Round 3 トライアンフTT600

2001.05.03

 

おらは結局二輪の魅力に抗えず、二輪サーキット走行を続けることにした。最近つまらなくなったプロ野球観戦(おらはよく神宮球場や横浜スタジアムでの中日戦に出没する)をやめ、テニスはダブルスやめてシングルスに専念すれば、時間的には何とかなるだろう。しかしそれなりのマシンが必要だ。4気筒スーパースポーツの中での候補として、ヤマハYZF-R1、ヤマハYZF-R6、トライアンフDaytona 955i、 トライアンフTT600、Bimota等があげられるが、YZF-R1など1リッター・クラスのスーパースポーツは、177Kg/150PS = 1.2Kg/PSとそら恐ろしいパワー・ウェイト・レシオで、おらには扱いきれそうになく、ストレス溜まるばかりで面白くないだろう。性能は落ちるが、今後日本のレース界でもはやり始めるといわれていて、欧州で人気の600cc、4気筒スーパースポーツを選ぶことにした。もともとおらは何でも小さいのが好きなんだが、小ぶりな車体に加え、170Kg/110PS = 1.5Kg/PSは人間の扱える二輪として最もバランスのとれたクラスと言われている。ちなみにおらのSRV250は144Kg/27PS = 5.3Kg/PSだから、600ccスーパースポーツでさえ、おらには想像もつかないハイ・パワーだ。これらの諸元を持つ国産逆輸入600ccスーパースポーツは、ホンダの国内モデルを除き、馬力の国内規制が適用されないから、国内規制1300ccクラス大型ネイキッド(カウルのない二輪)の250Kg/100PS = 2.5Kg/PSよりもずば抜けたパワー・ウェイト・レシオとなっている。ただし大型ネイキッドの最大出力が7,000rpm程度の中回転域で出力されるのに対し、600ccスーパースポーツの最大出力は13,000rpm程度の超高回転域で出力される。できればイタ車にしたかったおらだが、L型ツインばかりのドゥカティは外れるし、Bimotaは向こうで発売されたインジェクション・モデルが日本には入ってこないし、つぶれかけてるらしいからメンテナンスが心もとない。

 

4気筒、600ccスーパースポーツに唯一の外車がある。トライアンフTT600。しかもインジェクション仕様だ。TT600も国産逆輸入車の600ccも諸元は170Kg/110PS = 1.5Kg/PSで同じだが、どこが違うのか分からんが、TT600は国産勢には性能で及ばないようだ。それはいいとしても、維持していく上で外車のトラは大変だろう。しかし、おらの物選びの決定的な要素はデザインだ。国産車はどれもぶさいく。ヤマハ・ファンのおらとしてはYZF-R6にしたいところだが、デザイン悪いだけでなく、青はあるがおらの好きな青ではない。だいたいチューニング・フォークのエンブレム(音叉マーク)がないのは致命的だ。そしてYZF-R6は未だキャブレター仕様。おら、メンテナンス上の問題からキャブレターはこりごりなのだ。インジェクション化されてるのはTT600とスズキのGSX-R600だけ。なんでヤマハはR1やR6をWGPの 500ccクラス(現在のMoto GPクラス)に参戦しているゴロワーズ・ヤマハのオリヴィエ・ジャックや中野真也のマシンみたいに、カッコよくて、きれいな青で、チューニング・フォークのエンブレム付きデザインにしないんだろ。東京モーターサイクル・ショーで、とあるチューニング・メーカーがR6をそんなデザインのレーサーにして売ってたが、公道走行不可だから対象外。

 

おらは青が好き。四輪のビーマー、二輪のSRV250、ジェット・ヘル、フルフェース、ライター、腕時計…、みんな青。そしておらにはドラゴンズ・ブルーの血が流れている。

 

価格的にいってもTT600は国産逆輸入車より\10万程高いだけだし、ちょうどこの4月にトライアンフ・ジャパンが設立され、維持面の心配も緩和されるだろう。何より日本にまだたった6件しかないトラの正規ディーラーが自宅から二輪で20分くらいのところにある。スナップリングというバイク・ショップだ。4月8日(日)に東京モーターサイクル・ショーでTT600にまたがれたのもよかった。ということで相談した皆の外車反対意見を無視しTT600に決めかけた…ところへ、ホンダがCBR600F4iをインジェクション仕様にして発売した!しかも国内モデルもある!国内モデルには馬力規制があるもののセッティングがいいようで性能的には問題なさそうだし、随分安く買える。二日ほど悩んだが、CBR600F4iには青がない、TT600は希少価値が高くて持ってる充実感があるといった、およそサーキット・ライダーにあるまじき理由から、結局TT600に決めた。で、注文したら、なんとTT600の購入は日本ではおらが初めてだった。そういやワイルド7の飛葉はホンダだったが、誰かトラに乗ってなかったかなー?親分はスズキのモトクロッサー、ユキはドゥカティに大砲付けて乗ってた。ヘボピーはハーレー。八百のあのおもろい単車は今はなきノートンだ。草波は四輪アルファ。TT600買ったからこれでおらのアルファ購入は当分おあずけ。6年乗ってるビーマーにあと9年乗るぞ。15年、15万Kmだ。

 

 

ずっと以前から、前回登場した中学校時代の同級生である岡田の行方を追っていたが、今もおらの育った名古屋に住んでいる小、中、高、予備校の同級生だった友人に岡田の行方を尋ねたところ、最近偶然岡田と飲み屋であったとのことで、岡田とようやく連絡が取れていた。岡田は名古屋にいた。岡田と最後に会ったのは15年前。おらは知らなかったが、彼は19歳の頃、よく鈴鹿サーキットで走っていたそうだ。20年前おらが岡田の後を走ってコーナー曲がりきれなかったわけだよ。幸い岡田は今も二輪に乗ってるだけでなく、輸入四輪車の販売と半分趣味でカワサキのヴィンテージ・バイクを販売してた。あいかわらずのカワサキ党だ。おうちゃくい(不良っぽい)男だったからカワサキが似合う。

 

3月16日(金)、名古屋で久しぶりに岡田と再会し、岡田の行き付けの洋風居酒屋“酔仙”に連れていかれた。そこは本間利彦という男の店だった。岡田は本間氏とつきあいがあるようで、酔仙に現れた本間氏はずっとおらたちに同席していた。そんなすごいライダーだとおらは知らなかったが、本間氏は全日本GP250チャンピオンで、WGPにもスポット参戦し、二度4位になったことのある男だった!ライテクに関するおらの疑問に答えてくれて、今後も教えてくれるとのこと。チャンピオンにしては随分控えめで小柄な34歳。岡田に言わすと、「速いけど、どxxx」と。そうは見えんがなー。骨折は十何ヶ所と答えてた。実はこの男、本業はヤマハのWGPマシンであるYZR250の現役テスト・ライダーだった!

 

このとき岡田の連れが二人同席した。一人は四輪のアマ・レースやっててR1にも乗ってる西田氏。もう一人は戦闘機作ってる兵器産業最大手の会社で仕事してる江場氏で、昔は名古屋出身のライダーと組んで全日本のメカニックで食ってたと。そんで本間氏はライヴァルだったが、よく同じレースに出てたから、レースがないときはビリヤードしたりして遊んだ仲で、今も連るんでるようだ。おらは江場氏の勤めてる会社と長くて深ーい付き合いがあり、ちょうどここんとこおらの仕事で大問題になってる戦闘機XF-2用スピン・リカヴァリー・シュートの件を江場氏が知ってたもんだから、「御社が防衛庁から逃げたからひどい目にあってる」と文句を言ったところから始まって、しばらく江場氏とは二輪でなく戦闘機の話で盛り上がった。スーパーバイク選手権のライダーで今年からWGP500に参戦してる芳賀紀行も酔仙に来るらしい。鈴鹿が近いせいか、名古屋にはトップ・クラスのライダーが多いようだ。

 

 

4月27日(金)の夜にTT600の納車。その翌日からTT600に乗り2泊3日で三陸往復をし、1,500Km走ってほぼ慣らしを終えた。最終日の700Kmは身体中が痛んだ。つなぎのプロテクターが原因で左膝が痛んだが、ステップにつま先立ちするかピリオン・ステップ(二人乗り用ステップ)に足を乗っけると痛みは緩和された。左腕が痛んだのはたぶん体がTT600に慣れてないからだろう。SRV250でも乗り始めの頃はそうだった。これはまめに片手運転するしかなかった。デイパックしょってたせいで背中が痛んだのが一番きつかった。また、130Km/h以上で20分も走ってると頭への風圧を支えている首がえらく痛んだ。これはタンク・バッグつけてたから頭をカウルの下に持っていくことができないのでどうしようもなかった。あと辛かったのは手の冷たさだ。1日で700Kmなんて二度と走りたくない、耐久レース向けじゃないおら。帰ってからは、走ってたときは何ともなかった右腕が、何故か今もしびれたまま。おらは本当にゴルゴかも。


4415 慣らしに三陸へ旅立つTT600とおら。どっちもカッコいい!

 

TT600の慣らしの回転数の設定は、以下の様にきめ細かでおもしろい。

0Km-480Km:                        5,000rpm (6速で約90Km/h)

480Km-960Km:                    6,000rpm (6速で約110Km/h)

960Km-1,280Km:                  7,000rpm (6速で約130Km/h)

1,280Km-1,600Km:               8,000rpm (6速で約150Km/h)

あとはレッド・ゾーン14,000-16,000rpmまでぶん回せる。

 

まだ8,000rpmまでしか回してないけど三陸往復で得た感想は、

・驚くべき加速。こんなの市販していいの?この加速が味わえただけでも、元が取れた気がする。

・迫力のサウンド。400cc 4気筒がカワサキZ400FXしかなかった頃、おらは4気筒のモーター音に憧れてた。でもTT600のそれはF1マシンのような甲高い音。早くレッド・ゾーンまで回したい!

・クラッチが硬くて遠く、かつ低速トルクがないから発進時のクラッチ・ミートが難儀で、信号が赤だとぞっとする。とても二本指ではクラッチ完全には切れない。これが大型自動二輪の検定車だったらみんな一本橋で落ちるな。しまいには左手の握力がなくなり、慣らしの間はやりたくなかったが、低速時以外はシフト・アップもシフト・ダウンもクラッチ・レバーを使うのをやめた。シフト・アップは何故かクラッチ使う方がショックが強い。クラッチの硬さをスナップリングの店長に相談したら、この手の二輪はみんなそうだって。で、店長は、クラッチの遊びを多くして、停止時は4本指で握ると。

・寝かせたときの安定感抜群。これが4気筒エンジンの重さとクランク・シャフトの長さゆえのジャイロ効果による安定性か。おらにとってはこれも初めてのモノサスだ。

・思った以上に重量気にならず、ヒラヒラ感で左右に連続で切り返せる。でも停止時は足つき性の悪さから重量どえらい気になる。十分長いんだけど、もう5cm足を長くしたい。

・初日からストップ・ランプが常時点灯。つまりストップ・ランプがつかないのに等しい状態だった。危ないから、絶対後ろにつかれないように走った。四輪だが、同じ英国車のローバーも電気系統は最初からひどかった。店長にリア・ブレーキのランプ点灯調整をしてもらったらすぐ直った。こんなことなら旅先から店長に電話して聞けばよかったよ。

・ブレーキの制動力にはたまげた。150Km/hから一瞬にして止まれる感覚。前後輪併せてディスク1枚のSRV250と3枚のマシンとの差?それともタイヤのせい?太いのに履き替えたSRV250の後輪180がTT600の前輪と同じ180だ。

 

こういう二輪をツーリング向けに買うやつがすぐ手放しちゃうんだろうなー。確かに二度とツーリングに使おうとは思わんよ。おらは、慣らしの為に遠出しただけ。こいつはサーキットで走るための二輪だ。

 

以後、いつ仏の身となってもおかしくないことをかみさんに納得させたおら。

 

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