昭和15年に於ける化学とは?


始めにお断わりして置くが、以下に続くのは概ね「雑文」とでも言うべきものである。

「其の様なものはイランから早く本編を読ませろ」と仰る方は、目次へどうぞ。

「化學新叢第二輯 國策化學」


 別にそんなものは必要無いと言う気もするが、この本に関する背景に付いて幾らか書いてみようかと思ったわけである。

 当書を入手したのは2002年(平成14年)は6月、初めて神保町古本街に出向き、案内役の知人に紹介された1件の古書店に於いてであった。まさか其の僅か2ヵ月後に当該店舗が閉められる事になるなどとは思っても居なかったが。

 さて、本書は所謂専門書と云う事に成るのであろうが、奥付には昭和15年1月5日印刷、同年1月20日発行とある様に、太平洋戦争直前の、大日本帝国が国際的に追い詰められつつあった時期に発刊されたものである。既に中国戦線は泥沼化しており、そうした中で圧力を掛けて来るアメリカ合衆国に対して国内の不満が高まりつつあった時期でもある。

 本書の内容は、そのような時局を反映してか、輸入品が締め上げられて行く中で如何に必要物資を確保して行くのかについて書かれている。取り分けドイツに対して非常に興味を持って接しているが、其の主な物は、各種戦争資源の確保に付いてどのような方策が取られているか、に関するものである。当時は「バスに乗り遅れるな」式の議論に依ってドイツとの同盟に走ったが、其れとは別の観点でも国家がドイツに興味を持っていたという事であろうか。

 尚、私が入手したものは第5版であり、其の発行は同じ昭和15年の4月15日であった。1版辺り何部が刷られたのか定かではないが、其れなりの興味を以って重版が重ねられたという事であろうか?当時の書籍流通形態が分からないので何とも評価しようがないが、興味深い数字である。ちなみに、定価は1円70銭。印刷が「株式会社三省堂蒲田工場」であったりして、今でも聞く名前に些か古さを感じなかったりもする。

 因みに、本書は昭和15年1月の印刷と在って、執筆時期は確実に昭和14年中、資料の収集などに就いては13年中には終えていたであろうと思われる。実際、文中に出てくる各種統計資料の年号は1937年迄が主たるものであり、一部に1938年と云う年号が見受けられる。

 以上雑多な所感では在るが、本書の内容を理解する上で幾らかでも助けになれば幸である。

 それでは、目次にお進み下さいませませ。


「化學新叢第二輯 國策化學」


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