◆新型コロナウィルスと平曲会1◆



●新型コロナウィルス感染症とはどんな病気か

 コロナウィルスはもともと風邪のウイルス。新型は突然変異によって生まれた強毒性のウィルス。
 ではどの程度の強毒性か?
 致命率は当初は0.1%程度と見られていた。つまり感染者の100人に一人程度が死ぬ。しかしその後の調査でもう少し低く、0.66%程度と今は見られている。つまり151人に一人程度死ぬ。
 これがどの程度の強毒性なのか?
 コレラや天然痘という昔流行った感染症だと致命率は40とか50%になる。つまり罹ったものの約半数が死ぬ。
 21世紀になって流行ったコロナウィルス感染症(サーズ・マーズ)では致命率はもっと高く、SARSが10%、MERSが35%である。
 これ等に比べれば新型コロナの致命率は圧倒的に低い。
 だが通常毎年流行し日本では2000人から3000人の死者、アメリカだと2万人から3万人の死者をだすインフルエンザの致命率は、0.02%〜0.03%程度と見られているので、インフルエンザのおよそ20から30倍の致命率だということだ。
 つまり通常のインフルエンザと同様に多数の人に感染すると、日本では4万から9万人、アメリカなら40万から90万人も人が死ぬことになるわけだ。アメリカはすでに20万人の死者を出してしまったから、通常のインフルエンザと同様に感染を広げてしまったわけだ。日本は現在1500人程度だから、かなり死者は少なく、通常のインフルエンザよりもかなり感染拡大を抑えられたということを意味している。
 死亡者が1500人ということは感染者が22万6500人程度。通常のインフルエンザは1000万人ほどに感染しているから、二桁少ない。現在の確認された感染者数は8万人ほどだから、14万人以上の感染者が見逃されているわけだ。
 おそらくこの大多数は無症状者だろうから、気を付けないと今でも感染爆発は起こりうる。
 だが医療体制の不備や検査体制の不備で多くのコロナ感染者が見逃され、その中には新型コロナに感染して死亡したのにカウントされていない死者も多数いるとみられる。
 しかしカウントされない死者の数は未確定だ。
 新聞報道によると1月から5月の超過死亡者(毎年の平均の死亡者にこの時期流行るインフルエンザなどの死者を加えた数字を超過した死亡者の数)は感染が広がった都府県合計で6500人という報道もあった。
 この超過死亡者全員が新型コロナによる死亡者だとすると、日本での死亡者はおよそ1万人弱。
 致命率0.66%を加味すれば、感染者は150万人弱。日本人のおよそ100人に一人、1%を少し上回る程度だ。これだと100万人以上の感染者が見逃されている計算になる。
 これでも感染の拡大はかなり抑えられている。
 なぜ感染拡大が日本ではあまりないか。この原因は不明だ。

●この感染症の広がりかた

 ではこの感染症はどのようにして広がるのか?
 これは現在は唾液に含まれるウィルスが、会話や咳をした時に口外に飛び出して、その飛沫を吸い込んだり、飛び散った飛沫を手指につけてそれが口内に入った入りして感染すると考えられている。しばしば空気中に飛び散って目に見えないほどに細かい霧となった唾からも感染する(いわゆる空気感染)可能性も何度も指摘されているが、はっきりと空気感染したとみられる例がないことから、今でもこれは確定していない。だが可能性としてはあるので、室内の換気が大事といわれる所以である。
 このようにこの感染症の致命率はかなり低いが、他のウィルス感染症と異なる特徴は、感染しても症状のない人でも他人に感染させるということである。
 つまり何らかの風邪症状がなくて健康だと見える人でも感染していれば、その呼気や唾で他人に感染させるということだ。
 ではどの程度の人が症状がないのか?
 若い人ではおよそ80%が無症状と言われている。そして高齢者でもおよそ40%が無症状だと。つまり感染した人の50%以上が無症状で、ほとんど感染したと自覚がない人でも感染すれば他人に感染させるということだ。
 そして感染した人の中で重い肺炎などに重症化する人の割合は、およそ10〜20%。
 この重症化した人の中の10人ないし20人に一人が死亡する。
 新型コロナウィルス感染症とはこのような病気だ。

●この感染症を防ぐ方法は

 感染してもなぜ無症状なのか。
 これは人間の体がもっている免疫機能によってウィルスが攻撃されて排除されるので、病気にならないということだ。だが免疫機能でもウィルスの増殖は防げないので、感染して無症状の人でも他人に感染させるということだ。
 つまり自然に持っている免疫機能が強い人は感染しても大丈夫だということ。したがって免疫機能が何らかの理由で低下している人が危険だということになる。
 免疫機能は年齢と共に低下する。だから高齢者のリスクは高い。
 そして様々な生活習慣病やガンなども免疫機能を下げる。こうした人のリスクも高い。
 したがって高齢者や様々な生活習慣病や重い病気にかかっている人に感染させなければ、死亡者は少なく制御できるわけだ。
 だから病院や高齢者施設が、外部の人の施設への出入りを遮断するのはこうした理由からだ。
 だがすべての外部者を遮断できないし、病院や高齢者施設の職員も様々な理由で施設の外にでるから、職員の感染を防ぐのも大変である。
 だから医療従事者や高齢者施設や介護施設の従事者のPCR検査が大事で、こうした人々の感染の有無を調べて感染者はすぐに隔離することが大事だといわれる所以である。
 
 しかし感染の仕方でわかるように、この感染症は、かなり感染制御が可能なものだということがわかる。つまり口外に唾を出さないことと、飛び散った唾を手指につけて口に入れいないように気を付ければ良いわけだ。
 だからマスクの着用と手指の消毒が励行される。
 そして最近ではマスクがこの感染症の広がりをかなり抑えるということも分かっている。
 実験によると、ほとんどのマスクは咳や呼気によって飛び散る飛沫を95%以上の確率で遮断する(ガーゼマスクは60%程度)。そして不幸にして空気中に飛び散った飛沫を、同じく95%程度マスク内に吸収することを遮断する(ガーゼマスクは60%程度)。
 完全に遮断できないのは、マスクと顔との間に隙間があるからだ。したがって顔と密着する一体成型のマスクだと、遮断率はさらに上がり、98%とか99%とかになる。
 だから一番遮断率が高いのが、顔と一体成型の不織布で織られたサージカルマスクと呼ばれるマスクで、一般に市販されているものだ。
 つまりマスクを全部の人が付けている限り、他人に感染させる危険性はかなり低いし、他人からウィルスを感染させられる危険性もかなり低いということだ。
 だからこの感染症の拡大を防ぐには、全員が人と接触する際には必ずマスクをすることと、重症化する可能性のある人に日常的に接触する人にはPCR検査を全員実施することが、大事だとされるのだ。
 
 危険なのは、マスクを外して人と接触する機会。
 つまり食事やお酒を飲む機会、そして大声を出す機会。これを多人数で行うことが今は一番危険であり、たとえばバスや電車で移動することも、ほとんどの人がマスクを着用しさらに車内が常に換気されていれば、感染のリスクはかなり低いわけだ。
 言い換えれば電車やバスで外出することの危険性はかなり低く、県境を越えて旅行すること自体も、リスクはかなり低いわけだ。
 
 危険なのは、食事会や飲み会、そして歌う会(カラオケや合唱)や大声を出す会(ライブハウスでの演奏会やアイドルの会など)ということになるわけで、これらの会を催さないことと参加しないことが、この感染症を避ける必須条件だということになるわけだ。

 したがって人が大声を出さない場。例えば遊興施設でいえばパチンコなどはリスクは低し、クラッシックの音楽会や能や歌舞伎の会などの古典芸能の会、さらには博物館や美術館や図書館などは、会場を常に換気し、風邪の症状の有る人の入場はお断りし、入り口で手指の消毒を行い、会場内ではマスク着用を義務化し、さらに大声での会話や会場内の飲食を禁止すれば、通常の定員での開催も可能なのだ。
 と言っても会話や大声を完全に禁止も難しいので、念のために観客同士の距離を置くために、座席の間隔を空けて定員を減らして実施しているのが現状である。過剰防備と言えなくもないが。

●平家琵琶会の開催の仕方

 通常の平家琵琶会は、大声を出すのは演者だけで、観客が話すことはない。せいぜい質問をする程度だ。飲食を伴うといっても、お茶を出して茶菓を出す程度だ。食事会ではない。
 だから会場の換気に気を付けて、演者と観客席との距離をあけ、観客にはみなマスクを着用してもらい、お茶と茶菓の提供を辞めれば、会場入り口での手指の消毒と風邪症状の有る人をお断りすれば、通常の平曲会は無理なく開催できる。

 ただ私の平曲会では、観客の方にも声を出していただく。
 平家物語をより深く理解していただくために、さらに耳で音となった平家をより理解していただくために、私が語る前に、その句の原文を観客の方に輪読していただく。その輪読の合間に、本の注を私が読み上げたり解説を付加したりする。こうしてどのような話なのかを平曲を聞く前に把握してもらうわけだ。
 そしてこの際に、様々な疑問を質問してもらう。

 だから私の平曲会では、定員を通常の半分以下に減らして観客相互と観客と演者との距離をとれるように配慮している。

●平曲会参加に際して気を付けること

 遠方より平曲会に来られる場合でも、電車やバスでの移動は、マスクを着用している限り危険性は低い。問題なのは開会が午後2時で閉会が午後5時なので、その前に昼食を済ませておく必要がある。
 比較的近くにお住いの方なら、ご自宅で食事を済ませて来られれば問題はない。
 来る前に昼食を外の飲食店でとられる場合が一番リスクが高い。この場合には、お店の換気状況や客の入り具合(満員は怖い)そして店の感染症対策を気を付けないといけない。
 適当な店がないときは、お弁当を持ってこられるか、途中でテイクアウトの食事を手に入れて、会場である我が家のリビングで食事されるという方法もある(平曲会場はリビングではなく応接間)。
 あとは日常的に感染対策をとり、風邪症状がないか気を付けて頂くこと。

 2020年9月24日記(9/28誤りを訂正)


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