Round 12 FISCO最終コーナーでの凄絶なるライディング

2001.07.23

 

7月14日(土)、TTでの3回目のFISCOだ。友人の古屋がレガシーでおらの自宅に来て07:00に出発。自宅を出てすぐの交差点で、トライアルやりに行くスナップリングの店長のクルマと偶然出会った。店長はおらと同じ40歳。

 

中央道での走行中、ハングオフやるときのイン側の足の置き方を試してみて、それを上から覗き込んだらびっくり。ステップ・ホルダーに靴底を平行にぴったりつけてるつもりだったのが、45度くらいにしかなってない。これじゃ、寝かせてるときにつま先擦るはずだ。できるだけ平行になるように、右足、左足とも靴底の置き方を練習しながら走った。両足一度にやってみたら、メット後ろにたらして両膝広げてゲンチャリ乗ってる小僧みたいだった。今日からブレーキングは一本がけにするつもりだったが、須走IC付近で、一本がけでは今のブレーキ・レバーの設定位置である1(1が最もグリップからレバーまで遠く4まである)が遠く感じられ、2に変更した。

 

09:00にFISCO到着。猛暑のドライ・コンディション。混んでると思ったがそうでもなく、全時間混走。自走はおら以外に3台くらい。何とおらんとこに本田氏がやってきた。向いの駐車場に炎のRR会の真っ赤な大テント広げてる。炎のチーフ・メカニック兼広報担当の平石氏も来てた。おらになんかあったときの為に、古屋の携帯電話におらの自宅の電話番号を登録した。

 

今回はタイムにはこだわらず、ブレーキングは極力手前から始めて徐々に遅くしようと、ホーム・ストレートでは230m、他は120m手前からブレーキングし始めた。でも何故かその気になれず、最後までこの距離を詰めなかった。また、ブレーキングがおっかないからホーム・ストレート以外のストレートではスロットルもあまり開けず、コーナリング・スピードだけに的を絞った。前回ホーム・ストレートでのブレーキングでフロント滑らした恐怖感がまだ残ってるようだ。

 

それにしては、なんか乗れてる。1ラップ目からいきなり215だ。この日はホント、いいタイム出たなー。4ラップ目で8秒だ!しかも、それ以降もコンスタントに、8-10秒。前回のセミ・ウェットでの自信喪失状態から、おら完全復活。本間氏の例にあった、「例えば8秒でタイム止まったら」のタイムが、もうでちゃった。うれしかー。


4630 ヘアピンで膝擦り

 

シケインのMCコーナーとダンロップ・コーナーで、リアが3回ほど流れた。いずれも低速だから立て直せたが、ダンロップ・コーナーでは、一度ハイサイド起こしかけた。FISCOでリヤを滑らせたのはこれが初めてだ。

 

ドライの際は、ブレーキ・レバーの一本がけには無理があるとわかり、二本がけに途中で変えた。しかし二本がけだとフロント・レバーの設定2は近過ぎるので、再度設定を1に変える為、9ラップ走り終えてパドック・イン。タイヤ見たら、リア・タイヤの端がかなり溶けてボロボロになってた。のどが相当乾いてたし、満足感あったから、しばらく休憩。

 

するとおらんとこに、1人の外国人の兄ちゃんがやって来て、「あなたのライン取りがいいから、後ろをずーっと走ってた」って。ほんまかいな?聞いてみると、彼のこの日のファステストはおらとほぼ同じの10秒って言ってたし、古屋も彼がずっとおらの後ろを走ってたと言ってたから本当なんだろう。アイルランド人で東京在住のR6ライダー。同じ600ccスーパースポーツに乗り、同様のタイム。しかも感じ良さそうだから、気の合うライヴァルになるといいな。ジョーと呼んでくれって。

 

今日は、路面温度が高く、タイヤのグリップがいいから、みんな飛ばすんだろう。転倒してるライダーが多かった。コース上の転倒かオイル漏れか、休憩してる間に赤旗走行中止が3回くらいあった。おら、いいタイムも出たし、リア・タイヤが危なそうだったので、もう充分って感じだったが、せっかく古屋も来てるし、休憩中のジョーも本田氏も再度行くと言うのでおらも行くことにした。でもコース・インしようとすると赤旗が出て、なかなか行けない。筑波のときもそうだったが、おらって一旦休むと気が抜けるなー。その割には筑波のときもこの日も、2ヒート目の方がいいタイムが出る。でも、あのタイヤでこれ以上のタイムを出すのは危険だ。今度はホントに流して、コースをよく知ることに専念しようと考えながらコース・イン。だから、走行中にラップ・タイムは見なかった。

 

ここからは、とっておきの話だから目をかっぽじいて良く読んでおくれ。本書のタイトルにふさわしいこと、またやったど。今までの悲惨さは単なる序章に過ぎなかった…。それは5ラップ目に起こった。最終コーナー入り口のイン側から、アウトに膨らみつつ右旋回を始め、2速でスロットルを徐々に開け続けていた最中だ。速度は120Km/hくらいだと思う。後輪が一気に外側に90度スライドした感覚と共に、おらはコース上を頭から見て時計周りに、横向きに勢いよく転がっていた!後輪のスライドによる転倒だ!スロットルを急に開け過ぎた覚えはないので、たぶんタイヤが限界を超えたんだろう。このまま横向きに転がり続けてればいいけど、縦になったらまずいなーと思ったから、へたに手を使って転がるのを止めないようにして、ただひたすら止まるのを待ってた。転倒時の痛みもなかったから、このままうまく転がっていればいつか安全に止まるだろうとの確信があったから以外と恐怖感はなく、「いいコケ方したなー」と喜びに浸りながら転がってた。前回のセミ・ウェットでのフロント・スライドの方が、転倒しなかったけど百倍恐かった。でも、同じときに相棒のTTも転がってたわけで、彼女のことを考える余裕はなかったなー。人間も二輪もコース上ではなかなか止まらんもんだ。おら、第6ポストちょっと越した、コース脇の芝生でやっと止まった。TTはおらより路面の滑りを楽しんだようで、そこから20mくらい先の、やはりコース脇の芝生で止まってた。おらもTTもコース上に止まったわけじゃなかったし、オイルもまいてないから、幸い赤旗にはならず、他のライダーには迷惑かけずに済んだ。おらすぐ立ち上がって、ポストで旗振ってる人のところに歩み寄ったら、転倒の仕方が派手だったせいか、どえらい心配されて「大丈夫ですか?救急車が来ます」だって。おら、左手の小指は痛んだが、あとは全然平気だったのに。でも後でつなぎを見ると、右尻部分、右後ろ肩部分、左腕部分がそうとういってた。翌日ちょっと左腕が痛くなった。これが不思議なんだが、あれだけ転がったのに、頭はまったく打たなかった。ヘルメットを見てもキズ一つない。ホントうまくコケたよなー。おらが後日ジョーに、

Anyway, I was very happy on Saturday, because I now have a good confidence to be a fast circuit rider than I thought. I could make 1'05 lap-time and fall down smoothly ;-). That kind of crash was what I wanted to do. Maybe I need to crash on every corner to be a fast rider. I hope my body is strong enough for that.

e-mailしたら、

I like your attitude - falling down smoothly is a victory.  mmmm, I think you will make a good racer!

だと。

 

ポストの人曰く、最終コーナーの入口すぎたところは路面が波打ってて、そこで転倒するライダーが多いそうだ。おらそんな波打ってる部分なんて知らんがなー。一度コースを歩きながら路面をくまなく見てみたい。本間氏は最終コーナーでリア流れても、立て直せるって言ってたけど、あれだけ急に流れたら誰だって立て直せないと思うなー。そういや、「最終コーナーでのハイサイドはない」と言ってた本間氏だが、それは上り坂だからだろか?今回のように、一気に流れたらハイサイドにはなりようがない。

 

オフィシャルが二人がかりでTTをコース脇にいたおらのもとに持ってきてくれた。おらTTはもう駄目かなーと心配だったが、TTを見ると、右ハンドルが相当ひん曲がってはいるものの、フレームは原形充分保ってて大丈夫そう。おらとはスタイル違うものの、TTも右側だけで滑るという、うまいコケ方したみたいだ。彼女はいつも右に倒れる。四輪デートで助手席に座る女の真似か?かわゆいやつよ。おらを救急車で運んだ後に、TTはレッカーで運んでくれるとのことだった。おらはP-LAPをTTから抜き取り、コース上に飛散してたステップやら、ラム・エア・ダクトやらを拾っといた。幸いP-LAPのデータは生きてた。彼らが救急車と称したのは、サイレン付きのワゴンだ。大げさに言うなよな。それに乗り、FISCOにある、医療室に連れていかれたが、ワゴン車がパドックに入ってから「ピーポーピーポー」とサイレンの音が聞こえた。何かあったのかなと思って運転手に聞いたら、そのサイレンはおらの乗ってるワゴンが鳴らしてた。ホント大げさだね。ちなみに、消防署にあるようなホントの救急車も、常時パドックに待機してる。おらが乗ったワゴンを救急車と称するならば、救急車に乗るのは中学1年のとき以来だ。そのときも二輪だった。ケッタだけど。ちなみにそのときは入院した。おらのケガによる入院歴はゴルゴなみだぞ。いや、ゴルゴは入院なんかしないか。

 

FISCOの一番の観戦場所は今まで1コーナーだと思ってたが、おら以外に1コーナーに突っ込んだやつ見たことないし、低速コーナーだから観てても面白くないかも。おらがよく見かける転倒は各コーナーの出口だ。一番の観戦場所は、ダンロップ・コーナーから最終コーナーへの切り返しと、今回おらが転倒した最終コーナー途中じゃないかなー。

 

医療室にはヴェテランの看護婦さんが一人いて、指を順番に曲げさせられたり、前屈をさせられたりした後、指は後日でいいからレントゲン写真を取るように言われて、指に湿布と包帯してくれた。簡単に終わったが、その後が長かった。話好きの看護婦さんで、おらも面白いもんだから、20分くらいだべってた。大学がサーキット走行を許さないから内緒でやってくる国立大学の助教授がいるだとか、レースのときの病院への輸送はヘリコプターを使うだとか、事故があった際に患者の親からサーキット側にクレームつけられることがあるだとか。おらに、「会社ではすました顔して、黙ってサーキットやってる方がカッコいいよ」って教えてくれた。確かにそうかも。でも既に職場の何人かには話しちゃってるし、筑波の写真なんか、社内外で気にいった女に配りまくってる。「もともと四輪用のコースだから、最終コーナーの入口付近には段差があって、二輪には危ないコース」だって。コースのことも知ってて、話せる看護婦さんだ。治療費は請求されなかった。レッカーも無料。おら、FISCOの施設やサービスを毎回のように十二分に活用してるなー。それにしても古屋は気がきかない。おらがここにいるのは分かってるはずなのにやってこないから写真撮れんじゃないか。結局、後でまたここに来て、看護婦さんにやらせで包帯を巻き直してもらって写真撮った。この前は、薬指のケガして生まれて初めて“小指の想い出”を歌ったけど、今度は正真正銘だ。


4645 おらはやらせの真面目顔、でも看護婦さんはどうしても笑っちゃう

 

今回大転倒した割にはおらが軽傷だった要因を分析すると、

・つなぎを見ても明確だが右尻から落ちてる。かなり体落としてハングオフしてたから、転倒時の縦方向落下の力はたいしたことなく、走行方向の力は転がることで相殺された。

・おらは滑りにくい革着て、62Kg程度と軽いのに比べ、TTは滑りやすいカウル着てて、170Kg以上と重いのに加え、転倒時におらより前方にいたから、TTはおらより早いスピードでコースを滑り、おらにぶつかることはなかった。

・おらの後ろにライダーがいなかった。

 

ノーマルのTTでは240Km/h@13,000rpm以上はどうやっても出ない。ホーム・ストレートの3/5くらいで240Km/hに達し、それ以上スロットル開け続けてもスピードが全く上がらないのだ。でもR6のジョーが257Km/hでると。この差は大き過ぎる。FISCOなら6速のギヤを代えるよう、江場氏から言われてたが、店長に聞くとギアだけ変えるのは\20万くらいかかるから、1-6速のギア比が全部変わっちゃうけど、スプロケット変えた方がいいと。ってことは今2速で曲がってるとこを、1速にしないといけないかもしれない。ニュートラルに入れる可能性あるから1速は使いたくないんだけどなー。それにしても何でヤマハ好きなおらが、ヤマハのR6に対抗するセッティングで悩まなきゃいかんのだ。

 

最終コーナー終わりの方で170Km/h出た。本間氏の言ってた150Km/h-170Km/hの上限だ。しかもそんなに恐怖感はない。もう一つの高速コーナーである100Rの方が、ラインがよくわからなくて、先にあるヘアピンも見えないからおっかない。あのコーナーは逆バンクになってるんじゃなかろうか。そういや、尾田も四輪で走ったとき、最終コーナーより100Rの方がおっかないって言ってた。最終コーナー出口でも問題あった。最終コーナーを出て、ホーム・ストレートのコース左端についた後は、そのまま左端を真っ直ぐ走らないといけないのに、車体を起こしきれなくてコース真ん中辺りまで戻ってしまうことを繰り返した。いつもより寝かせてたから、コース・アウトを怖がって、車体を起こすタイミングが遅れたんだろう。これはタイム・ロスにつながるだけでなく、おらより速いスピードで追ってくる後続のライダーと接触する危険がある。

 

2ヒート目のP-LAPのタイムを見て驚いた。1ラップ目にいきなり207、4ラップ目にはなんと205出てた!今日一日でおらの記録を9秒縮めた。ちなみに、今までのおらのタイムの記述は全て、1/10秒単位を四捨五入したものだ。でも、ジョーにタイムを聞いたら、彼は3秒出したって。2秒負けてる!第1ヒートでおらが2秒勝ってたから、同着ってことで…。コケといてこんなこと言うのも何だが、あれだけブレーキング・ポイントに余裕を持って出した5秒台だから、すぐに2分を切れそうだ。

 

今回タイムが出た理由は、おらが思うにこうだ。

・リリースまで徐々に緩めていくブレーキング。本間氏直伝のあれだ。

・ハングオフのフォーム変更。先に述べた様に、イン側の足の角度を変えたから、つま先を路面に擦ることもなかったし、車体がよく寝た。また、ハングオフ時の後輪への過重を大きくして、リアのグリップを高める為に、できるだけシート後方に尻をもっていった。ハングオフで体をしっかりと落とす為に、アウト側の腕をタンクに触れるまでもっていった。これらを試みたら、今までとは比べ物にならないほど寝かせられたから、コーナリング・スピードは速かった。全てのコーナーで、膝のバンク・センサーが路面に擦った。おらまさか、最終コーナーで膝が擦るなんて思ってもみなかった。おらは膝が擦るのは低速コーナーだけだと思ってたが高速コーナーほど強烈、かつ距離が長い分長時間に渡って膝を擦った。最終コーナーは右コーナーだから、右側のバンク・センサーは、ほぼおしまいの状態だ。

・コーナー手前で充分減速してからのシフト・ダウン。高回転域でのシフト・ダウンを避けることで、エンブレを必要以上に効かすことがなかった為、あれだけ苦労した後輪のチャタリングは全く出なくなった。

・高めのギヤでの旋回開始。旋廻開始直前の状態をエンブレに頼りたい為、おら低めのギアにシフト・ダウンして高回転域で旋廻したがる傾向があったが、高めのギアを使用する様に心がけた。もちろん高めのギアはエンブレ効かない分、旋廻開始までの怖さはあるが、今回は充分すぎるほどコーナー手前で減速してたから、旋廻のきっかけさえ済ませれば、後はそれほど恐くなかった。一旦寝かし込めば、後は高回転域よりもこの方がスムーズで、パーシャルにもって行き易く、かつシフト・アップを一回減らせるから、こっちの方が以外と速いのかも。この日は1速を使わなかった。

 

これらの多くは根本健の“パーフェクトライディングマニュアル”によるものだが、おもしろいもんで、上記の方法の多くは、より安全に走れて、かつタイムも良くなるというものだ。テニスのサーブも同じで、入る確率とスピードは反比例するものと思われがちだが、フラットで打たない限り、ちゃんとした理論に基づいて打てば、両者は両立する。二輪もテニスも何でもそうだが、理論ってえのは大事だね。

 

おら、一皮剥けたって感じで、ひょっとして二輪サーキットはそこそこいけるかもしれないという自信が出てきた。でも、この日は速いやつらが多く、抜いたのも何台かあったが、殆ど抜かれっぱなし。まあ、抜かれたのは、ほとんどがブレーキングでだからよかろう。おらブレーキングを一からやり直し始めたところだし、ブレーキングでは勝負しない癖をつけないと、また突っ込むからな。二度と使うつもりはないが、いざとなったら、おらには神風ブレーキングがある。脳あるライダーはハード・ブレーキング隠す。

 

おらが医療室から戻って随分経ってから、転倒車7台がレッカー車で戻ってきた。

 


4651 一番後ろのがTT

 

TTのエンジンはすぐにかかった。破損状況は、

・右ハンドル曲がり

・右ステップ折れ

・右前ウィンカーちぎれ

・右前部サブ・フレーム曲がり

・右カウル広範囲に白地むき出し

・カウル下部の部分破損

・フロント・フォークねじれ

・前輪フェンダー部分破損

 

さて、修理しないと帰れない。まず、TTを駐車場まで持っていくのが大変だった。右ハンドルがかなり下向いて曲がってるから、ハンドルがカウルに当たって右に切れないのに加え、前輪が左向いてて、左方向にしか進まない。切り返しを10回くらいやって、やっとのことで駐車場にたどりついた。ほんの50mほどがこんなに遠いとは。ハンドルは左に切ってもブレーキ・レバーがすぐにカウルに当たるからフロント・ブレーキが効いちゃって、このままでは全く走れない。なんとか右ハンドルを直さねば。でも、おらも古屋もお手上げだとすぐに悟った。レッカーも考えたが、近くに本田氏がいる。でも本田氏には以前からトランポでの車載を勧められてたから、頼みづらい。それに以前に佐藤さん達が直してくれたのは自ら勧んでやってくれたことで、おらから頼むのは気が引ける。でもこの際、頼れるものは何でも頼ろうと、本田氏に泣きついた。すると炎のメカニックの平石氏がTTのところにやって来てくれた。ちょうど向い合わせの炎のテントまでは20mほどの距離だが、彼は前輪をひょいっと持ち上げて向き変えして、おらが押すというのを繰り返し、あっという間に炎のテントに着いちゃった。さすがやることが違うねー。平石氏曰く、「通常こんなときはバーナーでハンドル焼いて曲げを直す」そうだが、あいにくその日はバーナーを持ってきていないと。23メガネ・レンチで曲げを戻そうとしてくれたが、びくともしない。そしたら本田氏がCBR900RRの予備の右ハンドルを持ち出して、TTのハンドル取りつけ部分に合わしてみたら、サイズがピッタシ!そのハンドルを借してくれることになって、平石氏が「何ちゃってステー」と称する金具を駆使して、ブレーキ・フルード・ケースを取り付けた。また、23メガネ・レンチで右前部サブ・フレームの曲がりもおおよそ直してくれた。たいしたもんだねー。お二人には感謝感激だ。でも本田氏はなんか冷たくて、「いい加減トランポで来い!」って感じだった。いろんな人に助けてもらって、何とかここまでやってきたが自走はもう限界か…。決めた!おら「自走ライダーでもここまでやれる」ってのに挑戦するぞ。次回は左右ハンドルのスペアと大きめのメガネ・レンチを用意して、可能な限り自己完結をめざすが、頼れるものは頼って。本田さん、頼むよ。くどいようだが、今度たっぷりおごるし、おらがWGPに出るようになったら高給でメカニックに雇うから。

 

炎の二人のおかげで走行可能な状態にはなった。あとは体裁整えねば。おら、その日に交通違反しなければ、違反点数がまっさらになる日だったから、なんとか見た目だけでも警察に止められない状態にしたかった。まず、右側ミラーの取付けだが、サブ・フレームの位置とカウルの位置が合わず、古屋がねじ止めに苦労してた。これはサブ・フレームとカウルを必ずしも繋げる必要はないという、おらの一言でクリア。右前ウィンカーは点滅不要で、くっついてるだけでいいと古屋に依頼し、古屋がガム・テープで取りつけた。右ステップはスペア持ってたから古屋に取りつけてもらった。前にステップ折ったときに、おらが自分で取りつけたときは30分くらいかかったのに、古屋はものの数分でやっちゃった。右側のステップはリア・ブレーキが邪魔するから難しいんだけどなー。これで古屋も来た甲斐があったろう。なんとか自走で帰れそうだ。カウルのキズはとてもタッチ・アップでなんとかなるような状態じゃないから、いつかペンキでも塗るか。でも結構えぐれてて軽量化されてるぞ。ここまできたら、カウルのキズも勲章だ。おら、初めてFISCOに来たとき、二輪もつなぎもキズだらけのライダーを何人か見て圧倒されたもんだ。彼女を美人に見せたいときは、まっさらな左側がある。

 


4701 カウルってのはエンジンを守ってくれるから重宝する

 

古屋は少なくともおらよりよっぽど器用だ。ホンダのXL400に乗ってたことがあるのは知ってたが、昔は結構本格的に二輪やってて、ヤマハTY175っていうトライアル、ホンダCB750 K0、CB750 K1、CB750 K4、ヤマハSR250、ホンダXL400と乗り継いでたことをその日初めて知った。もう時効だから書いてもいいだろう。奴は今で言う大型自動二輪免許を持ってない。当時は大型自動二輪免許というものはなく、400cc超に乗るためには自動二輪免許の限定解除というのが必要だった。だから古屋の場合、当時は無免許じゃなくて、限定解除違反だから捕まってもたいしたことないと思って乗ってたらしい。一回も捕まらなかったそうだ。ヴェテラン・ライダーにはあまり知られていないことだが、今は限定解除と言うと、普通自動二輪免許の限定解除のことを言う。昔でいう中型自動二輪免許のことになるんだ。ちなみにWGP 500ccクラスに参戦してる日本人ライダーでも大型自動二輪免許を持ってない人はいて、いや持ってない人の方が多いのかもしれんが、ホンダの宇川が今年大型自動二輪免許取って、「これでどうどうと500に乗れる」と冗談言ってた記事があった。古屋はトライアル、オンロード、モトクロスとひととおりやったようで、筑波を走ったこともあると聞いてびっくり。公道で転倒したことも何回かあるらしい。おらライダーの経験値は転倒した回数を聞くのが一番てっとり早いような気がする。それで言うと、おらはまだまだ経験浅い。CB400Nでの公道、TT600でのFISCO 1コーナー、SRV250での自宅近くの公道、TT600でのFISCO最終コーナーとまだたったの4回しか転倒してない。無茶なようで安全運転のおら。というよりあまり二輪に乗った経験のないおら。こうなったらFISCOの全てのコーナーで転倒するぞ!それで初めて、いっぱしのFISCOライダーになれる気がする。

 

メカニックでなくても、ピットマンが1人いると随分助かる。古屋には、その日メカ以外のことでもいろいろ面倒みてもらった。写真係もやってもらったが、おらのデジカメではライディングの近影は無理だな。今更一眼レフ用の望遠レンズ買うのもなんだしなー。そういや、1ヶ月間のリフレッシュ休暇を使って、古屋とおらでパリ・ダカ出よって話を随分昔にした。そのときはおら二輪やってなかったから四輪で出るつもりだったが、当時パリ・ダカのこと調べて、次の理由で諦めた。

1ヶ月の連続休暇だけでは出れそうもない

・どえらい金かかるのに、古屋がマンション買っちゃった

・公用語がフランス語

・免疫注射を何本もうたれる

 

それにしても今日は暑い日だった。おら缶ジュース6本は飲んだなー。350cc x 6 = 2.1リッターだ。テニス並だね、こりゃ。でも真夏に丸一日テニスすると、4リッター水飲む。これをウーロン茶でやると、ゲリピーする。2リッター入りペット・ボトルのミネラル・ウォーターを凍らせておいて、保温袋に入れてテニス・コートに持って行くんだ。凍らせるときは、あらかじめ少し水を抜いておかないと、体積膨張してボトルが割れる。

 

古屋とは八王子ICで別れ、おらはスナップリングに直行した。店長がウェイン・レイニーと同じこと言ってた。「転倒しないとうまくならない」って。おらもそう思う。ラッセルさんのGood smooth riders are fast riders, and they are not dangerous.は、念頭において、その上で自分の限界を極めたい。そういやこの日、テプラで作ってTTに貼ってある、ラッセルさんのこの言葉を本田氏がTT修理の際に見つけて、「いい言葉ですよね」と言ってた。おら穴があったら入りたかった。

 

それにしても、リア・スライドを一気に起こした原因がはっきりしないと困るなー。本田氏には、あっさり「乗り方が悪いかサスペンションの問題」と言われたが、おらが考えるには、

・あの路面の暑さでの14ラップにはタイヤがもたなかった(タイヤはまだ一回も変えてないから、もともと結構いってた)

・ノーマルのスポーツ・タイヤなのに寝かせすぎ

・スロットル早く開け過ぎた

が上げられるが、スロットルを転倒時だけ早く開けた覚えはないので、やっぱりタイヤが限界を超えたんだと思う。

 

江場氏に相談したら、こう言われた。

・サスペンションのセッティングが弱く、加速が早いとサスペンションがフル・ボトムしてリアがスライドすることある。どこまでサスが沈んだか後で分かるように、リアもフロントも、タイラップをシリンダーに巻いて走るとよい。

・サスペンションのセッティングはそう簡単ではないが、ウェット時は柔らかく。まずは、現状のセッティングを知るため、どのようなセッティング位置にあるかをつかんでおくこと。

 


4698 ゴムが溶けてこんなになる

 

先にも紹介した根本健の“パーフェクトライディングマニュアル”を読み終わった。華麗なライディングを目指すという、ミーハーなライテク本にしては、他の根本氏のライテク本よりも優れた内容だと思う。しかもサーキット走行にも通じる部分が結構多く5点満点の5点がついた。本間氏に教えてもらったブレーキング・テクニックも載ってた!あれが書かれてるライテク本はこれが初めてだ。“華麗に膝を擦る”なんていう、おら好みのミーハーな章がある。そこには、

「一番極端なケースでは、脛が路面と平行する角度で、スライディング・パッドも広範囲に下の方まで削れるはずだ。コレがいわゆる本モノの膝擦りということになる」

とあった。何が言いたいかというと、何も言わないけど、写真を見てくろ。

 


4660 みごとじゃ

 

おら今回の転倒時にはそんなことしてないが、スリック・タイヤ履いてる2スト・レーサーに乗ってる連中と張り合って、コーナーでスロットル開け過ぎるのは危ないわな。この転倒でおらはスポーツ・タイヤと決別し、レース・タイヤを履く決心をした。峠ではスポーツ・タイヤで十分なんだろうがサーキットでは辛い。オンロード・タイヤには、タイヤ・メーカーが一般的に使う言葉で、ツーリング用、スポーツ用、、レース用とあるが、このレース用とはプロダクション・レースでの使用が許可される公道走行可の、トレッド・パターン(溝)は若干あるがスリックに近いタイヤのことで、トレッド・パターンがなく公道走行不可のスリック・タイヤとは違う。特殊なタイヤとしては他に、ウェット用のレイン・タイヤやセミ・ウェットで使うインターミーディエイト・タイヤがある。

 

レース・タイヤは、トレッド・パターンの数は極端に少ないし、タイヤの楕円度がきつい。楕円度がきついから、寝かせたときのタイヤの設地面積がスポーツ・タイヤに比べて随分広くなり、グリップが良い。ただし、レース・タイヤで問題なのは、建前上ウェットのことを少しは考えてあるものの、実際にはウェットでの走行には向いていないということだ。だからウェット用に、ウェット・タイヤ、ホイール、タイヤ取替え工具等を揃えないといけないから、ウェット時に走るのはあきらめるしかない。

 

TTのバンドル・タイヤはミシュランのパイロット・スポーツか、ブリヂストンのBT010と聞いてたが、おらのTTにバンドルされてたのはブリヂストンの方だった。いずれにしてもサーキット走行には向かないスポーツ・タイヤだ。で、おらレース・タイヤに変える場合は、ミシュランのパイロット・レース、ダンロップのD208GP、ブリヂストンのBT001のどれにするかずぅーと迷ってた。車重は随分違うがTT600相当の馬力を持つWGPの250ccクラスではダンロップが使われてるから、ダンロップか。でもミシュランも捨て難い。だって、ダンロップのキャップは黄色で、ミシュランのはおらの好きな青なんだ。2001モデルのTT600の色も黄色と青で、青を選んだおらがわざわざ黄色のキャップをかぶるのは変だ。ロゴもミシュランの方が好きだし、唯一輸入品のミシュランなら日本の貿易黒字の削減にも貢献できる。そういやおら公私ともに日本の貿易黒字の削減には随分貢献してる。本間氏や江場氏にはダンロップを勧められた。ブリヂストンはWGPで使われてないからあまり気が乗らないが、現在WGPの500ccクラスにタイヤを投入しようと頑張ってるそうだ。迷ってたところに、ライダー向けのウェブ・サイトであるNet Ridersから e-mail 配信があり、“テストレポート:4スト600ccマシンタイヤテスト”なんてウェブ・ページがあるのを知った。そのページにはもてぎの600cc攻略法”なんて記述まであった。信用できる記事かなーと疑いながら読んだが、結構はっきりと各メーカーのレース・タイヤに対するインプレッション載っけてたし、メーカー開発者に対するインタヴュー記事もあって、各メーカーの力の入れ具合が伝わってくる。選択すべきタイヤは、メーカーによるってだけでなく、年々タイヤは良くなってるから、開発時期によっても違ってくるようだ。上記3社分だけ読んだが、タイヤはタイムと転倒に関わる大事な部分だから、ブランドやキャップの色にこだわるのはやめよう。第一候補だったミシュランだが、現在日本で売られているパイロット・レースは欧米で売られてるパイロット・レース2の一世代前のもので、D208GPやBT001といった最新モデルに比べてグリップが及ばないそうだ。BT001Tはグリップ一番いいようで、その割には他社のよりトレッド・パターンも多く、雨天時の対策を結構考えてるところがいい。また唯一ソフト、ミディアム、ハードと3種類のコンパウンドを用意してるのはえらい。このハード・タイヤは他のメーカーが出してる、ミディアムとハードを兼ねたインチキなハード・タイヤじゃなく、ブリヂストンが「ハードコンパウンドを冬場に使ったら、即転倒の可能性もあります」と言ってることからも、ホントなハード・タイヤだ。D208GPに関しては、「初めて使う人ならば、ハードでいいと思います。ハードは結構幅広く使えますから。それでグリップが足りないと感じるようであれば、ソフトを使ってもらった方がいいと思います」とダンロップは言ってる。ブリヂストンのミディアムか、ダンロップのハードにするか相当迷ってたら、ダンロップのD208GPに関するセールス・トークに、「WGP/WSBを戦うダンロップのレーシング・テクノロジーをフィードバック」だの、「WGP/WSBで実績のあるダンロップ・レーシングスリックのコンパウンドを、600ccプロダクションレース用にチューニング」だの、「2000年、国内SS/ST600クラス開催の全サーキットで、シリーズチャンピオンを獲得したD207GP★。その強力なドライグリップに磨きをかけ、サーキットでのポテンシャルをさらに高めたD208GPが新登場。レーシング・ユースのビッグバイク専用ハイグリップ・ラジアル」だのとあった。WGPとか、600ccプロダクション・レースとか、SS/ST600クラスという言葉に弱いおらは、結局ダンロップを選んだ。

 

おらWGP見てて、なぜ125ccと250ccはみんなダンロップで、500ccはみんなミシュランなのか不思議だったが、本間氏に聞いたところ、それぞれのクラスを各々のメーカーが開発するのは大変だからだそうだ。

 

ダンロップのD208GPのカタログにはこう書かれている。ちょっと尻込みする内容だ。

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D208GPおよびD207GPは、プロダクションレースでのコーナリング時のタイム短縮を目的として、グリップ力とタイヤ剛性を特に強化したタイヤです。

一般公道における法定速度以下での走行には支障ありませんが、法定速度を超過して走行した場合、車両とのマッチングによってはヨーイングやウォブル(ハンドル・車体のぶれ)が発生し、重大な人身事故に至る可能性があります。

またサーキット等において高速走行する場合は、車体やサスペンションの強化等、充分なチューニング・セッティングを行わなければ本来の性能が発揮されないばかりでなく、ヨーイングやウォブルの発生により、重大な人身事故に至る可能性があります。

一般公道において法定速度を超過して走行した場合、またサーキット等において充分なチューニング・セッティングを行わず走行した場合、上記の様な現象の発生およびその結果生じた事故に対して当社は一切の責任を負いかねます。

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また、購入には「レース申告が必要」とある。でも店長に相談したら、何とかなった。

 

今じゃもう四輪では使われないバイアス・タイヤが二輪ではまだ主流で、ラジアル・タイヤは高級品の部類だ。タイヤの構造が二輪と四輪とでは随分違うから、二輪用のラジアル・タイヤは製造が難しいらしい。二輪用タイヤは四輪用のように扁平じゃないからだろう。SRV250にも適合するラジアル・タイヤはない。サーキットでフリー走行やってるやつらの乗るようなレーサーやスーパースポーツのタイヤは全てラジアルだが。

 

最近バック・ステップやら、軽量FRPカウルやらが欲しくなってきた。でもTTの改造パーツは日本ではおろかインターネットで世界中を探してもなかなか見つからない。これは芸者の彼女を娶ったおらには、避けて通れない問題だ。おら、こんなに真剣にサーキットやるとは思ってなかったからなー。

 

おら数年前から視力が落ち、まだ眼鏡条件付き免許にはなっていないものの、今度の免許更新時にはあぶない状況だ。テニス・ボールがかすんで見えるようになってメガネかけてプレーしてみたけど、サングラスかけられないから、一日使い捨てのコンタクト・レンズを一年ほど前から、テニスする際にだけ使ってる。四輪で知らない道を走るときは、道路案内を見るためにメガネかけるんだけど、箱根にSRV250でツーリング行ったとき、コンタクト・レンズとサングラスで行ったら、峠で攻めてるときに風圧でコンタクト・レンズが動いて、しまいには飛んじゃった。それからは、二輪でコンタクト・レンズするときは、テニスで使ってるOAKLEYのサングラスを使うようにした。多くのプロ・スポーツ選手が使ってて、シドニー五輪の女子マラソンで、高橋尚子がポイッと投げ捨ててからスパートかけたあれだ。他のサングラスとは違い、峠でコンタクト・レンズしてても、風圧ものともせずレンズは動かない。でも峠とサーキットでは事情が違った。1コーナー回った辺りで、コンタクト・レンズがずれ、まともに前が見えやしない。サーキットでコンタクト・レンズ使うのはもうやめた。そういや、おらが知り合った元米空軍 のF-16パイロットがメガネしてたので、「視力悪くても戦闘機乗りになれるのか?」と聞いたところ、「コンタクト・レンズはGで動くからダメだけど、メガネはOK」と言ってた。二輪と同じだ。

 

戦闘機と言えば、おら常々、戦闘機には二輪にはない、緊急脱出シートや着陸の際の急制動に使うドラッグ・シュートなるパラシュートがあるから、安全でいいなーと羨ましく思ってた。でも二輪は自分より速いライダーに追われることはあっても、高射砲や対空ミサイルに追われる心配はない。

 

FISCOは8月11日(土)まで土日はあかないし、だいたいTTもない。せっかくタイム出せそうなのに辛いところだが、これで本書の執筆もしばらく休めて、当分は他のことやれるからよかろう。こんな下らんもの書くより、ライテク本読む方がよっぽど為になる。と思ってたら、大ネタになりそうなのが二つ転がり込んできた!しばらくは何も起こって欲しくなかったのになー。おらもうこれ以上本書を執筆するのは耐えられん。3連休も今回の執筆でほとんど使い果たした。なぜ溜まりに溜まる他になすべきことの為の時間を犠牲にしてまで、執拗に本書の執筆に時間を割いてしまうのか、自分でも理解に苦しむ。書くより、読みたい!

 

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