[体育][6年][マット運動] [「マット運動」の発問・指示] |
「マット運動」授業記録(対象学年4年生以上)
私が担任した6年生のクラスでの授業記録である。
4年生以上であれば追試可能である。
第1時「前転、後転」
リズム太鼓をたたいて、基礎感覚・基礎技能づくりを始める。次の順である。
走る→手押し車→後ろ向きで走る→足打ち跳び→スキップ→かえる倒立→ギャロップ→壁倒立 |
全体をバスケットボールのサークルに集めて、
「場作り」を指示する。小マットを8枚並べた簡単な場作りである。私のクラスでは生活班を8つに分けている(1班が4〜5人)ためである。場作りは1分以内でできた。
指示 前転を1人が5回したら座りなさい。 |
こう指示をして、前転をさせる。回数を示すと子どもたちは素早くできる。
指示 手をグーにして2回前転しなさい。 |
同じようにバリエーションを変えて、様々な前転をさせる。「腕組みする前転」「ひざを伸ばした前転(伸しつ前転ではない。起きあがるときは、ひざを曲げる。)「開脚前転」「跳び前転」をさせた。
「ひざを伸ばした前転」をするときに、次の指示をした。
指示 自分がした後にマットの横に必ず立ちます。(やってみせた。)友達を評価します。ひざ が伸びていたら○、曲がっていたら×と言ってください。 |
私も個別に評定して回った。最終的には、少しひざが曲がっていても全員に○と言った。
「開脚前転」をするときには、次のように言った。
指示 これから、自分がした後に、必ずマットの横に立つことを約束にします。 「うまい」とか「合格」とか「こうした方がいい」というアドバイスを必ず言います。 |
まだ、テクニカルポイントを教えていないので、適切な教え合いはできないが、約束作りのために行った。まだ「上手」とか「勢いをつけて」とかしか言えてなかった。「跳び前転」も同じようにさせた。
この後、マットの横で2人ずつ「ゆりかご」をさせた。後転の基礎技能である。それから後転である。同じように教え合いをするように言った。
曲がる子どもが5人、回れない子どもが1人いた。
マットの下に踏み切り板を入れた場で、苦手な子どもを集めて後転をさせた。回れなかった子どもは、通常のマットでも回れるようになった。しかし、曲がっていた子どもたちの修正は難しかった。
後片付けをさせて授業を終えた。
第2時「開脚前転」
第2時は、「体育指導辞典・器械運動編(明治図書)渡辺善男氏論文」の追試である。
基礎感覚・基礎技能づくり、場作り、後片付けは、毎時間ほぼ同じなので今後省くことにする。
前転を3回させて、マットに慣れさせる。試技の後、マットの横に付くことを忘れている子どもがいたので、全体で確認をする。
それから「開脚前転」である。まず、試しに3回ずつさせてみる。そして問う。
発問 足は開いた方が起きあがりやすいですか、閉じ気味の方が起きやすいですか。どち らも行って確かめなさい。友達がやるのもしっかり見ます。 |
目的意識を持っているときは、子どもがよく動く。どちらも2回ずつやったぐらいで確かめた。全員が足を開いた方がいい方に手を挙げた。「マットの外に足をつく方が起きあがりやすい。」ということを確認した。
発問 足はかかとからつきますか、つま先からつきますか。両方やってみるのと、友達のを見るのとで、確かめなさい。 |
これも全員「かかと」とわかった。「かかとからつけば、ひざが伸びる」ということを確認した。
発問 マットの前の方に手をついた方が起きあがりやすいですか。もものそばに手をついた方が起きあがりやすいですか。やるのと見るの とで確かめなさい。 |
発問 起きあがるとき、どこを見たらよいですか。A→天井 B→前 C→へそ やるのと見るのとで確かめなさい。 |
これはどちらも少々迷っていた。それぞれさせた後、「もものそばに手をつき、へそを見て起きると起きあがりやすい」ということを確認した。
指示 開脚前転には、4つのポイントがありました。 「マットの外に足をつく」「かかとをつく」「もものそばに手をつく」「へそを見る」 この4つのポイントについて、友達がやるのを見てアドバイスをしてください。「手をもものところについて」とか「へそを見て」とか「ばっ ちり」とか。 |
このように教え合いをさせた。私も「10点満点の8点以上が合格です。」と言って、
個別評定をした。1人が2回するうちには全員に8点以上をつけた。
昨年は起きあがれない子どもがいて、マットを高くする場作りをしたが、今年はひざが曲がっている子どもはいたが、全員が起きあがれた。
8点以上を言った子どもには、開脚後転をするように指示した。(後転ができれば、開脚後転はほぼできる。)
最後に開脚前転を1人ずつ発表させた。
第3時「側方倒立回転」
第3時は、「上掲書村田斎氏論文」の追試である。
前転、後転、開脚前転を3回ずつさせて、マットに慣れさせる。試技の後、マットの横に付くことはだんだんできてきた。
それから「側方倒立回転」である。まず試しに3回ずつさせてみる。おしりがマットと90度近くまで上がらない子どもがいる。また、ひざが曲がっている子どももいる。
回転できない子どもはいなかった。
全体を集めて問う。
発問 側方倒立回転をする時、A(前足のつま先は横に向ける)、B(前足のつま先は前に向ける)のどちらがよいでしょう。 実際にやるのと、友達を見るので確かめなさい。 |
両方とも試させた後、全員を集める。ほとんどがBだが、Aもいた。Aと考えた子どもにみんなの前でやってもらった。最初はAの形だが、やる直前になってBになった。本人もまわりの子どもも納得していた。
発問 側方倒立回転をして立ち上がるとき、後ろ足のつま先はどちらがよいですか。 A(横に向ける)B(後ろに向ける) 自分のと友達のとで確認しなさい。 |
やはり両方させた後、全員を集める。今度は全員がBであった。
「側方倒立回転は縦の動きである。」「始めるときは両手を上に挙げて、へそを前に向けて、足を1歩出す。」ということを私が実演しながら説明した。
発問 側方倒立回転をするとき、どこを見ればよいでしょう。 A→天井 B→前 C→手と手の間 自分のと友達のとで確認しなさい。 |
これは、手と手の間である。ここを見て行えば安定する。全員を集めて説明した。
この後、「魔法の赤玉です。」と言って玉入れの赤玉を出した。それをマットの中心に置かせて、見ながら側方倒立回転をさせた。1人3回ずつさせて次の指示をした。
指示 この前と同じように、側方倒立回転について教え合ってください。 「赤玉を見た方がいいよ。」とか「きれいにできてたよ。」とか言ってください。 |
前回の子どもたちの言葉かけは、「言うことなし。」が多かったが、今回は「ひざを伸ばした方がいい。」「両手を上に挙げた方がいい。」などのアドバイスの声が多く聞かれるようになった。
私は、前回同様、個別評定をした。10点満点である。今回は全員を9点以上にした。
最後に1人ずつ発表させた。
第4時「今までの復習、つなぎの技」
前転、後転、開脚前転、跳び前転、側方倒立回転と、今まで学習した技を3回ずつさせて、全員をバスケットサークルに集める。
「今日は、つなぎの技をやります。」と言って、「V字バランス」「片足バランス」「足をクロスして180度ターン」「両手を上に伸ばして180度回転ジャンプ」をやってみせた。
指示 これらの「つなぎの技」を技と技の間に入れます。 |
今回の場作りは、小マットを2つつながせたり、中マットを用意したりした。よって6人の6班にした。
「前転→足をクロスしてターン→後転」「前転→V字バランス→開脚前転」「側方倒立回転→片足バランス→前転」「前転→両手を上に伸ばして回転ジャンプ→開脚後転」
リズム太鼓を叩いて、それに合わさせながら1人2回ずつさせた。
もちろん、試技の後は子どもたちは何らかの声かけをしている。その約束はできている。ただ瞬時に友達の技の問題点を見て、ポイントを指摘するのは難しいようである。
あとから考えたのだが、試技をする方が「自分の手を見て下さい。」「つなぎの技を見て下さい。」などを言わせて、見ている人に視点を与えればよかった。
指示 自由に技と技の間に「つなぎの技」を入れて練習しなさい。後で先生が見に来ます。 8点以上が合格です。 |
しばらくして、スムーズにできているかどうかを個別評定した。最初は、2点とか3点とかつけていたが、最終的には、全員10点満点の8点以上をつけた。
後片付けの後、全員を集めて、「あと2時間勉強したら2人組で合わせた発表会をする。」ということを告げた。
技のレベルが同じぐらいの人と2人組を組ませた。
第5時「2人組発表会の練習」
第6時「2人組発表会の練習」
この2時間については、次のように行った。クラスをA、B18人ずつの2つに分け、第5時は、Aが「2人組発表会の練習」Bが「スポーツテストの体力診断テスト」。第6時は交代するという形をとった。
こうすれば、マットを思う存分使うことができる。
全員を集めて、「2人で合わせて、3つの組み合わせ技を発表する」ということを告げた。
「間に必ず『つなぎの技』を入れること」「側方倒立回転を入れること」を約束にした。
また評価の基準は、次の2つにした。
「ぴったりそろっていること」 「指先まで神経が行き届いていること」 |
体育館を前で、体力診断テスト、後ろで発表会の練習となる。
体育館内のすべてのマットを出して場作りをした。4コースできあがった。8列になる。
指示 できあがったら先生を呼びなさい。10点満点で点数をつけます。 |
最初は、2点、3点など、かなり厳しくつけた。その都度理由を言った。
そのうちだんだんそろってきて、指先も伸びてきて、全員が7点以上にはなった。
9.5をつけた組があった。つなぎの技がぴったり合って、テンポよくきれいにできていた。
ほとんどの子どもたちが、積極的に私に点数をつけてもらおうとする。順番待ちになるほどだった。
昨年度は1人ずつ発表会をさせたが、そのときの練習より数段楽しそうだった。
ここで、第5時、第6時のポイントをまとめてみる。
「マット運動」は、「跳び箱運動」に比べると、「できた!」という達成感が少ない。「マット運動」でも、子どもたちにその喜びを味わわせたい。
そこで、「二人組マット」をさせるのである。「二人組マット」とは、文字通り二人組でマット運動をするのである。
教師が、ただ「二人組でマット運動をしなさい。」と指示するだけでは、当然子どもたちのモチベーションは高まらない。高めるためには、これから述べるポイントを外してはならない。
ポイント@ 技を限定する。
次の三つのことを限定する。
1,三つの連続技をする。 2,その中に側方倒立回転を入れる。 3,技と技の間につなぎの技を入れる。 |
「側方倒立回転」を入れるようにしたのは、これを中心に学習を進めてきたからである。数や技を限定すると、子どもたちの迷いが少なくなる。技を考えるのに必要以上に時間をかけさせたくない。
ポイントA 一つ一つの技ができるようになってから行う。
当然、一つ一つの技ができるようになってからの「二人組マット」である。
私のクラスでは「前転」「後転」「開脚前転」「開脚後転」「側方倒立回転」は全員ができた。主に根本正雄氏、渡辺善男氏村田斎氏の追試をした。
ポイントB 発表会を意識させる。
「今日は練習の時間です。この次の時間は発表会です。」
このように言って発表会を意識させる。
ポイントC 発表会での評価の基準を事前に示す。
評価基準は次の二つである。
1,二人がぴったりそろっているか。 2,指先まで神経が行き届いているか。 |
この基準を事前に示しておく。
この二つの基準を子どもたちが意識すると、自然と技の出来栄えもよくなる。
ポイントD 個別評定をする。
十点満点で、子どもたちのところを個別評定して回る。
「指先に神経が行き届いていない。5点」
「若干ずれていた8点。」などと言って回る。評価の基準は先の二つである。
そのうち「先生採点してください。」と子どもたちから要求してくる。子どもたちは個別評定を喜ぶのである。
ポイントE 途中でいい演技を全に紹介する。
「全員集まります。○○さんと××さんのペアがとってもそろっています。見てみましょう。」このように途中で、いい演技を全体に紹介し、刺激を与える。
第7時「2人組発表会」
2組と2クラス合同で行った。私は2組の体育の授業もしている。2組も全く同じ流れで授業を行ったのである。
お互いが刺激を受ければということと、大勢の前での発表会の方が緊張感があり、盛り上がるのではないかと考えて、合同で行った。
最初10分間練習の時間をとった。全員が1回ずつ行う程度である。
本番はやりたい組からさせた。それが出なくなったら、名簿順に行った。リズムが合ってる組には自然と拍手が出た。
見ている子どもたちには、1組の発表が終わる度に、それぞれのよかったところを学習カードに書かせた。
全員を集めて、見学者に感想を言わせた。私がつけた点数は「公表していい」と全員が了解したので、最後に発表した。どの組にも7点以上はつけた。10点満点は1組である。
文責 東田 昌樹
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