デジモンフロンティア 古代デジモン復活!!
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脚本:富田祐弘 監督:今村隆寛 作画監督:山室直儀 |
夏の映画です。どこから語ったものか。
●あらすじ
はざまの世界をさまよう島で、人型と獣型、ふたつの種族の争いにまきこまれた拓也たち。
はじめは片方を擁護して対立しかけますが、平和を望む子供達の願いで戦いを止めることを考えるようになります。
ところが両陣営の大将が実は同一の存在で、デジモン達を戦わせ、その憎しみのデジコードを集めていました。
この島には守り神としてまつられる古代デジモン・オニスモンが伝えられていたのですが、実はそのオニスモン、破壊神だったのです。
正体をあらわした黒幕・ムルムクスモンは予言にしたがい、集めたデジコードでオニスモンを復活させます。そのまますべてを破壊しようとしましたが、デジモンの子供達の願いによって、オニスモンを封印したエンシェントグレイモンと、エンシェントガルルモンの魂が降臨。
拓也たちがムルムクスモンを倒し、オニスモンはふたたび二体のエンシェントによって倒されました。
さまよえる島はデジタルワールドに固定されました。二度と迷うことはないでしょう。
●新デジモン・初登場デジモン
・コテモン
今回の主役のひとり。川田妙子さんの熱演が命を吹き込んでくれました。
顔(?)が似ているからか、FF9のビビに似た雰囲気を感じていたりもします。
・ベアモン
コテモンと並んで主役担当。声は岡村明美さんですが、ナミとは見事に雰囲気を変えて演じておられますね。かわいいです(´`)
グリズモン役の三宅さんともども、ゲストの新デジモンという大役をこなしてくれました。
・ディノヒューモン
「デジモンワールド3」では、コテモンの進化形態として知られます。恐竜人間ですね。「のび太と竜の騎士」に出たナンジャ族を思い起こさせます。
声はなんと上田祐司さん。シリーズ出演はこれが初めてではなく、01でヌメモン役として出てますね。
・グリズモン
思ったより小さいですね。普通の熊くらいしかない。
声優さんについてはよく知りませんが、非常に合っていたと思います。
・ヤシャモン
無駄に長い見せ場がありましたが、何人も出てくるので誰が誰だかわかりません(笑)。
・フレイウィザーモン
テロップに声優さんの名前さえ出ていたのですが、じっさいにはモブ同然の扱い。
ウィザーモンファンにはつらい展開が続きます。
・ヒポグリフォモン
ビースト軍の元締め。
出てくるたんびに泣いているので、そういう意味では印象があるんですが、実のところはただのハリボテ。なにも喋っていないのと同じです。
せっかく緑川光さんがアテているのに……。
・ムルムクスモン
頭はいいようですが、3分と出ていないこともあって印象は極薄です。デジモンというよりは、ビックリマン系のデザインかも。
・オニスモン
こちらも、ぱっと見デジモンっぽくないデザインと感じました。どこに定義をつけるかは曖昧なんですが。
お話的には、個性のかけらもないただの破壊神でした。
・エンシェントグレイモン&ガルルモン
オニスモンを倒す者として、半霊体のような姿で登場しました。
めちゃくちゃ強くてでっかいのですが、登場してしばらくはぼーっと突っ立ってただけでした。寝起きでしょうか。
ノックしてもしもぉ〜し?
●ダルクモン@上原多香子
ヒューマンデジモン軍の総大将。
元スピードの上原多香子さんがアテるということで、一部に話題を呼んだデジモンです。
が、わざわざ上原さんにやってもらう意味は非常に薄い役柄でした。
なぜなら、誰もが期待したような戦いを憂える女神などではなく、醜悪なムルムクスモンがその正体だったからです。
さらにタチが悪いのは、前半にてさもそういう役であるかのような描き方をされていること。
ここでのイメージがあると、後半で全面戦争をアジする場面や殺し合いにほくそ笑む姿へ、言いしれぬ違和感を感じるはずです。
私などはいったいいつムルムクスモンと入れ替わったんだ? と勘繰ってしまったほど。
要は見せ方の問題。ヒポグリフォモンのように最初から無個性の総大将として描かれていれば、まだ良かったはずです。
色気を出したのかどうなのか、取ってつけたような慈悲の描写が入ったゆえに、なんとも中途はんぱなキャラになってしまいました。
まあ、おかげで視聴側は見事に「だまされる」わけなんですが。
なお、この件に上原さんの演技力は関係ないので、ここでは論じません。
●小技ちょこちょこ
と、いうところで中休み、印象に残ったシーンです。
・線路と鼻歌
冒頭の場面ですね。上からのアングルで鼻歌だけが流れます。今村イズム全開その1。
・くしゃみ
なにげに今回のキーかも。川でのくしゃみウェーブは今村イズム全開その2。
その後、鼻タレがきれいに連続するのもお約束。
・戦闘シーン
なんといっても見どころは、スノーボードでアクロバティックに飛び回るチャックモンと、彼を豪快にぶん投げるブリッツモン。
でも、たまに何をしているのかわからない時があるのは残念でした。
対ボス戦ではフェアリモンがお色気攻撃をしていましたが、まるで効いていなかったのには困りました。
ここ、笑っていいところなんでしょうか?
・夫婦でキメ!
ムルムクスモンのたくらみを看破する場面にて、ガケの上にすっくと立ったフェアリモンとブリッツモンは、妙に絵になってました。
この二体だとけっこう映えますね。カブトムシのお兄さんとチョウチョのお嬢さんみたいで。
夫婦のようにも見えます(笑)
●破綻?
さて。
今回の監督は「ディアボロモンの逆襲」の今村隆寛さんなのですが、その今村さんをもってしてもカバーしきれなかったのが今回のパターンです。
というか、この映画ツッコミどころがメガトン相当に満載です。
拓也と輝二の無意味なケンカ(戦いを止めたいと思うきっかけにしかなっていない)やダルクモンのキャラの齟齬、演出上とはいえ無駄にハデな戦車(なぜか名前までついてます)、飛び石を踏んだように飛び飛びで進むシナリオ、威圧感ゼロのオニスモンとムルムクスモン、主人公らと遊離していたエンシェントたち、コテモンの不必要な死と安易な復活。なにより、主人公らの心境の変化へついていききれなかったこと。挙げればきりがありません。
ようは詰め込みすぎなのです。しかも、削ぎ落としてない。
広げた大風呂敷をムリヤリにたたんで固結びしてしまい、二度と開けられなくなってしまった感じでしょうか。
デジモンをたくさん出せばいいというものではありませんし。
ここまで言っておいてなんですが、スタッフの名誉のためにフォローしておかなければなりますまい。
映画的にはむしろ今回のようなものは「アリ」です。たくさん新デジモンが出てハデにバトルするのであれば、アピール度はたかいでしょう。
スポンサーとしては、むしろそういう作品を望むはずです。
しかし過度にたっすると、キャラCMに堕してしまうのは明白。それを乗り越えるのがプロの仕事ですが、限度もある。
そう考えると、あまりに多い今回の構成要素、スポンサー側からの要請である可能性が濃厚です。
しかも脚本はいかに実績があるとはいえ、デジモンについては経験があさい富田祐弘氏。いかに絵と演出ががんばっても、これではカバーできません。
製作期間の短さを思えば、むしろ上出来な方かも。
売れた作品が蝕まれるとすれば、その原因は「外から見ているだけの人間」や「他でのやりかたを変えない人間」なのかもしれません。
●まとめ
「冒険者の戦い」の前例があるため、正直過度の期待はせずに見たのですが、それで正解でした(^ ^;
予告だけ見ると結構面白そうだったんですが……ダルクモンはあんなんだし。
豪華な声優陣を生かし切れていない印象です。
でも二軍に別れたデジモンたちの戦い、というシチュエーションはちょっと良かったですね。
ディノヒューモン対グリズモンなどは興味深いものがありました。二体とも、なかなかいいデザインですし。
ベアモンとコテモンもかわいらしかったです。
主人公たちについて書いていない事については、どうかご勘弁を…。