タイキ、異世界へ行く!
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脚本:三条陸 演出:えんどうてつや 作画監督:竹田欣弘 |
★あらすじ
その日、空を緑の光が走った。
中学生の工藤タイキは、困っている誰かを見ると放っておけなくなる心優しい熱血少年。
ある日彼は助けを求める声に応え、その主である不思議な何かと意気投合、現れ出たDクロスローダーを手に取ります。
すると光の奔流が巻き起こり、彼を呑み込んでゆきました。幼馴染のアカリと自称・ライバルのゼンジロウも一緒です。
気づいたとき、そこはもう戦乱のデジタルワールド。
マンモンらの群れと総大将のマッドレオモンに襲われ、危機に陥った三人を謎のデジモンたちが救います。
さらに全てのキッカケとなったあの声の主がDクロスローダーから力を取り戻して実体化。その名はシャウトモン!
圧倒的戦力で敵デジモン軍をなぎ倒してゆくシャウトモンとその仲間たち。
激怒したマッドレオモンは部下を取り込んで己の力とし、大地をも割るパワーで襲いかかってきました。
シャウトモンの危機に思わず飛び出すタイキ。Dクロスローダーが輝き、シャウトモンらをクロス進化させてゆきます。
まさしく力を結集させての反撃が決まり、マッドレオモンを追い詰めるのですが、敵は割れた空に吸い込まれてゆきました。
かくて状況を切り抜けた一同でしたが、異世界ということすら気づいておらず右も左もわからないタイキたち。
加えてマッドレオモンの上司である不気味な軍団、タイキと同じDクロスローダーを持つ少年少女と、数々の影も……
今ここに、新たな物語が混迷を孕んで始まろうとしていたのです。
この冒険、ほっとけない!
★全体印象
1話です。タイトルコールはタイキ役の高山氏。毎回変わるのか否か。
3年余ぶりのデジモン完全新作、いよいよスタートです。
さまざまな意味で心機一転といえる幕開けですね。テレ朝への電撃移籍はその筆頭でしょう。よもや、フジを出る日が来るとは……
局や時間帯が違うとあって、プロモーションもこれまでとひと味違いました。CMによる露出度も高かった気がします。
かなり早期から3秒告知を何度も行ったり、公式サイトにババンと動画を載せたり、放送日前日には「いよいよ明日」と煽ったり、
とにかく並ならぬ力の入れようです。新たなコンテンツを強力に育てようというテレ朝の意図が垣間見えますね。
もともとキッズ向け販促にはポケモンのテレ東と並んで強い局ですから、この手の番組の扱いはお手のものでしょう。
本編を実際に視聴してみて、まず強い印象を受けたのは作画の派手さと美しさです。
とりわけ戦闘とバンクは相当の迫力で、1話としては過去最高レベルといっても過言じゃない気がしました。
まあガイキングみたいという感想も同時に出てくるんですが、アレのスタッフが来ているのなら頼もしい限りです。
他にもデジモンといえばこの人、の八島氏をはじめ作画監督の竹田欣弘氏、薮本氏、信実氏などなど馴染みの名前がズラリ。
佐藤元氏までいるのはまんまガイキングやビックリマンの流れですね。
ガイキングといえば、予告前のデジモン紹介は「ガイキング占い」や「ラッキーシール」を強く連想させます。
で、漫画には1話から出ているシャウトモンX2を後に廻し、まずはX4をアピールする構成。
なんせ後半のバトルで出てきたのも上半身だけとはいえX4なんで、徹底しているといえるでしょう。
スターモンたちやスターソードの出番も用意されており、何を見せたいかがハッキリしている流れですね。
少々強引でも掴みをガッとやって、細かいことはその後にしようというわけです。
その上で主人公・タイキの人となりや、性格が導いたともいえるシャウトモンとの出逢いに意気投合と
最低限これだけはやんなきゃウソだろ、というものは押さえており、1話として実にソツのない仕上がりです。
早くもいろんな謎がちりばめられてますが、今後のフォローに期待しましょう。
それにしても、本当に新作が始まったんですね。
これを書いているのは7日の早朝ですが、昨夜は興奮のあまりなかなか寝付くことができませんでした。
やっぱり、イチオシの素材がでっかく展開すると気分がいいですね。気合も入ろうというものじゃありませんか。
たまりませんな。
★OPと挿入歌
オープニングはソナーポケットの「ネバギバ!」。そして挿入歌の「We are クロスハート!」には和田光司さんが登場です。
なんだかんだ言って、デジモンソングを語る上で和田氏の存在は決して欠くことのできないものです。
それを挿入歌とはいえのっけから採用する事実ひとつ取ってみても、本作にかける気合というものが感じられるでしょう。
よく見りゃ作詞を三条氏自身がやっており、ここにも入れ込みを窺えますね。
OPの第一印象は「ポルノグラフィティ…?」でした。曲は……悪くないけど、ちょっとパンチに欠けるかな?
挿入歌も作曲が初参加の山下氏ということもあり、毛色が異なる印象。新鮮ではあります。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
今ごろになって「タイキ」をどんな漢字で書くのか気づいた次第。
ぶっちゃけ、すごく三条脚本の主人公らしい性格です。もっと言えば、やや極端なキャラ付け。
困っている人がいれば考えるより先に手を差し伸べ、必要とあればぶっ倒れるまで走るのをやめないあたりは特にそうです。
それでいて不思議とそんなに暑苦しくはなく、根がマジメなのもポイントですね。人を立てるところもいい。
ここまで衒いなく、嫌みなしに心優しい熱血漢を体現できるというのは結構すごいことだと思います。
たぶん、三条氏も根がすごくマジメな人なのでしょう。
そんなタイキですが、漫画には出てなかった「過去の後悔」と思しき何かが存在するようです。これは従来シリーズに近い。
いったい何でしょう。父親の存在が確認できないことと、何か関係があるのでしょうか?
・アカリ
タイキの世話女房。間違いなく、未来の嫁候補です。この1話ですでにそう確信できるキャラ付け。
彼女もけっこう極端ですね。倒れかけるタイキに滑り込みでクッションを噛ますあたりは、いろんな意味でその極み。
人物としては「仮面ライダーW」の鳴海亜樹子に近いものがあります。あっちよりはだいぶ柔らかいですが。アニメだし。
漫画版ではタイキを起こしに来ますが、こっちでは想定より早くタイキが動いてフォローに奔走する流れ。
時折すごく気遣わしそうな表情になるのは、やっぱり心配なんでしょう。過去のことを知ってそうだからなおさら。
それが彼女の「ほっとけない」なんですね。特定の人物にのみ常に発動してるあたりが違いますが。
事実上、ゼンジロウ共々完全にタイキの巻き添えでデジタルワールドに放り出されてしまった形ですね。
直接のパートナーを持たず、クロスローダーも無い彼女たちが迷い込んだ意味は……あるんだろうな、やっぱり。
・ゼンジロウ
異なるメディアで二度も名前を間違えられた可哀想な少年。
彼もやっぱり極端です。開口一番、タイキに試合を申し込むくだりからもはや全力全開。
デジモンで剣道少年といえば伊織ですが、あっちとは第一印象がまるで違います。ただ、頑固そうなので根っこは似てるかも。
いまのところ、アカリ以上の巻き込まれ役ですが上のアピールがあるため、それほど影は薄くありません。
長所が発揮されるのはこれからでしょう。
なんとなく「ほっとけない奴」とか「見てて面白い人」になりそうな素質も……
・シャウトモン
やはり神勝平でした。同じ声ですがアグモンとはアプローチの違う性格と演じ方なので、差別化はされてるほうです。
バンクで時折モンスターらしくかなり凶悪な顔になるあたり、人外らしさが出ていていいですね。
人じゃないということで、タイキ以上に少年漫画な性格です。
オレはいずれビッグになるぜとか、オレの名を聞きたいかとか芝居っけたっぷりなことを言ってもあまり抵抗がありません。
主人公の片割れであると同時にヒーローだし、ロボにもなるので、少しぐらい恥ずかしいことを言っても大丈夫なのです。
瀕死の重傷でもタイキに注意を促して命を救ったり、根はお人好しなのもポイントです。だから物語も動いた。
バリスタモンをなにげに片手で支えているなど、まさしく人間離れした虜力表現も見逃せないところ。
・バリスタモン
アニメ版でもしゃべりました。漫画と違ってほとんど技名しか口にしませんが、単に無口なだけなのでしょう。
漫画版では防御力とパワーがスピードに劣る弱点込みで取りざたされてましたが、X2の出番がまだなので
シャウトモンほど目立ってはいません。そのかわり、クロス進化でX4の上半身に合体して逆転の鍵となります。
なんだかゼンジロウと仲良くなりそうですが、どう描かれるのかな。
・スターモン&ピックモンズ
漫画版と異なり、1話からの登場。後者に至っては何匹いるんだよってほどの大所帯です。
スターモンの指揮でいっせいに襲いかかれば、大型デジモンであっても仕留めてしまうようですね。兄貴、戦いは数だよ。
さらにスターモンを柄として数体が合体することにより、スターソードとなります。
これはシャウトモンの状態でも扱うことができるのですが、威力はさすがにX4のときほどじゃないようですね。
・シャウトモンX4
前半のイメージシーン=タイキの夢と、後半のバトルに登場。ただし、後者は上半身のみです。
オメガモンに似た顔が印象的ですが、冒頭ではまさにそのオメガモンを思わせる無双ぶりを発揮していました。
そのわりにグレイモンと互角っぽかったり色々変なことになってますが、この作品ではそういう設定なのでしょう。
クロス進化、といいますがジョグレスとは違い、文字通りの合体そのものな演出で登場します。
あのデザインと予告を見た時点で予想はしてましたが、もはや完全にスーパーロボット。いったいどういう構造なのやら。
でも最初にイメージイラストで見たときより、ずっと印象がよくなりました。まさに作画マジック。
もし過去の主人公たちもこの絵と動きで見られたら、鼻血が出るかもしれません。
ところで気の早い予想ですが、やっぱりグレイモンたちともクロスできるのかな。
・歴代主人公のみなさん
タイキの夢にぞろぞろ出てきた方々。ところによってはシルエットじゃなく、後ろ姿ながらちゃんと姿を見せてくれます。
アレが単にファンサービスなのか、それとも本当にあんなとんでもない状況になるのか、いまだ不明。
アグモンとブイモン、ギルモン、ガルルモンがアイキャッチに出ますけど、アレもイメージなのかどうか。
・謎の声
タイキを導き、Dクロスローダーを提示した謎の存在です。何者でしょう。
エ○ドランというお約束は置いといて、マジで気になります。あの存在が他の者にもクロスローダーを渡しているのだとしたら、
その目的はいったい何なのでしょうか。果たして敵か、味方か、それともただそこに在るものか……
・ジジモン
アニメ版にもいました。この手のいわば長老役として出てくるのは、アニメじゃ実は初めてだったりします。
テイマーズの時は単なる隠居夫婦でしたからね。
重要な役にはならないと思いますが、レギュラーになるなら要所で一定の出番が期待できます。
・マッドレオモン
悪のレオモン。どこかオーガモンを思わせるデザインです。何か関係があるんでしょうか?
漫画版では俊敏なイメージでしたが、こちらは巨大で重量感があり、性格もより凶暴です。巨大な腕はダークティラノモンのよう。
悪者感、モンスター感、ともに序盤のボスキャラとしては充分なものがあるでしょう。
それが既存ではなく新デジモンというところからも、クロスウォーズの本気ぶりを見て取ることができます。
フロンティア序盤のボスであるグロットモンも新デジモンでしたが、あれは6話からの登場ですしね。
今回の描写や予告からみて、仲間を取り込んでの形態変化を得意としているようですね。
おそらく、それがバグラ軍の特色なのでしょう。さすがに彼のみの能力、ということはないはず。
シャウトモンたちといい、今回のテーマは「合体」「融合」みたいですね。ゾイドフューザーズを思い出します。
声を演じるのは飛田展男氏。氏としては最も野太いタイプの演技ですが、レオモンらしく端正さが残るのもミソ。
上司が島田氏の演じるタクティモンなので、はからずもシロッコの部下にカミーユがいるという図式に……
・タクティモン
その上司。シルエットだけ見ると、鎧武者を思わせるデザインをしています。ムシャモン系に近い存在でしょうか?
彼の登場により、ひっさびさにTVアニメで島田敏氏の腹黒演技を聴くことができそうですね(ネバタコスさんはちょっと違うし)。
というか、島田氏はジジモンにスターモン、謎の声と掛け持ちしまくりだったりします。深読みしちゃうじゃないですか。
その島田氏が主役をアテている「宇宙船サジタリウス」ザザー星篇に鎧武者姿の参謀が出てくるんですが、
タクティモンの影を見ているとどうもその参謀が思い出されてならなかったりします。
マイナーな例ですが、あの恰好で参謀っぽいというとどうしてもイメージが重なってしまうんですよね。
・リリスモン
バグラモン軍所属。立ち位置的に三人衆とか四天王のひとりという感じです。
存在はとっくに公式で示されてましたが、ついにアニメデビューですね。声は誰なんだろう。まさか使い回し?
他にもブラストモンという敵将がいるようですが、こっちの詳細は不明です。
・その他のデジモン
マンモンが大量に登場します。完全体なんですが、シャウトモンたちに30秒でなぎ倒されてしまうザコでしかありません。
このへんで、クロスウォーズを見るかどうか決める人もいるかもしれません。世代は無視するということか。
なお、マンモンはタイキたちが明確にはじめて見るデジモンだったりします。マッドレオモンとシャウトモンはその後。
冒頭の夢ではシールズドラモン、ライノモン、ミノタルモン、ミサイモン、タンクモンなども登場していました。CMでもおなじみ。
・キリハとそのパートナー
のっけからライバルオーラをバリバリ出している方々。
キリハ役の草尾さんはレギュラー初登板。シリーズ出演経験はありますが、これだけ大きな扱いを受けるのは初めてです。
この配役もガイキング繋がりなんでしょうか。
グレイモンはともかく、メイルバードラモンはとてもバードラモンの近縁に見えません。なんかロ○ロスみたい。
この二体がクロス進化するとメタルグレイモンになるといわれてますが、デザインも位置づけもぜんぜん違いますね。
それとも、クロス進化に適応した個体は同じ名でもまったく異なる特性を持つようになるんでしょうか?
クロスだけに、X進化みたいです。
・ネネとモニタモンたち
キリハと共にタイキたちの戦いを見守っていました。ネネは、この物語でもっとも謎の多い人間キャラのひとり。
タイキとシャウトモンの強さに期待するようなセリフを放ったり、何を考えているのかまだよくわかりません。
漫画版だと少々電波っぽいんですが、アニメ版はもうちょっと柔らかいですね。コメントも割とフツーです。
モニタモンは数が多くて忍者っぽい奇妙なデジモン。情報の共有化という、戦争ではけして侮れない能力があります。
声の丸山優子さんは「鬼太郎」五期でかわうそを演じていた人。ここからも繋がりが類推できます。
こんな声ですが「ふたご姫Gyu!」では美少女を演じていましたっけ。癖のある性格だったけど。
・謎・伏線の数々
・クロスローダーはいつ、誰が、どうやってデジタルワールドにバラまいたのか 何人が持っているのか
・クロスローダーの色には何かの意味があるのか
・タイキの過去
・アカリとの約束の内容
・いまだ姿すら見せないバグラモンの正体
・ネネ、キリハはいつ、どのようにしてクロスローダーを手に入れたのか
・謎の声の主は何者なのか
1話の段階でざっとこれだけのネタ振りがあります。もっとも大きな謎はクロスローダー関連ですかね。
たぶん、物語の根幹に関わってくる事象でしょう。語られることがあれば、ですが。
★名(迷)セリフ
「スーパーミラクルシュート! と思わせてパス」(タイキ)
妙に印象的でした。締めを人に譲るあたりに、いきなり性格も出てる気がします。
「ケンゴは来月天候しちゃうから、これが最後の大会なんだ。あんな半泣きなあいつの顔、初めて見た……
だから……またやっちゃった♪」(タイキ)
このへんの独白とオチのつけ方。実に脚本の癖が出ています。良くも悪くも。
「え…と、なんだっけ? ジョン万次郎?」(タイキ)
直後、豪快にずっこけるゼンジロウの姿を見ることができます。
彼、漫画版では「全自動」と名前を言い間違えられるのですが、イメージ画から連想するとそっちの方がより「らしい」かも。
「誰かが苦しんでるってことさ! そいつは、オレが放っといたら死んじゃうんだ……!
オレには……ほっとけない!」(タイキ)
タイキの人格形成のルーツと考え方がうかがえるセリフです。何か知ってそうなアカリの表情も見どころ。
フラッシュバックで挿入されるセピア色が、嫌でも悲しい何かを連想させます。
ゼンジロウはわかってるのかそうじゃないのか今はわかりませんが、何かを感じてはいる様子。
「ヘッ……似たもの同士か、おれたち……」(シャウトモン)
「……だな」(タイキ)
おそらくこれが、二人の波長が完全に合った瞬間なのでしょう。それがあの現象のキッカケになっているように見えます。
つまりクロスローダーを得るかどうかは、パートナーと「音が合う」ことがなにより重要なのでしょう。
名前を叫んだ瞬間、クロスローダーに色がついたことも気になります。あれは魂の色?
「少年よ。その命のメロディーを救いたいか?」(謎の声)
あ、あなたはエ○ドラン! ということで、うっかり殿堂入り。
止められて一瞬我に返りつつも、この質問にはいと答えたことがタイキの足を動かしてゆきます。
「オレはシャウトモン! いずれキングになる男だ! てめえらのハートに刻んどきな!!」(シャウトモン)
このキングという概念が実際に取りざたされるものかどうかは不明ですが、自信家ということはよくわかるセリフです。
漫画版だとより音楽を意識した言葉廻しになってますが、こっちはわかりやすさを重視してる感じ。
「冗談じゃないぜ! やっと助けたのに、また殺されてたまるかっ!」(タイキ)
この理由だけで走り出すのがタイキという男。何はともあれ、刻まれました。
「嗤うのは我々の次の戦略を見てからにしてくれ、同志諸君。グリンゾーンは手に入れる……パーフェクトに!」(タクティモン)
腹黒島田来たーっ。
そして、キャラを決定づける一言です。三条氏はこういうのが実に上手い。
ちなみにこの場面は、リリスモンの記念すべきアニメデビューでもあります。
★次回予告
二話でいきなり大げんかですか。
そういうのは日の浅い序盤にやっちゃって、後で別の形で絆を確かめる展開もありですね。