●2021年6月末の感染状況をどうみるか●



1:ワクチンへの誤解と東京オリンピックの危険性

 まず懸念すべきことは、新型コロナワクチンについての危険な誤解が広がっていることである。
 このワクチンをうてば新型コロナ感染症に罹らないわけではないのに、うてば元の日常に直ちにもどれるというが誤解が広がっている。これは高齢者向けの大規模接種会場での接種者のインタビューなどで良く見られる光景である。
 そもそもこのワクチンの目的は、感染症に罹ったとしても重症化を防ぐことにある。
 その方法は、新型コロナウィルスとそっくりなたんぱく質を作る遺伝子を人工的につくり、これをワクチンとして人の体内に入れることで、新型コロナウィルスとそっくりなたんぱく質をまず作らせ、人の体の免疫系がそれを新型コロナウィルスと誤認して攻撃を始め、さらにこのウィルスが人のたんぱく質と結合するのを防ぐ抗体をつくって、感染を防ごうとすることを狙ったものだ。
 こうしてあらかじめ人の体内に新型コロナウィルスに対する抗体を作っておけば、人が新型コロナウィルスに暴露したとしたも、感染することもなく、もしくは感染しても重症化は防げるという考えに基づくものだ。
 そして抗体が十分に生成されるには、1週間から2週間はかかるとされている。
 つまりワクチンをうったからといってすぐに新型コロナ感染症に罹らないというわけではないし、罹りにくくなるためにも1・2週間の時間が必要なのだ。
 だがこの科学的事実を無視して、世間には、このワクチンさえ打てば状況は劇的に改善するとの誤解が広がっている。
 この誤解の最大のものが、IOCによる選手及び関係者全員にワクチンを接種するからオリンピックは安全だとの言説である。
 この言説は先日、事前合宿のために日本を訪れたウガンダの選手団の中に、一人陽性者が出たことで簡単に覆されている。
 この選手たちはすでにワクチンの二度目の接種を受けていたにもかかわらず感染者がでたのだ(その後さらに1名の感染が判明)。
 そしてこの事件はもう一つ、危険な事実を浮き彫りにっしてしまった。
 その一つは、空港での感染確認は、ほぼ確実に陽性者をあぶりだせるPCR検査ではなく、感染者の30%は見逃してしまう抗原検査で行われたということだ。
 オリンピック関係者も空港での検疫で必ず感染確認するからとなっているが、その方法がこれほどザルとは。
 そしてもう一つ、選手団に一人感染者がいたにも関わらず、この選手を除く他の選手と付き添いのために合流した受け入れ自治体の職員も、そのまま空港から受け入れ先のホテルへ直交したことだ。
 空港検疫の基本的な方法は、入国後二週間は感染の有無にかかわりなく定められた待機所に赴き、定期的にPCR検査を行って感染の有無を確かめ、二週間たって感染していないことが確かめられて初めて待機所を出て、滞在先や自宅に向かわせるという方法だ。
 しかし日本政府はこの方法を取らず、すでに待機期間を二週間から6日に短縮するという暴挙を取ったり、待機場所に自宅を指定するなどの暴挙を行っているのだが、この間違った対策すらオリンピック関係者には適用せず、空港からそのまま宿泊所に直行させたことだ。
 しかもこのずさんな方法が批判されるや厚生労働省は、他の選手や同行の自治体職員の感染の有無の判断は当該自治体の保健所に丸投げした。
 その後自治体の保健所が再度検査したが幸い他の選手や自治体職員に感染者がいないことはがわかったが、その後も深刻な問題が発生している。
 それは選手団の滞在先のホテルをそのまま感染の有無を確かめるための待機所としてしまったことだ。
 報道によるとホテル側は、空港での待機を終えたあとで受け入れるものと考えていたがいきなり空港からの直行となり、今後二週間そのホテルに滞在しながら、感染の有無を確認することとなってしまったのだ。
 従業員や清掃の業者などの健康を考えれば受け入れがたいとホテルの責任者は語っていたが、オリンピック関係者の入国に際しての感染症対策とは、このような杜撰なものであったのだ。

 そして新型コロナウィルス感染症は、現在インド型の変異ウィルスに変わりつつあり、このウィルスは従来の型に比べて2倍以上の感染力があり、空気感染すらすることが確認されている。
 ということは、人が狭い空間に密になったり、密閉した空間に多数あつまったり、密接な距離で会話や飲食をしたりすることが極めて危険であることは明らかだ。
 オリンピックの会場は、限られた空間に選手や大会役員や観客があつまるので、どうしても感染の危険がある。それに対して会場ではみなマスク着用を義務付け、さらに飲食の禁止と大声を出すことを禁止すると組織委員会は対策を示しているが、これで効果があるかは不明だ。
 むしろ危険ではないか。
 たしかに大相撲などでは大勢の観客に対して会場での飲食や大声を出すことを禁止しマスク着用を義務付けて実施している。そしてここでは感染者が出たとの情報はないが、これは相撲が取り組みの間合いが多く、観客が静かに見守ることが可能だからではないだろうか。
 事実、同じく同様な対策を取って実施されたプロ野球の試合では、かなりの数の感染者が出たことが確認されているのだ。
 そのうえ人が大勢集まれば、そのあとで飲食の場に繰り出すことが予想されるし、そもそも都内で数十もの大規模イベントが開催されれば、そのこと自体が、集まっても大丈夫、少人数なら大丈夫との誤解を与えかねないのだ。

 実際に大規模イベントのせいで感染者が増えたことが報道されている。
 一つは先日イギリスで行われたG7サミット。そして南米ブラジルで行われたサッカー南米選手権だ。
 このイギリスは先進国の中で最もワクチン接種率の高い国だ。そこで再び感染拡大が起きている。
 さらに注視すべきことは、16歳以上の国民の8割がワクチン接種が終わっているイスラエルで再び感染拡大が起きていることだ。そして感染確認者の多くがインド株への感染であり、感染者の中に多数の子供が含まれていると報道されている。

 ワクチン接種が拡大し人口の過半に行き渡ったとしてもまだ安全ではない。人口の過半に行き渡り、現に感染者が激減し、感染がほぼおさまったと確認できるまでは、人と人との接触を減らして感染を避ける方法を取り続けるしかないのである。
 昨夜のニュースでオリンピック主催者である小池東京都知事の発言が象徴的であった。
 小池氏はコロナワクチンを「ゲーム・チェンジャー」と呼び、この接種をどんどん進めることが大事だと発言した。
 この発言の意味は、ワクチン接種が進めば新型コロナ感染症の流行は劇的に変化するというものだ。

 菅首相もこれと同様な発言を繰り返していることから、彼も小池氏と同様な認識を持っているものと思われる。そして先に見たようにIOCトップのバッハ氏も同じ認識を持っていることは確実だ。

 個々の高齢者の誤解以上に、国のトップや、オリンピックのような大規模イベントの実施団体トップが、このような誤解に基づいた行動をしていることは大変危険なことである。
 東京オリンピック開会までひと月を切ってしまったが、深刻な状況に陥る前に、一刻でも早く中止することが賢明である。

2:ワクチンへの関与のしかた

 一つの集団における新型コロナ感染症の流行を抑える上で、すでに開発された新型コロナ感染症に対するワクチンの有効性は高いことは確実だ。
 これは高接種率を実現した国々で、確認された感染者数が激減していることが示している。
 だがワクチン接種が進んでいるイギリスやイスラエルで感染の再拡大が進んでいるという事実は、接種が拡大しただけではまだ安心ではないことも示している。
 ワクチン接種を拡大しつつも、これがすぐ元の生活に戻れるものではないことを広く人々に知らせ、完全に流行が収まるまでは、まだ我慢が必要だということを全社会的に確認する必要があるだろう。
 この意味で先に見たように、東京オリンピックの開催は極めて危険である、

 
 ところで、ワクチン接種が進む中で、個々の人はどう対応したらよいのだろうか。
 それはワクチンを接種したために死亡した可能性がある死者が、かなりの数で出ているから、大いに不安を煽られるという事態があるからだ。
 日本ではおよそ2550万人強に一回目の接種が行われたが、接種後直近の時期に死亡した例が363例確認されている。
 つまり7万人に一人程度の死者が出ている。
 この死者については、ワクチンとの因果関係は証明されたわけではなく、厚生労働省は公式には、ワクチン接種には問題はないと表明している。
 ここをどう考えたらよいのか。

 厚生労働省の発表資料を見てみよう。
 令和3年2月 17 日から令和3年6月 13 日までに報告された死亡例を集計評価したものが発表されている。
 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000796557.pdf

 この報告では277の事例について専門家が評価しているが、死亡とワクチン接種の因果関係を否定できない例は「0」。ただし因果関係が認められないものも「5」例と少なく、275件は情報不足などにより因果関係を評価できないとしているのだ。
 なんのことはない。
 要するに死亡とワクチン接種との因果関係はわからないとされているわけ。
 詳細な分析もせず「わからない」として、そのくせワクチン接種には問題がないとするのだ。

 だが厚生労働省の新型コロナウィルス感染症に対するワクチンについて説明したサイトには、以下のように詳しい説明が掲載されている。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

 ここの注意例を列挙する。
1:ワクチンが接種できない人
 ・明らかに発熱している方(※1)=通常37.5℃以上
 ・重い急性疾患にかかっている方
 ・ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症(※2)の既往歴のある方
・上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある方

 注意すべきは次だ。
2:ワクチン接種に注意が必要な人
 ・過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方  
 ・心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある方  
 ・過去に予防接種を受けて、接種後2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた方  
 ・過去にけいれんを起こしたことがある方  
 ・ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある方

 この2つ目の「心臓・腎臓・肝臓・血液疾患」などの基礎疾患を持っている人はワクチン接種に危険性があるという項目が注意を引く。
 この項目に該当する人は同時に、新型コロナ感染症に罹ると重症化する可能性が高い人でもあるからだ。
 つまりワクチン接種の効果も高いが、接種による危険性も高いということ。
 ここを注意しておこう。

 そしてもう一つ注意事項が示されている。それは
 新型コロナワクチンは筋肉内に注射することから、  
・抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害のある方
は、接種後の出血に注意が必要とされています。

 いわゆる「血液さらさら」になる薬を服用している人も危険性があるということだ。

 次に先の厚生労働省の資料を精査してみよう。
 まず年齢別だ。
 65歳以上は327人(363人中)。つまり死亡者の90%が高齢者であり、40歳以上65歳未満は28名、8%、40歳未満は8人、2%。
 このうち高齢者の110名に心臓障害ありとある。
 実際に症例を通観すると、高齢者にはさまざまな慢性疾患があることが見て取れる。
 多いのは、糖尿病・慢性腎盂炎・心不全・喘息・高血圧だ。そしてここで注意が必要なのは、これらの慢性病はすでに血管が弱っていて血管が破裂する危険性を抱えており、さらにはこれを防ぐために血液が凝固するのを防ぐ薬の投与を受けていることが多いということだ。
 つまり高齢者の死亡者の多くは、先に見た厚労省の「ワクチン接種に注意が必要な人」に当てはまる人が多数を占めているということがわかる。

 ワクチン接種後の死亡例からわかることは、接種に注意が必要、つまり接種したことで逆に死亡する危険性が高い人にまでワクチン接種が行われているという実態が明らかとなったということだ。
 つまり政府が後に見るように対策らしい対策をせず、ただただ自粛を促すだけなので、国民の間に不安感だけが広がっていた。そこに政府がワクチン接種に前のめりになるあまりに、次と次と地方自治体や企業をせっついてワクチン接種を拡大させたために、本来はワクチン接種を控えておいた方が良い人にまで、次々とワクチン接種が行われているのではないかということだ。

 ようやく報道されるようになったが、新型コロナワクチン接種には、「接種した方が良い人」と「接種しない方が良い人」とがいるのだ。
 まず言えることは、感染したら重症化する確率の高い人は、健康であれば接種したほうが良いということだ。
 重症化する確率の高い人とは、まず高齢者、そして様々な基礎疾患を持っている人たちだ。
 この人たちで特に体調が悪くなければワクチンを接種したほうがしないよりも良いことは確実だ。
 またもう一つ考慮しないといけないことは、ワクチンを接種しない方が良い人もいるということだ。
 ワクチンは体内に抗体を作らせ、新型コロナウィルスとの戦いを準備するわけだから、接種して一定の期間が経てば戦いの準備ができるわけだ。
 今接種されているワクチンの主流は、新型コロナウィルスに特徴的なたんぱく質とそっくりなものを作れる遺伝子を人工的に合成し、それをワクチンとして体内に入れて、抗体を作らせるものだ。
 ワクチンが摂取されて体内に新型コロナウィルスとそっくりなたんぱく質が作られると体の中で何が起こるか。
 元もと準備された体の免疫系が直ちに作動し、免疫細胞がウィルスと思われるものを攻撃するとともに、抗体の大増産が始まる。そしてウィルスを攻撃する際に起こることだが、この際に誤って人の体の正常細胞が攻撃されてしまうことがある。そしてこの戦いの起こる主戦場が人の体内の血管であることが重要だ。
 つまりウィルスとの戦いの中で人の血管の細胞が傷つく。したがってこの傷をふさぐためにすぐにそこに大量の血小板が集結して傷口をふさぐ。そしてこの過程で、血小板が集まりすぎるとここに大量の血栓ができてしまうことだ。
 そう、ウィルスとの戦いの過程で生じた血栓が体内を移動して、脳の血管や心臓の血管で血液が堰き止められる危険が生じるわけだ。 
 抗体を作るためのワクチン接種でもこの危険性が必ずあるということだ。 
 ここからワクチンをうたないほうが良い人がいることがわかる。
 つまり何らかの疾病のせいで、血管の壁がすでに弱ってい居る人だ。
 高血圧の人、そして慢性の腎臓病や糖尿病の人。こういう疾病の人は、ワクチンをうったことで逆に血管が傷つきそのため血栓ができてしまう可能性が高いことだ。
 そしてこの関連で、ある疾病を予防するために血液が固まりにくくなる薬を服用している人にも問題が生じる。つまりワクチンを接種したためにウィルスに対する攻撃が高まって血管が傷ついた場合、通常は血小板が大量に作られて傷を塞ぐのだが、血液サラサラの薬を飲んでいる人はこの血小板生成の機能が阻害されているため、傷ついた血管が修復されず、体内のあちこちで血が漏れ出すことが起きる危険を持っているのだ。
 こうした疾病や薬を服用している人は、ワクチン接種を避けた方が良い。
 これが先にみた厚労省の「ワクチン接種に注意が必要な人」の指摘の背景だ。
 これが周知徹底されず無視されたことで、ワクチン接種に伴う多くの死者が出たものと思われる。
 ワクチン接種は、高齢者だかとか、より人に接し感染する危険がある医療従事者だからとかの理由で機械的に接種するのではなく、一人一人の健康状態だけではなく、既往症やこれに伴う薬の服用状況などを精査し、接種したことで逆に危険が伴う人は接種せず、感染すれば重症化する可能性が高く、しかも健康で接種しても危険がない人に限るべきなのだ。

 さらにもう一つ指摘されていることは、ポリエチレングリコールという、このワクチンにも使用されている乳化剤へのアレルギー反応だ。
 ワクチンに含まれているたんぱく質の遺伝子は壊れやすいものなので、この乳化剤で固めることでそれを防いでいる。
 しかしこの乳化剤はアレルゲンなので、この乳化剤にアレルギー反応を起こしたことのある人は、ワクチン接種によって、深刻なアレルギー反応を起こす可能性が高いことだ。
 この乳化剤は化粧品や合成洗剤、そして医療機関で使用するCT撮影の際の造影剤に使用されているので、これらを使ってアレルギー反応を起こした人はワクチン接種を控えた方が賢明である。
 ただしこのアレルギー反応が死に至ることは少なく、適切に薬を直ちに服用すれば問題はないとされるが、どの接種会場でもこの薬を常備しているわけではないので、注意が必要だ。

 さらにもう一点。ワクチン接種で考えなければいけない問題が一つある。
 それは、すでに新型コロナウィルスに感染したことのある人の場合だ。
 感染したということは、その症状の軽重にかかわらず、体内に抗体ができており、体の免疫系が新型コロナウィするの特徴を記憶しているので、再度感染した場合には直ちに免疫系が作動して、ウィルスを攻撃できるようになっているということである。
 このように抗体をすでに持っている人にワクチンをうったらどうなるのか。
 実はこの問題はもっとも無視された問題である。

 日本でのワクチン接種が医療従事者を中心に始まった当初はこの問題の報道もわずかだがあった。
 例えば日経新聞は、アメリカCDCの情報として、すでに抗体を持っている人は、二回接種が必要なワクチンでも、一回目で充分な抗体を獲得したということを報道した。つまり二回目の接種は必要ではないということだ。
 だが問題はこれで終わるのだろうか。
 日本の報道ではほとんど無視されたが、今年1月にイスラエルで、すでに新型コロナ感染症に罹って重体となり、奇跡的に生還した青年がワクチンをうったあとで死亡した。原因は、ワクチンを接種したことによる免疫暴走が起き、逆に重篤な肺炎を引き起こして死亡したとのイスラエル政府の発表が報道された(英文ニュース)。
 だがこのニュースは日本のメディアでは無視され、ネット検索しても全く出てこないのだ。
 厚生労働省の先のサイトでは、すでに感染したことのある人に対する注意も記載はされている。
 だがその内容は、抗体を持っている人にワクチンをうった場合の危険性などはまったく触れられず、感染したことのある人も再感染する例が多く見られるのだから、多くの国がワクチン接種を推奨しているとの理由で、「既にコロナウイルスに感染した人も、新型コロナワクチンを接種することができます」と示すだけだ。
 私は、すでに一度新型コロナ感染症に感染した人はワクチンをうつ必要はないと考える。

 私自身の状況も記しておこう。
 私はワクチンの成分であるポリエチレングリコールでアナフィラキシーショックを起こした経験がある。胆嚢のCTを撮影した際に使った造影剤にこの成分が含まれていたからだ。撮影後立ち上がることができず意識が遠のき、こうした症状がなくなるまで待機するしかなかった。ワクチンを接種すればこれが起きる危険性は高い。
 そしてすでに新型コロナ感染症には罹った。
 昨年2月、母が38度を超す高熱を出した。私も同時に37度後半の熱が出た。それぞれ2日間。発熱外来に電話して相談したが、「熱が4日以上ではない。感染者に接触していない。渡航歴もない」との理由で、二人とも診察と検査もしてもらえなかった。次の週に母は再び同じ状況になったので再度電話したら、インフルエンザではないことの証明と、レントゲン検査で肺炎が起きている可能性があることを罹りつけ医師の証明が必要と言われた。罹りつけ医院で見てもらうと、インフルエンザは陰性であったが、幸い肺炎は起こしていなかった。医師は度見ても新型コロナだから、大きな病院で肺のCTを撮影すれば白い影が出てくるかもしれないが、大病院を受診するだけでさらに感染する危険もあるので、免疫力を信じて、家で療養しないさいと指示された。
 母が熱を出さなくなるには、なんと6週間も掛かったのだ。どう見てもこの症状は新型インフルエンザ感染症。そして外出しない母がかかるには私が拾ってこない限りありえないことなので、私も幸い軽症で済んだが、新型コロナ感染症に罹ったことは確かだと思う。
 ということで、我が家では母も私もワクチンは打たないでおこうと考えている。

3:今日の感染状況と今後の対応策

 だが日本での新型コロナ感染症の広がりの状況を見ていると、ワクチン接種以外に、この感染症を抑える方法がないとは思えないことが問題である。

A:現在の感染状況ー感染者は人口の0.6%?

 まず日本の6月末の感染状況を見ておこう。

 最近では東京都とその周辺で再度感染者増の傾向がみられ、第5波が始まる兆候が見られるが、6月末には全国的には第4波は終わったものと思われる。
そこでまだ東京で感染者増が始まらない6月22日を基準点としてこれまでの感染状況を考察する。
 6月22日の日本での感染者総数(確認された総数)は78万7856人。これは総人口の約0.6%。そして新型コロナ感染症による死者(これも確認された総数)は1万4505人。この感染者総数と死者総数から、この感染症の致命率が弾き出される。
 それは1.84%である。1000人の感染者の18人が死亡するという数値だ。
 そして21年6月の時点での推定人口が1億2557万人なので、感染者総数は人口の0.6%となる。

 これらの数値だけで見ると、日本の感染状況はおそろしく軽い。これを根拠にして「さざなみ程度の感染状況でオリンピック中止とは」とつぶやいて、政府の助言者を辞めた人もいたくらいだし、これらの数値を根拠にして、この程度の感染状況でワクチンを全国民に接種すれば、新型コロナ感染症で死亡した人とそのワクチンで死んだ人とが拮抗する位だから、ワクチンを国費で接種することは無駄だと主張する人もいるくらいのものだ。
 

B:政府・自治体発表の数値では現状を把握できない

 だがこの数値が実態を反映していると考えてはいけない。なぜならば、20年の1月に日本で感染者が確認されて以後今に至るまで、政府の(したがって多くの自治体の)この感染症に対する対応策は、感染症を抑え込む常道を踏み外し、様々な理由を付けて感染者と接触した可能性のある人と徹底的に検査し、周囲の感染者を洗い出して隔離するという方法を取らず、様々な条件を付けて検査する人を絞るという方法がとられたからだ。
 当初は、7.5度以上の熱が4日続くこと、感染者と接触した可能性が高いこと、海外渡航歴があること、この三つの条件のどれかに当てはまらない限り、発熱外来とされた医療機関で新型コロナ感染症かどうかの検査を受けさせないという対応がとられた。
 この結果多くの感染したかもしれない人が門前払いを食らい、中には感染者と確認されないまま死亡した人も多数いただろうことが推察されている。これは警察になんらかの事故や事件で収容された死亡者が、収容されたあとで新型コロナ感染症に罹っていたことが確認された例が多数みられても、これらは感染者の中に含まれていない事実が示していることである。
 その後この発熱外来で検査を受けられる条件は緩和されたが、第二波・第三波と感染が拡大し、感染確認者の周辺の人から感染した可能性の高い人(濃厚接触者)をあぶりだす仕事をしている保健所がパンクした結果、20年1月の第三波のピーク時には、東京などの人口密集地では、感染確認者の周囲の濃厚接触者を追わないという措置すら取られたため、多くの感染者が検査すら受けられない状況が続いた。
 そしてさらにこの第三波での特徴的なことは、新型コロナ感染症に対応する病床が少ないため、感染者が増大すると、病院や、さらには軽症者を受け入れる宿泊施設にすら受け入れることができなくなり、感染が確認され、さらにかなり症状が重いにも関わらずどこにも受け入れべもらえず、自宅療養する中で死亡するに至った例が多数みられたように、多くの感染者が確認されないまま放置されたものと思われる。
 そしてその中には死亡するに至った人もいたものと思われる。
 こうした状況を考えれば、上記の総感染者数78万7856人で死者総数1万4505人という数字は全く実態を示すものではなく、この数字をもとにあれこれ論じること自体意味がないと断定できる。

C:真の実態を推理するー感染者は人口の2〜3% ずっと深刻な状況だ
 
 では実態はどうであったのか。
 そして実態を推定する方法はないのか。
 推定する最も確実な方法は、死者数と、新型コロナ感染症の理論的な致命率とから推定する方法だ。
 中国武漢から広がり、最初は主にヨーロッパに広がってその後全世界に広がった初期の新型コロナウィルス感染症の致命率は、0.66%とされている。およそ10000人の感染者の中で66人死亡するというもの。つまりほぼ151人に一人死亡するというもの。
 だがこれは感染者を確実にとらえられた環境の中での致命率なので、実際には、感染者をすべて確認することは難しいので、致命率はもっと高くなるのが実態だ。
 だがこれでは推計できないので、感染確認された人数が実態に近いと考えて、感染者総数に151倍すれば、実際に近い感染状況が推計できるわけだ。
 だがその後各地で新型コロナウィルスの変異株が出現し、この変異株の方が感染力が高いために、従来株に置き換わるという状況が生まれている。
 日本で急速に感染が拡大した、20年11月から始まった第三波と21年3月から始まった第四波は、この変異株の内の、イギリスで確認された変異株に置き換わったため起きたものだと考えられている。
 つまり第一波と第二波を引き起こしたウィルスに変わって第三波と第四波はこのイギリス型変異株になったということだ。
 そしてこのイギリス型変異株は、従来型に比べて3割とか9割の程度で感染者が発出するウィルス量が増えており、これは感染力が1.3倍から1.9倍程度に強まったと考えられている。
 そこでウィルスの型によって算出方法を変える。
 つまり第一と第二の波の真の感染者数は、致命率を0.66%と考え、感染者総数に151倍して求める。
 そして第三と第四の波は、少ない方の場合は、感染力が従来株の1.3倍、つまり致命率を0.507%、つまり197人に一人死亡すると考える。多い場合は、感染力が従来株の1.9倍と考えて、つまり致命率が0.35%、感染者の286人に一人が死亡するとして計算することにしたい。
 この計算結果は以下の通り。

 第三波の始まりを20年11月1日とすれば、この日までの感染者総数、つまり一・二波のそれは10万2094人。そして死者は1776人である。
 つまり致命率が0.66%、151人に一人死亡ならば、実際の感染者は26万8176人となり、見逃された感染者は16万6082人にも達する。

 そしてこれ以後第四波が終わった日を21年6月22日とすると、第三・第四波での数値は、感染者総数68万5762人。死者総数1万2729人。
 致命率が0.507%とすると実際の感染者数は250万7613人。何と見逃された感染者は182万1851人。
 致命率が0.35%とすると、実際の感染者数は364万494人。なんと見逃された感染者数は295万4732人となる。

 したがって感染者総数は、
 変異株が従来株より1.3倍の感染力を持ったと仮定してみれば、感染者総数は277万5789人。総人口の約2.2%。
 そして変異株が従来株より1.9倍の感染力を持ったと仮定してみれば、感染者総数は364万494人、総人口の約3.1%となるのだ。

 このように実際の死者数をもとに実際の感染者数を推計してみると、総人口の0.6%から2.2もしくは3.1%で、79万人あまりとの感染者数が277万ないしは364万人と桁違いにおおいことがわかるわけだ。

4:20年11月までの超過死亡は3000人・以後はもっと悲惨に!


 だがこの推計だけでは不十分である。
 それは確認された新型コロナ感染症による死亡者の数が、実際に新型コロナ感染症で死亡した人のすべてではないという可能性があるからだ。
 世界的にみると、世界保健機関(WHO)の推計では、公式の累計死者総数は340万人ではあるが、世界各国で見逃された死亡者数(超過死亡数)は300万人を越え、推計では600万から800万にも及ぶので、実際の死亡者総数は公式報告の最大3倍におよぶと発表している。
 https://www.afpbb.com/articles/-/3347883


 これに従えば日本でもかなりの見逃し数があると思われるが、日本政府は公式にはこれを否定している。
 この見逃された死者が話題となった昨年5月の時点では多くのマスメディアがこれを取り上げ、各県の確定人口統計から、新型コロナ感染症による超過死亡数を推定しようとしていた。
 例えば20年5月にその推計を出した読売新聞では2月から5月の全国の超過死亡数は1万人とした。この時点での新型コロナ感染症による死亡数は800人程度であるから、なんと実際の死亡者は確認された数の10倍以上という衝撃的数値であった。
 だがその後、国立感染症研究所がこの問題に取り組み、21年1月までの時点において、日本では新型コロナ感染症による超過死亡はなく、むしろ過小死亡の傾向すら見られ、これは新型コロナ感染症対策がうまくいっている証拠だとした。
  https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/493-guidelines/10364-excess-mortality-210518.html


 そしてこのデータに基づいて今日では日本では新型コロナ感染症による超過死亡はなかったというのがマスメディアの主たる言説となっているのだ。

 これは先の世界保健機関の発表とは対照的である。
 本当にそうなのだろうか。

 先の国立感染症研究所の報告を読んでみると、超過死亡がないとの根拠は、『「2020年1月以降の超過死亡数」が、「新型コロナウイルス流行の無い過去3年間での同時期における超過死亡数」と同程度の規模であることは、少なくとも2020年11月時点では、新型コロナウイルス感染症の間接的な死亡影響は全体としても、顕著ではなかった可能性を示唆しています。』というものだ。
 だがこれはおかしい。
 すでに様々にデータが公表されているのだが、これまでの通例では毎年インフルエンザが流行し、この感染症による超過死亡が3000人程度あったが、2020年はインフルエンザがほとんど流行していないことは確認されているので、この3000人程度の超過死亡がなかったわけだ。しかし2020年の超過死亡数が例年と同じということは、少なく見ても例年のインフルエンザによる超過死亡数と同程度の超過死亡が、新型コロナ感染症によって起きたと結論付けるべきなのだ。


 そしてこの約3000人の超過死亡は20年11月までのものだから、これは第一・第二波によるものなので、第一・第二波の死者総数が約4000人となり、感染者総数は60万4000人となり、確認された感染者総数10万2000人のなんと5倍となるわけだ。
 そして新型コロナ感染症による死者は、第一・第二波と第三・第四波では桁違いに異なり、確認された数値でも第一・第二波は1776人に対して、第三・第四では1万2729人となり、死者総数の88%が第三・第四波によるものとなってしまったのだ。
 なんと一・二波の7倍。
 感染者数が7倍となると同時に死者も7倍となったわけだ。
 したがって確実に20年11月以降21年6月までの半年間で、20年2月から11月までの超過死亡数3000人の7倍の数値、つまり2万1000人の超過死亡者が出ていてもおかしくないことになるのだ。
 となると20年11月から21年6月までの実際の死亡者は3万5000人余となり、感染者総数は少なくても689万人余、多く見積もれば、1001万人余となる。
 そうすると累計の感染者総数は、これに27万人あまりをたした数。つまり716万人か1028万人となるのだ。
 何とこれは全国民の6%から8%となり、637万人から949万人の感染者がみのがされた計算となるのだ。
 そして21年6月までの実際の死亡者は3万9000人余。

 以上の推定を裏付ける可能性の高いデータもある。
 厚生労働省が20年12月に全国5都府県で実施した新型コロナウイルスへの感染歴を調べる抗体検査の結果である。
 東京都は抗体保有率が1.35%であり、これは前回20年6月の3.5倍。1波が終わった時期よりも3波のピーク時まででは感染者がこれだけ拡大したということを意味する。
 それから半年。感染者数はさらに増大し死者もさらに増大しただろう。感染力が1.3倍から1.9倍のウィルスが猛威を振るっている。
 したがって東京の抗体保有率=感染率が1.35%からその3倍、いやその7倍の10%になっていても不思議はない。

 私の周囲でも新型コロナ感染症による死者には入っていないが、その死亡状況から明らかに新型コロナ感染症による死亡例と見られるものが3人もいる。
 一人は90代後半の女性。何らかの病気を発症してわずか一週間で死亡した。この人は毎年インフルエンザに罹って重い肺炎を起こして入院してきた人なので、新型コロナならひとたまりもなかったであろう。20年4月のこと。あとの二人は60代の姉妹。21年1月冒頭に妹が急死し、後を追うように、同居の姉が二週間弱で死亡。二人とも元気な人で死亡するような病気を持っていたとは思えない。
 こうした隠れた死亡例があちこちにあるのではないだろうか。
 上に見たような推計により、新型コロナ感染症に罹った人は、全国民の10%弱にも上っており、その数は1000万人を越え、死亡者も3万9000人余。
 欧米やアジア・南米の深刻な感染状況の国には及ばないが、アジアの中ではインド以外ではもっとも深刻な状況に入り、インドネシアに次ぐ深刻な状況にあるといわざるを得ない。
 感染者総数でいえば世界で29番目。
 死者数でいえば世界で20番目相当。
 隠された死者が多数いると考えれば、「さざなみ程度」などと楽観視している状態ではないことがわかる。

5:今後取るべき対策は

 やはり日本でもワクチン接種を加速させる必要はある。ただし前のめりになって誰でも接種するのではなく、一人一人の既往症と服薬状況などを厳密に見極め、ワクチン接種のリスクと感染した場合の死亡リスクを見比べて、ワクチン接種をした方がよい健康な人には、どんどんワクチンを接種し、新型コロナ感染症に対する抗体をもった人を人口の過半にまで増やすことが、最も早くこの感染症を終わらせる方法であると考える。
 だがまだワクチン接種は人口の1割程度。
 どう考えても感染を抑える状況ではない。
 したがってオリンピックなど、人と人との接触を大規模に拡大するイベントは中止し、今まで通りに人との接触をなるべく控え、接触しなければならない場合はマスクを着用したうえで2mの距離を開けたり、家族以外の者との飲食は避ける生活を続ける以外にない。
 そしてこうした人流を抑える政策をとることと並行して、人と接触する商売で生計を立てている人々が安心して仕事を休んで暮らせるように、政府はこれに伴う損失を税金で補填すべきである。
 さらに感染症が拡大しないための基本的対策を強化しなければいけない。
 つまり第一に、空港など海外から人が入ってくる場面での検疫の強化。
 要するに感染確認検査は確実性の高いPCR検査とし、感染の有無にかかわらず入国後二週間は空港近辺の待避所に全員入ってもらい、二週間経っても陰性が確認されて初めて滞在先や自宅に移動することを許す体制を確実に実施すること。
 そして第二に、一人でも感染者が見つかった場合には、様々な制限を付けて濃厚接触者を絞る行動はとらず、接触した人にはすべてPCR検査をして感染者をあぶり出して隔離すること。
 そして感染者の絶対多数は無症状か軽症なのだから、これらの人々を二週間収容し、日々体調を管理できる医療従事者が待機した施設を用意することが大事である。

 こうした我慢の生活、感染症に身構えた生活は、すくなくとも日本においては年内一杯続くことと思われる。政府が目指す希望する全国民へのワクチン接種が10月末だからだ。
 これは目標に過ぎないし、次に来る第五波は感染力がさらに増したインド型変異ウィルスだからだ。
 22年の正月が通常の正月になっていたとしたらそれこそ僥倖である。
 だが全世界がもとの生活に戻るには、ワクチンが全世界に行き渡るまで待たなければいけない。
 それはいつだろうか。
 
21年6月28日


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