Round 7 転倒しないライダーは消えていく

2004.04.11

 

Joy耐3時間が開催された翌週の土曜に、おらはSRV250とYZF-R6のエンジンに火を入れようとしたがどちらも火は入らず、バッテリーもすぐにあがった。押しがけでもだめ。よって四輪ビーマーのバッテリーを使って、セルを回し続けて何とか火を入れた。2台とも自宅近くをちょっと走らせてバッテリーを充電したが、ナンバーなしのR6で公道を走るのはパトカーに見つかるのもおっかないが、パワーがあるから操ること自体おっかない。おらこんなんでサーキットを走ってたなんて信じられなかった。いよいよ二輪シーズンの到来だ。

 

 

おらが期待していたG出版社から、本書の出版化に関する回答がやっときたが、「マニアック度が高く、一般読み物としてはゾーンがタイトすぎる」とのことで、出版社全額負担の企画出版には採用されなかった。しかしおらは諦めずに他の出版社に再度投稿した。今度は今までのように一般読者向けの書籍を扱ってる出版社ではなく、二輪を扱ってるO出版社だ。読者層が狭まるが、マニアック度が高いと言われちゃしょうがない。

 

 

おらは今だに自宅ではアナログのダイアル・アップ接続でインターネット・アクセスしてたが、とうとう重い腰を上げNTT東日本とぷららの提供する1.5M ADSLに変えた。おらはADSLにすると外出先でのダイアル・アップ接続ができなくなると思ってADSLには及び腰だったが、ダイアル・アップ接続もできることを知ったからだ。ドアホンのバイパス工事に\6,000かかったのが予定外だったが、高速になってネット・サーフィンがさくさくできるし、常時接続になってストリーミングが可能になったのが嬉しい。インターネット・ラジオのサイトを使って、世界中のFMや好きなジャンルの音楽を流しっぱなしにできる。日本のFMはトークが多くて、“聴く”というより“聞く”って感じで使い物にならないが、アメリカのFMは曲を流しっぱなしにしてくれるのだ。パソコンのスピーカじゃ音がいまいちだが、ヘッドフォンで聞くとCD並みの音質で聴ける。今のおらのお気に入りはsmoothjaz.com。そしておらの大好きなラテンの歌姫、ラウラ・パウジーニのビデオ・クリップを彼女のウェブサイトで楽しめた。ラウラもMTVに登場するにはいたっていないのだ。会社のインターネット環境では当たり前のブロードバンドだが、もう二度とダイアル・アップには戻れない。おらの古いパソコンがまるで最新鋭機にでもなったみたい。

 

 

イラクで武装グループが日本人3人を人質に取り、自衛隊の撤退を要求した。こんなときの為に、非合法でもゴルゴ13のような人間が必要なんだ。おらは最近になってゴルゴと同じような日本人を見つけた。市と名乗る盲目の居合いの達人。座頭市だ。めっぽう腕利きの殺人者、絶対死なない、一匹狼、スポーツ刈り、女にモテる、中年のアジア系といった共通点がゴルゴと座頭市にはある。おらも少なくともスポーツ刈り、女にモテる、中年のアジア系といったところは共通してる。おらのバイクのゼッケン番号を中日のゴメスとGPライダーのバロスの4番でもなく、ゴルゴの13番でもなく、3101番(さん、とー、いち)にしようかしらん。4桁じゃあシール代がもったいないか。おらは今まで座頭市に興味はなかったが、座頭市がゴルゴな人間と気付いてから、勝新太郎主演の座頭市シリーズ26作品のうちDVD化された20作品程をレンタルして全部観た。どれもとびっきりおもしろいというわけではないが、通して飽きずに観れた。そして勝新太郎亡き後、最近になって北野たけしが座頭市を継いでくれた。

 

 

ゴルゴと座頭市が中年になっても活躍できるのに対し、GPライダーは普通20代で全盛期を終える。プロテニス・プレイヤーは30前でほとんど引退。プロスポーツで比較的寿命が長いプロ野球でもせいぜい40歳まで。プロゴルフだけはシニアもあって寿命は長い。プロスポーツ・プレイヤーは華々しい職業だが、人生の最も輝く時期が若くして終わってしまうのが寂しい。対して月給取りなら窓際に追いやられない限り、40代はまだバリバリの年代だ。そして40になってモーター・スポーツに目覚めたおらは、これから極めてやろうという現役バリバリな気分でいる。例え才能があっても、スポーツはアマチュアに留めておく方がいいのかもしれない。でもプロスポーツ・プレイヤーになれる才能があるなら、若いときは深く考えずにその道に進んで頂点を目指したいと思うものだろう。

 

 

間もなく2004年のWGPが開幕する。今シーズンからヤマハで走るMotoGPクラス不動のチャンピオンのロッシは、ファクトリー・チームであるゴロワーズ・フォルトゥナ・ヤマハチームに所属して、おらの好きなゴロワーズ・ブランドを象徴するブルーにカラーリングされたマシンに乗る。ところがチーム・メイトのチェカはフォルトゥナ・カラーのレッドとシルバーのマシンに乗る。プライベート・チームのフォルトゥナ・ゴロワーズ・テック3チームも、メランドリはフォルトゥナ・カラーのマシンに乗るのに、チーム・メイトのノリック阿部はゴロワーズ・カラーのマシンに乗る。同じチーム内で別々のカラーリングのマシンを使うなんて紛らわしいが、これはフランスのゴロワーズ・ブランドとスペインのフォルトゥナ・ブランドのタバコを生産するアルタディス社の戦略によるものだそうで、ロッシには既に国際的ブランドとなっているゴロワーズ・ブランドのカラーを使い、スペイン人のチェカにはスペインの主要タバコ・ブランドであるフォルトゥナ・ブランドのカラーを使う。そしてイタリア市場に参入しているフォルトゥナ・ブランドのカラーをイタリア人のメランドリに使い、ノリックには日本市場でのゴロワーズ・ブランドの浸透を図る為、ゴロワーズ・ブランドのカラーを使うといった戦略だと。おらは2001年のパシフィックGPを観に行ったとき、ゴロワーズのカートン・ボックスに中野のサインを貰う為に、ゴロワーズ・ライトを1カートン買って以来、どえらいまずいゴロワーズ・ライトを2年間吸い続けた。しかし去年のパシフィックGP以来、その直前に新発売されたゴロワーズ・ブロンドに変えてる。ゴロワーズ・ブロンドはライトより随分おいしいだけでなく、深いブルーのパッケージ・デザインがカッコいい。おらほどゴロワーズを吸った日本人は、歴代1,000人もいないと思う。でも黄色好きなロッシが本当につなぎまでブルーにするかしらん。それにしても昨年ビアッジがヤマハからホンダに移籍し、今年ロッシがホンダからヤマハに移籍したおかげで、ゴロワーズ・ヤマハ信者のおらは今シーズン大手を振ってロッシの応援ができる。おらは気難しそうなローマの帝王ビアッジよりも、愛嬌があっておしゃれでおもろいドクター・ロッシの方が昔から好きだった。YZR-M1でも勝てるか、ロッシ。そのロッシは、ヤマハと資本関係のあるトヨタから、F1マシンでのテスト・ドライブのオファーがあったようで、今年実際に走るそうだ。ロッシにはMotoGPクラスでタイトルを狙えるうちはWGPで走ってもらって、F1に参戦するならその後にして欲しい。ロッシならF1でも通用すると思うが、トヨタのマシンで勝てるかといえば疑問だ。一方ずっとヤマハのライダーだった好青年の中野がカワサキへ移籍したのはおらには残念であった。

 

 

初めてテレビでF1グランプリを観た。初開催のバーレーン・グランプリ。マシンの速さとタイヤのグリップの良さには感心したが、観ててつまらない。だって給油とタイヤ交換の為に何度もピット・インするから、本当の抜きつ抜かれつがないし、誰がトップを走ってるのかわかりゃしないんだもの。あれじゃまるで耐久レースだよ。おまけに予選、決勝ともフェラーリが1、2位独占なんて、F1はドライバーの腕を競ってるんじゃなくて、マシン性能とピット作業の早さを競ってるのか?それに比べてWGPは誰が世界最速か観てて容易にわかるから面白い。それを証明する為にも、ロッシにはヤマハでもタイトルを取ってほしい。しかし耐久レースは参加する方は面白くても、観る方はつまらんのだろうなー。7時間耐久なんて観てる方の耐久戦だよ。かみさんもただ待ってるのは退屈だろうなー、と思ったら、かみさんは自分が走るわけでもないのにいつもサーキットにつき合わされるのを嫌がっていることがわかった。旦那が命がけで走ってるのに・・・。愚妻だ!

 

 

Joy耐7時間のメンバーが揃った。第1ドライバーは並木さん。若いのに金持ちだわ。第2ドライバーは尾島監督が兼任。220を切るくらいでは予選を突破できないかもしれないとのことで、しぶしぶの出場。第3ドライバーがおら。第4ドライバーは去年のJoy耐7時間に出場して、ファステスト227で走ってる大橋さん。Joy耐7時間の参加費用を支払うと普通預金が底をつくおらは、夏の賞与まで金がもたないと観念し、結婚費用を捻出したときしか崩したことのない財形預金に手を出し、\200万降ろすことにした。かみさんに借りれるぐらいの額じゃ、もう追いつかない。これじゃあとてもクルマを買い替えるてる場合じゃないからあと5年、計15年乗るぞ。このまま四輪レースを続けてたら、そのうち一文無しになるかも。本書が売れなきゃ、おら食ってけないよ。そこでおらは、おらの勤務先の広報室に以下のe-mailをだめもとで送信した。

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Subject:  スポンサーのお願い

広報室 室長 XX様、

 

突然のe-mailお許しください。またご転属早々のお忙しい中を私事で大変恐縮ですが、ご一読戴きご返答戴けましたら幸いです。

 

私は1985年入社の9級職社員ですが、今年の6月26(土)、27日(日)に国際サーキットであるツインリンクもてぎで開催される、エンデュランス・カーニバル2004もてぎEnjoy耐久レース(通称:Joy)

http://www.twinring.jp/motorsports/race/motegi/JOYTAI/index.html

に出場予定です。2001年から開催されている、JAF公認の7時間耐久レースで、アマチュア・レースとしては最大規模のクルマのレースです。(日本国内での競技ライセンスの発給、レースの公認は全てJAFが行っています。)

D-jac

http://www.djac.co.jp/

というクルマ用品店の保有するクルマを使用し、サポートもD-jacが行います。

クルマ一台につき3名〜4名のドライバーが交替で運転します。

ドライバー一人当りの出場費用はクルマのレンタル代とサポート費等で30万円程度です。

観戦者はそう多くはないと思いますが、参加者は去年の場合で約110台x10人程です。

 

そこでXXXの社名の入ったシールを私の出場車両に貼るなどして、XXXにスポンサーになって戴くことは可能でしょうか。テレビ中継されるわけではなく、学生が多く出場するということもないようですが、社名を一般の方々に広く知って戴くいい機会になると思われます。スポンサーの額はお任せします。小額で結構です。

尚、本レースの特別規則書の第43条 車両名およびレースによる広告には、

車両による広告は参加代表者やドライバー、メカニックなどの氏名、車名、社名、商品銘柄および通常使用される貼付ステッカーに限って許可されるが、公序良俗に反するものであってはならない。

とあり、XXXの広告を出すことへの、主催者側に対する問題はありません。

またD-jacからもスポンサーを得ることへの承諾は得ています。

 

私の過去のモーター・レースの実績としましては、バイクのレース出場に加え、クルマではD-jacのサポートの元、今年の3月7、8日に開催された2004もてぎチャンピオンカップレース第1戦 Joy3時間に社外の2名のドライバーと共に出場し、34エントリー中11位で完走しています。

http://www.twinring.jp/result/2004/4wheel/0307_4f.html

 

詳しいお話を聞いていただけるようでしたら、そちらに伺います。よろしくご検討の程お願いいたします。

 

XX事業部 デューク南郷 社員番号:XXXXXX 内線:15-4173

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当日、広報室から以下の返事が来た。

 

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XX事業部 南郷さん、

 

お疲れ様です。広報室でグループ・リーダーをしているXXと申します。

XX室長に相談頂いたスポンサーの件ですが、広報室で検討させて頂いた結果、申し訳ありませんが協力させて頂くのは難しいという結論となりました。

ここ数年の業績悪化を受けて、広報室でハンドリングしているCorporateの広告宣伝費用に関して、絞り込みを掛けており、42期の予算上でも最低限必要な業界紙(日経MD)のみを対象としております。業界のマスコミ各社からOfferされる広告企画も、同様の理由で全てお断りしている次第です。

事情をご理解頂ければ、幸いです。

 

広報室 XX

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世の中そんなにあまくないね。おらはまっとうな月給取りだから、以下のように返信しておいた。

 

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広報室 XX様、

 

早速のご検討、ご返事を戴きありがとうございました。

会社の事情はよく理解しております。

無理を申しまして申し訳ございませんでした。

 

XX事業部 南郷

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次は本とDVDの紹介。

黒沢元治   ドライビング・メカニズム

まずは四輪。学んだ点も多いが、ポール・フレールの教えやサーキットの一般常識から考えて、どうしても納得のいかない説明がある。でも鈴鹿サーキットのコース解説は役に立ちそう。鈴鹿のデグナー・コーナー命名の由来は、そこで転倒したGPライダーの名前であると。FISCOがリニューアルされて、おらが誰よりも先に転倒したコーナーの名をデューク・コーナーと命名してくれないかしらん。でもそしたらきっとFISCOの全てのコーナーが、デューク1コーナー、デューク2コーナーとかになってしまう。

 

高木信哉   日本グランプリレース

日本初のサーキットである、今はなき浅間高原自動車テスト・コースで開催された浅間レース(二輪)、マン島TTレース(二輪)、日本アルペン・ラリー(四輪)、鈴鹿サーキットで開催された第1回全日本選手権ロードレース(二輪)、日本グランプリレース((四輪、第1回〜第2回は鈴鹿サーキット、第3回〜第6回はFISCO)、富士24時間レース(四輪)といった、日本モーター・スポーツの黎明期に開催されたレースについてのドキュメント。1962年に本田宗一郎が鈴鹿サーキットを作らなければ、日本のモーター・スポーツのみならず、日本の二輪車、四輪車の今日の発展はかなり遅れていたであろうと推測できる。高橋国光、式場壮吉、浮谷東次郎、生沢徹といった往年のライダーやドライバーが登場する。

 

最速ツクバLAP 50連発!! + 特典映像20連発!!

これは四輪のDVD。筑波、鈴鹿、FISCO、もてぎ、SUGOでの職業ドライバーのドライビング映像が写されており、レコード・ラインやシフト・アップとシフト・ダウンの場所を知る事ができる貴重な映像だ。スロットル・ワーク、ブレーキング、ヒール・アンド・トーの足の動きの映像が付いているのもいい。もてぎはフェラーリとGT-Rでの映像だけだが、どちらもビクトリー・コーナーでは4速にシフト・アップせず、二個目の左の手前で2速にシフト・ダウンしていた。こんなDVDの二輪版があればいいのになー、と思っていたらあった。

 

Riders Eye オンボード映像集MotoGP 2003

待望の二輪サーキットのオンボードDVD。2003年のWGP全戦のオンボード映像がある。二輪@もてぎはこれでばっちりだし、いつか鈴鹿で走るときの参考にもなる。将来WGPオーバー40参戦の際にも。

 

サイクルサウンズ編   ツクバサーキット100%

絶版だったが古本をアマゾンで見つけ、自分を二輪サーキット復帰に向けて奮い立たせる為に読んだ。初心者向けの二輪サーキットのフリー走行に関する内容に加え、筑波に二輪用のシケインができる以前のものだが、神谷忠氏のコース解説がとてもいい。こりゃめっけもんだった。

 

富塚清   日本のオートバイの歴史

戦後の日本には、一時期120社以上のバイク・メーカーが乱立していたと。現在残っている日本のメーカー四社はいずれも戦後にバイクの製造を始めたようで、戦前からあったメーカーは全滅している。

「航空機は現代戦の花形である為に、敗戦国日本はほぼ全面的禁止の処分を受ける。これに反しオートバイの方は端役である為に全く野放し。よって、飛行機屋くずれがここに殺到。日本においては空前の活況を呈することとなり、急激な進歩を見る。」とある。そういやアメリカのハーレーを除き、日本の四社、イタリアのドゥカティ、ドイツのBMWと大手バイク・メーカーの国籍はいずれも第2次世界大戦の敗戦国ばかり。そのかわりこれらの国の航空機産業は死んでいる。(江場ちゃんごめん。)日本では三菱重工業やバイク・メーカーでもある川崎重工業らが航空機を作ってはいるものの、ほぼ全て米国のライセンス生産による国内軍需向けだけだし、民需向けはボーイングやエアバスの下請け。でもホンダが最近民需向けの小型機を自社開発した。ホンダは凄い会社だわ。今や外国資本のない国内四輪メーカーはトヨタとホンダだけになってしまった。三菱自動車は2000年のリコール隠し事件の教訓を全く活かさず、トラックのハブの欠陥による死傷事故及びその欠陥証拠隠滅という度重なる失態を晒している。三菱自動車はそのうち倒産すると見た。こんなどうしようもなく卑劣な会社は潰れてよろしい。ダイムラー・クライスラーもとんでもない買い物をしたものだ。

 

マット・オクスレイ     バレンティーノ・ロッシ 史上最速のライダー

高価だから買うのをためらっていたが、ロッシがヤマハに移籍したし、本間師匠からロッシのライディングに関する興味深い話を聞いたので買った。ロッシは子供の頃二輪も四輪カートもやっていたが、金がなくて二輪の道へ進んだとある。確かに二輪なら、腕さえあれば市販のTZ-125やTZ-250でWGPに出場することができるが、四輪の場合はそうはいかない。職業ドライバーになるには大金をつぎこんだクルマで勝ち続け、腕を認められるしかないのだろう。また、今では滅多に転倒しないロッシだが、若い頃はよく転倒していたようだ。この本の記述で気に入った部分を抜粋する。

「・・・ふだんはナイスガイのレーサーのなかにも、いったんピットレーンに出ると“怪物に変身する”ライダーは大勢いるからだ。彼らは、ピットに戻ってくるまで、何かに取り憑かれたようになり、自分や、ほかの者の生命までをも脅かすようなリスクを恐れない。それは通常の生活においては想像もつかないことなのだ」

「・・・『バレ、どうしてそんなにクラッシュするんだ?』って聞いたんだ。でも、今になってみるとよくわかるよ。ライダーのなかにはクラッシュしない奴もいるけど、そいつらは途中で消えていってしまう。若いライダーというのはクラッシュするものなんだ。自分の限界を知らなくてはいけなくて、転倒せずに限界を知ることはありえないんだ」

「僕はF1が好きじゃない。だってあの世界にいる奴らは皆お金目あてみたいだからね。モーターサイクル・レースは情熱で成り立っているんだ」

「・・・バレンティーノの場合、ただマシンを走らせる能力が高いだけでなく、マシンのセットアップを行う能力が高いので、コース上で自分の能力をフルに生かすことができるわけだ」

「グリップがあればあるほど、必要とされるライダーの感知能力とタイヤのフィードバックの量は増えていく。大半のライダーは、限界に近づく前に“警告期間”を必要とする。どんなにグリップがよくても“警告期間”なしで突然タイヤの限界がきてしまうのは良くない。ライダーが自信をもって限界まで攻めることができなくなるからだ。大半のライダーは、多少グリップが劣っていても、フィードバックのあるタイヤを使っていたほうが速く走れる。特別優秀なライダーだけが、フィードバックは少ないがグリップの抜群にあるタイヤで速く走れる。彼らは“警告期間”が短くてもそれに対応できる能力をもっているんだ。」

 

神谷忠    2輪サーキットヒーロー入門

本書でおなじみ神谷氏の、こっぱずかしくなるようなタイトルの絶版本。二輪ブームの頃にはこういった本が売れたんだろう。神谷氏はMFJロードレース副委員長でもあり、二輪レースの発展を啓蒙する、日本の二輪レース界で重要な役割を担う人物であった。この本の中でヤマハ・レーシング・スクールの平校長についてのこんな記述があった。

「数年前まで、彼はよく転倒するライダーだった。昔からロードレースを観にいっていた人なら、転倒した後の彼がコーナーポストに座り、オフィシャルからもらったタバコをふかす光景を、何度か目にしているだろう。だが、今の彼は転倒をしなくなった。」

おらが転倒したときは、情けないやら腹立たしいやらで平常心でいられず、タバコを吸おうなんて気の利いたことに考えがおよんだ覚えがないが、校長は昔から大物だったようだ。でも普通、オフィシャルが転倒したライダーにタバコくれるか?

 

平忠彦写真集 きらめく汗のむこうに

平校長のこんな絶版をアマゾンで見つけた。写真集とはあるが記述も多い。校長がWGP 250ccクラスに初めてフル参戦した1986年全戦の戦いぶりの記述があったが、校長は第1戦で足を骨折してからケガに悩まされ続け、当時押しがけスタートだったこともあり毎回のようにスタートで出遅れ、最終戦を前に一度も表彰台に登る事がなかった。しかし最終戦のサンマリノGPでは最後尾から30台をごぼう抜きし、初の表彰台を優勝で飾るという感動的なシーズンだったようだ。それにしても若かりし校長は、まるでモデルがライダーを装っているかのように、スタイルのいいニヒルな二枚目だ。写真のポーズが嫌に決まってるが、これは地か?だとしたら校長は色男のおらも真っ青なキザ男だった。でもおらの知ってる校長は…。この本にある校長のライディング・フォームを観ていて、おらの疑問である「なぜ四輪でなく二輪なのか?」の答が見つかったような気がした。コーナリング中のライディング・フォームというのはカッコよくて美しく、そして何よりスポーツしているフォームだ。これは四輪にはないものだ。四輪でヒール・アンド・トーをやってる写真なんか見てもカッコいいとも何とも思わないもの。おら自身、二輪でサーキットを走っているときにカッコいいとは思わないが、自分のライディング・フォームを写真で観ると「おらってなんてカッコいいの!」と惚れ惚れする。

 

 

Joy耐3時間のときにデジカメで撮った写真をカメラ屋で何枚かプリントしたら、今まで気になった事がなかったのに、顔の肌色の繊細さに欠けることに気がついた。150万画素のFUJIFILMのデジカメで撮った写真だ。しかも、予備を含めて2個で使い回してるバッテリーがここのところほとんど充電されなくなり、バッテリーを買い替えようと思っていたら1個\4,500もする。と、320万画素、光学10倍、デジタル3倍ズーム、かつ本格的な動画も撮れるというキャノンのデジカメが売られていた。Joy耐3時間では佐野さんのデジタル・ビデオ・カメラにお世話になったが、おらのドライビング上達の為にも、本書の執筆の為にも、サーキット走行中の動画撮影がどうしても必要だったから一石二鳥だ。それにおらのデジカメは光学3倍、デジタル2倍ズームしかないから、サーキットでの遠景はズーム・レンズをつけたニコンのマニュアル・フォーカス・フィルム一眼レフで撮ってたが、このデジカメを買えば二台を使い分ける必要も、一眼レフで撮影したフィルムをカメラ屋でCD-Rに焼いてもらう費用もかからなくなるから、一石三鳥だ。よってこの際デジカメを買い替える気になった。財形預金を崩す決心をしたおらだから、消費欲旺盛だ。

 

ところがこのキャノンのデジカメで撮影した動画のファイル形式であるAVIファイルをDVDにコピーして、DVDプレイヤーで再生できるのか大型電気店の店員に聞いてもわからないと言う。キャノンに電話したら「再生できるかどうかはDVDプレイヤーによりますので、お使いのDVDプレイヤーのメーカーに聞いて下さい」と言う。おらはソニーのDVDプレイヤーを使ってるから今度はソニーに電話したら、「DVDビデオ・フォーマットでコピーされたDVDならDVDプレイヤーで再生できますが、AVIファイルについてはわかりません。お使いのパソコンのメーカーに聞いて下さい」と言う。電話を切って、おらのパソコンのメーカーは・・・、と考えたら同じソニーじゃん。またソニーに電話したら、「VAIOは別の電話番号で案内しています」と言うからそこに電話したら、「ソニーのDVD-RWドライブなら、AVIファイルをDVDビデオ・フォーマットでDVDにコピーするソフトウェアが付いていますからDVDプレイヤーで再生可能ですが、お客様がお使いのVAIO PCG-767で動作確認が取れているソニーのDVD-RWドライブはありません」と。おらのVAIOは5年前に買った機種だからソニーはもう相手にしてくれないのだ。そして「他のメーカーのDVD-RWドライブで、DVDビデオ・フォーマットによるDVDへのコピーができるかどうかは、DVD-RWドライブのメーカーに聞いて下さい」と言う。おらはデジカメで撮った静止画のバックアップ用に外付けCD-RWドライブを持ってるが、DVD-RWドライブは持っていないから新たに買うつもりだった。でもこれ以上深追いするより降参して、320万画素と光学10倍ズームの為だけにキャノンのデジカメに買い替え、動画撮影用にはデジタル・ビデオ・カメラを別に買った方が良いかもしれない。しかも最近発売されるようになった、DVDに直接録画するDVDデジタル・ビデオ・カメラを買えば、DVD-RWドライブを買う必要もない。でもそれじゃあ、せっかくキャノンのデジカメに付いてる“本格的な動画撮影機能”が無駄になるからやっぱりしゃくだ。そこでパソコン周辺機器の大手であるメルコに電話したら、「お客様のお使いのVAIOで動作確認を取ったDVD-RWがあります。添付されているソフトウェアを使えば、AVIファイルをDVDビデオ・フォーマットでDVDにコピーすることもできます」と。ということでやっと何とかなりそうな気配になった。デジカメのメーカー、DVDプレイヤーのメーカー、パソコンのメーカー、DVDドライブのメーカーと、たらい回しにされてやっと結論が出た次第だ。

 

しかしこんなことじゃデジカメも、デジタル・ビデオ・カメラも、パソコンも、DVDドライブも、DVDレコーダーも、ひょっとしたら将来テレビまで全て同じメーカーのもので統一しなきゃ不便でしょうがない。例えばソニーならこれらの製品が全て揃うが、それでも発売時期がほぼ同時期のものでないと、おらのVAIO用の外付けDVD-RWドライブのように動作保障されなかったり、接続できなかったりする。最近の電気製品は各々の製品を関連付けて使う難しさがあるなー。それに最近の電気製品は機能が優れている分、操作方法が複雑怪奇だ。例えば“新三種の神器”と呼ばれる薄型テレビ、DVDレコーダー、デジカメ。薄型テレビの機能は複雑ではなかろうが、ハイビジョン放送はD端子(デジタル端子)のないVTRでは録画できない。DVDレコーダーは録画・再生方式がメーカー間で統一されてないから、DVD-RWにコピーしても互換性がなく、DVD-Rにコピーしなけらばならない。そしてDVDにはDVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RWとやたらに多くの規格があって、おらにも違いがよくわからない。それにDVDレコーダーの操作方法は、かなり難しいようだ。デジカメは機能が多すぎて、それをフルに使ってる人はほとんどいないだろうが、基本操作で撮影するだけならそう難しくはない。しかしデジカメで写真は撮れても、パソコンを持ってなきゃデジカメの静止画ファイルを保存できないし、CD-RWがなきゃそのバックアップが取れない。デジカメはパソコンが苦手な年配者にはとても太刀打ちできないしろものだ。

 

このように、テクノロジーの進化で世の中便利になっているようで、それを十分享受しているのはパソコンを使える人間だけ。パソコンを使えない人間には逆に不便になってることさえある。例えば\50,000で買えて\58,000分使えたハイウェイ・カードは偽造カードが多くて去年販売中止になったが、その代わりETCユーザーに限って\50,000払って\58,000分使えるETC前払割引サービスを受けられるようになった。しかしこのサービスを受けるには、日本道路公団のウェブサイトにアクセスして前払いする必要がある。つまりインターネット環境を持っていないドライバーはETC前払割引サービスが受けられないのだ。それに、「お問い合わせは電子メールでお願いします」とか、「資料はウェブサイトからダウンロードして下さい」といったセリフは今時ざらだ。ほとんどの月給取りならパソコンを使えるだろうが、既に引退している年配者がこれからパソコンを使うというのはかなり困難なことだと思う。南北問題(地球の北側に比較的多い先進国と、南側に比較的多い発展途上国との、経済的・社会的な格差の問題。おらはこう見えてもインテリのはしくれであった)じゃないが、先進国の中だけでもコンピュータが使える環境にある人間と、そうでない人間が享受できる利益の格差による、インターネット・アクセス問題(今おらが造った造語で、略してIA問題)が現状あるのだ。これは今から30年も経って先進国に居住する現在の年配者が死に絶えることによりほぼ解決する問題だが、先進国にはインターネットを使える環境にある人間が多いのに対し、発展途上国にはそういう環境にある人間が少ないことによる国家間のIA問題により、南北問題はますます顕著化すると考えられる。それにしても、本書はおらが確立した”サーキット体験記という新たなジャンルのエッセイだが、単にその枠に留まることのない、電気製品の知識や社会勉強にも役立つ名著であった。

 

ところで先のキャノンのデジカメの話には続きがあって、おらがパソコンのデータ保存用に既に持ってるコンパクト・フラッシュを電気店に持っていって、例のキャノンのデジカメで動画を撮影させてもらい、自宅の古いパソコンと会社の新しいパソコンの両方で再生してみたが、どちらも動画がスムーズに再生されず、とても観られたもんじゃない。今ではほとんどのデジカメに付いている動画撮影機能だが、その画質はとてもデジタル・ビデオ・カメラで撮った動画の画質にはおよばない“おまけ”のようだ。また逆に、今ではほとんどのデジタル・ビデオ・カメラに付いている静止画撮影機能だが、これもせいぜい200万画素と、デジカメで撮った写真の画質には到底およばない“おまけ”だし、デジタル・ビデオ・カメラをデジカメ代わりに使うにはでかすぎる。デジカメとデジタル・ビデオ・カメラが共存してるわけだよ。キャノンが“本格的な動画撮影機能付き”と宣伝するから、おらはどえらい回り道をしてしまったが、おらには高画質でズーム性能の良いデジカメとデジタル・ビデオ・カメラの両方が必要だということがわかった。そうなると例のキャノンのデジカメの320万画素は、現在主流の500万画素に見劣りする。そこでおらは500万画素程度でコンパクトなデジカメを買い、Joy耐7時間の際には佐野さんのデジタル・ビデオ・カメラを借りることにした。

 

ということでデジカメの機種選定が振り出しに戻ったが、今使ってるFUJIFILMのデジカメのメディアはスマート・メディアで、おらは64Mのものを2枚持ってるから、それを次のデジカメにも活かしたい。しかしスマート・メディア対応のデジカメはもう売られていなかった!スマート・メディアはおらのも一回壊れたが、壊れやすいのでどのメーカーにも敬遠されたようだ。しかたがないのでおらが普段パソコンで使ってるコンパクト・フラッシュに対応しているデジカメを探したら、唯一対応しているメーカーがこれまたキャノン。で、キャノンの500万画素、光学3倍、デジタル4倍ズームのデジカメをJoy耐7時間までに買うことにした。ズーム性能には目を瞑る。

 

 

デジカメの件が一件落着した直後、5年前に\21,000で買ったこれもキャノンの3色インクのカラー・プリンタが壊れた。写真を印刷に出した年賀状に、このプリンタで住所を印刷しようとすると、写真の面が滑ってうまく紙送りしないから、今年の年末までには買い換えて、プリンタで写真を年賀状に印刷しようと思ってた。でも壊れてもいないのに捨てるのはもったいないと思ってたから丁度いい。進化の早い電気製品だと、買ってから5、6年も経つとスペックのより良いものに買い替えたくなるが、壊れないことにはもったいなくてなかなかその気になれないから、贅沢な話だが、壊れると逆に嬉しかったりすることがある。おらはキャノンの\30,000のプリンタに買い替えたが、何と6色インク。デジカメで撮った写真をプリントしてみたらあまりの綺麗さにびっくり。カメラ屋でプリントした同じ写真と見比べても違いがわからない。そのうちにこのプリンタに付いていた名詞作成ソフトを使って、おらのパーソナルな名詞を作る。デューク南郷の名詞だ。肩書きは6輪ライダーでなく、レーシング・ライター(ライダーでなく)としたい。世界中の誰のでもいいから1枚名詞を手に入れることができるとすれば、おらはロッシのでもサダム・フセインのでもなく、デューク東郷の名詞が欲しい。コンタクト方法と、スイスにある銀行の口座番号の入った本物のやつ。

 

 

とうとうサーキット体験なしの雑記に終わってしまった。どうもすいません。

 

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