おれたち、デジモンハンター!

 脚本:三条陸 演出:貝澤幸男 作画監督:竹田欣弘
★あらすじ

 決して忘れることはない、あの夏の戦いから一年……
 進級したタイキは同じ中学に進学してきたユウ、そして後輩のタギルとともにバスケチーム「クロスハート」を結成。
 彼の冷静な判断力とユウの技術、タギルの突進力(?)で平和な勝利を重ねていました。

 そんな時、タイキは謎の光と何者かを追う者たちを目撃します。
 後を追った彼をその一人が阻み、予言めいた言葉を残して跡形もなく去ってゆきました。何かが起ころうとしている──!

 一方、ユウとゲームセンターにいたタギルも謎の少年と遭遇。
 それと知らずに追った先で、彼は紫の小竜・ガムドラモンと出会いました。戸惑う視界に、デジモンハンターを名乗る
 三人の少年少女が巨大なモンスターと戦う場面が映り、タギルの心は好奇心に躍ります。

 さらに、不思議な時計屋の老人がタギルの前に現れました。
 老体の導きで真紅のクロスローダーを手に入れたタギルは、心の赴くまま未知の世界・デジクォーツに赴きます。
 ガムドラモンと合流した彼は、巨大モンスター──メタルティラノモンに挑戦。
 戦いの中、互いに意気投合を深めた二人はいきなり超進化を発動。苦戦しながらも初陣を飾りました。

 そのとき、タイキとユウが現れます。タギルの姿を目撃し、後を追ってきていたのでした。
 タイキのクロスローダーからシャウトモンの声が聞こえたとき、ガムドラモンが怯えだします。一体なぜ…?



★全体印象

 新展開一発目となる55話です。

 今回からSDのえんどうてつや氏が降板し、「テイマーズ」「フロンティア」のSDにして本作の演出にも参加していた
 貝澤幸男氏に交代となりました。周知の通り、貝澤氏は角銅氏と並んでシリーズに関わりの深いベテランです。
 本作でも時にはややダークに、時には緊迫感溢れる雰囲気で盛り上げてくれていました。

 そのためか、画面全体の雰囲気が「テイマーズ」に極めて近いものとなっています。
 街中から直接バトルフィールドに移行する設定も、同番組を強く連想させました。違うのは本作の場合、
 のっけからデジクォーツと呼ばれる異世界に行ってしまうこと。これはむしろ「02」といえます。
 そもそも前日談があること自体が「02」的なので、両者のエッセンスが詰まった新章でもあるのかもしれません。

 キャラ構成では、なんとメインチームに少女キャラが不在(アイルがライバルチーム所属のため)。
 これはシリーズ初と言えます。一応タギルの側にはマミがいますけど、あの調子では深く絡んでくるのかどうか。
 まあ、あの噂が本当なら華には事欠かないでしょうか。答えはすぐにわかる。

 脚本は前期から引き続いて三条氏が担当。
 ただ、氏は今期のライダーにも参加するっぽいので比重を弱めつつある印象を受けます。
 それでなくても45話からこっちは大半を書いてるんで、どこかでしばらく離れても不思議はないところでしょう。
 ……問題は、その穴を誰が埋めているのかということだ。

 キャラデザインには「ディアボロモンの逆襲」の中澤一登氏が原案へ参加し、イメージが一新されました。
 一枚絵の時点で感じてましたけど、ずいぶん様変わりしてます。妙に垢抜けたというか、映画版っぽい。
 ユウなんて眉まで薄くなって、さりげにえらい変わってますよ。映画版の人がやってるんだから当たり前ですけど。
 
 一話だけあり、作画にはほとんどの主要スタッフが参加。力の入った仕上がりでした。
 お話の方は導入という感じで、まだまだ何もわかりません。まずはタギルとガムドラモンに集中してます。
 未知数なところも含め、今後に期待を寄せたいと思いますね。
 


★OPと挿入歌

 OPはまたまたトゥワイルが担当。曲名は「STAND UP」です。
 ただ、デスジェネラル篇のOPよりはオープニング曲っぽいと思いました。爽やかな旋律が耳に残ります。

 挿入歌「タギルチカラ!」の歌い手としては、サイキックラバーが登場。なんと、この人たちまで来たのか。
 和田さん分が足りませんが、もしも「違う形」で参加するのだとしたら……
 そのときは、状況にもよるでしょうけど素直に歓迎したいと思います。伊達に長くファンはやってません。

 …ドーベルモンを連れてると思しき、あの緑の少年は誰だろう。既視感があるラストカットです。



★各キャラ&みどころ


・タギル

 開始一分もしないうちにキャラが固まった人。ああ、やっぱりそう来るのねと納得しました。
 ポジションがたとえようもないくらい大輔です。いきなり失敗をぶちかますのはむしろ主人公らしい。
 側にマミがいたりと、もちろん本当は大輔と全然違うんですが…

 性格的にはいまのところ完全な猪武者。一度突っ走り始めるとタイキですら止められません。
 そのぶん、何かやってくれるかもしれない爆発力を期待されているみたいです。
 ただし、ユウに揶揄されているところをみるとその爆発が良い方向に働くケースはなかなか無い模様。
 タイキがああいう人なので、欠点の多いおバカを連れてきたというところですかね。
 実際、目立たせようと思ったらああいう行動力が服を着て歩いているタイプにするしかないでしょう。

 それに、彼の突進が結果的には次へ繋がっていることも忘れてはならないポイント。
 序盤の試合には勝ってますし、ガムドラモンとの初陣もほぼ独力で勝利をもぎ取っていました。
 失敗ばかりだけど、メゲずにガムシャラな勢いで次へ次へと進み、最後には何とかしてしまう感じですね。
 あと咄嗟にガムドラモンを庇ったり、そのガムドラモンを見てタイキの言葉に気づいたり、呑み込みもいい。
 おバカではあっても、悪い意味での馬鹿ではないというべきでしょう。

 声は井上麻里奈氏。
 「グレンラガン」のヨーコで名前を知った人で、実際その頃から活躍著しい人気声優さんです。
 やはり少女役がよく取り沙汰されてますが、まだ若手ながら既にその芸風は広め。少年役も結構やってます。
 そっちで名が通ってるのは「魔法少女リリカルなのはStrikerS」のエリオ・モンディアルあたりでしょうか。
 もっとも、あれは美少年系だったのでどちらかといえばユウに近いタイプですけど。


・ガムドラモン

 新パートナーにして、TVシリーズ初の紫をモチーフとした主役級デジモンです。
 正確にはモノドラモンがいますけど、あちらは準メインキャラな上に途中参加という難点がありますね。

 この名前、ガムシャラからのダブルミーニングでもあるんだろうなとタギルの項を書きながら思いました。
 ただし意外と悪知恵が働くタイプでもありそうで、シャウトモンに比べ少々裏表があるように見えます。
 いわゆる悪童というやつでしょう。尻尾につけられた輪が強烈に何かを思い出させます。

 戦闘力はサイズを考えると高いといってよいもので、メタルティラノモンの巨体を吹っ飛ばす程度は余裕。
 ただし新章に入って設定とパワーバランスが整理された関係か、倒せるというほどではないようです。
 シャウトモンがマンモンの群れを薙ぎ倒していた頃を思い出すと、むしろ普通になったのかもしれませんが。
 それとも、それがデジクォーツという世界なのでしょうか。

 声は渡辺久美子氏。ケロロ軍曹です。
 独特の愛嬌がある声質から、軍曹やこのガムドラモンのように人外を担当することが多い人ですね。
 デジモンシリーズにおいては「フロンティア」の友樹でお馴染みです。あれも半分は人外みたいなもんでした。
 大人の女性役としては言わずと知れたカテジナ・ルースが代表作のひとつですが、最近でも
 「WORKING!!」において店長の白藤杏子を演じ、傍若無人とも言えるその性格にひと味を加えていたりします。


・アレスタードラモン

 ガムドラモンから超進化した個体。オメガシャウトモン同様、完全体以上と表現して差し支えなさげな外見です。
 ストライクドラモンやヴリトラモンにもちょっと近いかも。線は少なめですが。
 メタルティラノモンを瞬殺する実力は、過去のシリーズなら究極体クラスです。ただし、進化段階は明言されてません。

 まあ、オメガシャウトモンと殴り合いできるぐらいの力はあるかもしれません。
 それだとX5Bより強いことになりますが、この際前話までの設定は忘れた方がよさそうだ。

 アレスターとは文字通り逮捕する者、転じて捕獲者という意味です。
 ガムドラモンの設定と照らすと、まさしく立場が逆転したことを示唆する名前なのでしょう。


・タイキ


 東映では並んでるけど、テレ朝の公式ではタギルよりキャスト順が上の人。
 いや、真ん中はタギルに譲ってるけど番組は変わってないので、一応まだ主人公のひとりのはずなんですよね。
 今回はあんまり出てないし、明らかに比重が変化してますけど。それでも存在感がヤバいのは流石。

 タギルにはどうやらかなり目をかけているようで、重要な役割を振ることもあるようですね。
 昔の相棒を思い出すというセリフ通り、タギルの溢れる行動力こそ必要な時があることを理解しているのでしょう。
 リーダーとしては申し分の無い人物だけに、新キャラとのバランスをどう取るかが目下のみどころです。

 なお、ついうっかり彼から書き始めそうになったのは習慣が呼んだ誤謬であり、他意はありません。


・シャウトモン

 声のみの登場。なんと既にキングになっているみたいですね。
 もともと持っていた良さに完成型キャラの貫禄が加わる感じなので、こっちも相当のことになりそうです。
 彼にとってデジクォーツがどういう場所なのかは、次回で語ってくれることでしょう。楽しみだ。


・ユウ

 ものすごい勢いでタケル化した人。賢ちゃんのカラーも兼ねてる美味しすぎなキャラです。
 ただし物事は割とハッキリ言うタイプで、その点で前期とそんなに変わっているというほどじゃありません。
 現状ではタギルを軽く見ていることも、真っ正面から表明して隠そうとすらしてない。けっこう生意気です。
 まあ、生意気なのがユウだとすればこれはこれで彼らしいのかな。

 なお、ダメモンにはまだ再会できていない様子。
 いつまでも非戦闘員ではないでしょうから、3話ぐらいに出番があると思いますけど。


・マミ

 前半に登場。タギルをボコボコにへ発破をかけていました。幼馴染かな?
 しかし登場場面が会話に被る形で流されていたため、話にちゃんと絡んでくるキャラかどうかさえ微妙です。
 OPにも出てねえしなあ……日常シーンが増えそうな分、ちょくちょく出るとは思うのですが。
 ユウのことは様付けで呼んでるので、ユウ絡みでも多少ありそうです。

 声は須藤祐美氏。かのハーマイオニー・グレンジャーの吹替担当として知られている方です。
 どっちかというと激情家みたいなので、タギルの今後がちょっとだけ心配。


・リョーマ、レン、アイル

 ライバルチーム。代表は一見してリョーマとわかるようになっています。
 慇懃無礼な彼に加えて見かけよりガラの悪いレン、自己中っぽいアイルと問題のありそうな方々ばかり。
 これではタイキやユウはともかく、タギルとの衝突は避けられません。アイルに至ってはドン引きされています。

 問題は、彼らが最終的に何を目的としてデジモンを捕らえているのかですが…
 戦力として使えるのは今期の場合どうやら一体だけみたいなので、単に集めてるだけなのでしょうか。
 そーいえば、アイルはハント対象としてガムドラモンを狙ってましたっけ。一応カワイイ系に入るみたいですね。
 でも、本当にそれだけか? という疑問がやはり湧いてきます。果たして真相は。

 リョーマは柿原徹也氏。ちょっと前までバトスピでユース・グリンホルンを演じていた人です。今回は珍しくクール系。
 アイルは潘めぐみ氏。あの潘恵子氏の娘さんです。声優としては2011年に活動を始めたばかり。
 その割に「Hunter×Hunter」のゴン・フリークスといった主役をゲットしてるので、期待されているのかもしれません。
 レンのみ、桑島氏がネネからの続投という形で担当してます。つまり、ネネが出る目も充分あるということですね。
 希望を捨てるのは早い。


・アスタモン

 リョーマのパートナー。まさかの色違いから抜擢なサイケモンから超進化して登場するみたいです。
 圧倒的な戦闘力でメタルティラノモンを追い詰めるのですが、少々手を抜きすぎたのか逃げられてしまってました。
 たぶん、本気を出せばあんなもんじゃないでしょう。仮にも七大魔王の前身です。

 中の人は櫻井氏。続投組です。
 前期のキャラがどれだけ出るかは疑問ですが、いちおう下地はあるのかな。岸尾氏や白石氏もいるし。


・時計屋のおやじ

 謎すぎる老人。あやしげな時計屋にタギルを招き入れ、クロスローダーを託しました。
 どこから、どのようにしてそんなものを手に入れたのか、今は全くの謎です。胡散臭すぎてむしろ敵には見えません。
 後ろにいるクロックモンは、でも本来のクロックモンと違ってました。またも新規デザインとは。

 実はこの方の中の人も続投組で、草尾氏だったりします。
 まさか未来のキリハってことはないと思うのですが単に契約の問題か、またはキリハも出る布石か…後者なら派手になりそう。
 ちなみに、クロックモンも続投組の丸山氏だったり。


・メタルティラノモン

 今回のターゲットです。今までのシリーズにも多数登場してますが、敵としてメインに据えられたのは確かこれが初めて。
 リョーマらの拘束を解くほどのパワーを持ち、ガムドラモンの攻撃にもビクともしない大変なタフさを誇っていました。
 一山いくら状態だったバグラ軍所属に比べると、えらい扱いの差です。すでに前期までの常識が通じません。

 最後はアレスタードラモンに大ダメージを受け、クロスローダーの中に捕らえられています。
 この後どうなるのかは、次回以降で確認というところ。


・デジクォーツ

 特殊な時の流れを持つという、謎の空間。デジタルワールドとは違うようです。地形は人間界にかなり対応してますね。
 当然ながら人間界の要素も混じり合った箇所が多々あり、デジモンアニメらしさをかなり強調してました。
 廃墟っぽい雰囲気から未来の地球の要素も混じってそうで、いろいろと想像してしまいます。
 なんというか、とてもダンジョンっぽい。

 この場所は新たな冒険の舞台であると同時に、噂が確かならあの状況のための設定でもあるのでしょう。
 デジタルワールドからどうやって行くのか気になります。人間界から行くときの言葉も。
 そーいえば、通るときの効果は時計に似てますね。



★名(迷)セリフ


「ここで止まるバカいるかあっ!」(タギル)

 直後のシーンともども、一瞬で彼のキャラを決定づけたセリフです。
 自分の可能性を試すチャンスを手にしたら、失敗を恐れずに突っ込む。それが明石タギルという少年なのでしょう。
 「分の悪い賭けは嫌いじゃない」タイプだ。

 ただ、それで周りが見えなくなることもあるので注意は必要そうです。
 周囲を非常に良く見ているタイキとは、じつに綺麗な好対照を描いていました。


「そうかぁ? あいつノーマークだったしさ。タギルなら、何かやるんじゃないかと思って。
 ……それにさ。あいつを見ていると、思い出しちまうんだ。かつての相棒をさ」(タイキ)


 ユウにタギルへパスを回したことを指摘されて。いろんな意味で想定を越えたことをする彼をかなり買ってるようです。
 そしてそれは、ああした人物が齎すパワーを熟知した上でもありました。ああ、全然変わってないやこの人。


「これから街の中が騒がしくなるかもしれませんよ。そう……ハンティングの時間(とき)の中で」(リョーマ)

 追いかけようとしたタイキを止め、残した言葉。これまた一瞬で人物を決定づけた言葉です。
 このポエムが入った言い回しと自己陶酔っぷり、既にネタキャラ確定ではありますまいか。
 ただ、描き方によっては結構底知れない男にも化けそうです。


「タイキさんがいつもオレを止めるのも無理はねぇよな…!
 カーッとなって何も見えなくなっちまうか…! オレたちは似たもの同士ってことだな!」(リョーマ)


 一歩退いた視点からガムドラモンの無謀を観察し、導き出した結論。それは自分自身の姿でした。
 誰かを放っておけないタイキとシャウトモンの意気投合がクロスローダーを呼んだように、これを契機として
 超進化への道筋が整いはじめてゆきます。


「へへっ…これでオレも、ハントする側だぜ!」(ガムドラモン)

 なにやら不穏なセリフ。もともと、力を得るためにタギルを利用していた節があるんですよね。
 それが単なる利害関係を越えたものになるかどうかは、この顛末を見れば想像はさほど難しくないでしょう。
 ここで感じた不安が現実になるとすれば、それは二人が次に乗り越えるべき壁になる…のかもしれません。


「ウェルカム…時間(とき)のハンティングへ」(リョーマ)

 もはや何も言いますまい。



★次回予告

 クロスウォーズでは初の、学校を舞台にしたお話が見られそうです。それだけでも新鮮。
 サゴモンってどう見てもアレですよね…わざわざ改名するなんて。それとも所長のアレとは別種なのでしょうか?
 でもオポッサモンが進化するのがアレですし、このサゴモンも意外と重要な存在になったりするのかもしれませんな。