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−J-REITを考える(その4)−    
J-REITの原点と社会的役割

投資に馴染みの少ない日本の個人金融資産に対して、いきなり株式投資を勧めるのは誰が見ても難しいはずです。日経平均とTOPIXも毎日大きく変動しますし、変動要因も国内要因だけでなく海外要因も含めて複雑系で動いています。 たとえ税制改革を進めたとしても、物理的に投資行為に専念できない個人にとっては無理だとも言えます。
株式のように値動きが大きくタイムリーな売買によって利益を得るハイリスク・ハイリターン型商品ではなく、値動きも少なく保有による配当によって利益を得るミドルリスク・ミドルリターン型の商品としてJREITは登場したはずです。
日本では初めてとなるインカム(配当)型投資商品のJREITこそ、リスク回避志向の強い個人金融資産を振り向かせることができる唯一の商品ですし、金融資産の本来の社会的機能を学習することができるしくみも持っています。

◇JREITの一般告知・啓蒙活動等の現状
  • JRF(日本リテールファンド投資法人)のみが、数回の新聞広告告知をしているのみで、他の銘柄でマスメディアを使った告知活動はしていない
  • JREITに対する意見や評価が公表されることは極端に少ない
  • JREITへの一般認知度に対する調査資料もほとんどない
  • JREIT関連書籍も最近は刊行される数が少なくなっている
以上のように、告知・啓蒙活動はかなり低調な状態にあります。
現状を見ていると、せっかくの商品を個人金融資産に向けてアピールすることもせず、一般告知・啓蒙活動もほとんどありません。 それでも、関係者間では登場から2年近く経て株価も上昇し高位安定している現状では強い危機感も問題意識もないように見えます。
更に懸念すべきことは、個人金融資産の主たる管理者である「主婦層」へのアプローチが過去も現在もなされていない点が挙げられます。

このように、JREITの本来の役割が頭だけで理解されていて、行動が伴っていないという現状は大変憂うべき状況だとも言えますが、いったい誰がJREITの社会的役割を理解し行動しなくてはならないのかも関係者の間では明確ではないようにも見えます。
私は、この問題は最終的には、関係者の「志」に帰結するのではないかと考えています。
一企業の利益だけでなく、社会全体への影響を考え、場合によっては利益を減じても社会全体の利益の向上に繋がる行動に邁進するという「志」こそが、今JREITに必要なことなのではないかと思っています。
投資商品というものは、投資家と運用者の信頼関係がベースになりますが、信頼=利益の供与と単純に考えるだけでは個人金融資産を振り向かせることは難しいです。
資産運用会社を初めとしたファンド側が、もう一度、JREITの原点と社会的役割を見つめることが重要なのではないかと考えています。
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