2T−G&4A−Gヒストリー
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2T−Gと4A−Gの歴史。これはレビン・トレノの歴史でもあります。2T−Gありえなくして現在のレビン・トレノは無かったことでしょう。 2T−Gの原型のエンジンは1.4LエンジンのT型エンジン(OHV)で、これを1.6Lにボアアップしたものが2Tエンジン(OHV)になります。2Tは2T−Gのベースとなるエンジンです。 しかし、2T−GはDOCH。それに対しベースの2TはOHV。いくらベースエンジンが同じでも、双方のカムシャフト位置に共通点は全くなく、はっきり言って別物です。 OHVのエンジンをDOCH化するには、まずOHVには無かったカムシャフトをシリンダーヘッド内に設けなくてはなりません。 ですので、これを実現するにはシリンダーヘッド等の再設計が必要ですが、T型エンジンはDOHC化を考慮された設計がなされていました。 2T−Gのシリンダーブロック自体は殆ど2Tエンジンと変わらず、違う点と言えばカムシャフトを回すためのタイミングチェーンが、OHV時代にあったカムシャフト位置から、さらにシリンダーヘッドに2段掛けで延びている点など少々の変更点だけです。こうして2T−Gが世に生まれました。 TE27・TE37/47に搭載の2T-G。 黒いカバーで覆われているが、ソレックスキャブレターを標準装備。 トランスミッションはAE86まで使われたT50型。 115ps/6400rpm、14.5kgm/5200rpm(グロス)
初代2T−Gはソレックスキャブレターを2連装させた、当時のホットユニットでした。
エンジン性能はグロスで最大馬力115ps/6400rpm、最大トルク14.5kg−m/5200rpm。ただし現在はエンジン性能はネット値で表せており、グロスをネットに換算すると85から90%ぐらいになります。 モータースポーツの陰に2T−Gありとも言われた名機の誉れ高い2T−G最初の搭載車は、セリカGTでした。 一つ上のクラスで通用するエンジンを大衆車であるカローラに搭載。そう、この瞬間こそTE27・初代レビン・トレノの誕生です。 各部をリファインされて、軽量なボディに無骨なオーバーフェンダーを与えられたレビン・トレノ&2T−Gの走りは、想像に難くないはず。 こんな車を用意されては、若者が飛びつかないわけがありませんでした。
この後マイナーチェンジを受け、OHVツインキャブの2T−Bも登場しました。 2T−Gの存在で好評だったTE27もモデルチェンジを受け、TE37・レビン、TE47・トレノに移りましたが2T−Gの人気は衰えませんでした。この時レギュラー仕様の2T−GRも登場しました。 そんな好評の2T−Gも試練の時がきました。それは昭和51年排ガス規制です。 キャブの燃料制御では厳しい51年排ガス規制をクリアすることはできなくなってきており、これにより一端レビン・トレノの歴史が途絶えることになりました。
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しかし、77年1月に電子制御燃料噴射装置(EFI)装備で2T−Gはレビン・トレノとともに復活を果たしました。 このより2T−Gの名称は2T−GEUになりました。エンジン性能はキャブ時代よりも落ちた最大馬力110ps/6000rpm、最大トルク14.5kg−m/4800rpm(グロス)になりました。 2T−GのEFI化に伴いTE51・レビン、TE61・トレノと形式変更となりました。
TE51/61に搭載の2T-GEU。 Lジェトロ式EFI化に伴い、圧縮比も低下(9.8:1>8.4:1)している。 110ps/6000rpm、14.5kgm/4800rpm(グロス)
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その後53年排ガス規制もクリアし、最大馬力もキャブレター時代同様の115psになり、最大トルク15kg−mにパワーアップし、車両形式はTE55・レビン、TE66・トレノになりました。
TE55/66に搭載の2T-GEU。 カムカバーのロゴも変更されている。 115ps/6000rpm、15.0kgm/4800rpm(グロス)
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しかし遂に、2T−Gも終焉の時を迎えることになりました。その車両形式はTE71。 TE71の後期には燃焼室の変更も受け、「レーザー・エンジン」と名付けられました。この「レーザー・エンジン」の呼称は現在の5バルブ4A−Gにも継がれています。また、TE71時代に2T-Gの後継となる4A-Gのベースエンジン、3A−Uが登場したもの興味深いところです。
1983年4月、2T−Gは新世代エンジン4A−Gにバトンを渡し13年にも及ぶ2T−Gの歴史は幕を閉じるのでした。 しかし、T型系エンジンの最終モデルは82年9月に発売となったセリカ、コロナ、カリーナの1.8Lツインプラグ&ターボ仕様の3T−GTEUになって遂に、T型系エンジンの歴史にピリオドを打つことになりました。 3代目2T-GEU。 最高馬力等は変わらないものの燃焼室の変更、スキッシュエリアを設けるなどして圧縮比が9:1に上がっている。(TE71) 115ps/6000rpm、15.0kgm/4800rpm(グロス)
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傑作エンジン2T−Gの後継として、1983年5月に登場した4A-GEU。 2T−Gの一気筒あたり2バルブの構成から一気筒あたり4バルブへマルチバルブ化した4A−Gは、マルチバルブ化に伴う低中回転域のトルクの低下を補うべく採用されたTVIS、点火時期調整システム等の採用など最新技術を盛りこまれました。 そして、これらを高度なコンピューターで制御することで、最大馬力130PS/6600rpm、最大トルク15.2kg−m/5200rpm(グロス)を発生する高性能エンジンに仕上がりました。
4A−Gのベースとなったエンジンは先述の同A型エンジン、1500ccの3A−U(OHC)エンジンでした。4A−G最初の搭載車は「ハチロク」の愛称で知られるAE86・レビン、トレノです。 4A−Gは2T−Gよりも軽量・コンパクトでハイレスポンス、しかも7700rpmまで一気に吹け上がるユニット、TE71よりも軽いボディとあいなりまして、ここにレビン・トレノの人気は極まりを見せました。 もちろんレーシングフィールドでも、4A−Gを搭載したAE86は数々の高成績を納めました。 AE86は完全新造の車でなくTE71のシャシーを使っています。ミッションもT50型と初代レビンのTE27から使われ続けています。 個人的感覚で言うならAE86はTE27をセリカに置き換えての新エンジンを搭載した、レビン/トレノの集大成とも言えると思います。 AE86に搭載の4A-GEU。 2Tシリーズよりも高回転・高出力化しつつも小型軽量化されたのがわかる。 130ps/6600rpm、15.2kgm/5200rpm(グロス)
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1987年5月にAE86もモデルチェンジを受け、レビン・トレノ初のFF車、AE92に進化しました。 AE92に搭載された4A−GはAE86の4A−Gと性能は変らないものの出力表示がグロスからネットに変わり最大馬力120PS/6600rpm、最大トルク14.5kg−m(ネット)になりました。 AE92にはレビン・トレノ初の過給器・スーパーチャージャー搭載の4A−GZも登場し、最大馬力145PS/6400rpm、最大トルク19.0kg−m(ネット)を発生させていました。しかしAE92の後期から4A−G・4A−GZ共に変更をうけました。 4A−Gはピストンクーラー、ノックセンサーの追加、TVIS廃止、使用燃料がハイオクとすることにより、最大馬力140PS/7200rpm/最大トルク15.0kg−m/6000prm(ネット)を発生。 4A−GZは4A−G同様、ハイオク化にTVISの廃止、スーパーチャージャーのプーリー径の変更により、最大馬力165PS/6400rpm、最大トルク21.0kg−m(ネット)を発生しました。 AE92に搭載の4A-GE。 写真は後期型。前期は86の4A-Gを横置きにして文字を赤くした感じ。 ミッションはAE101前期まで使われるC52。 120ps/6600rpm、14.5kgm/5200rpm(ネット)前期 140ps/7200rpm、15.0kgm/6000rpm(ネット)後期
1991年6月、4A−Gは更なる進化を遂げました。AE92からAE101にモデルチェンジの際、4A−Gは一気筒あたり吸気バルブ3本、排気バルブ2本の5バルブエンジンとして生まれ変りました。 エンジン内部パーツの大幅な変更、4連スロットル、可変バルブタイミング機構(VVT)等の採用で、最大馬力160ps/7400rpm、最大トルク16.5kg−m/5200rpmを発生し、1600ccNAエンジンでリッター100馬力を達成しました。 一方、4A−GZは5バルブ化せずも小変更を受け、最大馬力170ps/6400rpm、21.0kg−m/4400rpmと低回転からトルクフルなスーパーチャージャーの特性が現れたエンジンに仕上がりました。 AE92とAE101に搭載の4A-GZE。写真はAE92。 4A-GEでは見ることが出来ない、インタークーラーとスーパーチャージャーが在る。 145ps/6400rpm、19.0kgm/4400rpm(ネット)AE92前期 165ps/6400rpm、21.0kgm/4400rpm(ネット)AE92後期 170ps/6400rpm、21.0kgm/4400rpm(ネット)AE101
AE101に搭載の4A-GE。 ここで4A-GEは大きく進化し5バルブ化した。通称シルバーヘッド。 後期よりミッションはC56へと変更され2-3がクロスするようになった。 160ps/7400rpm、16.5kgm/5200rpm(ネット)
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1995年5月、レビン・トレノはAE101からAE111へとモデルチェンジしました。 このモデルで4A−GZはカタログから消えましたが、これには5バルブ4A−Gの熟成が進んだもの一つの要因ともされています。 AE101時代の5バルブ4A−Gよりも高回転化にすべく、インマニの形状変更、ピストン、コンロッドなどの内部パーツの軽量化や周辺補器類の充実化に伴い、最大馬力165ps/7800rpm、最大トルク16.5kg−m/5600rpmを発生するに至りました。 AE111に搭載の4A-GE。ここで4A-GEの歴史は終わる。 通称ブラックヘッド。 後期より6速のC160(スターレットのC150ベース)に変更される。 165ps/7800rpm、16.5kgm/5600rpm(ネット)
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4A−Gが5バルブ化されたとはいえ4バルブ4A−Gもまだまだ現役。5バルブ4A−Gのピストン、コンロッドは4バルブ4A−Gのチューニング材料としても最適など、両4A−Gの二人三脚は当分の間続きそうです。