日教組の現局面と我々の進むべき道  ──連合加盟阻止の闘いを最後までやりきろう!  

──「反対派」としての長期的な活動の準備と全国的な結合の強化をはかろう!──    

 

1. 「連合」加盟は決定的・・・ではない!     

すでに、日教組の「連合」加盟は決定的であるかのような意識が、活動家の中に広がり始めている。そして、日教組運動内部における活動に見切り

をつけて、独自の組合的結集を早期に果たそうとする傾向もまた、広がりつつある。

しかし、このような情勢判断は、独断的な早計なものと言わなければならない。

この間の日教組を巡る状況を表面的に見る限りでは、先のような情勢判断を支持しているように見えることは確かである。

6月2日の総評拡大評議員会において、「連合の進路」等の基本文書が承認され、今夏の各単産大会において、この基本文書の批准と統一準備会

および官民統一の連合への加盟を決定してくることが決まった。そしてそれを受けて、6月10日に共産党系の12単組委員長名で、「教職員組合全

国連絡会」の結成を呼び掛ける。さらにこの動きを「分裂策動」と非難しつつ、日教組中央は7月11日に「連合の進路」等の基本文書の承認と「連

合」加盟を骨子とする方針案を決定した。そして7月31日に「全国連絡会」結成集会が行われ、「9月の大会は、日教組の右転落を追認する場にす

ぎない」と宣言され、9月大会のボイコットすらささやかれている。

このような動きと併せて、7月参議院選挙における社会党の大勝と民社党・共産党の後退の状況は、社会党左派の内部に、社会党への幻想と「連

合」雪崩込みの動きを強め、共産党系活動家の内部に、状況へのあきらめとさらなるセクト的対応へと走る傾向を生み出している。状況を以上のよ

うに見れば、9月大会における、日教組の「連合」加盟は決定的であるように見えることはたしかである。

しかし、状況はこのように単純ではない。

共産党系の動きにした所で、「全国連絡会」に単組として名乗りを上げている所は、ごく少数派の組合か、京都教組のように内部に反対派を抱えて

いない所が多い。他の単組が、京都教組のように上納金を納めず、大会ボイコットをできるかというと、問題は簡単ではない。組織内部に社会党系

の反対派を抱えている所では、このようなセクト的行動は、直ちに自己の組合の分裂に繋がり、組織人員の大幅減少の危険すらある。現に、「全国

連絡会」は大会ボイコットを言明しているわけではなく、「我々が日教組に残る限り、日教組は連合に加盟できないのだから,早急にでる必要はな

い。」とする傾向もあり、社会党左派とともに、単組の「連合加盟反対」の方針を堅持し、日教組大会において、「連合」加盟を阻止しようと動いている

所もある。共産党系の主な単組のボイコットはあるかもしれないが、他の多くの単組は大会に参加し、日教組のその後の状況を見て動くというの

が、現在の所の状況ではないだろうか。

また「連合加盟反対」を決議している社会党左派系の単組の幹部には、参議院選挙における社会党の大勝によって、「連合」雪崩込みの傾向が強

まっていることはたしかであるが、単組の大会での決定に縛られ、組織内部の反対派や大衆との関係で、直ちに「連合」雪崩込み路線で走りきれな

い面がある。

左派の最大単組である北海道教組は、日教組中央の連合加盟の方針支持を明確に打ち出し、8月31日の臨時大会において、それを決定しようと

している。しかし、いくつかの支部がそれに反対し、しかも北海道において大きな影響力を持っている札幌市職労が「連合加盟反対」を決議したこと

が、北海道教組の最大の支部である札幌市教組に大きな影響を与えている。この札幌市教組の動向しだいでは、共産党系の支部ともあわせ、8月

31日の大会において、連合反対派が過半数を越える可能性もあり、予断を許さない状況にある。

また右派は、すでに7月において、日教組大会において「連合加盟」が否決されたならば、日教組を割ってでも連合に加盟することを言明しており、

日教組の首脳人事においても、中間派・左派系である福田・大場執行部に変えて、右派主導の執行部体制をとろうとしている。しかし、左派は現執

行部の留任を主張しており、人事を巡っても綱引きは現在なお続いている。日教組の「連合」加盟を巡って、社会党左派を巡る綱引きが行われてい

るというのが現状であり、共産党系の動きとも併せ、まだ状況は流動的であると言わなければならない。

日教組の連合加盟は決定的であるとする言説は、左派や共産党系との統一戦線構築の動きを放棄し、組織内部において、「連合」に反対する大衆

的闘いを放棄することにつながり、右派の策動を支援してしまうものであることを忘れてはならない。

9月大会を控えたこの当面する一時期に必要な行動は、社会党左派・共産党との統一戦線による「連合」不参加をかちとるための闘いである。単組

が大会において「連合不参加」を決議している所においては、執行部に対して、大会における原案反対、「連合不参加」の修正案の提出および、主

張を同じくする単組との共同行動の推進を申し入れるべきであろう。そして、この行動と、日教組中央が「連合」加盟を打ち出したことの意味とを大

衆的に知らせる活動をしていくことであろう。

また、共産党系の単組においては、執行部に対して、「連合加盟反対」の立場に基づき、9月大会において、社会党左派との共同行動をとるように

要請し、独自的な組織的結集の動きを直ちに中止するように申し入れるべきであろう。そしてこの動きを大衆的規模において展開する必要がある。

都障教組の左派系活動家が、「臨時大会開催」を要求する署名運動を背景として、「全国連絡会」参加、ナショナルセンター準備会加盟をすすめる

動きに反対して、執行部と交渉・申し入れをおこなった。夏休み中でもあり、なかなか大衆的広がりを持ちにくいようだが、この闘いの意味は大き

い。このような闘い方をおおいに学ぶべきであろう。日教組の分裂を進める右派系の教組においても、社会党左派・共産党と連携した、「連合」加盟

阻止の闘いが必要である。残されたわずかな時間、以上のような闘いを最大限やりきろうではないか。この闘いの進め方如何が、今後の日教組の

再生をめざす闘いの質を決定するだろう。

 

2. 直ちに独自的な組合結集をはかることは間違いだ!

しかし、日教組大会後の動き方が、直ちに問題になってくる。しかも、日教組大会の最悪の状態、つまり、共産党系の大会ボイコットを伴う、「連合」

加盟決定の場合、直ちに、我々の動き方が問題になってこよう。この場合には、多くの社会党左派系の単組は、大会決定に従って、「連合」加盟の

道を歩むであろうし、共産党系の単組は、日教組脱退・階級的ナショナルセンターへの道を走るに違いない。どちらの道の場合も、今後の教組運動

の内実の大幅な後退は避けられない状況から、左派の独自的な組合結集をはかる動きは、各地に出てくるに違いない。

この行動の基礎になっている情勢判断は次のようなものである。

「連合」の中に入ってしまえば、その国家・資本家に屈伏した路線の下に大衆はがっちりとからめとられてしまい、左派は何もできなくなる。また共産

党系のナショナルセンターも、その階級協調的路線を強め、官僚主義的組合運営ともあいまって、その運動の内実は、限り無く「連合」に近づいてい

く。大衆は、これらの組織の下にがっちりと組み込まれ、その内部からは闘いはおきてこないであろう。このような右翼的組織の左側に、階級的な労

働組合を直ちに構築し、その先鋭な闘いによって、大衆にインパクトを与えることがひつようである。「全労協」に結集する階級的教育労働者の組合

を直ちに結成するべきである。

一見して、きわめて論理的な結論であるかのようである。

しかし、ようく考えてみよう。「全労協」はナショナルセンターではなく、労働組合の共闘組織である。共産党のようにナショナルセンターと言わずに、

労働組合の共闘組織としている意味を考えてみよう。「全労協」は、「連合」に行かない・行けない組合に今後の全国的・地域的結合の場を用意する

性格であるとともに、労働組合の共闘組織とすることによって、「連合」に行かざるをえなかった労働組合や、「階級的ナショナルセンター」に行かざ

るをえなかった労働組合との共闘の道を準備する性格をも併せ持っている。

何故ここで直ちにナショナルセンターへと持っていかないのか。主要には、二つの理由があろう。

第一に、ナショナルセンターとするためには、その軸となる、階級的な政治勢力、簡単に言えば、「労働者党」がないということ。

第二に、今後「連合」路線には、大きな大衆的分岐が予想され、その過程において、「連合」に行かざるをえなかった社会党左派系の活動家や、大

衆の内部において、路線的選択が問われる機会が生まれること。

以上の理由によって、現在「全労協」は、労働組合の共闘組織に止めざるを得ないのである。この情勢判断が、先に述べた、直ちに階級的労働組

合の形成を図ろうとする傾向の情勢判断と決定的に違う所は、「連合」路線は盤石ではないという所にある。左翼的活動家の内部には、先の参議院

選挙の社会党の大勝を「困った事」「勝ちすぎ」と見る傾向がある。たしかに、このことによって、社会党左派の内部に社会党に対する幻想が広ま

り、「全労協」を推進しようとする傾向が弱まっているという現状から判断すれば、このとおりであろう。

しかし、このような見方では、参議院選挙にあらわれた、大衆の巨大な政治的進歩とその事が将来生み出すであろう、「連合」路線との大衆的規模

での分岐・分裂の状況を見て取ることはできない。

今まで、地縁的・血縁的、あるいは会社的結合の論理に従って投票行動を行ってきた大衆が、自らの階級的な生活の利害に基づいて行動しはじめ

たこと。これが参議院選挙にあらわれた大きな変化である。農産物自由化反対を掲げて自民党に鉄槌をくらわせた農協青年部を中心とした農民の

動き。消費税廃止を掲げて自民党に「おきゅうをすえた」中小商店主の動き。脱原発・命と暮らしを守ろうというスローガンの下に、暮らしの根本・社

会の根本を問い直した主婦を中心とするグループの動き。これらが相互にからみながら、従来の地縁的・血縁的・会社的結合の枠を踏み出して、自

民党政治への反対を大衆的に表明したのが今回の参議院選挙であった。

この動きが単なる一過性のものではなく、戦後の資本主義の発展の中で起きた、社会的な構造の変化に伴う意識変化であることは、言うまでもな

い。ここでは詳しく展開する余裕がないので、これらの動きが、農協青年部や、生協を中心とした主婦の動きなどに見られるように、かなり自立的な

ものであることを指摘するにとどめておこう。(詳しくは、「インターナショナル」No5および、「労働者の旗」No6の諸論文を参照していただきたい。)

このような大衆の政治的進歩は、それが票を集中させて期待している社会党の路線との間に、将来大きな路線的分岐が生じることは間違いない。

この選挙における大勝によって,社会党は「連合」路線へと突っ走っていくことであろう。それは、「現実主義路線」と言われ、要するに資本主義社会

の現状を容認していくものになるはずである。したがって、今回の参議院選挙にあらわれた大衆の意識変化は、資本主義社会の構造変化とそこか

ら生じた矛盾に根差しているために、この社会党の「連合」路線とぶつからざるをえないのである。

選挙中から出ていたことだが、社会党は、安保・原発・自衛隊の問題などで、現実的政策をとることを表明している。8月18日の関西経済同友会首

脳との懇談会で、社会党の伊藤茂政策審議会長は次のように述べた。

『(非同盟・非武装・中立という方針は)あくまで理念的な目標であり、一気に日米安保条約を廃棄するのは適切でない』

『脱原発のスローガンだけでは政党の責任は果たせない。反原発の市民運動とは一線を画して、総合的にエネルギー問題を審議していきたい。』

『移行期間の30年くらいは安全に十分注意して原発を動かしていかねばならない。』(以上毎日新聞による)

また消費税についても、一旦白紙にもどしたうえで、間接税の必要性を認めた上で、再度税制改革を図るとしており、農産物自由化についても、自

民党と違った政策をもっているわけではないので、農産物自由化を認めて行く方向になるであろう。

このような路線は、土井社会党の新鮮なイメージの下に引きつけられた大衆との間に重大な齟齬をきたすにちがいない。原発をすでに抱えている

地方の運動との関係で、そして逗子のように、具体的に安保にからんだ問題を抱えている所との関係では、直ちに路線的分岐が生じてこよう。当面

予想されている衆議院選挙までは、問題が大きくならないとしても、その後の数年間において、現実政治の中で、社会党の「連合」路線は問われて

いくのである。

このことは、臨教審路線を巡る闘いにおいても同様である。文部省・教育委員会は、ますます君が代・日の丸を強制的に現場で実践させようとしてく

るだろう。また、能力別学級編成や、これと同列の入試改革も行われるだろう。その時、「連合」路線の下に動いている日教組やその単組はどう闘う

のか。現在、君が代・日の丸などは、一部の突出した部分での闘いに過ぎない。 しかし、君が代・日の丸が単なる行事における実践以上に、教育

内容全般への普遍化を含めて全国的に強行されていく過程で、それは大衆の中にある平和意識や、近来ますます広がりつつある平等意識とぶつ

かることになろう。そしてこの時、一人一人の教育労働者や父母の姿勢が問われ、大衆的分岐が全国的に拡大していくであろう。

社会の深部で起こっている大衆の意識変化との関係で「連合」路線を見ていくとき、けしてそれは盤石ではないことがわかる。かなり具体的な問題を

とうして、「連合」路線が問い直されることになろう。この時に生じる大衆的な規模での路線的分岐にいかに介入するのか。このことを考えていく時、

今直ちに組織分裂をして、階級的な組合を結成するという問題の立て方はできないはずである。共産党系の動きは、この社会の深部の動きとの関

係で、今回の参議院選挙の結果を見ていないことのあらわれであり、「連合」路線を盤石のものと見ている結果でもある。これと同様な誤りをしては

ならない。

将来の大衆的な路線分岐にそなえ、たとえ日教組が連行へと加盟したとしても、今ある組合の内部に止まって闘い続けなければならない。そして自

分の所属する単組がそれに追随して連合に加盟することを阻止する闘いを継続するとともに、その闘いに敗れても、内部で反対派として、路線的批

判と独自の組織的広がりをもとにした大衆運動を展開しながら、闘いつづける必要がある。それは、現在の闘いを、社会党左派系の活動家や共産

党系の活動家とともに闘うことを通じて、彼等の政治的な成長、現在の党路線との分化を促し、将来の大衆的な路線的分岐に介入できる新たな政

治勢力を形成していく闘いでもあるのである。

 

3. 「反対派」としての長期的な活動の準備・全国的な結合へ!

日教組大会の結果の如何にかかわらず、今後の我々の闘いは、各々の置かれた単組の状況によって異なってくるであろう。我々は、現在の組合

組織の内部に止まって、将来にそなえた「反対派」としての活動をするべきであると考えている。そして、「連合」路線への反対の旗を掲げながら、具

体的な闘いを通じて、組合の路線を批判しつづける必要があると考えている。(日教組大会の結果によっては、この具体的方法は変わってこよう

が。)

しかし、その活動の形には、単組の状況の違いということを頭に入れて置かなければならない。社会党右派系の単組においては、左派が絶対的に

少数派であるという状況の下で、反対派活動を続けねばならない。ここにおいては、国労などの他の組合との地域的結合をはかりながら、社会的領

域に手を伸ばして活動しなければならないだろう。ここでは、組合機関を利用することはかなり絶望的である。

社会党左派系の単組においては、我々はかなり組合機関を利用した闘いができる。ここにおいては、各地域で形成される「全労協」との組織的関係

もつくれるかもしれない。

共産党系の単組においては、社会党右派系の単組における闘い方とかなり近いものになるであろう。

しかし、闘いの形に違いがあるとはいえ、今後の反対派としての活動の広がりをつけるためには、現在の単組の枠を越えた闘いを構築しておかね

ばならないだろう。具体的に言えば、同一の都道府県における、義務制と高校との組合組織の分裂の問題であり、臨任の労働者や現業の労働者と

の分裂を乗り越える問題でもある。また、自らの政治的成長のためにも、他の労働組合組織との共闘も考えて置かねばならない。さらに、臨教審路

線反対闘争を進める上でも、従来の教組運動の枠に縛られずに、親や地域の労働者、そして生徒との運動における結合という、社会的領域にも踏

み込んでいく必要があるだろう。

このような新しい闘いを展開していくためには、我々の、社会党系や共産党系から独立した、政治的な全国的な結合を強化しておく必要がある。

この間の「教組産別交流会」と「日教組運動交流全国協議会」との合同の討論の中において、「全国教労(仮称)」の結成が提起され、その性格を巡

って何度も討論が重ねられてきた。我々は、この「全国教労」の性格を先に述べてきたような文脈において考えるべきだと思う。

つまり、それ自身は全国的な労働組合の結集体ではない。全国的な労働組合の反対派の政治的な結合体である。それは、上部組織の異なる各単

組の内部において、統一した観点から反対派活動を進めるための指導機関であり、そのような役割を果たすものへと発展させなければならない。そ

れは、「全労協」に結合し、それとともに闘う教育労働者の指導機関として、闘いの方針を提起するものでもある。

我々は、このような全国的結合を強めていく準備を労戦を巡る最後の局面の闘いにおいて推進していく必要があると考える。

これは、今後かなり長期にわたる反対派活動を有利に展開するための武器であり、将来の大衆的な路線分岐に切り込んでいけるような新しい労働

組合運動をつくるための武器でもある。そして、反対派活動をつづける過程においては、組合指導部との衝突・組合からの除名ということも、時期の

違いはあれ、それぞれの所において出てくるであろう。このような事態に対応し、将来に備えるための武器でもある。さらには、社会党左派や共産党

系との統一戦線を推進し、彼等の政治的成長とその党との路線的分岐を促し、新しい政治的勢力を形成する中核部隊へと自らを飛躍させるための

武器でもある。

「連合」加盟を巡る最後の闘いの局面において、各地域での反対派の組織的拡大をはかると同時に,その全国的な協同をおしすすめ、情報交換と

情勢討論・具体的行動方針の討論をふかめながら、全国的な政治的結合をますます強化していこうではないか。 


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