[前のページに戻る]

[1]

夜明け。
街が少しずつ動き始める時間。
昇り始めた太陽が横浜の海にキラキラと反射する。

港に停めた覆面車の中で、鷹山と勇次は寝ていた。
昨夜は夜間のパトロールをそこそこで切り上げ、ここでサボっていたのだ。

鷹山の方が、フロントガラスから差し込む朝日を浴びて先に目を覚ました。

「おい、勇次。起きろよ、もう朝だぜ。」
「ん…」
「ホントにお前、よくこんな所で熟睡できるよなぁ」
「…んー、…一応刑事だからね。どこでだって寝れるようじゃないと、ネ。」

勇次は目をつぶり、半分寝ぼけながら受け答えをしている。

「お前、別に刑事じゃなくたって、寝てるだろ。」
「ま、ね。…なんだよ。タカは熟睡できねぇのかよ?」
「生憎と育ちがいいもんでね。やっぱりばりっとノリのきいたシーツが敷いてあるベッドじゃないとな。」
「けっ!どうせオレは育ちが悪いですよ。」

と、そこへ無線連絡が入った。
「ピッピッピ。港302、港302、応答願います。」
勇次は運転席であくびをしながら大きなのびをしている。
仕方なく鷹山が無線を取る。
「はい、こちら302、鷹山。」
「大下さんと共に、至急、署に戻ってください。」
「何かあったのか?」
「とにかく戻るようにと、近藤課長からです。どうぞ。」
「…了解。」

「なんだろうね?」
「勇次、お前またなんかやったんじゃないのか?」
「オレは何もしてないって。タカこそ、また銀星会がらみなんじゃないの?」
「オレだって別に。…ま、戻るしかねぇか。」
「そだね。」

勇次はエンジンをかけ、車を港署へと走らせた。

NEXT