【時評】 打ち続く「異常気象」

−温暖化人為説を打ち砕く、自然の脅威−


▼春なのに冬?:生活を直撃する異常気象

 4月17日の朝、東京で4月の半ばになって雪が降った。これは明治の観測開始以来の最も遅い降雪の記録である1969年の記録に、41年ぶりで並んだものだそうである。
 原因は関東上空1500mにまでマイナス3度以下の寒冷な気団が入り込み、それに関東南岸を通過する低気圧から流れ込む湿った空気がぶつかって雪となったもの。
 その前日の16日は、日中でも最高気温が9度を下回り、寒風吹き荒む厳冬の様相であった。
 今年は4月になっても寒暖の差が激しく、4・5日おきに20度前後に達する初夏の陽気と最高気温が10度に満たない真冬の状態とが交互に繰り返し起きている。おかげで3月の比較的暖かい陽気に誘われて芽を出した、野菜や花や果樹の新芽が次々と枯死し、農作物や花に甚大な被害をおよぼし、それぞれの価格が急騰し家計にも深刻な被害をおよぼし始めている。
 このためマスメディアは、異常気象・異常気象と騒ぎたて、連日ヒステリックな報道合戦が繰り広げられている。
 しかしこの現象は、4月17日朝の降雪が41年ぶりと伝えられたことにも示されているように前例のあるものであって、そう驚くことではない。むしろ今、考えるべきことは、このような10度前後も気温が繰り返し上下する現象は何も今になって初めて起きたことではないことである。

▼繰り返される異常気象

 昨年2009年も春から冬まで、常に季節の変わり目に同じ現象が起きていた、さらにこの現象はその前年2008年も2007年もその前も、ここ数年来ずっと続いている。問題は、このことが何を意味しているのかである。
 近年冬になると、ヨーロッパや北米を記録的な寒波が襲い、あまりの寒さに凍死する人が多数出たというニュースが何度も駆け巡った。その一方で夏になると、異常なほどの暴風雨が中
緯度・低緯度地帯を繰り返し襲い、各地で洪水などの甚大な被害を与えている。
 この異常気象の襲来は、21世紀になってからは毎年のように見聞きする現象である。
 これは何を意味しているのか。
 気象庁の説明によると、現在の、春になっても何度もひどい寒波が日本列島を襲う原因は、北極付近の気圧が高く、日本付近など中緯度地帯の気圧が低いため、北極付近の寒気が中緯度地帯に流れ込みやすくなっているからだという。ちなみに詳しい天気図を見ると、北極付近から厳しい寒気を伴った寒気団が、舌のような形で中緯度地帯に伸びており、北極の真上からこれを見れば、北極を中心とした寒気団から、中緯度地帯に向けてまるでヒトデの足のような形をした舌状の寒気団が何本も伸びている。
 従って繰り返し寒気団が中緯度地帯に伸びてくるため、寒暖の繰り返しが続くのだ。そしてこの現象は今春だけの現象ではなく、ここ何年も続いている現象だ。
 さらにもう一つ説明されていることは、ここ何年もの間、太平洋赤道域東部の海面温度が高くなるエルニーニョ現象が続き、赤道付近の暖気も強力である。従って通常ならば、春先や夏
の終わりにしか起こらない、寒気団と暖気団の激しいせめぎあいが一年を通じて起きているということだ。だからこの数年来、季節の境目には激しい寒暖の差が繰り返し起こり、そして夏は極めて暑く雨が多く、冬の寒さの厳しさは例年以上となる。

▼長期の温暖化の中の小寒冷期の訪れ

 さて、こうした「異常気象」がここ何年も続いているということは何を意味しているのだろうか。
 こうした異常気象が起こるとすぐにマスメディアの報道に立ち現れる現象は、これを地球温暖化と結びつけて説明することである。温暖化しているから何度も異常気象がおき、深刻な自然災害が襲う。一刻も早く温暖化を止めるために、温室効果ガスの排出量を劇的に削減しなくてはならない、という言説である。
 しかし事態を正確に直視すればこれは温暖化ではなくて、むしろ地球の寒冷化に伴う現象であることは、地球温暖化が人間活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの増大によるものだという誤った先入観に囚われない目で見れば明らかなことである。
 実は現在地球の温度は低下しつつある。
 温暖化が騒がれているが、そのピークは1998年であって、以後徐々に気温は下がっている。温室効果ガスの排出は依然として増加しているというのに、地球の温度は下がっているのだ。
 ではその原因は何か。
 今起きている現象は、太陽活動の低下による地球の一時的な寒冷化である。
 太陽の黒点の活動は5〜7年の周期で増減し、それに伴って太陽から発せられる電磁波(これは太陽風と呼ばれる)の強さも増減し、太陽風が強いと地球の大気の低層部分に分厚い雲が出現して地表の暖かい空気を逃がさないため地球の温度が上がり、太陽風が弱いと大気の雲は少なくなるので地球の温度は下がる。昨年から今年は、その黒点の活動がもっとも低下した時期にあたり、昨年の皆既日食の時に流された太陽の映像は、太陽から噴出するフレアが極めて小さく、太陽の磁極線も弱々しい、とても活動の衰えた太陽の姿であった。
 また太陽黒点の活動周期はもっとも短い5〜7年の周期だけではなく、その倍数の周期と、最も長いものでは、およそ100年ほどの周期とが存在する。現在はその100年ほどの周期のもっとも活動が活発な時期を少し過ぎており、今後は太陽活動は増減を繰り返しながらも、次第に低下していき、それに伴って地球の温度も低下していく可能性の強い時期だという。
 地球温暖化二酸化炭素犯人説に極めて懐疑的である東京工業大学教授の丸山茂徳氏は、19世紀中ごろ以後おきている温暖化は、太陽活動の増減と太陽と地球の距離との変化に起因するおよそ1500年周期の現象であると説き、その1500年の温暖化の過程でも何度も小寒冷期と小温暖期が繰り返し現れると、その著書の中で力説している。そして1940年ごろから1970年ごろが小寒冷期、そして1970年以後が小温暖期であり、これは1998年に最高温度に達し、以後は北半球では気温は停滞し、南半球ではすでに低下している。つまり現在は小寒冷期なのであり、これは2035年ごろまで続き、それからまた40年ほどは緩やかに温暖化が続くという。
 ここで注目すべきは彼の説におけるこの前の小寒冷期、1940〜1970ごろである。東京で4月も半ばに雪が降った記録は41年前の1969年。まさにこの前の小寒冷期の最後の時期に起きたものである。
 そして今年の春の異常な気象は、始まったばかりの小寒冷期に伴う現象となる。

▼高成長を目指すための嘘を見抜くことの大切さ

 このように温暖化二酸化炭素犯人説に立たずに、気候変動を太陽と地球との長い歴史の中に置いて見ると、現在の「異常気象」が繰り返し起こる現象の一つであることが良くわかる。
 今大事なことは、地球温暖化を人間活動による大規模な温室効果ガスの排出が原因であるという大嘘を流し、エネルギーを石油や石炭・ガスなどの燃料から自然エネルギーへと転換させ、これによって大規模な産業基盤の転換を図って失われた高度経済成長を取り戻して巨大な利益を上げようという企みに乗るのではなく、寒冷化や温暖化に伴って起こる様々な自然災害に備えることなのだ。
 そしてもう一つ大事なことは、高成長による巨額な利益を目指すのではなく、福祉・教育・農林水産業など人が生きるための基盤を強化するとともに、これらの基盤が極端に弱い地域
の国々にこれを克服する援助を、先進国が行うことである。


批評top hptopへ