ホーリーナイト デジモン大集合!
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脚本:吉村元希 演出:佐々木憲世 作画監督:直井正博 |
★あらすじ
賢の招待でクリスマスパーティが開かれました。大輔たちは喜んで一乗寺家に赴きます。
アグモンたちも太一らと久々の再会を果たし、楽しい時間が過ぎていきました。
ところが聖なる夜、ヤマトも参加しているバンドコンテストにデジモンたちが乱入します。
あわてて外に飛び出した太一たちが見たものは、何とダークタワー! そのうえ進化ができません。
連絡を受け、大輔たちが急行。すぐさま暗黒の塔が破壊され、全員の進化が可能となりました。
11人の選ばれし子供たちの連携プレーにより、迷いデジモンたちは残らずデジタルワールドへ送り返されます。
今回の仕掛け人は誰なのか。現実世界との行き来ができるというアルケニモンたちなのか。それとも別の何者かなのか。
不穏な空気がたかまる中、次の日大輔が見たものは世界中に乱立するダークタワーでした。
同時に開いていく無数のデジタルゲート……
2002年冬、世界は大混乱に陥ろうとしていました。
★全体印象
38話です。タイトルコールは恐らくメインキャラ担当全員。影絵も同様。
今回から舞台が現実世界主体へ移行します。同時に全員が衣替えし、一気に冬らしい佇まいとなりました。
そのまま最終話までもとに戻らないので、ここからラストまでは恐らくそんなに期間が経過していないものと思われます。
年を越していたかどうか記憶が定かじゃないので、あんまり断言はできませんけど。
時間経過といえば、黒ウォさん登場は秋でした。修学旅行の場面がありましたしね。
メンバーが衣替えしたようすもないので、実はかなり短い期間での戦いだった可能性があります。
特に34〜37話までの間は一週間たらずしか経過してない感じ。
加えてダークタワーをほとんど倒したぞという今回のセリフから、37話から38話まではけっこう空いているのかもしれません。
その間はひたすらダークタワーをぶっ壊してるだけで、変わった事件はなかったのでしょう。みんな気が緩みがちでしたしね。
それに、アルケニモンたちがダークタワーをおっ立てるための準備期間も必要です。
太一たちがそろって出てくるのが相当ひさしぶりだということにも、あらためて気付かされました。
特に太一、空、丈あたりは20話代初頭からこっち全然出てませんね。こんなに出番がなかったのか。
そんでようやく出たと思ったらあの件ですから、いろいろ思うところある人もいたでしょう。当時あちこちがヒートアップしてました。
私も多少は熱くなってましたっけ。いまは一定の落とし所に考えを落ち着けていますけど。
ともあれ先代との揃い踏みと全員の進化という、かなり贅沢な回です。
クリスマス期間なので、デジモンたちの活躍をアピールしようという狙いもあったことでしょう。
ミミだけいませんが、40話で活躍するのでとりあえず問題なし。
作監の直井氏は30話からの途中参加。テイマーズにも参加してますが、25話で離脱してしまっています。
フロンティア、セイバーズでは(確か)描いておらず、全編参加は01のみと意外に活躍期間が短いんですね。
ベテランなのであっちこっちを渡り歩いていたようです。デジモンでの絵は好きなので、できればもっと描いてほしかった。
ちなみに現在は「はたらキッズ! マイハム組」で名前を見ることができるようです。
★挿入歌
ヤマトの02版キャラソン「願いかなえるカギ」のほか、クリスマス専用ソングである
「みんなのクリスマス」(歌:和田光司氏)と「天使の祈り」(歌:Aimこと前田愛さん)が流れました。
いずれも耳に残る名曲で、とりわけクリスマス用の2曲は個人的に大のお気に入り。
曲の良さもさることながら、優しく歌い上げるボーカルが絶品なのです。
★各キャラ&みどころ
・大輔
冬服になってもあんまり変わってない人物のひとり。伊織ともども、襟はあったかそうですね。
この頃になると太一はじめ、皆の見る目がずいぶん変わってきたようにも見えます。
元デジモンカイザーの賢を引き込んだ行動力やジョグレス進化を導き出したこと、劣勢つづきの戦いにもひるまず挑んだ姿勢など、
凄いことを成し遂げつづけているのですから。
それでいてあんまり変わってないように見えるのがまた彼らしさで、皆そこに一目を置きはじめていたのかもしれません。
無敵のポジティブ野郎の本領はいよいよこれからです。
・京
コート姿とチェックのスカート、黒タイツでイメージ一新。室内ではクリーム色の長袖姿です。
夏服同様、設定当初の私服よりこっちのほうがいいですね。
本編ではそんなに目立ってませんが、賢の笑顔をかわいいと言ったり微妙にフラグを立てています。
・伊織
冬服になってもやっぱり地味。ですがまあそれも彼らしいというべきなんでしょうね。
一番のポイントは賢のクリスマスカードを受け取る場面。もうデジモンカイザー時代とは違うのだということを受け入れ、
わだかまりを完全に氷解させた重要なシーンです。けっこう時間がかかりましたけどね。
伊織としては途中から自分のことで手一杯になったので、ある意味放り出していた形。
気付いたらもう拘りはなくなっていたという感じだったのかもしれません。あれはお話的に一種のケジメってところでしょうか。
・タケル
37話からこっち、賢への接し方がずいぶん積極的になっています。
賢から危うさが抜けはじめ、大輔や京、ヒカリと打ち解けはじめたことから、もう大丈夫と危惧から応援へ切り替えたのですね。
これが伊織にも促しの効果を及ぼしているのでしょう。賢としても、タケルに味方してもらうのはやぶさかじゃないはず。
まあ、大人の判断でしたね。心憎いぐらいに。
年齢的には真ん中だけど、精神的にはやっぱり一番の年長なんです。それが良いか悪いかは別にして。
冬服ではダウンのベストを着用。トレードマークの帽子がそのままなので、彼もあんまり印象が変わってません。
・ヒカリ
こちらはピンク色の長い上着と白いベレー帽で、だいぶ印象が変わっています。
室内でも帽子しか脱いでいないので、外出時と兼用できるのでしょうか。
あるいはちょっとくらい薄着でも大丈夫だとか。雪山でも肩出しで平気だったぐらいだし……ってあれは話の都合ですが。
お話の上でこれという特筆点はありません。
・賢
室内でも外出時でもセーター姿。マフラーはしていますが、他よりちょっと薄着に見えます。
寒くないんでしょうか。
さておき、今回で光子郎とミミ以外の先代たちとも顔合わせを果たしました。
デジモンカイザー時代にあんまり会ってなかった太一たちには、とても同一人物に見えないでしょうね(^^;)
そして実際、大輔たちや視聴者でさえ初めて見るような柔らかい表情も増えはじめています。
これは彼が元デジモンカイザーから、選ばれし子供・一乗寺賢として大きく前進している証拠なんでしょう。
・太一
やや薄手のナイロンっぽく見える長めのジャケットを羽織っての再登場。
最後に出てきた時は夏服でしたから、秋はまるまる出ていなかったことになります。
寒さ対策でしょうか、ヘアーバンドも復活していますね。もちろんゴーグルはありませんけど。
登場しなかった間何をしていたのか、何があったのかは不明。こうして見ると、意外に出番が少ないです。
何にもしてなかったわけじゃないんでしょうけど、描写がないので結局想像するしかなさそう。
・ヤマト
中学生バンドコンテストに出演していました。劇中での説明がないので、ちょっと目を離すと何で歌ってるのかわかりません。
別にそのための晴れ着ってわけじゃないのでしょうが、シックに纏められたアダルティな冬服で決めています。
一方で乱入してきたデジモンたちにちょっぴり的外れなコメントを述べたりしてますが、まあヤマトだし。
彼も35話でちょっと出てきただけで、21話からクリスマスまでの間に何があったのかは描写されてません。
先代の子供たちは思ったよりずっと活躍の情報が少ないのです。結局ほとんどが第1クールに集中してるんですね。
・空
しばらく見ない間にまた美人になったような気がします。
それが子供から女性になりつつあるからなのか、単に作画なのかそれはよくわからないんですが。
ちょっと厚手のコートとマフラーがよく似合っています。
・光子郎&丈
コンビみたいな扱い。丈先輩もほんとに頼りがいのある人になりました。
光子郎のほうはデータ担当らしくそれなりにセリフがあり、ラストシーンにも出番があります。
・ミミ
出番なし。アメリカに送られたパルモンと再会し、パーティを楽しんでいる場面はありますが一枚絵です。
40話の活躍までもうしばし待ちましょう。
・デジモンたち
ほぼ全員に出番がありました。ただし目立ってるのはやっぱり02組で、先代組は進化したものの敵と睨み合ってるだけだったり、
必殺ワザを使っても決め手にならない場面が多く、基本的にサブへ廻ってます。例外はグレイモンぐらい。
完全体二体を相手どる局面になると、もう完全に02組へまかせてしまっていました。
まあ、揃い踏みというシチュエーション自体に意味があるのでぜいたくは言えんのですけど。
全員での進化シーンはやっぱり燃えるものがあります。4クール目には分散しての出番もありますしね。
まさか各国の子供たちまで出てくるとは思いませんでしたが。
そういえば、こんなところにホルスモンの出番がありました。
得意技のウジャトゲイズでバケモンたちの動きを封じるなど、かなりの活躍をしています。
また、ペガスモンたちもひさびさにサンクチュアリーバインドを披露してくれました。網状にもできるのか。
・ジュン
35話にちょっと出てましたから、そんなに久々というわけでもありませんがヤマトLOVEはひさしぶりの主張。
でもどっかの時点をきっかけに、ヤマトのことを諦めることになったと記憶しています。
ある意味、それによってドラマ上から完全に脱落したのかもしれません。
デジモンに襲われた経験はあるので、ダークティラノモンたちを目にしたときの反応は珍しくシリアスでした。
真面目にやってさえいれば結構オトコマエなタイプかもしれません。あの大輔の姉なわけですし。
側にいる眼鏡っ子が気になる。
・石田裕明
ちょっとだけ登場。クリスマス特番で殺人的な忙しさに追われているようです。
電話口の声にちょっと疲れがにじんでいました。
後半のバトルも目撃しています。
・高石奈津子
及川悠紀夫と誰よりも早く接触していた人物。
ルポライターという職業柄、大輔の父に資料を依頼したりしているようです。
及川との会話は何かストーカーとのやり取りみたいでした。
じっさい、高石ママとしては及川にかなりヤバいものを感じていたのでしょうけど。
・賢の母
やっぱり泣き芸が板についてる人ですが、職場が出てくるのはめずらしい。
見たところレストランかバーのようです。個人経営かな?
・及川悠紀夫
ついに登場した02における黒幕……の一歩手前。
異常な長身と痩躯、長い髪に病的な目が特徴的です。もう見るからにヤバそう。
ケーキを何度も潰す仕草がまた不気味さを強調してくれています。
とまあつかみはバッチリな登場なんですが、その後どんどん弱さを露呈していく姿は部下そっくり。
やっぱりアルケニモンたちと似てますね。親子ぐらいには似てる。
声はマミーモンと同じ森川氏。ただし、少し端正な方向へ演技を変えています。
森川氏はベリアルヴァンデモンとあわせ、ひとり三役を演じることになりました。
これは三人が影の側面を共有している、いわば分身どうしにひとしい存在ということを示しているのかもしれません。
ただ、アルケニモンだけがちょっと違うんです。ダークタワーをデジモン化できたのも彼女だけだし。
なにか秘密があるのか、あるいは偶然そういう能力を得ることができたのか……
・アルケニモン&マミーモン
当たり前のように現実世界へ顔を見せています。
彼女たちが及川の遺伝子データをもとに作られた、言わば人造(ゲノ)デジモンであることに関係しているのでしょう。
つまりこのふたりはデジタルワールドの存在でも現実世界の存在でもない、その中間の存在なのです。
これを現世と幽界(かくりよ)の中間に当て嵌めるとまるでミラーマンREFLEXのようですが。
これはたぶん、ふたりが最初っから完全体であることにも関係してるんでしょう。
ふたりは変身はするけど、進化も退化もしません。ある意味において文字通りの完全体だからです。
だからどこにいても力が弱まらない代わり、今以上に強くもなれないんでしょう。
暗躍の度合いを強めたため、ふたたび登場当初の冷徹さが目立ってきました。
どっちかというと裏方が似合う人たちなのかもしれません。
なお、マミーモンのセリフは無し。及川を強調するためでしょうか。
・迷いデジモンたち
お台場には多種多数のデジモンたちがあらわれ、暴れました。
完全体のメガドラモンともんざえモンを筆頭にバケモン、ヌメモン、ファントモン、スナイモン、クワガーモン、
それにダークティラノモンが確認できます。
ファントモンも完全体のはずなんですが、ウジャトゲイズで十把一からげに動けなくされていました。
全員01でも登場した個体なんですけれど、前作との関連性は不明。別個体という可能性もあります。
邪悪なものではないようですが、気の荒い連中ばかりなので説得は通じない感じでした。
まあ、もんざえモンあたりはただ歩いてただけですが。
・世界を繋ぐ闇の塔
どうやって建てていたのかわかりませんが、現実世界にダークタワーが現れました。
伊織のセリフ通り進化抑制能力も復活していますが、これは近くにアルケニモンらがいたせいかもしれません。
問題はむしろ、同時にデジモンたちがなだれ込んできたことです。
おそらく、何の仕込みもなしで現実世界にタワーを建てても何も起こらないのでしょう。
これまでの事件でデジタルワールドの境界がきわめて脆弱になっていたところへ、これまでとは逆の層──
すなわち、現実世界──にダークタワーを建てることで局地的な混沌が促進され、デジタルゲートが開いてしまう。
たしか本編でもそんな説明か示唆があったと思います。
いまや、デジタルワールド側のダークタワーをいくら倒してもほとんど意味がない状況になってしまったのです。
黒ウォさんがその作られた目的をあらかた達成してしまったというのは、そういうことなのですね。
・いわゆる太空→ヤマ空
この回で突如として公式化し、ファンを当惑させたり激怒させたり呆れさせたりした事件です。
私の場合は当惑した部類に入るでしょうか。
なぜこういうことになったのか、結局くわしいことは定かとなっていません。
もっともこの問題の問題たるところは事の真相やどちらの組み合わせが望ましいかなどという話より、
制作側のほうで以前と別の方向へ形質を定め、しかも何の説明も必然性も必要性もなかったところにあるのだと思います。
無意味なばかりか、無駄に一定の視聴者を引かせるだけな結果を呼んでしまったんじゃないでしょうか?
何故かといえば、この手の話題は最初っから決まってるものでもない限り見てる方が勝手に想像するものだからです。
それを作ってる側で「勝手に」方向を決めるというのは、「余計なお世話」なのでしょう。
ファンにとってはその瞬間、楽しみのひとつを奪われるといってもかまわないのですから。
「萌えの力は萌えにあらず、心にあり」ってところでしょうか。
とまあいろいろ書いてきましたが、何故ああなったのか一定の想像はしています。
たぶん、太一と空の間柄は何も変わっていません。小学生のときのまま、何も変わっていないのです。
でもそれは結局子供どうしの感情で、男女の感情ではなかった。翻って空とヤマトの間柄は言わば男女の、
異性同士の間柄になりえた。空としても、ヤマトのほうが世話が焼けるぶん愛情の注ぎがいがあるのかもしれません。
太一としては変わらず空のことが好きだけれど、それは子供としての気持ちであって、
でもそれでいてちょっと寂しいような、甘酸っぱい感慨があったりして……
まあアレです。どんだけ不自然な状況にあっても、想像を呼べるだけの力があるキャラなんですよね、三人とも。
★名(迷)セリフ
「もちろんだよ! ぼくの方こそ、招待してくれてうれしいよ」(タケル)
賢からクリスマスカードを受け取るときのセリフ。
なぜか胡散くさく聞こえないこともないんですが、タケルとしてはそんなつもりなどなく、
せっかく賢が光を見出しはじめているのだから手助けをしていきたい意図があるだけなのだと思います。
裏に計算が見えるのだとしたら、それは大人の行動だからなのですよ。たぶん。
「ありがとう。ぜひ、行かせていただきます」(伊織)
同じく、クリスマスカードを受け取りながら。
こっちは上ほど愛想よくありませんが、彼が今できる中では最大限に誠実なものでしょう。
37話から期間があいているのだとすれば結構長くいっしょにやってきているはずなので、その間に自然と
伊織の感情もやわらいでいったと考えていいはずです。
賢ちゃんもこの言葉をもって、ようやく選ばれし子供の仲間入りを果たしたといえるのかもしれません。
ここから先はまた別の苦しみが待ち受けているのですが。
「がんばれよ…空…」(太一)
子供どうしの自然なつきあいから進み出、異性としてヤマトを選んだ空へ。
思うところあったでしょうが、そういう関係になるには仲が良すぎて思いもよらなかったのかもしれません。
でも空は太一みたいな男の子がわざわざプレゼントを贈ったぐらいの相手ですから、ただの幼馴染みじゃありますまい。
まんまの関係で延長していても自然だったかもしれず、その場合はほとんど話題にならなかったでしょう。
だから今回のことが、さまざまな意味で話のネタになったことだけは確かだと思います。
「くそっ、よくもコンテストを!」(ヤマト)
そういう問題じゃねーとツッコミを入れたくなりますが、彼にとっては晴れの舞台。
悪態のひとつもつきたくなるでしょうね。
「そうか? オレは、あんまりわかんねーけどなぁ…」(大輔)
「お前ってやつはさぁ…… いや、それがかえっていいのかもな」(太一)
賢が変わってきた、という話題についての大輔のコメントと、それについての太一のコメントです。
相手の変化がわからないほど鈍感だと言っているわけではなくて、むしろその逆。
つまり大輔には最初から賢の本質がわかっていて、他の人があとから気付いただけなのでしょう。
ただ本人には「わかっていた」ということ自体にあんまり自覚がなくて、でもそれがたぶん大輔らしさなのです。
すぐ後に流れるそれぞれの聖夜は、とても微笑ましい光景ばかりでした。太一などは小学生に戻ったかのようですね。
トコモンのアクビが怖い。
★次回予告
ついにインペリアルドラモンの登場です。
意外に強かったトリケラモンのほうが印象的だったのは秘密。