一人一人がつくる文化祭へ!


 1995年の文化祭は、西中の文化祭にとって大きな転機となった。この年、3年生が200人全員が16の有志チームを組んで文化祭に参加

し、文化祭が文化部の活動を見る文化祭から、生徒一人一人が作り上げる文化祭へと変身したからである。

 3年生が作った有志チームは16チーム。演技の部にエントリーしたのが2チーム。展示・体験コーナーの部へのエントリーが14チーム。内容・内訳

は以下の表のとおりである。

コース名 内容 場所
劇a 英語劇「ロミオとジュリエット」:演技時間20分 体育館
劇b 劇「23分間の奇跡」:演技時間25分 体育館
劇c 創作放送劇「The copy of planets in the sea」(放送とOHPによる) 教室
ビデオa 環境映画「アースマン」(ゴミの行方をさぐるビデオ) 第2音楽室
ビデオb 映画「大内先生の秘密」(3年の担任大内先生の行動を追うドキュメント) 第2音楽室
日時計 大きな日時計を作り、校庭に設置する 校庭
ドミノ 西中の校章や文化祭のシンボルマークなどをドミノで作る(ビデオで上映) 武道室
千羽鶴 広告用紙で大きな千羽鶴を折り、校舎内につるす  
体験コーナー 環境人間双六(教室2つを使い、大きな双六を作り参加者が駒になって遊ぶ) 教室
10 トイレットペーパーホルダー 校舎内に各トイレにペーパーホルダーを作って置き、トイレを使いやすくする。 教室
11 愛のマッサージ さまざまな症状を軽くするマッサージコーナー。 教室
12 西中40年 もうすぐ創立40周年を迎える西中の歴史を展示。 教室
13 リサイクル 牛乳パックからの紙作り・廃油からの石鹸製作など実演。 教室
14 ペットボトル再利用 ペットボトルを使った濾過器の製作やペットボトルロケットの発射実演など。 校庭
15 シット団 さまざまな折り紙を展示し、折り紙体験コーナーも設ける。 教室
16 ギター弾き語り ギターの弾き語り。

1.文化祭何をする?

   昨年の『写楽』巨大壁画、一昨年の「カンダム」と、2年続けて大きなものを作りつづけてきたこの学年が今年は文化祭で何をつくるのか?。

 これは注目のまとであった。昨年の文化祭が終わったときの学年委員会の反省では、「来年も大きなものを作ろう」という意見が大勢を占めてい

 た。しかし、1学期に学年委員会を開いて方向性を検討したところ、予想に反してさまざまな意見が飛び出した。特に強かったのが「劇をやりたい」

 であった。昨年の文化祭で3年生が市の連合文化祭のために英語劇「三銃士」を上演したことが大きな刺激になっていたらしい。

   学年委員会だけでは決められないので、3年生全員にアンケートをとってみることにした。アンケート結果は以下のようになった。

学年全員で一つのことをする 63人
統一テーマのもとにクラス毎に違う事をする 79人
統一テーマのもとにいくつかのコースをつくり、一人一人が選んでグループをつくる 40人

   見事に異なった方向を目指しており、しかも5クラスのうち2クラスが「クラスとして」という意見が圧倒的多数を占めており、この時点で「学年とし

  て一つ」は不可能な状態であった。そしてこの時点での具体的な参加の内容についてのアイデアも「クラスで」「グループで」のほうが具体的であ

  り、「劇をしたい」という意見が多く、内容も「十五少年漂流記」「ひょっこりひょうたん島」「放送劇」と、すでに3つのグループが形成されていた。

   アンケートを受けた7月4日の学年委員会は、「いくつかのコースをつくって一人一人が選択する」と決定した。ただし「統一テーマのもと」という

  但し書きをつけ、「地球環境をまもる」という3年間続けたものという形で、学年としての統一性をとる形とした。そして内容としては「劇」「何かをつ

  くる」「映画・ビデオをつくる」「何かを調べて展示する」の4コースとし、希望者を募る事となった。

   一昨年・昨年とは違った形になった背景には、昨年の文化祭の英語劇の衝撃があることと、この年から文化祭の形がかわったことも大きく寄

  与している(資料参照)。

資料(昨年の文化祭と今年の文化祭の違い)
  昨年まで 今年から
参加形態の範囲 学年・クラス・委員会・部活の発表 学年・クラス・委員会・部活・有志・個人の発表
準備期間 すべて放課後 文化祭1週間前の午後は全て文化祭準備・午後の1時間は学年準備の時間
使用会場 演技(体育館)・展示(教室) 演技(体育館)・展示体験コーナー(校庭・武道室・教室・多目的ホールなど)

2.難航するコース決定

   しかし、各コースの内容決定は難航を極めた。1学期中の日程は厳しく、余裕はあまりないにもかかわらず、アイデアがなかなか出てこないの

  である。何度も企画のアンケートをとり、会議を開く事となった(資料参照)。

資料(各コース決定までの流れ)
月日 行事など 体育祭関係 文化祭関係 学年参加
7月4日 期末テスト 応援・マスコット・学年会議   提案事項の検討
  5日 一斉下校   エントリー用紙配布 アイデア募集
  6日 各種委員会 学年種目決定   アイデア募集
  7日       アイデア募集
  10日 中体連地区大会     コース案決定
  11日 中体連地区大会   エントリー締め切り コース案決定
  12日   応援・マスコットリーダー会   コース案決定
  13日   選手選出    
  14日 一斉下校 学年種目練習   選択希望調査
  15日 地区懇談会 選手名簿提出   選択希望調査
  17日 朝会・3者面談   参加団体発表  
  18日 3者面談     各コース会議
  19日 3者面談     各コース会議
  20日 終業式      

   7月14日の選択希望調査では、アイデアが出ずコース案を作れないままに7月4日の学年委員会決定の4コースで希望をとった。

コース名 アイデア 人数
「緑の館」「オペラ座の怪人」  44人
何かを作る 空き缶で宇宙戦艦やまと・空き缶でゴミ箱・染物・何かリサイクル 100人
映画 なし  12人
展示 溝の口やらここらへんのことを調べる  10人
未定    24人

   あまりに内容が決まらず11日のエントリー締め切りにも間に合わず、コース決定は遅々として決まらない。7月18日のコース会議までに内容が

  固まったのは、劇が3コース、何かを作るの中から折り紙をつくるグループが一つ出来ただけ。あとは、音頭をとるものがおらず、内容もグループ

  分けもできず、結局7月18日の各コース会議で、そのへんを決定せざるをえなかった。

各コース会議開催時のグループ
コース名 内容 備考
劇a シナリオ作成中 1組のメンバーのみ
劇b 十五少年漂流記 3組のメンバーのみ
劇c 創作放送劇「The copy of planets in the sea」  
ビデオ映画 内容未定  
調査展示 内容未定  
何かを作る アイデア@大きなものを作る…宇宙戦艦ヤマト
                  ゴミ箱
                  温度計
                  日時計
                  ポスター
     A学校に残せるものを作る
各アイデアに賛同する
ものでグループを作り
他のものは仲間を作っ
てから内容を決める。
折り紙 折り紙を展示する  
バンド バンド演奏する  

   内容とメンバーが決まっているのは1・2・3の劇のグループと7の折り紙のグループのみ。他はなかなかやりたい事が出てこず、この会議を通

  じて、とにかくいくつかのグループをつくらせ、出来たグループで内容を考えるという、本来のあり方と逆の取り組みとなってしまった。学年全員が

  一人一人何をやるかを自分で選択して動くと言う経験は全く初めてなのだから当然と言える結果であるが(荒れていた学校を正常なものにす

  るには生徒が皆で何かに取り組むことをすることが必要で、さまざまな行事を増やして学年みんなで取り組むことを通じて、学校を活性

  化してきた経緯がある。今回の文化祭は、学年がそして学校が、生徒一人一人の主体性を大事にするという新しい段階に踏み込もうと

  言う事で、大きな挑戦であったといえる)

   この1学期中の会議やその後の2学期の初めの体育祭準備期間中の教師からの働きかけを通じて、14のコースに分かれ、少しづつ内容も決

  まって行った。でも9月の体育祭の終了後の段階でも半数以上のコースが内容が決定しておらず、文化祭全体の演技スケジュールも展示体験コ

  ーナーの会場配置図も作れないありさまであった(資料参照)。

資料(9月14日時点でのコース別準備状況)
コース名 内容 今後の課題
劇a 英語劇「ロミオとジュリエット」 @シナリオや配役を決める事。
A大道具・小道具の種類を決め作る事。
劇b 劇「十五少年漂流記」 @シナリオや配役を決める事。
A大道具・小道具の種類を決め作る事。
劇c 創作放送劇「The copy of planets in the sea」 @シナリオや配役を決める事。
A大道具・小道具の種類を決め作る事。
ビデオa 環境映画「アースマン」 @シナリオを作ること。
A撮影日程を決め、道具を作る事。
ビデオb 未定 @内容を決めること。
Aシナリオを作ること。
B撮影日程を決め、道具を作る事。
日時計 大きな日時計を作る @日時計の大きさや材料を決める。
Aどこに置くか決める。
ドミノ 自作のドミノでドミノ倒しの実演をする @どんな形・大きさ・デザインのドミノにするか。
A材料はどうするか。
Bどこでどう実演するか。
千羽鶴 再生紙で大きな千羽鶴をつくる @どのくらいの大きさの千羽鶴をつくるか。
Aどこに展示するか。
B必要な材料をどうやって集めるか。
体験コーナー コンピューターゲームをつくる @どんな内容のゲームを作るか。
Aどんな方法で公開するか。
10 何かを作る(2) 未定 @何をつくるのか。
Aどこにどんな方法で展示するのか。
B必要な材料はどうやって集めるのか。
11 何かを作る(4) 未定 @何をつくるのか。
Aどこにどんな方法で展示するのか。
B必要な材料はどうやって集めるのか。
12 何かを作る(5) 未定 @何をつくるのか。
Aどこにどんな方法で展示するのか。
B必要な材料はどうやって集めるのか。
13 折り紙 折り紙を展示し誰でも参加できるゲームを行う。 @ゲームの内容は。
14 バンド バンド演奏 @どこでやるのか。
A何を演奏するのか。演奏時間は。

3.文化祭に向かって一直線!

    文化祭にむかって各コース内容がはっきりし以下のようなコースができ、演技スケジュールや展示会場図も完成したのは10月に入ってからで

   あった。

コース名 内容 場所
劇a 英語劇「ロミオとジュリエット」:演技時間20分 体育館
劇b 劇「23分間の奇跡」:演技時間25分 体育館
劇c 創作放送劇「The copy of planets in the sea」(放送とOHPによる) 教室
ビデオa 環境映画「アースマン」(ゴミの行方をさぐるビデオ) 第2音楽室
ビデオb 映画「大内先生の秘密」(3年の担任大内先生の行動を追うドキュメント) 第2音楽室
日時計 大きな日時計を作り、校庭に設置する 校庭
ドミノ 西中の校章や文化祭のシンボルマークなどをドミノで作る(ビデオで上映) 武道室
千羽鶴 広告用紙で大きな千羽鶴を折り、校舎内につるす  
体験コーナー 環境人間双六(教室2つを使い、大きな双六を作り参加者が駒になって遊ぶ) 教室
10 トイレットペーパーホルダー 校舎内に各トイレにペーパーホルダーを作って置き、トイレを使いやすくする。 教室
11 愛のマッサージ さまざまな症状を軽くするマッサージコーナー。 教室
12 西中40年 もうすぐ創立40周年を迎える西中の歴史を展示。 教室
13 リサイクル 牛乳パックからの紙作り・廃油からの石鹸製作など実演。 教室
14 ペットボトル再利用 ペットボトルを使った濾過器の製作やペットボトルロケットの発射実演など。 校庭
15 シット団 さまざまな折り紙を展示し、折り紙体験コーナーも設ける。 教室
16 ギター弾き語り ギターの弾き語り。

    体育祭終了後で10月はじめの秋の中体連の大会、3年生にとっては最後の大会の練習の合間をぬって、各チームは会合を持ち、ようやくこ

   こまでこぎつけた。このあたりから朝は7時から学校に登校し、準備をし、授業を全部やり終えた後、放課後は部活動で大会に向けての練習

   や、文化祭に向けての練習を午後6時までやって下校するという、とても厳しいスケジュールになっていった。文化祭1週間前の準備期間を迎え

   るまでは、文化祭準備に全員で専念できる時間は朝しかないからである。特に大変だったのは劇のグループ。他のコースは任務分担をして準

   備できるが劇は演技者全員がそろうことが必要。毎日7時の登校での朝練習が続いた。

    そして文化祭一週間前。授業は午前中5時間にして、午後はすべて文化祭準備にあてる。しかし学年全員が文化祭のコースに専念できるの

   は6校時の45分とその後の学年準備優先時間の合計1時間30分のみ。そのあと文化祭にむけて文化部に入っている生徒や委員会でも準備

   のある生徒はそちらが優先される。かなり厳しい準備状況ではあったが、なんとか文化祭当日にこぎつけた。

4.みんな一人一人頑張った!!

    文化祭当日の10月22日。午前中の演技の部では2つのチームが劇で参加した。

劇a:英語劇「ロミオとジュリエット」

劇b:23分間の奇跡

   そして午後の展示・体験コーナーの部では他の14のチームがそれぞれの持ち場で頑張った。                       

劇c:放送劇 トイレットペーパーホルダー
千羽鶴
愛のマッサージ 西中40年(創立以来の卒業アルバムを展示)
リサイクル:廃油から石鹸をつくる実演 ペットボトル再利用:ペットボトルロケット発射
折り紙の展示と実演 ギターの弾き語り

5.文化祭で得たものは

   3学年全員の200人がそれぞれ有志グループを組んで文化祭に参加するという、かつてない規模の文化祭。なかなかコース内容が決まらず、

  結局フル回転できたのは文化祭の一週間前という付け焼き刃な取り組みであったが、得たものはとても大きかったと思う。生徒たちは一人一人が

  自分の選んだコースをやりきった。昨年までの2年間と違い、3年生全員の一人一人が自分で考え企画し作るという場面を初めて体験した。リー

  ダーのアイデア任せではなく、一人一人がリーダーにならなくてはいけない場面。この場面を自分たちで乗り切ったことは、一人一人に大きな自

  信となったようである。また、あとに続く後輩学年にも大きな影響を与えた。先輩たちの有志グループの活動に刺激された下級生たちは、次の年

  度の文化祭においてさまざまな有志グループを組んで参加した。参加団体のあまりの多さに、午前中演技・午後展示という枠では入りきれなくな

  り、結局生徒会運営委員会の決断で、演技と展示を一日平行して実施し、生徒は自由にそれを選択して参加するという文化祭に変えることとな

  った。

   さらに職員にとってもこの文化祭は得がたい経験となった。3年生の最後になって一人一人がリーダーとなって動くのでは経験もなく無理であ

  り、一年生から一人一人が主体的に動く事を求め、計画的に動き方考え方を鍛えていくことが必要との認識が生まれ、恥ずかしい話しではある

  が「学年経営における3年間計画」の必要性が強く認識された。翌年96年からこの考え方は実行に移され、ちょうど始まった環境教育の委嘱研

  究に多いに生かされることとなる。

 


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