鋼の天使シャッコウモン
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脚本:浦沢義雄 演出:芝田浩樹 作画監督:竹田欣弘 |
★あらすじ
最後のホーリーストーンを探して、デジタルワールドの中華街にやってきた子供たち。
たまたま入った料理店でアルケニモンたちとはち合わせを起こしますが、エネルギー不足でジョグレス進化できず。
まずはしっかりラーメンを食して、スープのダシの秘密をあばきに行ったアルケニモンたちを追うことになります。
アルケニモンたちが見つけたのは聖なるラーメンスープの泉。そこから、なんとホーリーストーンが現れました。
これを察知したブラックウォーグレイモンが破壊すべく現れるのですが、元気いっぱいの子供たちが立ちはだかります。
伊織もついにタケルとのジョグレス進化を完成させました。その名はシャッコウモン!
いよいよ三大ジョグレス体が揃い踏みしました。戦いはこれからだ!
★全体印象
36話です。タイトルコールはアンキロモン(浦和めぐみさん)とエンジェモン(松本美和さん)。
影絵では二体が交差し、シャッコウモンになる流れが動画として描かれています。
この動画は予告にも使われました。デジアドとしては珍しいケースといえるでしょう。
さて見てのとおり、ラスト数分をのぞけば完全なギャグ回です。あらすじを書いてて自分で頭クラクラしました。
しかも最後のジョグレス進化三部作のラストときていますからね。
34話、35話ときて最後がこれですので、あっけに取られたファンが相当数いたと聞きます。私もそのひとり。
浦沢氏という時点でただでは済むまいと思っていましたが、まさかここまで斜め上に吹っ飛んでいくとは思いませんでした。
前回までの流れからコレを捻り出すという自体がまず普通じゃありません。
なんですが、キライにはなれないお話。
竹田作画との奇妙なギャップやあまりにも唐突すぎてどうしたらいいのかわからないシチュエーションなど、味があります。
そんな中でひとりだけ徹頭徹尾シリアスな黒ウォさんもそれ自体がギャグになっていて、存在感を示していました。
でもひょっとしたら一番のギャグは、シャッコウモンの外見に一切ツッコミが入らないことかも…(^^;)
ドラマCDじゃ少しは気にしていたっぽい描写があるんですけどね。
★各キャラ&みどころ
・大輔
今回も脇ですが要所でわりにしゃべっているので、そんなに影が薄いわけではありません。
もしラーメン屋の夢に開眼したきっかけがあるとすればそれはこのお話なんですが、当然のようにそういう仕込みはなし。
ただ、皆でラーメンを作った過程でかなりの貢献をした可能性はあります。これも当然言及されてはいませんが。
・京
こちらも脇。大輔も彼女も今はじっと自分のターンを待っている状態です。
もっとも、年末からラストにかけては連続色が強くなっていくので個人へのスポットは弱まりがちなのですが。
そんな中、忘れた頃にコンビニの娘という設定が使用されました。もうちょい前面に押し出してもよかったかもしれません。
食料調達に無理がないよう、サブ的にもうけられた境遇なのでしょうけど。
・ヒカリ
32話からこっち、ずーっと脇に甘んじています。
しかしここへ来て竹田作画がますます磨きをかけてきており、とんでもない美少女度を発揮してました。
横顔のアップなんてわざとこういうカメラ位置にしたんじゃないかというぐらいのもの。
睫毛の長さや唇のツヤ、影の入れ方など、他の回とはオーラが違います。「可愛く描いてやる!!」という念が見えるんですね。
というか胸を描きたくてしょうがないんだろうなということが逆によくわかるお話だったり。
デジモンコンプリートガイドのポスターではもうちょっとだけ踏み込んでましたけど、たぶんあのへんが限界ですね。
……絵の話ばっかりだな。
・伊織
この36話を見返して、実は最初っから彼のひとり相撲だったのかなあと思わされました。
思い返すとジョグレス進化に一番必要だったのは呼吸、気持ちをひとつにすることであって、おたがいの理解というより
それぞれがある程度勝手に納得することで成立する進化というふうにも解釈できてしまうんです。
大輔風に言うなら「グッと来た瞬間にうまくいく」ってな感じで。
そうなるともう感性の世界で、口でどうこう説明できるものじゃなくなってくるんですが……
伊織はそこのところを頭で考えすぎて、タケルを知りたい理解したいと空回ってたところがあったのかもしれません。
無論そこで得られたヒントもきっかけにはなったのでしょうが、それだけではダメなんでしょう。
果たして今回のエピソードに目を向けると、一緒に何かを成し遂げてその達成感と満足感に笑いを交わすこと、
これがきっかけとなったように見えます。これはもしかして闇がどうとか過去の精神的外傷がどうとか、
そういう一面を切り出した理解よりもただ笑いあうことのほうが大切だという、浦沢氏なりのメッセージなのでしょうか?
たぶん違うと思うけど(^^;)
・タケル
いったいいつジョグレス進化の準備ができていたのか全然わからない彼。
わからないということは、最初っからいつでもOKだったという見方もできます。タケルなので。
いつでも誰とでもジョグレスできる自信があったのではないかという意見も目にしたことがありますね。
にしても実戦でさえ明らかに伊織をリードするような立場だったし、なんであんなに余裕ぶちかましてるんでしょうか。
本当に伊織のほうの準備がととのうまで待っていたようにさえ見えてしまいます。
まさかとは思うけど、ひょっとして経験済み? 誰かとジョグレス進化を試したことがあったりするんですか?
うーん、謎だ。
・賢
後半から登場。それもあって、特筆すべき活躍はしてません。
アルケニモンたちと入れ違いみたいにして現れた時の絵面はちょっとシュールです。
・デジモンたち
なぜか全員の進化バンク+ジョグレス失敗二回と少々尺をとりすぎな方々。
これは本編の脚本が思いのほか短かったのかもしれません。
黒ウォさんに対してはもはや定番のオーダーで挑戦してますが、ここでやっとシャッコウモンが加わります。
このシャッコウモンがまた相当の実力者なので、これでやっと勝負になるレベルに持っていけたというところでしょう。
やはりジョグレス体は並みの完全体をはるかに越える力を持っているってことですね。
それでも黒ウォさんにはもう一歩及ばず、インペリアルドラモンの登場を待たねばなりませんでしたけど。
エンジェモンにはもはや当たり前みたいに進化してます。ペガスモンより力を使いそうなイメージがあったのに……
7話で普通に進化していましたし、別に驚くようなことじゃないんですが、
・中華デジタマモン&バクモン
ラーメン屋を経営している二人組。店長は洋食屋のデジタマモンと仲間同士のようです。親戚とかじゃないのね。
というかデジモンに親戚って概念あるんでしょうか。フロンティアとかだと普通にありましたけど。
バクモンはこれがアニメ初登場。店のウェイターをつとめていました。
「ジャージャーメン」「ワンタンメン」などラーメンの名前しか発音できません。デジアドシリーズでは珍しく、
意味のあることをしゃべっているのに会話ができないケースです。
わざとじゃなさそうなのでこれが素なんでしょう。
その一方で弦楽器をあやつるなど、器用なところを見せています。
・アルケニモン&マミーモン
もはやどっからどう見ても完全な道化になっています。まんまドロンジョ様とボヤッキー。
これをギャグキャラに成り下がったと見るか、悪役としての幅が出たと見るかでだいぶ評価が変わるお話でしょう。
今回にかぎってはなんかロケット団とでも仲良くやれそうでした。
たださすがに完全体、いざ戦えばジョグレス抜きでやりあえるような相手ではなくそこは面目を保っています。
まあ直後に戦いをほうり出してラーメンスープのダシを聞きにいってしまうあたりが浦沢脚本なんですが。
そんなに食へのこだわりがあるんなら、料理の道に入る選択肢もあったでしょうに。
マミーモンは元のデザインがああなのでそうでもないんですが、アルケニモンの方は明らかに作画の恩恵を受けてました。
なんか妙に可愛く仕上がっています。これも竹田氏の執念か……28話は押さえてたんですね。
・ブラックウォーグレイモン
前半、最後のホーリーストーンが見つからないのか荒れていました。
聖なるラーメンスープの泉はアレでも探知シールドの役割を果たしていたんでしょうか。
後半ではガイアフォース(小)を披露しています。予告でも使ってたアレ。
片手でも使えるのが特徴で、威力おさえめなおかげで食らってもギャグ調に吹っ飛ぶだけですむ場合があります。
つうかあのシーンのアルケニモンたちはまごう事なきロケット団、いやさドロンボーでした。
シャッコウモンを見た時の「なんだ、こいつは!?」とでも言わんばかりな反応がちょっと面白いです。
そりゃ出てきたのがアレじゃ普通びっくりするわな。
・最後のホーリーストーン
よりにもよってラーメンスープの中に沈んでいました。ダシはその聖なるちからだったのでしょうか。
なんであんなところに沈んでいたのかまったく不明なんですが、上に書いたとおり探知をさまたげる効果や、
あとは偽装の意味合いがあったのかもしれません。誰がこんなところにあるなんて思います?(^^;)
しかしマミーモンが一口スープを飲んだとたん、なぜか浮き上がってきたので台無し。なんで出てきちゃうかな。
ちなみにちゃんと封印の輪っかもついてたんですが、マミーモンが落っこちた影響で取れてしまいました。
いちおう封印だと思ったんですが、あんな簡単に取れていいのか。
ところで今回はあちこちに漢字も使われています。むろんデジモン文字がメインですけど。
そこはやはり中華街ということなのでしょう。
★名(迷)セリフ
「最後のホーリーストーンと、職員室の掃除と、どっちが大切だと思ってるんだ!」(大輔)
「そーゆー問題じゃないだろ……」(タケル)
そういえば、浦沢脚本でのタケルはちょっと崩しの入った顔もこなせるんでした。
「ボカボカボカボカなぐるなよ、馬鹿になるだろ!」(マミーモン)
全方位ツッコミ待ちなセリフですがツッこまないぞ。言うもんか、もう馬鹿になってるだなんて失礼なことは!
「うちの店のおすすめ商品、でーす!」(京)
「ミネラルたっぷり、体にいい、でーす!」(ホークモン)
ここで、コンビニの娘という設定を忘れずに入れてきます。浦沢脚本はこういうところに気がきいてるんですよね。
そういえば京さんにはお金にちょっとシビアなイメージがあります。
「うーん…なんかいい匂いしない?」(ヒカリ)
前半が問題のシーン。このアングルは絶対に狙っています。
「ブラックウォーグレイモンと戦う前に中華料理を食べるだなんて……みんな真面目じゃない!
僕は、僕は怒りさえおぼえる……!」
「もしかすると、僕のこの真面目すぎるといわれる余裕のなさが、
タケルさんとのジョグレス進化をさまたげているのかもしれない…」(伊織)
なんという説明セリフ。
字面ではそう変でもないのにどういうわけか笑えるんです。笑えない人も結構いたようですが、それは仕方ない。
ところで前後のセリフをガヤまでよく聞いてると、タケルの好物がゴマ団子だということがわかります。
確かにあれはうまい。
「ラーメンを食べましょう!」(伊織)
上のセリフのシーンとアルケニモンたちとの前哨戦をきっかけに、考え直してのセリフ。
同時に両手をぽんと合わせるのがポイントです。
この回は竹田氏が余力をつぎこんだのか、彼までもが普段より愛らしくなっています。
前髪のほつれ具合もちょっと強い気がしますね。もうヘルメットとは呼ばせません。
「もしかして、ぼくたち…ジョグレス進化、できるかもしれない。そんな気がする!」(タケル)
なんでそんなに自信あるんですか。
どうしたわけか、戦いってのはノリのいい奴が勝つんだよっていうどっかのイマジンの言葉を思い出しました。
直前の「…伊織くん」「……え…」が妙に耽美な間を形成しています。
「自信を持って…!」(タケル)
「はい!」(伊織)
どう見てもタケルがリードしてますね。だからなんでそんなに自信(以下略)。
彼らだけふたつも年が離れてますから、それを思えばわからんでもないんですけど。
★次回予告
必殺目からビーム! 行け、バグども! ふははは、こわかろう!
なんというバンドックでしょうか。
まあチンロンモンに半分以上持っていかれるんですけどね。