●7月末の日本の新型コロナウィルス感染状況をどう考えたらよいのか!●
非常事態宣言が解除されて1か月ほどたった現在、徐々に経済活動がもとに戻り、人と人との接触ももとにもどりつつある。
この6月末から7月に入って以後、まず東京を中心にして感染者が急増し、ついには全国で一日に1000人を超す感染者が確認されるに至って、「なぜこれを第二波といわない!」「なぜ政府は緊急事態宣言を再発令しない!!」との疑問の声が飛び交っている。そしてこの疑問の声は、野党政治家や一般庶民だけではなく、医者や様々な分野の学者にも広がっている。
だがこの疑問の声の主たちには、根本的事実の把握が欠けていると思われる。
3・4・5月と急増した感染者数が6月に入って一旦落ち着いたのは、多くの人が仕事や学校に行かずに在宅を続け、人と人との接触を極力減らした結果である。実際に全国の学校は小中学校から大学に至るまで休校となり、飲食店や居酒屋など人の集まる場所は行政の休業要請によって閉店し、テレワークの可能な業態では在宅勤務が広がり、ウィルス感染が拡大する原因である人と人との接触機会が大幅に削減されたからである。
非常事態宣言を解除したということは、ウィルスがいなくなったということではなく、感染拡大の勢いが鈍ったので、徐々に経済活動をもとに戻し、人と人との接触機会を増やすということを意味する。
したがって感染拡大時に理論疫学を駆使して感染拡大の今後を予想した北海道大学の西浦教授は、非常事態宣言が解除されて一か月も経てば、一日に100人をこえる感染者が見つかる状態に戻ると指摘していた。
要するに今現前に広がっているウィルス感染は「第二波」ではなく、第一波が完全に制圧されていないなかで人と人との接触機会をもとに戻す動きをしたために、感染拡大が再燃した現象に過ぎない。
日本はこの新型コロナウィルスが発生した国ではないので、その流行は必ず国境を越えた外部からやってくる。
第一波は、遅くとも2019年12月には中国武漢で広がっていた新型コロナウィルスが、この12月から2020年1・2月にかけて、中国からの観光客や日本人の帰国者によってもたらされたものである。
そして3月になると中国から欧米に広がっていたウィルスが、年度末にあたっていたので欧米から日本に帰国する人たちによって、当時は空港での検疫でも発熱などの症状のない人にはウィルス検査は行われていなかったために大量に持ち込まれ、これが3月後半からの感染者の急拡大につながったのだ。
実際に流行していたウィルスは、2月までのウィルスは中国武漢由来の遺伝子の型を持ったもので、3月半ば以後のそれは欧米で流行した遺伝子の型を持っていたので、この時期に日本で流行した新型コロナウィルスは交代したことが確認されている。
だがこの2・3月時期に日本でもウィルス感染が拡大し、全世界でも深刻な感染拡大が続いたことで外国との通交が大幅に制限され、さらに感染者の4割から8割が無症状者であるとの認識に基づいて、空港での検疫ではすべての人にPCR検査を実施する体制に切り替えたことで、新たな外国からのウィルスの流入は当面
阻止されているのである。
最近では欧州の流行は一旦落ち着き、流行の最前線は南米と南アジアに移り、この地域に出かけていた日本人や在留外国人の帰国者の中から日々新型コロナウィルス感染者見つかっているが、渡航者自体が少ないことから、そして再度感染拡大が起きているアメリカからの渡航は禁止されているため、現在のところ海外からの新たなウィルスの広がりは阻止されている。
これは再び感染が拡大しているアメリカや欧州でも同じである。
どこの国も海外との通交を厳しく制限したままなのであるから、今起きている感染拡大はみな、第一波の再燃現象だ。
そもそも日本の感染対策は諸外国とは大いに異なり、PCR検査を大幅に制限する政策がとられた。このため風邪の症状が出て相談センターに持ち込まれた多くの相談の9割以上が検査もされずに放置され、検査されたのは、すでに確認された感染者の濃厚接触者と海外からの帰国者、そして重い症状を発している人だけに限られたため、日本での感染確認者は欧米の100分一以下となったのだ。
言い換えればこれは絶対多数の感染者が軽症であるとの理由で放置され、ましてや感染しても無症状の人は問題にすらされなかったのだ。
感染が再拡大するまえの6月15日でみると、全国で感染確認された人は17426人。死者は929人である。この時点での致命率は5.3%。
しかし全感染者が捕まえられず多くが放置されたと考えると、この数字だけでは状況は確認できない。
最も確実なのは死者数である。
この929人に、新型コロナウィルスの世界で理論的に確認されている致命率0.66%を考慮して151倍すると、実際の感染者数が出てくる。
14万279人。実に12万人以上の無症状や軽症の人が見逃されている勘定になる。
しかし929人という死者は、実際に感染が確認されて以後死亡した人と、死後に感染が確認された人の合計に過ぎない。
検査を受けられなかった軽症者の中には、その後容体が急変して死に至った人がたくさんいたはずである。
このあたりを明らかにする数字が、毎年の月ごとの死亡者数集計をもとにして、例年の死亡者数との比較で出した「超過死亡」という数字である。
6月12日付の日経新聞において4月の特定警戒11都府県における「超過死亡」の集計がなされている。
この記事によると4月の東京の超過死亡は1056人。4月に東京で新型コロナウィルス感染による死亡者数は104人。つまり確認された死亡者の10倍の死者があったということである。
そして特定警戒地域11都府県の合計の「超過死亡」数はなんと、5765人。
このすべてが新型コロナウィルスによる死亡者ではないとしても、恐ろしい数の死亡者が見逃されていると言わざるを得ない。
5月1日時点の全国の死亡者数は486人。なんと総数でみても確認された死者の10倍以上である。
こう考えてみれば、6月15日時点の死者数929人の10倍。つまり9290人以上の死者があったと考えざるを得ない。約1万人である。
となれば実際の感染者はその151倍。つまり151万人ということだ。
7月23日での死亡者は992人。感染確認者は28230人。この一か月強の間に1万人ほど新たな感染者を見つけたといっても、なんと膨大な数の死者と感染者が見逃されていることか。
もし151万人の感染者がいたとすれば日本人総数の1%強である。
先日横須賀市が実施した抗体検査では抗体を持っている人が1%いたということで話題になっているが、上の推定によく当てはまる数字である。
これだけ多数の無症状者を見逃した中で人と人との接触をもとに戻せば、感染が急拡大するのは当然である。そのうえ東京都のように、無症状者までもどんどん検査すれば、一日に300人越えの感染者確認がなされるのは当然のこと。
多くの無症状や軽症の感染者が放置されている現状では、人と人との接触を感染拡大以前にもどすことは危険である。
この疫病は感染者の唾に含まれたウィルスが飛散することで広がる。
ということは大きな声を出すことが感染を拡大する原因となり、多くの人が集まって大声で会話する場が最も危険ということだ。
つまり多人数が集まって会食したりお酒を飲む場が最も危険であり、こうした場を避けて感染防止対策をとっておれば安全ということになる。
したがって秋以降に海外渡航がもとのように自由化された時が一番問題である。
全世界の感染が止まっていなければ、海外から日本にやってくる人や海外から帰国する人の中に多数の感染者がいることが想定される。この多数の渡航者全部をPCR検査して陽性者をすべて隔離する措置が取られない限り、秋以降に、海外からの第三波がやってくることは確実である。
日本の空港での検疫でPCR検査能力は、一日に3000件に過ぎない。これを1万件以上に増やす準備がされているが2018年のデータでは訪日外国人数は年間で3119万人である。日単位で平均すれば8万人以上。これに日本人の帰国者が加われば、どう考えても1日に10万件も空港でPCR検査を行い、陽性者を全部隔離収容する医療施設がなければ、検疫でウィルスの侵入を阻止することは不可能だ。
つまり秋以降必ず海外からの第三波がやってくるのだ。
これに備えてPCR検査体制の拡充をやっておかなければならないし、病院の受け入れ態勢も確立しておかなければならない。
そして何よりも今までの流行で疲弊した病院体制を、人と金の手当てで補強して置かなければならないし、休業で疲弊した飲食店や観光業への休業補償も手当てしておかなければならない。そして、再び秋以降に非常事態宣言が出ることは確実なのだから、人と人との接触を減らすための休業命令とそのための損失補填ができるような体制をとっておかなければならないのである。
こうした対策を一切とろうとしないのが現・安倍政権である。民を守ろうとしない安倍政権に天罰を!!!
2020.7.25