか。 |
ワーンと手が挙がる。指名する。
「飛行機を飛ばしている。」
「飛行機で戦っている。」
「飛行機で誰が飛ぶかやっている。」
「飛行機を飛ばしている。」
1年生は同じような答えを言う。しかし、今はどれも「なるほど。」「そうだね。」と認める。
名前を呼ばれたら、「ハイ」と言うように指示する。きちんと言えた子を誉める。また、話の聞き方が上手な子をとりあげ、「○○さんは聞き方が上手だね。」と誉める。まわりの子どもたちの聞き方がよくなると、また誉める。
指示5 紙飛行機を飛ばしていますね。手前の青い紙飛行機を指差しなさい。おとなりと同じだったら手を挙げなさい。その青い紙飛行機をえんぴつできれいに囲みなさい。できたら「できました。」と言いなさい。 |
子どもたちは「できました。」と言う。
発問2 青い紙飛行機を投げた人は誰ですか。 |
またワーンと手が挙がる。指名する。
「青い服の人。」という答え。
「そう思う人?」と聞く。全員の手が挙がる。
発問3 そうだね。じゃあ、なんで青い服の人なんですか?わけが言える人はすごいなあ。 |
手が挙がったのは3分の1ほど。指名していく。
「青い服の人だから、青い飛行機だと思う。」
「青い色が好きなんだと思う。」
「青い色が好きだから、青い飛行機を投げたんだと思う。」
このような意見が出る。全部「そうだね。」「よく考えたね。」など言ってすべて認める。
指示6 実は、その理由は教科書に書いてあるんだ。 |
みんなすごい。一斉に教科書を読み始める。目次の文を読み始める子もいる。
しかし、なかなかわからない様子である。
しばらくして、自信なさそうに1人の女の子が手を挙げる。指名する。その女の子は、「ここです。」と言いながら右上の絵を指差す。
私は「すごい。よくわかったね。前に来てごらん。」と言う。その女の子にみんなの前で指差させる。
教科書の右側のページ、上の絵である。そこに、青い服の男の子が青い紙飛行機を持って走っている絵がある。
「あーっ。」という声が聞こえる。
拍手をした子がいる。「いいと思う時に拍手をする人はえらい。」と誉める。
説明1 国語の勉強というのは教科書に答えが書いてあるんだね。 |
指示7 えんぴつで、青い男の子をまるで囲みなさい。青い紙飛行機と青い服を線で結びなさい。となりと同じにできた人は手を挙げましょう。 |
指示8 次は赤い紙飛行機をまるで囲みなさい。投げた人は誰でしょう。同じようにまるで囲んで線を引いたら、先生に見せに来なさい。 |
全員わかっていた。
しかし、線を書き忘れている子がいた。書き加えてきた子を誉める。
指示9 できた人は他の紙飛行機も同じようにやってごらん。 |
全体の8割ほどが終わったところで、「誰がどの紙飛行機を投げたか」という答えの確認を1つずつする。
「指差し」をさせ、となりの友だちと同じかどうか確認させていく。
発問4 紙飛行機を投げてない人がいます。誰でしょう。紙飛行機を投げてない人を赤鉛筆で囲みましょう。 |
「できました。」という声が聞かれる。
ほとんどの子どもがわかったようである。
「指差し」をさせて答えを確認した。「まん中の小さい女の子」である。
発問5 なぜまん中の小さい女の子は、紙飛行機を投げてないとわかったのですか。 |
3分の1ほどの手が挙がる。
「まだ小さいから紙飛行機が投げられない。」
「紙飛行機が飛ばせられない。」
「小さいから紙飛行機が作れない。」
間違いではない。だから、「そうだね。」と認める。
しかし、根拠が教科書に書いてあることではない。これも思いつきバラバラ発言である。
指示10 実はこれも教科書に答えが書いてあるんだ。 |
5人の手が挙がる。指名する。
指名された子は、教科書の右上の絵を指差す。「ここです。」
前に出して、みんなの前で発表させる。
説明2 そうだね。やっぱり教科書に書いてある。この女の子だけ紙飛行機を持ってないんだよね。 |
発問6 この女の子にはお兄ちゃんと思われる人がいます。お兄ちゃんがわかったら、先生に教科書を見せにおいで。教えてください。 |
子どもたちは教科書を持って私のところに来る。1回間違えた子もその場ですぐにわかった。
理由を言いたがる子もいる。聞いてあげた。
全員ができたところで7分早いが、授業を終えた。
第2時
東京書籍『あたらしいこくご1年上P2〜3』である。やはり文がない。
「ひらがなのフラッシュカード」から授業に入る。
最初は教師の後に言わせる。次に自分で言わせる。
指示1 先生と同じところを開けなさい。開けたら「開けました。」と言います。 |
子どもたちは元気よく「開けました。」と言う。
発問1 新しく出てきたものは何ですか。 |
「くま。」
「くまです。」と言わせる。「上手に発表できたね。」と誉める。
「ちょうちょ」「いのしし」「うさぎ」「きつね」「とり」「さる」「りす」「木」「にんげん」「たぬき」「犬」「紙飛行機」が出される。
「〜です。」と発表するようになる。言い忘れているときはまわりの子が「『〜です。』だよ。」と教えるようになる。(それも誉める。)
出された意見は教師が黒板に書いていく。まだ子どもたちが黒板に書くのは難しいからである。
発問2−1 この中でおかしいものは何ですか。 |
この発問は失敗である。このような意見が出されたのだ。(おもしろかったのだが。)
「おさるさん。手をこうしている。(手で頭をかいているポーズ。)」(大笑いした。)
「くま。人をおそっていない。」
もちろん、「すごいなあ。よく気がついたね。」と言って認める。正解なのである。
子どもたちは、「おかしい」=「おもしろい」「様子が変だ」ととらえたのである。
よくないことだと思いながら、発問を言い変える。
発問2−2 この中でちがうものは何ですか。 |
「(たぬきを指差して)これはたぬきじゃなくて、あらいぐま。」
「ころんでいる子がいる。」
なるほど、これらも正解である。無論、どの意見も認めていく。
説明1 先生は、さっき「新しく出てきたものは何ですか。」と聞きましたよ。 |
1人の女の子を指名する。
「人間です。」と言う。「どうして?」と聞くと、前のページを指差す。
ここでみんなの前に出す。
もう一度発表させる。その子に教師の後に続いて言わせる。
「人間です。」(人間です。)「(前のページをみんなに見せながら)前に出ているからです。」(前に出ているからです。)「どうですか?」(どうですか?)
拍手が起こる。
発問3 そうですね。前に出てきたものは、新しくでてきたものではないんです。では、新しく出てきたものには○のポーズ、新しく出てきたものじゃないものには×のポーズをしましょう。 |
「にんげん」と「かみひこうき」と「いぬ」が×ということは、このハンドサインを見るとほぼわかったようである。
発問4 次のように発表しましょう。「〜が〜しています。」 |
教師は「〜が〜しています。」と黒板に書く。
まだ発表していない子を先に発表させる。前で発表させる。
「犬が走っています。」
「くまが人をおそっていません。」(これは文型と違うが、認めた。)
「人が転んでいます。」
「ちょうちょが飛んでいます。」
「鳥が飛んでいます。」
「りすが木に登っています。」
「飛行機が飛んでいます。」
「人が走っています。」
友だちの発表をしっかり聞いている子を誉める。拍手も少しずつ起こるようになってきた。
発問5 今度は難しいぞ。「〜が〜しています。〜とおもいました。」と発表してごらん。 |
「さるが頭をかいています。おもしろいと思いました。」
「きつねがこっちを見ています。・・・。」
「犬が走っています。速いなあと思いました。」
「飛行機が飛んでいます。高いなあと思いました。」
子どもたちの発言の中には、文型と同じに言えないのもあったが全部誉めた。
残り10分、運筆練習をした。
第3時
東京書籍『あたらしいこくご1年上P4〜5』である。まだ文がない。
やはり「ひらがなのフラッシュカード」から授業に入る。
指示1 先生と同じところを開けなさい。開けたら「開けました。」と言います。 |
子どもたちは元気よく「開けました。」と言う。
発問1 新しく出てきたものは何ですか。 |
「しかです。」
私は、「『です。』と言えたからえらい。」と誉める。
「ことりです。」
「りすです。」
「たんぽぽです。」
「さるです。」
「雨です。」
「地面です。」
あとの子どもも「です。」と言えるようになった。指名されたら返事をするようにもなってきた。(私が2回名前を言うときもあるが・・・。)
前日「新しく出てきたもの」の学習はしたので、「にんげん」や「犬」が出たときは、「出ているけど、新しく出たてきたものじゃないね。」と言って、黒板には書かなかった。
発問2 次のように発表しましょう。「〜が〜しています。」 |
教師は「〜が〜しています。」と黒板に書く。
指示2 全員起立。昨日か今日、国語のお勉強で発表した人は座りなさい。 |
まだ1度も発表していない子を前に出す。
6人前に出てきた。みんな発表できた。これでクラス全員が発表したことになる。
「人間が雨やどりしています。」
「さるが木に登っています。」
「子どもがかえると遊んでいます。」
「お母さんぐまが赤ちゃんをだっこしています。」
「人間が雨がふって困っています。」
「りすが木に登っています。」
この後、発表したい子に発表させた。
指示3 1まいめくって先生と同じページを開けたら「開けました。」と言いなさい。 |
子どもたちはすぐに「開けました。」と言う。「早い。かしこい。」と誉める。
東京書籍『あたらしいこくご1年上P6〜7』である。
同じような授業をしていると、子どもたちは飽きてくる。授業がだれてくる。
最後のページは初めて文が出てくる。だから、この後は音読の勉強をすることにした。
指示4 文が書いてありますね。右の方から読みます。先生の後に続いて読みます。指を先生と同じにしてごらん。(右手の親指と人差し指を立てる)親指と人指し指ではさんで読みます。(やってみせる) |
追い読みである。最初はゆっくり読む。
教師「みんな」子どもたち「みんな」
「先生と同じように指ではさめているかな?」と言う。
教師「うたう」子どもたち「うたう」教師「みんな」子どもたち「みんな」
教師「わらう」子どもたち「わらう」教師「らん らん」子どもたち「らん らん」
教師「らららん」子どもたち「らららん」教師「みんなの」子どもたち「みんなの」
教師「せかい」子どもたち「せかい」
これを3回くり返す。
指示5 今度は少しスピードをあげるよ。 |
楽しそうである。スピードがつくと子どもたちは集中する。
「すごい。100点の読み方だ。」と誉める。
指示6 もっとスピードをあげるよ。 |
声がそろわなかったら、同じところをもう一度やるようにする。
「すごいスーパー1年生だ。」と誉める。
指示7 もっともっとスピードをあげるよ。 |
興奮しているような様子である。
「2年生みたいだ。」と誉める。
指示8 今度は少し長く読みます。「みんな うたう」まで一気にやります。 |
1行ずつ追い読みしていく。
これもスピードをあげていって、3回読む。
1回目40点、2回目80点、3回目100点と評定していった。子どもたちは集中する。
指示9 今度は先生は読みません。みんなだけで読んでごらん。 |
早く読もうとして、声がそろわない。「ゆっくり声をそろえて読みましょう。」と指示。2回読ませる。特に2回目は張りがある声で読めている。
指示10 男の子と女の子、交代で読みます。男の子が「みんな うたう」。女の子が「みんな わらう」。男の子が「らん らん らららん」。女の子が「みんなの せかい」。 |
教師は、「男の子80点、女の子80点」と言う。
もう一度交代して読ませる。「女の子100点、男の子100点です。」と言う。
子どもたちは大喜びである。
指示11 今度はおとなりさんと交代で読みます。 |
1行ずつとなりと交代で読むのである。1つのペアに実際にやってもらう。
「立って読むこと」「向かい合って読むこと」「読み終わったら交代して読むこと」を押さえた。
そのペアはとても上手にできた。拍手を送る。
それから、実際におとなりどうしでやらせる。
3人並びの席が1つあったので、教師がそこに入る。
うまくできていないところが2ペアあった。そこにも入っていっしょにする。
早く終わったペアには次の指示をする。
指示12 読み終わったら、座って自分で何度も読んでいなさい。 |
最後にもう一度全員で声をそろえて読ませる。
16回音読したことになる。
残り約5分、運筆練習と色塗りをした。
文責 東田 昌樹
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