Round 16 TT or not TT, that is a question.

2001.10.05

 

おらは今、サーキットで走りたくてしょうがない。マッカーサー元帥の言葉を使わせてもらおう。I shall return.

 

WGP#9@ドイツで、宇井陽一が6速から4速に落とす高速コーナーの進入ポイントでギアが入らず、6速のままコースアウトしたそうだ。もともとあまりエンブレの効かない2ストに慣れてるWGPライダーでも、シフト・ダウンに失敗したら、コーナー曲がりきれないってことか。シフト・ダウンのミスは命取りになりかねないようだ。あまくみていたシフト・ダウンだが、前回の転倒は、いい勉強になったと思いこむしかあるまい。

 

何か不自然と思ってたゴロワーズ・ヤマハの“GO!!!!!!!”ってな、つなぎと二輪にあるロゴの秘密が分かった。タバコの広告規制がうるさい国でのレースの際は、“GOULOISES”のロゴが使えなくて、代わりに“GO”の後に7つの“!”を苦肉の策で並べてるんだと。中野王子は師匠と同じタカイのつなぎだ。片や同じチームのジャックはダイネーゼのつなぎ。プロ野球のユニフォームと違って、ワークス・ライダーのつなぎは個人契約のようだ。

 

TTのエンジンは、クランク・ケースとクランク・シャフトの接触部分が焼きついて、磨耗による段差ができ、カム・シャフトもシリンダ・ヘッドが削れていた。コンロッド、ピストン、クラッチ、ミッションは大丈夫だが、このエンジンを部品交換で直すと作業料込みで\150万。エンジン単体で買うと\200万。ちなみにTTの車輌価格は\110万。例えばホンダのカブは\15万で買えるけど、部品を全て単体で買ってディーラーで組み上げると\150万になるってのと同じ理屈らしい。エンジンがこれだけいってしまうと、もう諦めるしかないようだ。TT600はわずか4ヶ月、走行距離3,618Kmの短い生涯を終えた。トホホ。

 

 

おらはTT用のバック・ステップとスプロケットをJack Lilley という英国のショップでやっと見つけ、TTのエンジンが死ぬ前に注文してた。Jack Lilley はTT600のスプリント・チームまで持ってるショップで、TTのカスタム・パーツを扱ってるショップは恐らく世界中でここだけだろう。いろいろやりとりしたが、e-mailの回答は必ず翌日に来るし、部品選択のアドヴァイスもしてくれる、使えるショップだ。何よりデリヴァリーが早いのがいい。そのJack LilleyにスクラップになったTTの、いらないエンジンがないか聞いてみたが、残念ながらなし。彼らもエンジンを単体では買えないようで、チームはエンジン不足だと。

 

一度大転倒して車体を諦めたこともあるし、株やギャンブルで金失うよりはよっぽど諦めがつくか。でも、TTのエンジンが鉄屑になるのは致し方ないとしても、残った車体がもったいない。何でもいいからエンジン載せて、せめてツーリング用にでも使えんもんか。車検切れまでまだ1年半も残ってるんだ。

 

店長から提案があった。8月にトラ・ジャパンをやめたザンボット社長の乗ってた黄色のTT600をトラ・ジャパンが\70万で売りに出してて、それを買えば、残った車体はスペア部品一式として使えると。このとき、既におらの心はR6の購入に行ってたんだが、乗り出し価格\130万程のTTだから、悪いオファーじゃない。MTBF(平均故障発生時間)の値が大きいおらの乗るTTには、MTBR(平均故障修理時間)の値が大きいTTでは練習不足になりがちという不利が常に付きまとってたが、車体一式分のスペアがあれば、とろいトラ・ジャパンの部品デリヴァリーを待つ必要がなくなり、MTBRの短縮に繋がるってのも魅力だ。余ったホイールをレイン・タイヤ用に使うこともできる。

 

しかし、性能は別としても、TTはR6に比べてカスタム・パーツの充実度やメーカーの対応が明らかに劣る。おら悩み出し、江場ちゃんに相談した。江場ちゃんは2ストロークのTZ250を薦めるが、おらがWGPオーバー40に参戦する頃には250も4スト化されてるかもしれないし、TZでは自走できない。それに600ccスーパースポーツへの未練もある。江場ちゃんが「中古のR6は?」と。その手があったか。中古嫌いのおらだが、しょっちゅう転倒するサーキット・マシンは中古を乗り継ぐ方がいいかも。R6の中古を探してみることにした。

 

今後MCFAJのレースに参戦するなら、自宅から近くて、かつレースやってるバイク・ショップで中古のR6買うと都合がいいだろう。SRV250でお世話になってる、自宅から一番近いYSP八王子東は、残念ながらレース活動は全くやってないし、日曜休みだからダメ。YSP町田中央店に行ってみたが、R6の中古はおろか、新車でさえ排ガス規制の問題でしばらく輸入されないそうだ。そこで先の豪華ツーリングの際、河崎監督に「東京のどこ?」と、おらの住所を聞かれて「八王子です」と答えたら「吉川と同じ」と言われたのを思い出し、全日本で戦ってる吉川選手出入りのYSPが八王子にある筈と考え、インターネットで探してみた。YSPじゃなかったが、自宅のけっこう近くにある“モーターサイクルショップ カタクラ”がそれだった。でもよく考えたら、吉川選手の出入りの店ならMFJレースはやってても、MCFAJはやってないだろうなーと思ったらやっぱりそうだった。さすがにR6を始め、ヤマハのレーサー・レプリカの改造キット扱ってたり、レース経験も豊富な店のようだ。でも、「R6の中古は品薄で、かつ出所がよほどハッキリしていない限り、サーキットでしか使われないR6の中古はやめておいた方が無難」と。でも「ガチンコで使ってたST600仕様のR6が手に入るかもしれない」とのことだったので、次期インジェクション・モデルが出る時期と合わせて、ヤマハ本社に問い合わせてもらうこととなった。

 

その後おらは米国出張に行くが、同時多発テロが発生し、なかなか帰ってこれなくなる。でもおらは、火事、親父、えびは嫌いだが、雷や緊急事態は大好きだ。富士山もおらが死ぬまでには大噴火してほしい。できればおらがFISCOで二輪走行中に噴火してもらって、おらが美女を救ってタンデム・シートに乗っけて、テクニックの限りを尽くして溶岩の流れを交わしつつ、そのままサーキットから脱出するって筋書きだ。でもたぶんいつものように途中で転倒して、溶岩に溶かされるのがいいとこだろう。

 

それにしても、作家になるってのは、毎日が日曜日でいいだろなーと思ってたが、とんでもない間違いだ。毎日24時間仕事してるようなもの。何か思いついたら、すぐメモらずにはおれない。毎日が平日の24時間勤務。ネタが尽きれば楽でいいんだろうが。ここんところ寝る時間どころか、執筆しているとき以外の全ての時間が惜しい。

 

おらが出場するはずだったMCFAJレースは、台風の影響でウェット・レースだったようでリザルトのタイムは参考にならなかった。オーバー40には11台が出場し、R1を始め1リッター・クラスばかりが出場。P600は8台出場で、内6台がR6。1台がスズキ、もう1台がホンダ。オーバー40に的を絞るならR1の購入だが、ストレートでのタイムは稼げても、コーナリング・スピードにR1の150PSは必要ない。TTの110PSでさえ、もて余してるおらだ。P600のこともあるし、あくまで600で行くど。

 

WGP#11@ポルトガルのNHK放送でのことだ。250ccで松戸が6位と活躍したが、松戸が快走を続けているときに解説者の難波氏が、「これは久々に松戸選手もいいところにいけそうです。今回は本間選手も現地に応援に駆けつけていますから、松戸選手の心強い味方になっている」と言った。そしてアナウンサーが「本間選手はこのマシンを作りあげている一人」と。このアナウンサーよく知ってるじゃん。おらWGPで師匠の名前を聞けて嬉しいぞ。映像にも登場してほしいなーと思ったら、なんと河崎監督が映し出された。師匠が近くにいるはずだ。ところが監督の隣にいる松戸のかみさんらしき女に映像が集中してる。

 

おらの「TTかR6か?」の迷いは続く。おらは、欧州文化やデザインが大好きだ。だから四輪は趣味性を優先させ、国産車に比べて故障の多い難点には目をつむってもビーマーに乗ってる。二輪の場合も、その趣向がTT600の購入に至った要因の一つだ。戦うマシンにデザインもへったくれもあるかという声もあろうが、おらはデザイン悪い二輪に乗ってまで、いいタイムを出したいとは思わん。大げさな比喩だが、人生損してでも、カッコよく生きたいってのといっしょ。R6は塗装変えて、チューニング・フォークのエンブレム付ければ、それなりのデザインになるとは思うけど、顔がなー。それに600はみーんなR6に乗ってる。少なくともサーキットにおいてはR6に希少価値はないのだ。スズキ、カワサキは致し方ないとしても、ホンダが戦略誤らなければ、CBR600F4iの方が圧倒的に売れてたはずなのに。CBR600F4iをサーキット・マシンとして割り切らなかったのが敗因らしい。ホンダはスーパースポーツ600の先駆者なのに惜しいなー。でもヤマハ信者のおらとしては、他の国産スーパースポーツ600はどっちにしろ選択外だ。江場ちゃんや師匠の手前もある。

 

前にも述べたが、ヤマハ信者、いやチューニング・フォーク信者のおらではあるが、ネイキッドとなるとカワサキだ。SRV250はネイキッドというよりトラッドで、しかも今や希少な純正チューニング・フォーク付きデザインだから別格。おらは最近、全日本選手権のテレビ番組も観るようになったが、カワサキ・ワークスからスーパーバイク・クラスに参戦してる井筒ほどカッコいい男は二輪レース界にはいないと断言する。しかも井筒は色男って感じでないから、おら許せる。WGPに参戦してないカワサキは、少なくともレーサー・レプリカでは今までおらの選択肢には入りようがなかったが、2002年のWGP500の4スト混走化により、カワサキが井筒と共にWGP500に参戦したら、おらカワサキ信者になるかも。それにヤマハも所詮2強の一角で、おらからすると、昔の西武ライオンズみたいなものだ。ホンダ、ヤマハのイメージは、それぞれ巨人、西武に置き換わり、弱者カワサキを応援したくなる。でも、ヤマハ教を抜けるのは、おらにとって、いかなる宗教団体から抜けでることより難しそうだ。師匠は大目に見てくれそうな気がするが、江場ちゃんが許してくれない。だいたい、もしまた豪華ツーリングに参加できる機会があっても、ヤマハ以外の国産車ではとても参加できん。

 

おらの迷いに対しての江場ちゃんと本田氏の意見はおらの決断を導き出すのに大きな役割を果たした。江場ちゃんは、「R6の方に分があると思いますが、レースに勝てなくてもいいからTT600で勝負するならそれも男」と。「それも男」なんて言葉におらは弱いんだなー。本田氏は、「日本で唯一トラのTT600でST600レース参戦!ってのは魅力ですね。なんでも先駆者はいいもんです。しかし、勝てるライダーが勝てるマシンに乗ってこそ、レースに勝つことができる。私なら迷わずR6買います」と。うーん、先駆者ねー。いい言葉じゃん。

 

TTにはいろいろ問題があるものの、R6との絶対加速、旋廻能力、ブレーキング等の性能差に違いがあるとは思えんし、だいたい今のおらに「勝つ」なんてのは時期尚早だから、最高速さえR6と同等になれば、少なくともマシンの性能で言うなら、今のおらにはR6じゃなきゃいけないって理由はない。だって、おらはこの8年間27PSのマシンしか知らなくて、この春から110PSマシンにまたがるようになったばかり。そのTTではサーキットをまだ正味2時間も走ってないから、自分でも素質があるのかどうかも分からない状態だ。つまりおらはまだレースで勝つことを目標にするなんて段階にはなくて、ただレースに出て恥ずかしくないだけのタイムを出せるようになりたいってとこだ。

 

この「勝つ」ことについて、うんちくたれよう。おらは二輪レースは未経験だが、大きな大会で上位に入るような腕ではないものの、長年テニスで勝負の世界を経験してるし、月給取りの仕事でもいろんなことで毎日が勝負の連続だ。もし仮におらが草レースで勝てる技量を既に持ってるとしても、趣味でやってるおらとしては、最終的な目的は勝つことじゃない。自分のマシンが何であれ、その性能を使いきり、自分のテクニックを限界まで引き上げるのがおらの目的だ。もちろんレースになれば、勝つことしか考えないけど、それは勝つことを目指してレースを堪能するってだけの話で、おらの最終目的じゃない。ちなみに、優勝者の賞品が好みのレース・クイーンと泊まり旅行なんてことなら、おら目の色変えて走って転倒間違いなしだ。

 

WGPライダーにしたって、みんなが優勝できると思って走ってるわけじゃあないだろう。大多数のライダーは、優勝できないと分かってても、より上位を目指して走ってるはずだ。これはレースに限らず、人生そのものにも言える。だれもが一番になれる訳じゃない。これはいい例ではないが、勝てないと分かってても、ケンカ売られたら買うのが男ってもんだし、米国においつめられた日本が対米戦に踏み切ったってのも、おらにはわからんでもない。なんか、話の視点がずれてきたな。テニスにしたって、勝つことだけが目的じゃあない。例え絶対勝てない相手でも、試合することで自分の技量を出し切ればいい。だからおらは可能な限り、自分より強い相手と練習試合をするようにしてる。つまり、テニスも試合で勝つことを目指すのは手段であって、目的はあくまで自分が可能な限り強くなることだ。だから、自分の実力を発揮して負けたときの方が、実力を出せないで勝ったときより、よっぽど充実感がある。おらに全日本やWGPで戦えるぐらいの力があって、プロを目指すなら別だが、おらにそんな素質があったら、1回目のFISCOのフリー走行で155くらいは出してただろうし、素質あったとしても始めるのが30年遅かったな。つまり、おらは師匠のように世界で戦えるライダーじゃあないし、江場ちゃんが一緒にやってた全日本のライダーとも違う。おらは根本的に速さも目指すものも違うのだ。江場ちゃんは、そんなこと分かってて、メカニック引き受けてくれたんだとは思う。だから、自分の持ってる素質のなかで、テクニック向上の限界を感じたら、おらはサーキットへの情熱なくして止めると思う。ただ単に楽しめれば、というのでは情熱は続かないだろう。テニスにしたって、今まで何度壁にぶつかってやめようと思ったか知れないが、幸いまだ上達の余地があるから続けられてるんであって、上達が完全に止まったら、おらはラケットを置くだろう。他にやりたいことは山ほどあるんだ。例え自分の技量が限界に達していても、二輪レースがおらにとって、十分楽しんで続けられる競技ならば、とても嬉しいことだけれど。

 

サーキットってのはその点、テニスと違って自分の実力がタイムではっきりと分かるから都合がいい。レースでなくても、ライヴァルとタイムを競い合いながら、テクニックの向上を追求することができる。おらのライヴァルは今はジョー。ジョーで物足りなくなったら飯尾さん、その次は本田氏って感じだな。既にみんなをやっつける気でいるおら。「40で始めた南郷に負けるかい!」って本田氏の怒りの顔が目に浮かぶ。でも、もしホントにおらが本田氏やっつけちゃったら、それ以上のライヴァル探すのは難しくなり、これはレースが今から述べる「身近」でない競技ってことになり、おら困る。それにしても普段FISCOに来る連中の中にライヴァルがいるってのはいいもんだ。

 

次は、おらがテニスやる上でいつも思ってる競技の「身近」さについてのうんちくだ。おらはまだ一回りも二回りもはテニスが強くなりたいと思ってるが、腕を上げるに従い困ることがある。幸いおらは、自宅近くに自分と同等以上の腕をもつ相手とテニスができる、テニス上達に「身近」な環境にいるが、この環境を作り出すまでにかなりの年数を要した。腕を上げれば上げるほど、同じレヴェルで試合できる相手が身近には見つかりにくくなるからだ。世界ランク100位内ぐらいに入れる実力があれば、プロの世界でやるって気にもなるだろうが、中途半端に強いと、趣味として身近でテニスを楽しむ環境を探すのはとても難しくなると思うから、そういう連中は返って不幸だとさえ思う。おらは幸か不幸かとても強いってわけじゃないから、まだ自分の技量を磨ける環境でテニスを続けられるんだ。自分に身近な環境で常に試合できるってのは、趣味として競技を続けるための重要な要因だと思う。

 

レースの場合も同じだとおらは思う。趣味でやってるライダーがMCFAJでタイトル取ったら、戦いの場を次はMFJに向けたくなり、そこでもタイトル取ったら、もうレースは趣味の範囲をとおり越し身近なものではなくなるだろう。目標を上げていけばきりがなくて、WGPでチャンピオンにでもならん限り、欲望はやまないだろうが、かといってプロになるほどでもない選手はつらいとこだ。その人達にとってレースは身近な趣味ではなくなってしまう。おらは今、戦いの場をMCFAJのオーバー40かP600に求めてるが、MCFAJはその位置付けが身近なだけでなく、FISCOと筑波をレースの場としているところもおらには地理的にも身近だ。それにおらはFISCOが大好き。コースが好きってことよりも、あのなんともいえない雰囲気が好きだ。広々としてて富士山が目の前にあるところもいい。おらには筑波は暗過ぎて、もてぎは優雅過ぎる。だから、おらがいつまでたってもレースを楽しめるほど速くなれなくてレースに出るのが苦痛と思うか、速いマシンに乗りさえすれば優勝できるってところに到達して、どうしても勝ちたいって思わない限り、性能適にはそれなりの二輪で十分なんだ。

 

長くなるが、次はおらの美学で言うカッコよさの観点からの二輪選択についてのうんちくだ。おらは例えば高校球児だとしたら、甲子園で優勝するより、甲子園出場のかかった地区予選決勝で負けて涙に暮れるなんてのがカッコいいと思っちゃう。矢吹丈だって、世界タイトル戦でホセに負けはしたが、本人も納得の試合で、周りからしてもあれは負けたってのが返ってカッコいいと思えるんじゃないかな。おらのカッコ良さの基準には、本書のタイトルにもあるとおり悲惨さだとか悲劇的なものが必要なんだろう。ハッピー・エンドは趣味じゃない。ちなみに女にも「ハッピー・エンドはないよ」と最初に言う。

 

これは、的外れかもしれんがついでに言っておくと、中日にしたって、おらは優勝して欲しいなんてちっとも思ってない。めったに優勝できないチームだから、たまに優勝すると嬉しいもんだが、ホントは優勝されちゃうといろいろ大変になるから優勝だけは勘弁してほしい。巨人に全勝して、他の球団に全敗するってのがおらの理想の中日像だ。その理想に近いシーズンが20年ほど前にあった。優勝したのは広島だったけど、中日は対巨人14連勝して巨人に大きく勝ち越した。あれほど気分のいい年はなかったなー。球団もあの年は巨人に全く打たれなかったという理由で、抑えの牛島に随分年俸を奮発した。

 

レースで勝てる見込みのない今のおらがこんなことを言うのはなんだが、そういったおらの性格だから、もしおらが勝てるライダーになったとしても、好みでないマシンで勝負することには、ためらいを感じるかもしれない。でも困ったことに、このおらの理想のカッコ良さと、実際のおらの本性とはかなりかけ離れてる。これだけくどくどと、勝つことが全てじゃないと言ってるおらではあるが、実はおらは何するにしてもムキになって勝つことに執着しすぎる男なんだ。自分の理想は勝つことよりもカッコよさを優先するんだが、競技に限らず、仕事においても、勝負となるとつい我を忘れて大人げなく勝ちにこだわるってことが多い。そんなおらの性格を、おらは好かん。どうでもいいことで馬鹿みたいにムキになって、勝って後でバツの悪い思いしたってことがよくある。

 

随分ややこしい話が続いたが、ようはある程度の問題には目をつむっても、みんなが乗ってるR6や他の国産車より、誰も乗ってなくてデザインもいいTTでおらはやってみたいってこと。それにR6は当分手に入りそうにないけど、中古のTTなら安価で今すぐ手に入る。

 

そういや、師匠はおらの理想のカッコ良さを地で行ってないか?全日本のタイトルを圧倒的な強さで取り、当時としては稀な、世界に通用する日本人選手としてWGPフル参戦を目前にしながら、大事故で夢破れるって、何かでき過ぎなぐらいの実話だ。おらはそんな師匠の経歴に惹かれているのかも。死には到らなかった師匠だが、どこか寂しげな師匠の性格ともあいまって、カッコいいって思えるんだ。

 

TTという結論にほぼ達していたおらだが、モーターサイクルショップ カタクラに質問していた回答を聞いてみた。2002年モデルのR6がキャブ仕様のままそのうち出るようだが、インジェクション化されたモデルは2003年モデルまでは出ないらしい。ガチンコで使ってたR6も入手不可とのことだった。これで、ためらいなく中古のTTを買う決断ができた。財布の紐の固い名古屋人のおらだが、ここまできたらもう家計の破産もかえりみない。美男薄命でいつ死ぬか分からぬ身で、金を惜しんでやりたいことをやらんと後悔するだろう。会社は今厳しい状況だから、いっそいい条件で早期退職制度でもやってほしいぐらいだ。長生きしちゃうかもしれないリスクはあるが。

 

 

そうそう、本田氏からはお褒めの言葉ももらってた。「走行時間に対する転倒の確率は私が知っている限りでTOPですね、余計なお世話ですが、あまり無理をしてこの先、後悔するようなことにならないようにしてくださいね〜」確かにおらの転倒確率は芳賀よりも高いかも。いや、ひょっとして世界一か?最近おらは、転倒の原因の一つに、無理しすぎってことだけじゃなく、転倒しない限り、走り終えるきっかけを得られないってこともあるんじゃないかと思えてきた。過去の記録を見ても、ウェットの一回を除き、他の5回の走行は全て、最終ラップがファステスト・ラップになってる。つまり、ファステスト・ラップの次のラップは技量の限界を通り越して、転倒してるって寸法だ。走ってる際に限界が近づいてるのがわからないんだから、ラップ重ねるうちにいつか転倒するわな。フリー走行はレースと違って、周回数が限られていないから、ギャンブル同様、いつ終わらせるかを最初に決めておかないと、おらの場合危険ってことだ。師匠に一日10ラップを目途にと言わてたが、これからは一日15ラップまでってことにしよう。

 

でも、おらは転倒することよりも、恐怖心で転倒するほど攻められなくなることの方が恐い。だいたい、おらがサーキットを選んだ理由は、峠は危険で転倒するほど攻められないってところから来てるから、サーキットで転倒するのは当然の助動詞で、おらとしてはサーキットで転倒しなきゃ、どこで転倒するの?ってのが正直な考えだ。

 

実際おらは経験つむほどサーキットが恐ろしくなってる。コース・インの際に、恐怖感を覚えるようになって久しい。走り始めてしまえばそうでもないが、パドックを出る際の恐怖感といったらない。死を恐れないと公言してるおらだが、転倒即死ならいざしらず、ケガして痛い目に遭うのが恐いんだろう。こんな恐怖感を味わえるスポーツは他に経験したことがない。テニスのシングルスで、互角の相手と戦っている最中に、負けられないと思う恐怖感ってのもあるが、サーキットとは違う種類のものだ。こりゃ限界いっぱいで走るレース前のスタートは、さぞかし恐ろしかろう。

 

その本田氏だが、しばらく音沙汰ないと思ってたら、もて耐に出場してた。2時間耐久第1グループでの出走。ライディング・スポーツの記事をそのまま引用すると、「序盤3番手からスタートした58斎藤/本田/延明らが20分を過ぎるころにトップに浮上したものの、3コーナーでコースアウトしリタイアしてしまった」とある。転倒したのは本田氏ではない。もて耐は“世界一の草レース”の称号がつくようになった二輪耐久レースで、2001年は232チームものエントリーがあり、予選順位によって7時間、3時間、2時間第1グループ、2時間第2グループのカテゴリーに分かれる。本田氏が「TTでならもて耐出たい」って。彼も自分の理想のカッコよさを、無意識の内に勝つこと以外に持ってるんじゃないかな。ジョーは鈴鹿8耐の方がいいなんて、身分不相応なこと言ってたから、おらたちの舞台は鈴鹿じゃなくて、もてぎだと言ってやった。やつは結構レース界のこと知ってるのに、なんかピントがずれてんだよなー。でも、耐久レースは、転倒してチームに迷惑かからんように無理せず走らないかんから、おらには向いてない。それにライディング・スポーツの記事見て知ったが、耐久レースはライダーが1人じゃないだけに、金銭的な面でのチームでの決めごとをしなけりゃいけない等、相当めんどくさそうだ。

 

 

前に紹介したB出版社からの新しい批評に、「格好悪さや情けなさは読者を意識した著者の巧みな演出の結果」なんて批評があって、おら愕然とした。おらはいかに自分をカッコよく見せるか苦心してたつもりだが、どうしても情けない結果になる有様を、事実に忠実に書きなぐってるだけで、カッコいいはずのおらをわざわざ情けなく見せようなんて、おらが考えるはずはないんだが、無意識にそんな書き方してるのかなー。だいたい本書のタイトルがそうだもんなー。そういや、以前触れたが、おらはモテすぎることがうざったくて、ここ3年間程いかにモテなく振舞うかを実践してたら、意識しなくても3枚目風に振舞うようになってて、元に戻せなくなってるんだ。ひょっとして、読者も南郷はカッコ悪いと思ってるんだろか。それこそ情けないよ。

 

 

今年になって7年ぶりにTOEICのテストを受けた。TOEICは点数が出るから競技みたいなところがある。735点だったが、読む、聴く、話す(話すはTOEICテストにはない)の中で、おらは聴くのが極端に弱いようだから、聴く勉強をちゃんとして、800点くらい取れるようになりたい。でもおらの趣味の中での英語上達の優先順位はどえらい低いから、どうしても二日と勉強が続かない。英語が趣味とは言えんから続かんのは当たり前か。でも師匠が監督になった暁には、レーシング・チーム・ヤマハのコーディネーターの職を得たいから、そのうち何とかしたいが、これも必要に迫られないとたぶん駄目だろう。

 

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