●2021年3月の新型コロナウィルス感染状況をどう考えたらよいのか!●


▼3月5日夜の首相会見を見て

  一都三県の緊急事態宣言を3月7日で終了するのではなく、さらに二週間延長するとの、昨夜の首相会見を聞いていましても、いくつもの疑問が出てきて、さらにこの疑問に対する答えも出ては来ませんでした。
 その疑問とは、
1:なぜ昨年の11月以降急速な感染爆発ともいえる状況が現れたのか。
2:緊急事態宣言を発出してそれを抑えようとしたが、いまだに毎日発見される感染者の数は高止まりの状況。どうして感染の広がりを抑えられないのか。
3:あと二週間で感染を抑えられるのか。
 首相会見でも、またこれを補足した政府諮問委員会の尾身会長の補足でも、これらは「わからない」とされていました。
 そしてある程度下がった感染状況が再度リバウンドしないように、出来る限りの対策を取ると言い、そのためになされることは、
1:3月末までに3万か所の高齢者施設で徹底したPCR検査を行う。
2:各地の過去に大規模な感染が起きた繁華街などで、無症状の人を対象にした大規模なPCR検査を行う。
3:宣言下での飲食店の夜の営業時間の短縮は続け、二週間後に解除しても一気にもとには戻さず、徐々に営業時間を拡大する方針をとる。
 でした。
 ではこの三つの対策で何とかなるのかとの質問にも答えは「わからない。神のみぞ知る」でした。
 何ともあいまいな会見でしたが、その中ももう一つ語られたことは、すでに首都圏においても、さらに先週宣言を解除した関西圏でも感染力が増したイギリス由来の変異ウィルス株への感染が多数確認され、今後この変異ウィルスに流行が置き換わる危険があるということであり、こうなるとさらなる第4波の感染爆発が起きかねないので、宣言も延長し対策の徹底を求めるということがあった。

▼すでに新型コロナウィルス感染は変異株に置き換わっているのではないか

 ところがよく考えてみると、先の3つの疑問を解決し、さらになぜ政府は後者の3つの対策をとるのかということを考える上で、無視できない事実があります。
 それは、イギリス発の変異株はすでに首都圏を中心に全国に広がっているのではないかという疑問です。
 これを裏付ける事実が先日東京医科歯科大学病院から発表され、昨年11月に同院で確認した感染者の中に複数、イギリス発の変異株に感染したものがあることから、すでに11月には変異株は市中に流行していたのではないかとのことでした。
 だがこの問題はマスメディアでもあまり取り上げられず、国立感染研や厚生労働省の、「まだ変異株の市中感染広がりは確認されていない」との公式見解が繰り返されるだけ。
 だがすでに変異株流行が蔓延していると考えれば、11月からの毎週感染確認者が倍の勢いで増加した事実や、かなり徹底した対策を取っているにも関わらず感染者が高止まりしている事実を説明することができる。
 この変異株の感染力は、それまでのものよりも1.4倍から1.9倍、つまり一人の感染者が発出するウィルスの量が1.4倍から1.9倍に増えているというものだ。
 最大で考えれば約2倍。
 これがすでに昨年11月には市中に広がっていたと考えれば、毎週の倍倍ゲームのように拡大した感染者の増加は説明できるし、いまだに感染者数が高止まりであることも説明できる。
 昨年11月になって急に人々の意識が緩んだせいで感染爆発が起こったわけではなく(そもそもクリスマスや年末の人の動きが大きくなる前から感染爆発は起きていた)、いまだに感染者数が高止まりなのも、人々の意識が緩んで人と人との接触が増えているわけではないと思われる。
 たしかに休日の繁華街の人出は、昨年の4月の緊急事態宣言時よりもかなり多い。
 でもこれは、昨年4月の緊急事態宣言では、日中から飲食店の営業も止められ、劇場やデパートなどの営業も止められていた。これでは休日に繁華街に出かける意味はなかったわけだ。
 だが今回は、制限されたのは夜の飲食店の営業だけで、日中なら飲食店は通常営業だし、劇場や映画館・デパートなども通常営業だ。
 日中の繁華街の人出が昨年より多いのは当たり前だし、夜の人でも多いのも、昨年は夜も営業していなかったが今回は夜7時までは営業しているのだから、人でも増えるわけである。
 こう考えれば人の気が緩んで感染拡大がおきているわけではない。
 昨年11月からの第3波の原因は、感染力を増したイギリス発の変異株が市中感染を起こしたからだ。

▼ザルと化した空港水際対策

 だが政府や感染研がこれを否定する理由は何だろうか。
 これを明らかにする事実がすでに示されている。
 昨年秋以降、空港での検疫が、PCR検査から抗原検査に変更されたという事実だ。
 PCR検査は特異度99.9%と言われるようにかなり確実に陽性者を割り出す。だが検査結果判明に24時間もかかり高額だ。
 これに対して抗原検査は特異度は70%なのでかなりの数の陽性者を見逃すが、数時間で結果がわかり安価である。
 空港検疫という外から新たなウィルスが入らないようにする最前線でなんとこうしたことが行われていた。
 つまり空港検疫が抗原検査になったことで、陽性者の3割が見逃されてそのまま市中に出歩いたということだ。
 この時期海外からの来航は、日本人か長期に日本に在留していた外国人に限られているが、この人たちが変異株を持ちこんだことは確実だ。しかもそれが政府が空港検疫の方法を、確実なPCR検査から不確実性の高い抗原検査に変えたということであれば、これは政府の失策と言わざるを得ない。
 だから国立感染研や厚生労働省は、変異株の市中感染を認めないのだ。
 ではなぜ空港検疫の方法が変えられたのか。
 費用の問題だろうか。
 もっと穿って考えれば、抗原検査を導入することで関係者の利権が考慮されたことだ。
 これはPCR検査の特異度が99.9%であることを無視して70%なので、この検査で感染拡大は止められないと公言した医師や疫学者がいたことと符合する。

▼感染者が減らないのは高齢者施設や病院で多数クラスターが発生しているからではないか

 ともかく変異株がすでに昨年11月から市中感染を起こしていたと考えれば、すべての疑問は氷解する。
 そしてなぜ、あれほど大規模なPCR検査は無用と公言してきた政府が、「変異株による新たな感染拡大の兆候をつかみ対処するため」という枕詞をつけながらも大規模なPCR検査に乗り出したという事実が、逆説的だが、すでに変異株の市中感染が広がっている事実を証明する。

 あまりデータが公表されていないので断言できないが、現在の感染者の高止まりの直接的な原因は、高齢者施設や病院でのクラスターの多発なのではないだろうか。
 こう考えると、ワクチンの接種でも世界でも異例な、医療従事者の優先接種という策を政府がとっていることへの疑問も氷解する。
 つまり病院でのクラスター発生を抑える最善の策は、医療従事者と患者、そして業者や面会者全員に、一週間か二週間に一度の定期的なPCR検査を実施することだ。だが政府はこの策を全くとってこなかった。
 このため多くの病院でクラスターが発生し、さらに昨年11月からの感染拡大によって、さらに病院でクラスターが発生する危険が増して、医療従事者の不安が増していた。
 この政府の無策による不安を解消する妙手として政府は、ワクチンの医療従事者に対する優先接種を選んだのではないだろうか。
 ワクチンが優先して接種されるところは、まず高齢者施設である。そして在宅の高齢者と様々な基礎疾患を持っている人たち。
 この感染すればかなり高い確率で重症化する人たちを差し置いて医療従事者へのワクチン優先接種を政府が強行している裏にはこうした事情があるものと思われる。

▼いつこの感染症は終息するのか
 
 その高齢者へのワクチン接種だが、4月初めに開始としていたが、実際に全国の高齢者にワクチン接種が広がるのは5月になってからであり、6月中にはなんとかいきわたらせたいというのが政府の心づもりのようだ。
 ということは基礎疾患のある人はそのあと。
 一般人に広がるのは秋以降。

 これでは2021年中の感染終息はおぼつかない。
 さらにワクチンそのものが有効かという問題もある。
 なぜならウィルスは感染を繰り返すたびに常に変異しているからだ。
 すでにイギリスのアストラゼネカ社製のワクチンは、南アフリカ由来の変異株への有効性は低いことが示され、同社はすでに、この南アフリカ由来の変異株に対するワクチンの製造に着手している。
 現在広く接種されているアメリカの二つの製薬会社製のワクチンは、南アフリカ由来の変異株やイギリス由来の変異株に対する有効性は従来の株に対する有効性とほぼ同等とされているが、さらに生まれる新たな変異株にも有効かどうかは、そのつど実証するしかない。

 ウィルスが万能薬ではないことは、インフルエンザですでに証明されている。
 次々に変異株を生み出すウイルスに対するワクチンは、次々と新たなワクチンを作るしかなく、その有効性はせいぜい、感染しても重症化を防ぐ程度なのだ。

 以上のように考えれば、新型コロナウィルスによる感染症の世界的流行は、2021年中に収まるわけはなく、それは2022年、さらには2023年にまで続くと予想するのが現実的である。
 今回のウィルスとほぼ同等の致死率0.6%と見られる100年前の新型インフルエンザの世界的流行はほぼ3年で終息した。3年間で全世界に感染者を広げて新たなる感染者を見つけられなく案ったウィルスは、新たな感染者を見つけられる限られた一地方の風邪ウィルスとして生き延びたり、さらに豚に感染して豚インフルエンザウィルスとして生き延びる道をとったので、世界的流行はほぼ3年で終息した。
 ワクチンも開発できず治療薬もできない中での前回の世界的流行とはことなり、今回はワクチンもでき、有効な治療薬もいくつか見つかっている。これに都市封鎖という強力な人の動きを封鎖する方策と、マスクによる感染の防止とマスクなしでの人との接触を禁止する方策がとられることで、今回の世界的流行は、100年まえよりも急速な拡大と死者の増大は防げている。
 つまり感染爆発を人工的に抑えて、有効なワクチンや治療薬が開発されるのを待つ政策が世界体に取られているわけだ。
 ということは劇的な効果のあるワクチンや治療薬が作られない限り、世界的流行は、100年前よりも長く続くということを意味している。

 今年中に感染が抑えられるとか、3年まてば感染が抑えられるとかいう希望的観測は捨てて、もっと長期にわたって感染は続くとの最悪の観測に立って、私たちはしっかりと感染対策をとって日常生活を続けるしかないのだと思う。

 しかしそんなに恐れる必要はない。
 新型コロナウィルスの致死率は0.66%。感染者1000人に死者6人程度。
 そしてマスクなしでの至近距離の会話をしない限り、あまり感染しないことも確かめられている。
 したがって人と至近距離で会話するときにはかならずマスクを着用することとし、マスクを付けられない会食は行わない。
 さらにはマスクなしで大声を発する場にはいかない。
 こうした対策を取れば感染リスクはかなり低減する。
 会合はマスク着用で室内の換気を十分に行うこととし、人との会食は行わず、食事は家族ともしくは一人で行うこととする。
 これで対策はほぼ十分ではないだろうか。

2021年3月6日


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