全員集合! インペリアルドラモン |
脚本:前川淳 演出:角銅博之 作画監督:出口としお |
その賢は暴走するトリケラモンを止めようとしていましたが、アルケニモンたちの影響で進化できません。
駆けつけた大輔の活躍でジョグレス進化が可能になるものの、堅固な体と怪力を備えるトリケラモンは強敵でした。
さらにマミーモンの乱入によって、パイルドラモンは孤立無援の挟み撃ちに遭ってしまいます。
そのころ、京や太一たち十組の前に若々しい姿のゲンナイが現れていました。
彼がチンロンモンから託された玉にデジヴァイスの輝きがあわせられたとき、強烈な光が天空を駆け抜けます。
それを受けたパイルドラモンは究極体に進化! ついにインペリアルドラモンが登場しました。
またたくまにトリケラモンを退け、さらに日本じゅうのダークタワー破壊とデジモン送還をもやってのける皇帝龍。
圧倒的スピードで太一たちとの合流が果たされ、かくて世界じゅうの仲間と力を合わせるため、
選ばれし子供たちは海を飛び越えての大冒険に出発することになるのでした。
しかしその間に、日本ではアルケニモンたちによって新たな画策がめぐらされていたのです……
★全体印象
39話です。タイトルコールは「全員集合!」までがメイン全員で、「インペリアルドラモン」が
野田順子さん(エクスブイモン)と高橋直純さん(スティングモン)。
影絵も当然のように皇帝龍です。
今回も出てくる人数は多いのですが、まともな出番があるメンバーは限られています。
また前話からの完全な続きでもあるため、いきなり起承転結の転から始まっているような展開ですね。
これについては本放送時、二本立てだったこととも無関係ではないものと思われます。
さて前回の予告ではああ書きましたが、やはり皇帝龍の圧倒的な強さは心に残りますね。
くわしい語りは後にまわしますが、なんというかもうデタラメの域に達しています。
デジアド世界における究極体がどれほど他を圧する存在であるか、あらためて見せ付けてくれました。
たぶん前に見たときは連続で視聴したぶん、印象が薄くなっていたのでしょう。
その一方で明かされたのが選ばれし子供らの世界ネットワークと、裏に関わっていたゲンナイさんの存在。
三年前の件を契機に、世界じゅうで増えつづけていたようです。わかっていたつもりなんですが、凄い人数だ。
なんだかんだで、ホメオスタシス側もちゃんと策は講じていたのだなと思わされますね。
ひとりひとりは弱い力でも、その絆の輝きを束ねればとてつもない事ができてしまうのですから。兄貴、戦いは数だよ。
作画担当は出口氏。なのでところどころデグってますが、一人原画ではないので戦闘などの出来は良さげです。
さすがに終盤のフラッグシップ登場回とあって、スタッフも力を入れたのでしょう。
以上のように、皇帝龍の力と裏話の披露を楽しむお話となっています。
★各キャラ&みどころ
・大輔
あらすじで書いたとおり、一時のあいだだけ単独行動を取っています。
仲間と動くのが基本といってもいい彼としては、きわめて珍しいパターンと言えるかもしれません。
ほかに該当ケースを挙げるとしたら8話ぐらいでしょうか。奇しくも両方賢がらみですね。形はぜんぜん違いますが。
最大のポイントはこの状況下でもまずは賢を案じる友情と、それを皆に告げて独りでも助けにいく勇気。
ここは見逃しちゃいけないところです。じっさいに駆けつけてから後には、皇帝龍に隠れて特筆点がないんですけどね。
やっぱり彼の良さというのは、視聴してる私たちのほうで判断してあげなきゃいけないものなのかもしれません。
インペリアルドラモンの巨大な力を純粋に凄いと賞賛し、それを大勢のために役立てようと自然に思える
そんな大輔だからこそ賢を仲間に引き込めたし、皇帝龍のパワーを使いこなせたのでしょうから。
でも君はきっと「オレじゃなくて、オレたちの進化なんだぜ」と答えるのでしょうね。
・賢
そういえばメインの中では一人だけお台場じゃなく、田町在住なんですよね。地理的に孤立してます。
アルケニモンたちが田町にダークタワーをおっ建て、姿を現したのもそこを熟知しているからでしょう。
この機会にあわよくば賢を始末……いや、とっ捕まえるつもりだった可能性もあります。
さらに言えば、現役組の中じゃひとりだけアーマー進化ができないメンバーなんですよね。
ドラマCDで紋章が優しさのデジメンタルに変化したりしてますが、本編ではそんなことありませんし。
だからこういう状況に陥ったとき、一番やばいのが彼なんです。大輔の判断は正しいといえましょう。
そんなわけで、またまた大輔に借りができたお話なのです。
大輔に言わせれば「貸すとか借りるとか、そーゆー話じゃねーと思うんだけどなあ」ってところでしょうけど。
・他の選ばれし子供たち
基本的に突っ立ってるだけです。リアクションはおもに02組ですね。
そんな中にあってひとり空気を読まぬまでに目立っているのが光子郎。こういうお話となるともう誰もかないません。
伊織も知識持ちらしくゲンナイさんを質問ぜめにしたりしてたものの、光子郎にはとうてい及びませんでした。
さすがはデジモン界きっての博識兼解説者です。対抗できるのはトーマ・H・ノルシュタインただ一人でしょう。
・デジモンたち
ブイモンとワームモンを除いて基本的に見てるだけですが、チンロンモンの玉の光を全員が浴びることにより、
完全体進化がしやすくなりました。一時的に大きな戦力アップがなされたことになります。
ブイモンたちが現実世界で幼年期にもどらなくなったのもその影響で、実際にそういう言及もありました。
このおかげで、久々に01組の完全体も登場可能になっています。終盤へむけてのサービスですね。
久々に画面を飾るリリモンやアトラーカブテリモンたちの勇姿に、心を躍らせた視聴者もいたことでしょう。
まあ43話であっさり進化不能にされるんですが。
・インペリアルドラモン
とうとう登場した02唯一のジョグレス究極体。
オメガモンとの違いは完全体の時点ですでにジョグレス済みという点で、それゆえか安定度はたかく見えますね。
実力的にも「ディア逆」を見るかぎり、オメガモンと互角のものがあるようです。
(むろん『ウォーゲーム』時のオメガモンは別格でしょうが……)
そんな力の持ち主ですから、完全体レベルではまったく相手になりません。
パイルドラモンでも梃子摺った強力のトリケラモンすら、片手で完全に押さえ込まれてしまっていました。
さらに得意技・ポジトロンレーザーの時点で日本全土をマルチロックオン&同時破壊できる広範囲射程を誇っており、
しかも30分たらずで世界一周できるスピードまで備えているのですから、もう力の次元が違いますね。
ちなみに世界一周の速度を25分と仮定してアバウトに計算すると、分速にして1600キロ。
秒速では26キロで、これはマッハ75前後に匹敵します。
……化けモンですね。どんな航空機も追いつけやしません。追いかけてる間に背中から煽られますわ。
そりゃ防護幕が必要にもなるってもんです。背中のあのバリアがないと、子供たちの体なんざ吹っ飛んでしまうでしょう。
同じようになんらかの力を全身へ纏わせることによって、空気抵抗を遮断しているものと思われます。
あの速度はおそらく、ドラゴンモードだからこそ出せるものなのでしょう。
ファイターモードはトップスピードを大きく落とす代わり、細かい軌道変更のきくまさに戦闘向きの体型。
状況に合わせて名はそのままに姿を変えるあり方は進化と呼ぶよりも、やはり能力と言ったほうが近いのかもしれません。
・光子郎ママ
ここへ来て妙に出番が多い人。ヤマトパパに並ぶ登板率です。
次点が奈津子さんなので、純粋な02組で目立ってる親御さんは賢ちゃんの両親と、あとは滑り込みで伊織関係だけですね。
大輔の両親なんかはびっくりするほど影が薄いです。ジュンもあんまり意味がなかったし。
・ゲンナイさん
若返った姿で登場しました。チンロンモン復活の影響でしょうか?
パソコンとパソコンの画面を合わせるという、あわせ鏡のような過程で出てきたのが興味深いところです。
インペリアルドラモンの登場を予測していたりなど、謎めいた言動が多いのも注目点。
彼らエージェントはデジモンの情報の改ざんや隠蔽、選ばれし子供らの世界ネットワークの構築など、
裏でかなり広範囲にわたる活躍をしていたようです(ひょっとしたら子供たちどうしは独自回線なのでしょうか?)。
まだ公とするには時期が早いという考えは、のちの作品にも通じるものがありますね。
それにしても平田さん、掛け持ち多すぎ。
・チンロンモン
デジコアの一つをゲンナイさんに預けるシーンで登場しました。セリフは無し。
見たところ、四聖獣はエージェントよりも上位の役職に収まっているようですね。あるいは秘めし光と希望のちから、
進化の輝きによるところもあるのかもしれませんが。
・アルケニモン&マミーモン
戦闘で子供たちを苦しめる場面はほぼこれが最後です。
皇帝龍が出てきてしまったらまったく歯が立たないので、暗躍に徹することとなりました。
そして、そっちの方がむしろ厄介な手合いなのです。鬼のいぬ間にさっそく企みをめぐらせていますね。
びびりまくりとはいえ、マミーモンの引き際はなかなか鮮やかと言わざるをえぬものがありました。
・及川悠紀夫
前半にちょっとだけ登場。くどいくらい黒幕アピールをしています。
この時点ではまだ貫録がありますね。
・トリケラモン
田町にあらわれた完全体デジモン。
自然生息の個体としてはほぼ最強クラスの能力を持っており、スパイキングフィニッシュもエクスレイザーも
まるっきり効果がありません。そういえばVテイマー01でも防御力をアピールしていましたっけ。
パイルドラモンとがっぷり四つになっても、その強力で逆に押し切る強さを持っています。
角でのカチ上げはパイルドラモンの巨体を空高く放り投げるほどのパワーがあり、おおいに梃子摺らせていました。
ここまで強い個体はダークタワーデジモンの中にさえなかなかいません。悪いタイミングで最悪の相手に当たったものです。
ただの暴走した迷いデジモンにすぎないため、思い切った攻撃ができないという弱みも裏目に出ました。
上記のようにアルケニモンたちの命令は聞かないのですが、マミーモンがうまく便乗することによって
さすがのパイルドラモンも思わぬ危機に陥っていました。一時は大輔たちにまで攻撃が及んでしまっています。
こういうケースはめったにないので、実はかなりやばい状況だったということがわかりますね。
まあ、そんな諸々も全部皇帝龍にひっくり返されたわけですが……
ありゃあ、マミーモンじゃなくてもそんなんありかって言っちゃいます。
・日本に現れたデジモンたち
トリケラモン以外では北海道札幌市時計台周辺にナイトモン、阿蘇郡阿蘇町にドリモゲモン、大阪市大阪城周辺に
ワルもんざえモンの姿が確認できます。演出はどれも怪獣映画チック。けっこう燃えるシーンですね。
そういえば、ようやくダークタワーデジモンじゃない純正のナイトモンが出てきたことになります。
世界じゅうにも大勢があらわれてますが、たいていは40話以降で相手取ることになるのでその時に紹介しましょう。
ちゃんと時差も表現されていて芸が細かい。
・ダークタワー
アルケニモンたちが近場にいなくても、そばに近づいただけで電子機器が狂うという機能がアピールされていました。
ハイテク兵器は役にたたないというわけです。
アナログに重機を使えば倒せないことはないと思うんですが、時間がかかりすぎますかね。
もっと厄介なデジモンたち自体が動く電子機器ジャマーみたいなもんですから、ダークタワー1本倒したところで
ぜんぜん根本的解決にはなりませんし……うーん、やはり現有資産ではダメか。
やはり、デジモンにはデジモンをぶつけるしかないってことですかね。
そこで子供たちとパートナーデジモンの存在が活きてくるわけですけど。
★名(迷)セリフ
「賢は、オレの大事な仲間なんです!」(大輔)
なんかさらっと流れてるように見えますが、かなり良いセリフ。
もっと積み重ねがあったほうが活きる言葉だとは思うんですが、大輔はそういうものが無くても
なんとなく本気だと思わせてしまうものを持っているのだと、そう感じられてなりません。
受け止めて行かせる太一の度量も光ったシーンです。
「わたしたちの開けるゲートはひとつのエリアにひとつだけだし、世界中に行くとなると、
とても時間がかかるわ……」(ヒカリ)
そうだったのか……前回でも、アメリカゆきのゲートを開くためにわざわざ隣のエリアへ行ってましたね。
直後にタケルが、やっぱりダークタワーをほっといたらヤバイみたいなことを言ってます。
たぶん01@39話のあの状態に近づいていくんでしょう。
「オレにはわかるんだ……ダークタワーの位置が!」(インペリアルドラモン)
ふむ。チンロンモンの玉の力を借りただけあり、反ダークタワーの力を持ってるってことなのでしょうか?
であれば、今回の事件にあたってこれほど頼もしい存在もないでしょう。
「へたにデジモンが公になれば、何に悪用されるかわからない……
私たちはそれとわからぬように、少しずつデジモンやデジタルワールドの存在を隠蔽するように、
データを組みかえていたのだ」(ゲンナイさん)
さいわい、デジアド世界では彼らのおかげでデジモンが悪用されるようなケースはありませんでしたね。
少なくとも、描かれている範囲の中では。
じっさいに悪用されればどういうことになるかは、後年のシリーズが教えてくれました。
ところでよく見ると、データ組換えのシーンではひとりひとりローブの色が細かく違っていたりします。
みんな同じ顔で同じ服装という事実は、こんなところで仕込まれていたんですね。
「気にすんな! 撮れなくていいんだ」(石田裕明)
上の人と同じ声優さん。
インペリアルドラモンにも、どうやら電子機器を狂わせる能力というか、特性があるようです。
あるいは進化段階がたかまるほど、その影響も大きくなるのかもしれません。
となると、未来においてはデジヴァイスのように、デジモンの影響を受けない機器へ
少しずつ置き換わっていったのでしょうね。でないと困りますもの。
なお今回の騒動からインペリアルドラモンが日本を飛び出すまでには、およそ三時間半ほどが経っていたようです。
思ったより時間がかかってますね。
「いつまでもぼやいてるんじゃないよ。次の指令さ」(アルケニモン)
着信音と、出た時の小指が微妙に隠れポイントです。鼻から牛乳。
及川とアルケニモンたちのつながりを容易に想像させるシーンですね。
さて。
★予告
ここから3回はいわゆる「世界篇」となります。
一番手となる40話は中国のポイ三兄弟や月紅、インドのミーナなど、一発キャラにしては印象的人物が多い回。
今から再視聴が楽しみです。