デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲
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脚本:吉田玲子 監督:今村隆寛 キャラクターデザイン:中鶴勝祥 総作画監督:中澤一登、亀井幹太 |
★あらすじ
かつてネットワーク上を荒らしまわった凶悪な新種デジモン、ディアボロモン。
激戦のすえ、オメガモンに退治されたはずのこの最悪の敵が復活した!
電子メールを利用する形で、クラモンたちが次から次へと現実世界へ実体化していきます。
大元を断つため太一とヤマトがオメガモンとともにネットワークへ乗り込みますが、それは敵の周到な罠でした。
マザーであるディアボロモンは討ったものの、京が救援のために開いたゲートから無数のクラモンたちが東京に現れ出てしまいます。
さらに合体を遂げ、未知の究極体・アーマゲモンへと進化したではありませんか。
そこへネットワークから脱出してきた太一たちが到着。お台場にてオメガモン対アーマゲモンの一騎打ちがはじまります。
しかし、恐るべき強さを誇るアーマゲモンの前にはさしもの聖騎士も歯が立たず、ついに倒れてしまいました。愕然となる子供たち。
遅れて到着した大輔と賢がインペリアルドラモンを繰り出すも、やはり太刀打ちできません。もはや止められる者はいないのか。
そのとき、倒れたオメガモンが力を振り絞って一振りの剣・オメガブレードを作り出しました。
これを手にして新たな力を得たインペリアルドラモン・パラディンモードの一撃で、アーマゲモンは分解されます。
が、その欠片はすべてクラモンたち。このままではまた取り逃がしてしまう──
最後の決め手は、伊織の機転でした。
その場に集まった大勢の人々の携帯電話が光を発し、クラモン一体一体を封じ込めてゆきます。
かくて最大最強の敵は、今度こそ本当に根絶されたのでした。
そして、子供たちに新しい春が始まる──
★全体印象
タイトルからわかる通り「ぼくらのウォーゲーム!」の正統な後継作です。
デジモン映画でここまでハッキリした続編は他にありません。それだけ、ウォーゲームの存在が大きかっということでしょう。
かくいう私もあのウォーゲームの続きということで不安な一方、喜んだ記憶があります。
かような事情から、この映画の雰囲気はウォーゲームのそれを忠実に取り入れたものとなっていました。
TVシリーズきっての名演出家・今村隆寛氏による丁寧な仕上げは、私のようなファンをおおいに興奮させてくれます。
また独自の要素として現実世界での戦闘があり、お台場の空を縦横にかけめぐるオメガモンを見られるのはこの作品だけ。
怪獣的なアーマゲモンとのコントラストも相まって、後半10分は目を離すことすら難しいでしょう。
オメガモンの敗北は残念ではありますが、それはこの映画の欠点とはいえません。
02のテーマや作品のタイトルを鑑みれば、ああなるのは必然。見る前から、たいていの方が覚悟していたはずです。
それにオメガモンに「勝てる」のは、直接の因縁を持つディアボロモンに連なるものぐらいですからね。
なまじな相手に負けるよりは良かったんじゃないでしょうか。
もちろんああした形を取らず、02メンバー中心でお話を進める手もあったはずです。
それをあえて行い、さらに尺を無視してまでオールスターを展開させたのは、この作品をもって「デジモンアドベンチャー」
の締めくくりとしようという、言わばスタッフのケジメではないかと思います。
オメガモンを継ぐものの出現は未来への展望と、そして物語の終焉を意味するものですから。
作画もおおむねウォーゲームのノリを踏襲したものですが、今回の作監は山下氏ではありません。
かわりに起用されたふたりのうち、メインと思われる中澤一登氏は「明日のナージャ」や「サムライチャンプルー」、
さらには「キル・ビル」など、個性と腕をあわせもったベテランアニメーターです。
珍しいところでは「テイルズオブレジェンディア」のキャラクターデザインなどもやってました。
氏本来の絵柄はシンプル且つぱっと見でそれとわかりやすいもので、本作でもその色はよく出ています。
ウォーゲームを意識しつつも、ひと味違うものが加えられているといったところでしょう。
とまあ、豪華に仕上がった集大成的作品なんですが、欠点もあります。
そう、他ならぬ「ウォーゲームへの意識」が足を引っ張っているんですね。
まるっきり同じカットを使っているところまであって、3年の時の流れを無視しています。これは拙い。
ほとんどはモブなんですけど、なまじ印象的だっただけにそれで判ってしまうんですよね。狙ってのことかもしれないけど。
また尺の都合なのか、時たま何が起こってるのかよくわからないシーンがありました。
クラモンたちがお台場に集まる経緯あたりは特にわかりづらいでしょう。その手段も何か中途半端に荒唐無稽で、
リアリティと大嘘が絶妙にブレンドされた前作からすると穴が目立つかもしれません。
とはいえ、これらは結局「ウォーゲーム」を基準に考えてのこと。
なまじっか似ているがゆえに、些細なことが気になってしまうというだけのことだと思います。
単体で見たら流してしまいそうですよ。
賛否両論わかれた要素もあります。
世界中の人々がネットを介して参加していた前作の戦いと違い、今回は大勢の人々が実際にお台場に集まり、戦いを見守るのですが、
それにとどまらず大輔と賢の声にこたえ、道を空けるシーンまでありました。ここに違和感を持った人が多いようなのです。
つまりネット世界から現実世界への発展と、デジタルワールドの認知の広がりを意味しているのでしょうけど、
だからこそ「ウォーゲーム」ではまずやらないであろう場面でもあったわけで。
結論をいうと、本作は「ウォーゲーム」の演出論を使ったまったく別種の映画ということなのだと思います。
むしろ、ずっとTV版に近い。にもかかわらず「ウォーゲーム」を思いっきり意識しているわけですから、そっから話がおかしくなってくる。
だからいっそ、全部別モノにしてしまうのも手だったはずです。
それをしなかったのはわれわれ視聴者がタイトルから何を期待して見に来ているか、制作側がいちばん承知しているからでしょう。
別種の方法論を使ったらもっといろいろ言われたかもしれないし、私としてはアレで正解だったと思いますね。
ディアボロモンの逆襲なんてタイトルでさえなければ、最初っから起こりえない問題なのですけど。
ちなみにこの映画はワンピースとの同時上映とはいえ、なんと30億もの興収をたたきだしていたりします。
これはデジモン映画史上最高の数字。ウォーゲームの評判がネットなどを介し、人々に広まったおかげもあるのでしょうね。
はからずも本編の流れに似たことが起こったわけか。
02の年は関連売上自体も144億を計上しており、これは同年の仮面ライダークウガをも凌ぐ数字です。
01のときはもっと凄かったので、デジモンというジャンルは瞬間風速で勝負する市場なのかもしれません。
このへんはいかにもバンダイらしいというところです。チャンスだと判断されれば、また台頭してくるでしょう。きっと。
★各キャラ&みどころ
・大輔
あらためて見るとさすが主役だけあって、全編で目立ちまくりです。
その半分以上がズッコケと空回りというのも、ある意味彼らしいといえるかもしれません。
でも考えてみたら、ピンチ要因の大半は彼の行動にあったような気がしてきてしまいます。
あせった彼が京にゲートを開かせなかったら、クラモンを大量に呼び込むような事態は避けられたかもしれないわけですし。
おまけに交通まひの最中パートナーとはぐれてしまい、走ってお台場に向かわねばならなくなって到着の遅れを招いている。
そのうえ結局ネット世界での戦いは大輔が行かなくても何とかなっちゃってるので、とんだ空回りです。
まあ、それを言ったらいっしょにいた賢や、ゲートを開きすぎた京にも責任はあるんですが。
それにブイモンたちと一緒でさえあれば、インペリアルドラモンに乗ってずっと早くたどり着けたはず。
ですから、そのへんはクラモンたちの分断作戦が功を奏したと言うべきなのかもしれません。
ブイモンたちのほうが群れに巻き込まれただけと取れなくもありませんけど。
それでも最後に事態を打開したひとつの決め手は、彼のド根性でした。大輔にはこの表現がよく似合う。
ここぞという時ほど頼れる男ですからね。
本作の大輔はキャラデザインと声のせいか「明日のナージャ」のケンノスケに通じるイメージがあります。
あるいは6、ケンノスケのほうがこの造形をいくばくかでも意識した人物なのかもしれません。
・賢
映画初登場。夏の映画には出てないので、これが唯一の劇場版出演となります。
本編での出ずっぱりぶりから比べると、意外なぐらい地味。映画に出ることさえできなかった輝一よりはマシですけど。
それ言ったらイクトや、出てんのにワンカットしか登場しなかったトーマや淑乃なんてどうすんのって話ですが。
本編中はずっと大輔と行動していました。
ですから本来、彼の役目は大輔のストッパーのはずです。実際、そういう場面もありました。
けれど彼の場合、最終的には大輔の行動力に負けてつきあってしまうところがあるんですよね。
といって強く出るのも彼のイメージじゃないというか……
そのかわり、不意に骨っぽいことを言い出して大輔を鼓舞することもありました。
なんだかんだ言っても、たがいに気の置けない間柄になりつつあるのでしょう。まだまだ成長途上ですから。
彼には、ああして軽口をたたける親友こそが必要だったのでしょうね。
及川悠紀夫と火田浩樹がそうだったように。
現状の彼は、大輔とともに行動する事で勇気を得、困難に向かって行く立ち位置なのだと思います。
今はきっと、それでいいのでしょう。
・京
ある意味で劇中の誰よりも超人。
ノートパソコンからの遠隔操作でデジタルゲートを開きまくるわ、渋谷の電光掲示板に割り込んでクラモンたちを誘導するわ、
どんだけスーパーハカーなのよって感じです。一体何をどうしたらそんなことができるんだ。
中途半端に荒唐無稽と言ったのはまさにこのあたりですね。
作品の評価を下げる、とまではいえないと思いますが、なんというか説明しづらい違和感が拭えません。
ウォーゲームを見た人であれば、いくばくかでもニュアンスを感じとっていただけるでしょうか?
これがセイバーズなら作風も違うし、トーマじゃしょうがないとかなんとかムリヤリ納得できたかもしれないんですが。
とまあ、役割的には完全にサポート要員でした。
相手が相手だからしょーがないですね。ヒカリからも離れてたし、完全に究極体前提の作戦だったのだと思います。
・伊織
前半はタケルと、後半は京とお台場で合流して事態を見守る立場でした。
こういう場面で発揮できる得意分野が少ないので、本当にただ見てるだけ。現役組ではいちばん地味な役どころです。
と見せかけて、最後の最後に大きな見せ場がありました。
お台場に集まった大勢の携帯電話を使い、クラモン一体一体を封じ込める作戦を思いついたのは他ならぬ伊織です。
この機転には光子郎も感心するほどで、いわば伊織の知恵がクラモンたち=アーマゲモンに引導を渡したといっていいでしょう。
このファクターは当然、前作でディアボロモンの動きを封じた光子郎のひらめきに通じる要素。
次代への継承というテーマと、前作パターン踏襲のあわせ技というわけですね。
ただ彼のこの作戦も、ウォーゲームでのそれに比べたらわかりづらいんですが……詳細はのちほどに。
・タケル
中盤からネット世界に入って太一たちと合流し、ディアボロモンと戦う役どころでした。
ヒカリ組とコンビで大いにサポートを勤め、オメガモンの攻撃チャンスを作っています。密かにリベンジ達成か。
前作では一矢むくいることすらできずに途中退場でしたからね。
後半ではいつのまにかいなくなっており、気がつくと作戦本部でもある光子郎のところにいました。
よく考えてみたらえらいワープぶりです。途中ではぐれるか別れてああなったと考えるしかなさそうな。
と、戦闘でも出番があったんですが今回はやっぱり「兄さん」でしょうかね。
さりげなーく言ってるんですが、それでも相当のインパクトがありました。どういう心境の変化なのか。
服装は着たきりスズメだった夏映画と異なり、これまたウォーゲーム時代を思わせるシンプルなもの。
上着が黄色でインナーが緑と、色だけは彼らしく纏められていました。
・ヒカリ
基本的行動パターンはタケルと同じです。
前半でどことなく不安げだったのは、オメガモンの敗北を予見していたのでしょうか?
そんな設定がないのに予知能力者めいて見えるのは、彼女の神秘的な雰囲気がそう連想させるのかもしれません。
服装は大きめの青い上着にスカートと、けっこう珍しいパターンです。
特にスカートは意外なようですが、ウォーゲームでのよそ行きぐらいでしか履いたことがありません。
彼女も少しずつ自分を受け入れ、女性として第一歩を踏み出そうとしているのかもしれませんね。
などと履き物ひとつでアレな深読みをしてしまうのは私の業みたいなもんです。
流していただけると幸いです。
・太一
インペリアルドラモン登場までは、まさに完全無欠のヒーローでした。
あの大輔でさえ、彼になだめられたら大人しく引き下がるしかありません。先輩の鑑ですな。
しかし先達であるほど、完全無欠であるほど逆説的に敗北フラグが立っているということ。
彼がフツーの中学生にもどったのは、そうして地にまみれた後のことでした。あとはただ、次代の戦いを見守るだけです。
あの瞬間、ヒーローの役割は大輔たちに引き継がれたのでしょう。
空の登場が何かこう象徴めいて見えてしまうのは、私だけだったのかどうか。
それでも、やっぱりオメガモン敗北はさぞ悔しかったろうと思いますよ。
あの大事件で当事者をつとめた彼やヤマトにとり、オメガモンという存在がどれだけ大きなものだったことか。
オメガモンなら、どんな敵があらわれても絶対に勝てる。そう信じていたとしても、誰が責められるでしょう。
だから言ってあげたいと思います。今回の勝利は、選ばれし子供たちみんなの勝利なのだと。
というわけで、実はヒーローしてる間はあんまり書くことがなかったりします。
いろいろとブレまくりだった前作とは何かえらい違いですね。それだけ成長したってことなんでしょう。
加えて02に入ってからの先輩属性がありますから、よけいに完璧超人化が進んでいたように思われます。
・ヤマト
太一の相方をほぼ完璧につとめあげていました。
加えて弟たちとの息もピッタリで、物語中における成長度数がマックスに達していることがよくわかります。
なにしろ今回の彼はかっこいいところしかありません。負けてうなだれてる場面ですらかっこいい。
ここへ来て、ぐっと男前になりましたね。
空との関係はここでも示唆されています。ある意味でウォーゲームとの最大の違い。
セリフからみて、空の動向をいちばん把握しているのもおそらくこのヤマトではないかと思われますね。
太一のコメントが取り立ててなにもないあたり、もう彼らと彼女の間ではとっくに決着がついた問題なのでしょう。
それがいつ、どのようにしてつけられたのか、想像の余地がある……
想像したくなるような人物がいたからこそ、今でもデジアドは多くの人々に愛されているのだと思います。
ところで右手に填めてる指環が気になってしょうがありません。バンドメンの嗜みなのか。
・空
十二人の中ではもっとも遅い到着。
たぶん、合宿の真っ最中に何とかごまかしてあわてて帰ってきたのでしょう。
津南町といえば新潟県、日本海側ですから、そう簡単には戻ってこれなかったでしょうけど。
そもそもピヨモンがいないし、本当にただ来ただけって感じです。
でも、打ちひしがれる太一たちを激励するように姿を現すあのシーンは妙なインパクトがあるんですよね。
本来のおふくろさんな側面が強く出ているとともに、それでも以前とは何かが違う雰囲気があるというか。
あの微妙な空気は、もはや彼女たちが無邪気な子供ではないということを示しているように感じます。
中三といえば、自分で歩む道を決められる年頃。そう、先輩組はもう大人になろうとしているのです。
だからこそのヤマ空なのかもしれません。
ところが、風にあおられた彼女が思わず縋り付いたのは太一のほう。
これ自体に他意はいっさい無いと思いますけど、エンディングといいドリカム状態を演出してます。
それが充分ドラマになるのも、この三人なんでしょう。
・光子郎
前作に続いて全編目立ってます。序盤の教室でのやり取りはまるで総司令官のようでした。
これは比喩でもなんでもなく、実際にそういう役割だったと思います。
TV版といい、OB組では群を抜いた働きですね。総合的には太一でもまるで歯が立たない。
後輩に譲る気なんてありませんとでも言わんばかりです。
では上で書いた意見に逆行し、彼がいつまでたっても子供のままなのかといえば、そうでもない。
ただ、やりたいこととして選んでるのがたまたまデジモンがらみだった。それだけのことだと思いますね。
そして彼の立っているのは、たとえパートナーが充分な進化をできなくても確実に仲間をサポートでき、
さらに物語的にも必要以上には大輔たちの邪魔をせずにすむ理想的なポジション。
だから、脚本の面々も遠慮なく光子郎に出番をあげることができたのではないでしょうか。
が、そんな彼もオメガモンが敗れたことにショックを受け、茫然自失に陥る描写がありました。
ウォーゲームで最後の決め手になったものが何だったか思い出すと、彼もまた敗北したのだといえます。
ですがそれゆえに、02組の奮戦と機転がテーマとして際立つのでしょう。
最終的に知恵を出したのは、光子郎の心の特性を受け継いだ伊織だったのですから。
・ミミ
空と並んで遅い到着です。アメリカ在住なんで、こればっかりはしょうがない。
彼女のスーパーパワーに後輩たちが食われないようにするためには、そこまでして遠ざけないといけなかったのです。
6話も14話も、8割がた見てるだけだった25話でさえあれほどの存在感を示したミミですよ。
いきなり海外に行っちゃったのは強引でしたけど、言うなれば苦肉の策ってやつだったと思いますね。
物理的な距離でもなきゃ、彼女が空気を読むとも思えません。読めないんじゃなくて読まないのがミミなんで。
そんな彼女が真っ先にやってきたのは、なぜか光子郎のいた学校。まずここに来るよう言われてたのかな?
さておき、この時の会話が何かやけに親しげだったので喜んだ光ミミ派がいたとかいないとか。
光子郎の妙に慣れ切った受け答えといい、対するミミのおどけ気味な膨れっ面といい、なかなかいい絵面なのは確か。
この二人ってタイプが違うだけに、やり取りが小気味いいんですよね。
ところで本作においてベストドレッサーにもっとも近いのは、このミミだと思います。私服がすっごく可愛くまとまってる。
いつのまにか髪染めはやめたみたいですね。ちょっと流行りに乗っかってみただけかな?
・丈
またまた受験期に大事件へ巻き込まれました。
でも試験自体はもう済んでたみたいなんで、まだマシなほうでしょう。とりあえず、慶早高合格おめでとう。
後半ではどうやって居場所を知ったのか、大輔たちと合流して自転車を渡す役をつとめました。
ここまでして全員をお話にからませるあたり本当に総力戦というか、何が何でもオールスターキャストで締めるのだという
スタッフの執念にも似たものを感じさせられます。
このへんも、ある意味ドライに割り切ったウォーゲームとは違う熱血な手法かもしれません。
ところで、自転車を借りた通りすがりの娘さんとのその後が気になります。いつのまにか並んで朝日を見上げてましたっけ。
あ、自転車はとりあえずちゃんと返したみたいですね。
・デジモンたち
後述のオメガモンとインペリアルドラモンを除くと、出戦したのは天使組だけ。
01組のパートナーのうちピヨモン、パルモン、ゴマモンは出演自体していません。ラストカットの一枚絵に出てくるだけです。
ポロモンとウパモンについては、途中から成長期に進化しています。少しでも早く現場に着くためかな?
ホルスモンかアクィラモンなら空を飛べるし、どっかの段階でそこまで進化した可能性もありますね。
エンジェモンとエンジェウーモンの活躍場面はネット世界のみ。
そこでの二体はなぜか明らかに巨大化しており、タケルとヒカリを肩に乗っけて行動できるほどでした。
TV版では三年前のふたりでさえ背中まるごと使わなきゃ乗せられなかったし、エンジェウーモンに至っては女性型だけあって
ヒカリが全身を使えばなんとか受け止められる程度の体重しかなかったのに、この映画でそんなことをしたら
完全にヒカリのほうが潰れてしまいそうです。いったいなぜこんなにでかいんでしょうか。
……まあ恐らく単純に、あの不安定そうな空間でパートナーと離れて戦うという演出上の支障を考慮しての変更なのでしょうね。
あとはあそこがネット空間なので、デジモンである二体ならある程度任意で大きさを変えられるのかもしれません。
ネット空間といいつつ半分以上デジタルワールドになってる感じで、そこにも何かしら違和感をおぼえるのですけど。
・オメガモン
言っちゃあなんですが、負けるために出て来た人です。
ただし、活躍時間そのものはインペリアルドラモンよりも圧倒的に上。ついでに言うとかっこよさでも負けてません。
言うなれば「マジンガーZ対暗黒大将軍」みたいな状態だったといえましょう。
ただ、後輩のインペリアルドラモンがどのくらい強いのか実はよくわからなかったりします。
なんせ今回使った技がメガデスなのか、それともギガデスなのかすらわからないぐらいの曖昧さ。
(出し惜しみするとも思えないし、たぶんギガデスなんじゃないかと思いますけど)
そもそも今作はオメガモン自体、明らかに弱体化してるんですよね。
特に著しいのがガルルキャノン。前作では一発で千単位のディアボロモンを粉砕したほどの圧倒的火力だったのに、
今作ではクラモンがちょっと壁を作った程度で相殺されてしまうレベルの威力しかありません。
ディアボロモンを倒すときだって、至近距離から十数発も叩き込んでやっと、という具合でしたし。
演出として単体で見ればかっこよかったんですが、戦い方としてはむしろオメガモンらしくないとすら感じます。
あれが全力みたいに見えてしまって、何かこう酷く拍子抜けした記憶がありますね。
そのためか「アレはあのときのオメガモンとは違う」「みんなの願いがこもった進化ではなかったから」などなど、
擁護するような意見が山みたいに見られました。どうやら考える事は皆いっしょみたいです。
実際、三年前と明らかに違う経緯を経てるんですよね。だって、デジヴァイスで直接進化してるんですもの。
今作のオメガモンは種として定着し、デジヴァイスで進化できるようになった言わば「制式採用版」だと思います。
そう、あのあまりにも巨大なパワーを制御するため、既存の枠にみずからを当てはめた姿だったのでしょう。
新たなる規格外ともいえるアーマゲモンに、それでは勝てるはずがなかったのです。
それでもなお、戦場を舞うオメガモンは華麗でした。
逆さ姿勢の上空から一発、また一発と宙返りしつつ撃ち込むガルルキャノンの描写やグレイソードを携えての突進、
そして大口を開けたアーマゲモンの体内への無慈悲なまでに徹底的な射撃と、どれをとっても絵になりました。
相手がアーマゲモンでさえなければ勝てたことでしょう。
最終的にはジョグレスを維持できずに本体から両腕が剥がれ落ちてしまい、戦闘不能となります。
場に残った白い本体は変質してオメガブレードとなり、インペリアルドラモンへと託されることになりました。
ここから、アグモンとガブモンが腕にしか宿っていない(というか腕そのもの)ということがわかりますね。
しかしそれにしても、いったいどうやって進化できるようになったのでしょう。
描写からみて、普通の進化とも言い切れない感じでしたが……いつ可能になったのかな。
今回の事件にあたって牧野さん……じゃなかった、ゲンナイさんとチンロンモンが頑張ってくれたんでしょうか。
・インペリアルドラモン
オメガモンの力を受け継ぐもの。
別の設定では件のオメガブレードと卵と鶏みたいな関係になりつつありますが、本作では見たまんま解釈します。
とはいえ、ハッキリ言って出番はあまりありません。
パラディンモードになってからやった具体的行動といえば、アーマゲモンに一回剣をぶっ刺したことぐらいです。
むしろ前述のギガデス?のほうが派手なぶん、見せ場としては記憶に残るかもしれません。
一応本作の目玉なのに、ある意味噛ませ役のはずのオメガモンに食われてるような気がしないでもありません……ね。
でもさすがに劇場版、かっこいいです。
煙の中からファイターモードになって飛び出してくる場面なんて最高。本編でも作画さえ良ければきっとこうなんですよ。
というか、こんなのと引き分けたブラックウォーグレイモンって一体。
それを瞬殺したベリアルヴァンデモンが、何かやけに強く思えてきましたよ。嘘みたいな話だ。
・オメガブレード
オメガモンが自らの体からつくりだした剣。
これを手にしたことにより、インペリアルドラモンはパラディンモードに変化を果たしました。
ほかのデジモンでも同じような現象が発生するかどうかは不明です。ロイヤルナイツかそれに近い種ならOK?
シャイングレイモンパラディンモード……は、ちょっと見てみたいかもしれない。
さて、本作では剣であると同時にプログラムであるというのが私の解釈です。
アレ一本がまるごと対アーマゲモンのためのワクチンみたいなもので、それを注射みたいな形で打ち込んだ結果、
アーマゲモンの進化を解除して元のクラモンに戻す効果があった。そんな感じです。
言うなればこの剣は、オメガモンが体を張って収集した対症データの塊だったということができます。
あれだけ攻撃しても全くダメージを受けていなかったアーマゲモンがたった一撃で分解されたところからみても、
強制的に進化を解除する力があったとしか思えないのです。
つまりあれは物理的な威力ではなく、剣そのものの特性による現象だったんじゃないでしょうか。
ただし、本来の目的は違っていた可能性もあるんですよね。
もしかしたら単純に「アーマゲモンを体組織ごと分解する」効能だったのかもしれません。
それがなぜクラモンに戻るだけだったのかは、アーマゲモンの項で語ることにするとしましょう。
・ディアボロモン
去年春に引き続いての登板。3年の間に、物語の中でもこの名で呼ばれるようになったみたいですね。
長いデジモン映画史の中でも、2回ボスを張ったのはこいつぐらいのものです。さすがはオメガモンの仇敵。
ただし本命のボスキャラじゃないことは、事前情報を得ている方ならご存知だったはず。
今回の役目は、いわばオメガモンの力をはかることだったものと思われます。
言葉はほとんど発さないけれど知能はたかいであろう奴のこと、ただ復活したとしてもまたオメガモンに倒されるだけ、
それは自身がいちばんよくわかっていたはず。ゆえにこその増殖能力なのでしょう。
オメガモンとの戦いで受けた攻撃からデータを取り、それを子供ともいえる無数のクラモンたちに伝えて人間界に放ち、
まったく新しい進化をさせる。オメガモンを倒せる天敵を作り出す進化を。
それこそが、ディアボロモンの真の狙いだったのです。はじめから、勝って生き延びるつもりなど毛頭なかった。
恐るべき執念ではありませんか。みずからを捨て石にしてまで、強い次世代を作ろうというのですから。
そう、アレは執念です。プリミティブな本能とは似て非なるものだと私は思います。
言い換えれば、みずからを一度は葬ったものへの明確な敵愾心ととらえることもできるでしょう。
ですがそれによって、失ったものもあります。くわしくは次で。
・アーマゲモン
現実世界にあらわれた無数のクラモンたちが融合し、あらわれた究極体です。
ディアボロモンの幼年期から進化したはずなのですが、当のディアボロモンとは目と角以外ほとんど共通点がありません。
体を支える以外の役割を放棄したかのような六本の手足といい、口だけが砲台のように巨大な頭といい、
ただただひたすらに攻撃のためのみの進化を遂げた、文字通りの怪物といえるでしょう。
その戦闘能力は常軌を逸するものです。
オメガモンが何発剣や砲を打ち込んでも、インペリアルドラモンが必殺の一撃を打ち込んでも、まるで無傷でした。
攻撃に回れば、一発か二発の直撃で両者をほぼ戦闘不能に追い込む凄まじい破壊力を発揮しています。
まさにアルティメットフレア、究極の爆光にふさわしい一撃ではありませんか。
ですがいかにこのデジモンが強いといっても、あれだけの攻撃を受けて無傷だなんてことがありえるのでしょうか?
その秘密は体組織にあると私は見ています。
アーマゲモンの体は無数のクラモンが融合してできたもの。いわば、細胞のひとつひとつがクラモンであるとさえ言えます。
それらが攻撃を受けるたびにみずから破裂して衝撃を相殺し、そして瞬時に次のクラモンがそこへ収まって置き換わる。
そうして泡のように後からあとから復元してゆくことで、たとえ全身を焼かれてもダメージをシャットアウトしてしまう──
そんな能力が、あの柔軟な体に秘められていたんじゃないでしょうか。
究極体の姿ならディアロボモンから受け継いだ増殖能力を使える可能性があるので、充分可能な防御法でしょう。
つまり効いていないのではなく、
あまりにも再生スピードが速すぎて攻撃がまったく追いつかないのです。
頭を突き刺そうが体内にどれだけ撃ち込もうが、ほとんど通用しなかった理由はここにあると思います。
全身がクラモンで出来ている以上、体のどこだろうと例外はないはずですから。
何かを思い出すと思ったら、これはアルフォースによく似た能力なんですね。負のアルフォースとでもいいましょうか。
誰かを護るためではなく敵を倒すため、執念と怨念で再生を続ける復讐鬼。それがアーマゲモンなのです。
まさに最後の騎士を葬る最終戦争のために現れた化け物、という表現が似つかわしいと思いますね。
オメガブレードは、この体構造そのものを分解する力を持っていたと考えています。
あるいはアーマゲモンを構成するクラモン全てに一種のアポトーシスを起こさせ、一網打尽にするつもりだったのかもしれません。
しかしアーマゲモンの側もさるもの、オメガブレードからの強制指令が全身に届く前にいちはやく自ら融合を解き、
ふたたびクラモンの姿となって危機をのがれた。そんな暗闘を感じ取れました。
が、もはや再びアーマゲモンの姿をとることはできません。その瞬間にもう一度オメガブレードを刺されて、また戻るしかない。
ですからあそこで奴ができる最大の手は、逃げることだったと思います。
99%が撹乱にまわっている間に残りの1%でも脱出することができれば、得られたデータをもとにまた新たな進化と増殖を遂げ、
今度こそ選ばれし子供たちを葬ることができたでしょう。実際、そうしようと画策してたと思います。
その企てが失敗に終わったことは、もう言うまでもありますまいが。
結局、アーマゲモンになったことは彼(ら)の存在意義をあやうくする結果にしかならなかったのかもしれません。
なぜなら、アーマゲモンとはオメガモンを倒すためだけの進化でしかないからです。
ディアボロモンの強さは何をするかわからぬ無秩序な行動原理にありました。奴は混沌の申し子だったのです。
もし選ばれし子供たちに復讐したいだけなら、他にいくらでもやりようがあったのではないでしょうか?
しかし蓋を開けてみれば、そこにはオメガモン打倒という拘りだけがありました。
オメガモンを討つことはもはや、ディアボロモンにとって至上といっていい命題になっていたのです。
それは自らを捨て石にまでしたあの行動から明らかでしょう。
が、それこそが無秩序の権化が得てしまった唯一つの弱さです。
オメガモンを倒すという執念。そんな感情的なものを得たせいで、彼らは自らの能力を狭めてしまったのではないでしょうか。
おそらく、ネット世界ではもう容量が大きすぎてアーマゲモンにはなれないでしょう。といって、ディアボロモンにももうなれない。
なぜならオメガモンを倒すためだけに、その姿を捨ててしまったはずだからです。
そう、彼らは自分で自分を袋小路に追いやってしまった。オメガモンに勝とうが勝つまいが、自滅に向かって突き進んでいたのです。
ただし自ら道を探すのも、また生物。
一匹でも逃がしていたら、やっぱりさらなる新形態を模索しだすような気がするんですよ。
あの時点で永久に封印できたのは、世界にとって幸いなことだったと思いますね。
そう考えると、あのラストシーンは軽いホラーなのかもしれません。
・モブのみなさん
本作ではミョーに楽天的な野次馬という感じでした。
それとも語られてないだけで、デジモンの存在はもう公然の秘密みたいなもんだったのでしょうか?
特にお台場の人たちにとっては、忘れたくたって忘れられないでしょうし。
この一般人のみなさんの反応ひとつとってみても、やっぱりTV版に近いといえるでしょう。
ウォーゲームはもっとこう、ドライな流れでした。うまく言えないけど、やっぱり違うんですよね。
悪い意味じゃなくて、この作品はそういうものであってウォーゲームとはノリが異なる、というか……
ラッピングが同じなんで混乱しそうになるんですけども。
違うことを論うのではなく、別のものとして冷静に捉える。
この映画を見るならそこを大事にしたほうがいいのではないかと、最近思うようになりました。
たとえウォーゲームと完全に切り離せないのだとしても。
・剣と携帯電話
伊織が思いついた秘策。
その場に集まった全員の携帯電話や携帯電子機器の力を借り、オメガブレードを媒介にしてクラモンのデータを封じ込める作戦です。
ワンダースワンやゲームボーイアドバンスでも光を出せたかどうかはわかりません。
ここで勘違いしそうになるんですが、別に一人一人の携帯へクラモンを閉じ込めるというわけじゃないのだと思います。
拡散させては意味がありませんし、それでは回収そのものが不可能になるでしょう。
オメガブレードに携帯機器の力(想いと言い換えてもいい)を集め、それを使ってクラモンたちをすべて吸収、
一気にコンピューターデータ化と圧縮冷凍を実行するシークエンスだったのだと思います。
携帯機器の光は奇跡というより、伊織の提案を受けてオメガブレードの力が誘発させたものと考えた方が自然でしょう。
それぞれの光がクラモンを丁寧に絡めとり、捕まえて、おそらくは剣の中へ吸収していったのです。
ソレ自体が奇跡レベルに凄い現象なんですけどね。
・フレンド〜いつまでも忘れない〜
本作のエンディングテーマ。
穏やかな春の光を思わせる曲調と優しく歌い上げるAimさんの歌声が心にグッと迫る名曲です。
全てが終わった後に流れ出すとホッとするところまでは前作と同じで、たぶん初視聴ではそこで終わると思いますが、
あらためて聞き直してみるとこの歌にこめられたものがハッキリ見えてくるんですね。
そう、この歌はデジモンへの、デジモンアドベンチャーへの、デジモンを愛した友すべてへの感謝の歌だったのです。
そして同時に、別れの歌でもありました。デジモンアドベンチャーの映画は、これでもう最後なのですから。
卒業ソングみたいという意見にも頷けるものがあります。
でも、それで終わりではありません。忘れないでいる限り、思い出があるかぎり、デジモンたちはいつでもそこにいるのです。
きっとまた会える。ファンが望むなら。
★名(迷)セリフ
「胴ーっ!」(伊織)
しょっぱなはこれ、背の低さを活かすような形で鮮やかな胴を決める冒頭からです。
さりげなくTV版24話との繋がりが示唆されており、成長のほどがうかがえますね。子供はほんとうに成長が早い。
京も中学の制服を試着する場面で、時の流れを表現してくれています。
「デジデジ」(光子郎)
「モンモン」(大輔)
緊急会議の合言葉。
これ、考えたのは誰なんでしょうか。やっぱり光子郎なんでしょうか。だとしたらなんて微妙な。
彼、参謀としては有能だけどこの手のセンスとなるとかなり疑問符がつくからなあ……
選ばれし子供の合言葉としては間違ってないどころか、ド直球に正しいんですけど。
「はははっ、誰? こいつ」(大輔)
「すまん……オレだ」(太一)
過去の恥を曝されてる場面で。
これもミョーに印象的なやり取りです。なぜか謝ってる太一さんが最高。
しかしまた、ディアボロモンも随分と低レベルな煽りを仕掛けてくるものです。これも誘いなのでしょうけど。
あっちこっちに出てくる太一やヤマトの名前から、露骨な敵意が窺えます。昔のディアボロモンからは考えられませんね。
「電車ン中で携帯使うなー!!」(大輔)
大輔、魂の叫び。迷セリフにして名セリフです。
そしてすんません。私、通話はしてませんがメールはよく送受信してます。
「兄さーん!」(タケル)
アンドロメダ瞬ではありません。高石タケルです。
出し抜けに呼び方を変えたので、かなり面食らいました。タカトの「ねえ、ジェン」並に唐突。
いったいどーゆー心理で変えたのでしょう。確かに人間、そうしたい時期はあるから不自然ではないんですが。
まあ妥当に考えて、これもタケルが一歩一歩大人に近づいているという演出の一環なのでしょうけれど。
「オレたちも、あそこに行くんだ。ヒカリちゃんたちを、救い出すんだ!」(大輔)
渋谷ハチ公口にて、ノートパソコンを見ていた兄ちゃんに頭を下げながら。
本人は大真面目なんですが、画面の外からだと順調に空回って見えちゃう場面でもあります。
オメガモンの強さを知ってる身からすれば、別にあせらなくてもいいんじゃないかとさえ感じてしまう。
そういう意味じゃ、賢と光子郎の判断は正しいと言えるでしょう。
……とわかっていても、じっとしていられないのが大輔なんですけどね。
まさかディアボロモンは大輔がどう行動するかまで見切って、ツタヤの大画面に戦闘を映したのでしょうか。
だとしたら、おそるべき悪知恵といえますね。
というか、アレを視覚的に確認できるというのもよく考えたら不思議なんですが。ネット上ですよ。
それともディアボロモンの主観がそのまんま、映像として映し出されているのかな。
「ふふーん。おっひさー!」(ミミ)
「……ミミさんでしたか」(光子郎)
「なによぉ。お帰りなさーい、ぐらい言いなさいよ」(ミミ)
学校にて。光子郎の極薄リアクションと、ミミのいっそ開けっぴろげな拗ねかたが可愛らしい。
それにしても、彼女は光子郎にお帰りなさい、ぐらいは言ってほしいと期待してたってことなんでしょうか。
なるほど、光ミミ支持者に受けがいいわけだ。
そーゆー私も隠れ支持者なんですけどね。このふたりは見てて微笑ましい。
「それじゃ、僕からボールは奪えないぜ!」(賢)
へたばりかける賢に挑発ぎみの激励。賢から大輔にかける言葉としては、上位に来るもののひとつでしょう。
同時に、その手のセリフとしてはかなり珍しい類です。改心後の賢が大輔にこんなことを言うなんて、
TV版ではいっぺんも無かったことです。上述のとおり、友人としてそれだけ親しくなったってことなんでしょう。
またこの言葉は、大輔と賢がふだんからサッカーに興じている事実を示唆してもいます。
カイザー自体に得た身体能力がまだある程度残っているのなら、彼はあいかわらず大輔の目標なのかもしれませんね。
もちろん、今度はよい意味で。
「君はどんなにひどい状況でも、バカみたいにむちゃくちゃなパワーで乗り越えてきたろ……!」(賢)
そして大輔の前向きさは、賢の憧れでもあります。
字面だけみるとあんまり褒めてるように見えませんが、実のところ最大限の賛辞でしょう。
だって、ド根性って言葉を使わないんならこう表現するしかないじゃないですか。
「ブイモーン!!」(大輔)
「ワームモーン!!」(賢)
群衆をかきわけてパートナーのもとへ向かおうとする二人の叫び。
その渾身が伝わったのか、人々は体を開けて道をつくり、インペリアルドラモン進化への活路が開けます。
ウォーゲームから連なる不特定多数との繋がりが、ここへ来て結実したといえるでしょうか。
この作品はやはり、ウォーゲームを受けてその次の段階に進んだ作品とみるべきなのです。
それについて賛否両論が醸される自体、ひとつの解答なのかもしれません。
「しっかりしなさい!」(空)
完膚なきまでの敗北。絶望に襲われた太一とヤマトを我に返らせたのは、ふたりの大切な女性(ひと)でした。
たった一言でなんという存在感。さすが、デジアド界のオカンです。
「ホーリーリング?」(ヒカリ)
「ええ……みんなの希望がつまった……」(テイルモン)
端折られてるのか、ものすごい勢いで流された場面。
どうやらホーリーリングを媒介にして、オメガモンの本体がオメガブレードへの変化を遂げたようです。
ってことは、ネット世界から脱出できたのもその力のおかげかもしれませんね。
エンジェモンとエンジェウーモンが自らの進化に使っていたエネルギーを使い、現実世界へのゲートを作った。
そのかわり、もしもの時にそなえてホーリーリングを渡し、案の定それが役に立ったと。
オメガモンとインペリアルドラモン、そして周囲みんなの想いを繋げる役目を果たしたわけですか。
凄いんだなあ、ホーリーリングって。たった一個でイービルリング一万個分以上の働きをしてる。
まさに無限へ続く光の環ですね。絆は途切れやしない。
そういえば、ジョグレスの研究ができたのもゲンナイさんがこれをパクったおかげでしたっけ。
もともと、何かと何かを繋ぎあわせるはたらきがあるのかもしれません。
ではダゴモンの世界に行けたのも、あるいはホーリーリングの力が作用しているのかな?
「うけとれぇー!」(大輔)
「みんなの力だぁー!」(賢)
そんなわけで、単純にオメガモンから出てきたように見えるオメガブレードがこういう表現なのも
別に間違いじゃないってことなんですね。
オメガモンとホーリーリングがその場のみんなから少しずつ力を集め、結実させたのがオメガブレード。
そういうことになるわけですから。
「ゴミ箱…!? クラモンなら戻せます! みんなの携帯で!」(伊織)
皆もただ見ていたわけではありません。数には数で。
かくて場の携帯すべてが疑似デジヴァイスとなり、その光がクラモンを一匹たりとも逃さず捕まえてゆきます。
こうして進化の袋小路に陥った復讐者は、未来をめざす意志の前に敗れ去ったのでした。
「ふあぁ〜あ……ねみ〜……」(大輔)
最後はこれ。
緊張の糸が切れ、選ばれし子供たちが普通の学生にもどる瞬間です。
まわりの皆も、まるで堰を切ったみたいに楽しい笑い声をあげていましたっけ。
春の扉は、もうすぐそこです。
★次回予告
ウォーゲームほどではありませんが、ずいぶん手間取ってしまいました。
休憩を入れながらとはいえ、ほとんど一日がかりでしたよ。
とにかくこれで、全ての劇場版の感想を打ち終わりました。シリーズ全体と考え合わせても、ほぼコンプリートです。
お客様が背中を押してくれなかったら、きっと放置したままだったでしょう。
ありがとうございました。
最後にもう一度、選ばれし子供たちにお礼を言って締めにしたいと思います。
ありがとう。
いつまでも、いつまでも忘れないからね。