◆新型コロナウィルスと平曲会2◆



●新型コロナの感染はいつまで続くか?

★今までの感染状況

 2019年12月8日に中国武漢で流行が確認された新型コロナウィルスによる感染症は、中国と欧米各地を行き来する中国人や欧米人のビジネスマンによって、そして中国と日本を行き来するビジネスマンや観光客によって、瞬く間に世界に広がった。
 日本でも欧米でも、遅くとも2019年12月中には最初の感染が始まったと考えられている。
 それからすでに10か月。
 日本では2019年12月から2020年3月初めまでは、中国武漢由来の新型コロナウィルス感染が広がった。これが第一波だ。
 そして日本では3月になると、すでに欧米で感染が広がっていた地域から日本に帰国するビジネスマンや学生によって、欧米で変異したタイプの新型コロナウィルスが持ち込まれ、これが急速に広まった。
 中国からの第一波は、主に中国からの観光客が持ってきたもので、彼らと日本人との接触は少ないため、当初は冬の中国人観光客が多数来る北海道に感染は限られていた。しかしその後首都圏に中国から帰国した中国人ビジネスマンや日本人ビジネスマンによってウィルスがもたらされ、首都圏を中心に感染が広がった。
 欧米からの第二波が広がった理由は、当時は空港などでの検疫検査に際しては発熱などの症状のない人はフリーパスであったからだ。すでにクルーズ船ダイアモンドプリンセス号での感染対応の中で、高齢者主体の乗船客でも感染者の50%程度がまったく無症状であることが確認されており、さらに中国の研究で、さらに中国から日本に専用機で帰国した日本人の中にも無症状の感染者が含まれ、これらの無症状の人でも他人に感染させることがわかっていたのに、検疫で完全に見逃してしまったのだ。
 この中国由来の第一波と欧米由来の第二波は時期的に連続して起きたために一つのものと捉えられて、その後この感染流行が6月までに一旦下火となったあとに、感染者が多く残っていた東京発で再度感染が全国的に広がったので、この流行の再燃が第二波と捉えられている。
 正しくは20年3月までが第一波。
 20年3月からが第二波。
 そして6月からの急激に広がった感染は第二波の再燃だ。
 第二波の再燃の方が第一波第二波より感染拡大が大きく見えるが、これは見かけだけ。
 日本は世界で唯一、感染状況を確認して感染者を隔離し、感染を抑える唯一の手段であるPCR検査数を制限した国なので、とりわけ6月まで続いた第一波・第二波での感染者数は異常に少ないものとなった。
 感染が疑われた人が相談するセンターが相談者を選別する基準が、当初は感染者の濃厚接触者と中国からの帰国者に限られていたため、さらに感染が少し広がってからは高熱が続いたり、高齢や持病がある場合が追加されたが、この時も、感染者との接触の有無や、インフルエンザではないことの証明、さらには重症化の兆候である肺炎の有無が条件とされたため、相談者の90%以上が検査すら受けられなかったから、感染者数が異常に少なくカウントされたわけだ。おそらく相談者で検査を受けられたのは数%に過ぎない。
 だから第一波・第二波の感染者は、感染が確認された人の10倍以上で限りなく100倍に近い数字と見なければいけない。
 したがって6月までの最初の感染の時期の方がその後の再燃の時期よりも、しっかり検査していれば感染確認者は10倍以上の数がいたはずである。

★PCR検査数が制限された理由は何か。

 要するに政府が準備してこなかったからだ。
 2009年の新型インフルエンザ流行を総括した提言では、今後新たな強毒性で感染力の強い感染症が来ることが予想され、そのための検査体制の拡充整備と医療体制の拡充整備が提言されていたが、政府はこれを無視し、逆に検査所である地方感染研究所と保健所の体制を縮小し、医療機関の統合を進めてしまった。
 そのうえ、体制が脆弱である保健所ー地方感染研究所ー国立感染研究所の体制以外に、全国の医学部を持つ大学や民間の検査機関を総動員して検査すれば、かなりの数の検査ができるのに、厚生労働省は文部省と連携してこれらの機関を総動員することをしなかった。その理由は明らかにはなっていないが、検査を保健所―地方感染研ー国立感染研のラインが「検査の質ーデータの信憑性の確保」を名目にしてこのラインが独占することで、PCR検査薬を国立感染研製造のものに限り、データ独占によってワクチン製造を独占しようとしたのではないかと指摘されている。
 そして実施されるPCR検査はすべて国が税金から支出するのだが、これに保険適用をして民間検査機関などでもできるようにした際に、この民間検査機関と発注元の地方公共団体が公費による検査の契約を結ばないとできないという制約を課したため、民間検査機関による検査は広がりを欠いた。
 こうしてPCR検査数が制限されたために、多くの無症状と軽症の患者が見逃され、これらの人の中からその後重症化して死に至る人が多数出たと予想されるが、いまだに厚生労働省はこの隠れたコロナ死者数を把握していない。

●今後新型コロナウィルス感染症はいつまで続くか

 私は短くて2・3年。長ければ10年続くと当初から考えていました。
 1:ワクチンが幸運にできれば1・2年で終了するが、これは期待薄。このウィルスは常に遺伝子変異が激しいので、果たしてワクチンができても、すでに流行している型が違ってしまい、効かないという可能性も大。インフルエンザが毎年ワクチンを打たないと駄目であることと同じ理由です。幸いにしてこの新型コロナウィルスに特有のたんぱく質を合成してこれで抗体を作ることができれば、どの型の新型コロナウィルスにも効くワクチンとなるかもしれませんが、新たな技術なのでどこまで有効か疑問視されています。
 2:したがってこの流行は、地球上の人類の4割から7割が感染してしまい、多くの人が抗体を獲得したので感染する人がいなくなり、ウィルスが自然消滅するか、地域的に限られた流行になるか、弱毒化してインフルエンザのように毎年冬になると流行するものになるかのいずれかが想定されています。
 A:2・3年でこうした集団免疫が得られて感染流行が終息する場合。
  もしワクチンがない状態でこの短期間でやると、推定で数億人が死に、世界各国の医療機関が崩壊する。
 B:感染拡大を制御して死者が急激に増加して医療機関や社会が崩壊しないようにして集団免疫を全地球規模で獲得する道をとったとすると10年近くはかかる。
 想定されている流行はこの3パターンです。
 1がベストだが期待薄。2Aは最悪のパターン。2Bがベターなパターン。
 おそらく世界各国は2Bを狙っているのでしょうが、爆発的感染拡大を防ぐのは至難のわざ。
 
 現在の世界全体での死者は約100万人。
 新型コロナウィルス感染症の致命率が0.66%と見られていることを参考にすれば。実際の感染者はこの151倍。
 つまり1億5000万人。
 実際に感染が確認された人の数は3275万人。
 世界でもなんと多数の感染者が見逃されていることか。
 しかもこの世界の死者でもコロナと診断されずに亡くなった人が含まれておらず、通説では確認された死者数の6割は少なくともいると考えられている。
 この数字を入れれば「超過死亡数」は60万人。
 合計で160万人。
 推計の実際の感染者数は2億4160万人。
 世界人口はおよそ70億人だから、まだ10%にも満たないので、地球規模で集団免疫が確立するにはまだ何年もかかると思われる。
 日本の感染状況は、確認された死者が1500人。確認された感染者数は8万20000人余り。
 「超過死亡数」はいまだ確定していないが、報道によると感染が激しかった都府県で合計すると6000人程度と見られるので、推計で死者総数は約1万人。
 推計の感染者総数は151万人。
 これは日本人総数の1%を少し超えた数字。
 まだまだ集団免疫には程遠く、今でも多くの感染者が見逃されている。
 日本でも世界でも多数の感染者が見逃されているのだから、ちょっと気を緩めて通常の生活に戻して人と人との接触を多くすれば、たちどころに感染の波が再燃するのは必然。
 日本での第二波がなかなか終息しないのは、多くの人にとってはタダの風邪もしくは風邪症状すら出ないので、人との接触を避ける生活に疲れて、感染拡大が鈍化して終息が見えると、すぐにどっと町に繰り出して食事会や飲み会をやる。旅行そのものは問題ないが、旅行先で食事会や飲み会をやるから、ここでも感染が拡大する。
 こうして流行はなかなか止まらない。
 一時的に落ち着いた欧米でもまたこれと同様なことが起こっていますね。
 欧米でやった都市のロックダウンは一時的に感染拡大を止められるが、経済の打撃は甚大で、さらに人心も荒廃する。日本はロックダウンをとらなかったが、世間の自粛圧力を利用して同様の効果を得た。だがこれも休業補償がないこととあいまって、経済の打撃は甚大で、さらに人心も荒廃した。自粛警察の横行は人と人とを分断します。
 だから感染拡大を急激なものにならないように制御するのは至難のわざ。
 となると想定されるパターンは最悪の1のケースです。
 欧米はこのケースに向けてまっしぐらです。そして今感染が急拡大している南アジアと中南米とアフリカも。
 比較的に2Bのケースに近い動きをしているのが日本も含む東アジアと東南アジア。
 どうしてこの地域が爆発的感染を防げているのかは謎です。いま科学者が必死になってなぞ解きをしようとしている。なぜなら感染爆発を制御できていない地域を放置するとアジアも含めて世界全体が最悪の1のケースになるからです。
 想定されている原因は。
1:生活習慣の差。特に「マスク着用」や「手洗い習慣」の有無が注目される。そして挨拶の際の身体的接触の差。
2:民族的ないしは人種的な遺伝の違いで、ウィルスが感染しやすい体質とそうでない体質の可能性。
3:コロナウィルスは主としてアジア地域で毎年流行している風邪ウィルス。この通常の風邪ウィルスの抗体を持っている人は新型コロナに罹らないか軽症で済む可能性。すでに確認されたのは強毒性ウィルスであるSERSウィルスの抗体は新型コロナに有効と。新型コロナウィルスはSERSと遺伝子的にもそっくりなので、途中で名称が変わってSERS-2になったくらいですから。
 あとはBCG接種の有無などがあるが可能性の高いのは上の3つ。
 「マスク着用」が感染制御にかなり効果があることは確認されている。
 という状況なので、新型コロナウィルス感染症の世界的流行はまだまだ続き、早くて数年、長ければ10年続くと考えます。

●対処する方法は

 なるべく感染しないように気を付けるしかありません。
 9月25日に、新型コロナウイルス対策専門家分科会は、第10回目の会合を開き、10月1日に東京が「Go To トラベル」事業に追加されることが予定されている中で、どのように感染拡大を抑えるべきか提言した。
 この提言が参考になります。
 分科会は次の7つの例は極めて感染の危険があるとしています。
(1)飲酒を伴う懇親会
(2)大人数や深夜におよぶ飲食
(3)大人数やマスクなしでの会話
(4)仕事後や休憩時間
(5)集団生活
(6)激しい呼吸を伴う運動
(7)屋外での活動の前後

 要するにマスクをしないで人と人とが接触する機会が危険だということです。
 この感染を避ける提言そのものは真っ当なもの。
 だが、これをしないように気を付けて旅行をすればよいと分科会は提言したわけだが、そもそも感染症の流行が収まらない中で旅行を推奨して補助金を付けること自体が間違っていると思う。
 旅行者が減って困っている業界を救いたいのなら、政府が通常の収入の何割かを補償し補填すればよいこと。
 その中で旅行者も業者も感染に気を付けて対応すれば済むことだ。
 政府は新型コロナ感染症流行が少なくとも2・3年、長ければ10年は続くことを明確に国民に伝え、ウィルス感染を防ぐ方法を取り入れた「新しい生活」をするしかなく、これへの協力を強く要請すべきである。
 そしてこの「新しい生活」によって起こった不利益は政府が補償することを宣言すべきであると思う。
 安倍内閣は平時の対処法に終始し、補助金しか支給せず、活動の自粛要請と「世間」の同調圧力に頼る対応に終始した。菅内閣もこの誤った対応を継承したまま。
 国民は政府の支援を当てにできないまま自衛するしかない状況。
 自助・共助・公助で対応するなど、平時の発想の戯言。今こそ公助の出番なのだ。

●川崎長尾平曲会の対処方法

 ということで、平曲会は今後数年は感染に気を付けて開催するしかないと考えています。
 方法は:
 1:参会者は全員予約制とする。
 2:参会者は常に体調に気を付けて、当日少しでも風邪の症状があればキャンセルする。
 3:会場入り口で参会者の熱の有無を尋ね(本当は非接触型の体温計を使いたいが今は入手不能。多くのところは非接触型の温度計で代用している)、手指の消毒とマスク着用を確認する。
 4:会場内ではマスク着用が必須。
 5:参会者の間隔をできるだけ広くとるために、定員を15名からいす席の約半分の6名に減らし、同じプログラムの会を二度開催。
 6:通常行ってきたお茶と茶菓子の提供は辞める。
 
 という対策をとって平曲会を続けます。
 年に6回の開催で行くと、平曲全200句を語り終えるには90回平曲会を開催しないといけません。
 9月が15回目。
 あと75回続きます。すべての句組は決めてあります(順次HPに一年毎にお知らせします)。
 今のペースならあと12年ほどかかります。
 なるべく早く新型コロナウィルスによる感染症が終息することを願いながら、語り続けます。

 2020年9月27日記(9/28誤りを訂正)


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